美容室の優良顧客ランク分けの基準|3軸で決める顧客管理の設計手順

美容室でカウンセリングを行う美容師とお客様

美容室の優良顧客のランク分けは、売上金額だけで決めると失敗します。年に1回だけ高額メニューを受ける客と、月1回通う客では、店に残る利益も守り方もまったく違うからです。

この記事では、来店頻度・単価・継続期間の3軸でランクを設計する方法、ランクごとの接し方、そして運用を続けるための最小限のルールを、明日から使える形にまとめます。

目次

結論:美容室の優良顧客ランク分けは3軸で決める

顧客を分ける目的は、優劣をつけることではありません。限られた時間と予算を、どこに配分するかを決めるためです。全員に同じ手間をかけていると、離れてほしくない人ほど手が回らなくなります。

使う軸は3つです。①直近の来店(いつ来たか)②来店頻度(何回来ているか)③1回あたりの単価。この3つは、どの予約システムでも記録されている項目なので、追加の仕組みなしで始められます。

顧客全体の考え方はLTVで考える顧客戦略に、失客を防ぐ具体策はVIP客の失客を防ぐ方法にまとめています。本記事は「そもそも誰を優良客と呼ぶのか」を決める設計の話です。

美容室でカウンセリングを行う美容師とお客様

3軸を使ったランク設計の考え方

この3軸による分類は、公的機関でも中小企業向けの経営手法として紹介されています。中小企業基盤整備機構が運営する経営情報サイト「J-Net21」では、顧客を最新購買日・購買頻度・購買金額の3指標で分類するRFM分析が、顧客管理の手法として解説されています。

出典:中小企業基盤整備機構「J-Net21」経営用語・マーケティング関連の解説。掲載内容は更新されることがあるため、詳細は同サイトの最新の記載をご確認ください。

美容室に当てはめると、次のような区分になります。実際のしきい値は店の単価帯や客層で変わるため、下表は自店の数字に置き換えるための出発点として使ってください。

ランク 最終来店 年間来店 単価 方針
A(中核) 3か月以内 5回以上 平均以上 守る
B(育成) 3か月以内 3〜4回 平均前後 頻度を上げる
C(新規・様子見) 3か月以内 1〜2回 問わない 2回目を作る
D(離脱兆候) 4〜9か月前 3回以上 問わない 早めに接触
E(休眠) 10か月以上前 問わない 問わない 年1〜2回の案内

注目してほしいのはDです。来店回数が多かった人が来なくなっている状態で、放置すると休眠に落ちます。ここに早く気づける仕組みが、ランク分けの最大の価値になります。

しきい値の決め方に迷ったら、自店の平均から逆算してください。年間来店回数の平均が3.2回であれば、その1.5倍にあたる5回をA、平均前後をB、それ未満をCとする、といった具合です。他店の基準を借りるより、自店の分布に合わせたほうが、実態に近い区分になります。

単価の軸も同様です。全顧客の平均客単価を出し、それを上回るかどうかで判断します。この計算は、レジの月次集計と来店人数さえあれば電卓でできます。分析ツールを導入する必要はありません。

ランク別の接し方を決める

  1. A(中核)には、割引ではなく優先枠と情報を渡します。予約が取りにくい時間帯の確保、新メニューの先行案内など、金銭以外の価値で応えます。値引きは単価を下げるだけで、関係は強くなりません。
  2. B(育成)には、来店周期に合わせた次回提案をします。次回予約の取り方は次回予約の取り方が参考になります。
  3. C(新規・様子見)には、2回目の来店だけに集中します。ここで離脱する人が最も多く、改善余地も大きい層です。
  4. D(離脱兆候)には、売り込みではなく気づかいの連絡を送ります。「そろそろメンテナンスの時期です」といった、相手の都合を主語にした内容が向いています。

落ち着いた雰囲気の美容室の店内

接し方を変えるうえで大切なのは、ランクを顧客本人に見せないことです。序列を感じさせる運用は、信頼を損ないます。あくまで店側の内部管理として使ってください。

もうひとつ意識したいのが、ランクは固定ではないという点です。CからB、BからAへ上がる人もいれば、AからDへ落ちる人もいます。毎月更新することで、この動きが見えるようになります。動きが見えると、「どの施策の後にランクが上がったか」という因果も追えるようになります。

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運用を続けるための最小ルール

  1. 月1回、10分だけ更新する

    毎日やろうとすると続きません。月初に前月分をまとめて分類するだけで十分です。作業時間は10分を上限に設計してください。

  2. Dの一覧だけを印刷する

    全ランクを毎回見る必要はありません。手を打つべきD層のみを紙かスマホで共有し、担当スタイリストが声をかける形にします。

  3. タグとして記録に残す

    顧客管理側にランクを保持しておくと、案内の出し分けが楽になります。実装は顧客タグの設計を参考にしてください。

ランク分けは個人データの取り扱いを伴います。顧客情報を私物の端末に保存しない、退職者のアクセス権を速やかに解除するなど、店内での管理ルールを先に決めてから運用を始めてください。

よくある失敗と対処

失敗1:金額だけでAを決めてしまう。年1回の高額客がAに入り、月1回通う常連がBに落ちます。頻度の軸を必ず入れてください。

失敗2:ランクを細かく作りすぎる。7段階、8段階と増やすと、誰も運用できなくなります。まずは3段階から始め、慣れてから増やせば十分です。

失敗3:分類して満足する。ランクを作ること自体には効果がありません。D層への声かけまでを1セットにして初めて成果につながります。

失敗4:一度作って更新しない。半年前のランクで声をかけると、すでに来店済みの人に「お久しぶりです」と送ってしまいます。信頼を損なうため、更新していない一覧は使わないでください。

とくに3つ目は多くの店で起こります。分類作業は目に見える成果が出るため達成感がありますが、行動が伴わなければ数字は動きません。「分類10分・行動20分」を目安にしてください。

顧客管理の方針を共有するサロンスタッフ

スタッフとの共有方法も決めておいてください。ランクの意味を説明せずに一覧だけ渡すと、「上客だけ大事にしろということか」と受け取られかねません。目的は限られた時間の配分であり、接客の質を客によって変えることではない、と最初に伝えることが重要です。

共有の頻度は月1回で十分です。朝礼で5分、D層の名前を読み上げて担当を決めるだけでも運用は回ります。仕組みを大きくするほど続かなくなるため、小さく始めてください。

3か月後に確認する数値

ランク分けの効果は、次の3つで測ります。いずれも予約システムの数字だけで確認できます。

第一に、D層から復帰した人数。声かけの効果が最も直接的に表れます。第二に、A層の人数の増減。増えていれば育成が機能しています。第三に、C層の2回目来店率。ここが上がると、翌年以降のA層が増えます。

離脱の傾向をより深く分析したい場合は顧客離脱の分析方法もあわせてご覧ください。数字の見方が分かると、ランク分けは単なる名簿整理から、経営判断の材料に変わります。

数値を見るときは、その月の実数そのものより、前月からの変化に注目してください。D層からの復帰が月1人でも、それまでゼロだったなら前進です。逆にA層が減り続けているなら、接客や技術ではなく、来店周期の管理に問題がある可能性があります。ランク分けは、こうした変化を早く捉えるための道具です。

最初から完璧な設計を目指す必要はありません。3か月運用してみて、しきい値が自店の実感と合わなければ調整してください。運用しながら精度を上げていくほうが、机上で完成させるより早く成果に近づきます。

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この記事を書いた人

美容室オーナー・経営者向けメディア「vaulta」編集部。集客・リピート・融資・求人・DX・独立の実務情報を、一次情報を確認のうえ発信。お金に関わる記事は中小企業診断士の監修を受けています。編集責任者:ISOYAMA。

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