美容室が可能な物件かを見分ける方法|契約前に確認する設備・法令・許可の項目

数字や書類を確認する様子

美容室が可能な物件かどうかは、募集図面の「美容室可」という記載だけでは判断できません。給排水・電気容量・用途地域・保健所の基準の4つを、契約前に自分で確認する必要があります。

この記事では、確認すべき項目、確認する順番、居抜きとスケルトンの違い、そして工事費が跳ね上がる条件を整理します。

美容室 可能 物件|美容室の店内の様子
目次

結論:美容室が可能な物件かは4つの条件で決まる

不動産会社が「美容室可」と書いていても、それは貸主が業種として認めているという意味であって、営業できる状態にあることを保証するものではありません。

実際に営業するには、保健所の検査に通る設備が必要です。給排水の位置、電気の容量、換気、そして用途地域の制限。このどれか1つが欠けても、工事費が大きく膨らむか、そもそも開業できません。

契約してから発覚すると、賃料を払いながら工事を待つことになります。物件探しの進め方全体は物件の探し方にまとめています。この記事は「その物件で開業できるか」の判定に絞ります。

契約前に確認する6項目

項目 確認する内容 問題があった場合の追加費用
給排水の位置 シャンプー台を置きたい位置まで配管が来ているか 30万〜120万円
電気容量 契約アンペア数。ドライヤー・スチーマー・洗濯乾燥機の同時使用に耐えるか 15万〜60万円
換気 薬剤のにおいを外に出せる経路があるか 20万〜50万円
用途地域 その地域で美容業を営めるか(市区町村の都市計画課で確認) 開業不可の場合あり
床の耐荷重・防水 シャンプー台まわりの防水処理が可能か 10万〜40万円
原状回復の範囲 退去時にどこまで戻すか。スケルトン戻しか、現状のままか 退去時に50万〜200万円

金額は仮の設定で、物件の状態や地域によって変わります。注目してほしいのは、6項目すべてに問題があると300万円を超える追加費用になり得るという点です。賃料が月2万円安いことより、こちらの影響のほうがはるかに大きくなります。

特に見落とされやすいのが最後の原状回復です。契約時には費用が発生しないため確認が後回しになりますが、退去時にスケルトン戻しを求められると、想定していなかった支出が発生します。契約書の該当条項は必ず読んでください。

用途地域から順に確認する4ステップ

  1. 用途地域を先に調べる

    市区町村の都市計画課、または自治体のウェブサイトで確認できます。ここで営業できない地域なら、他の項目を調べる必要がありません。無料で、その日のうちに分かります。

  2. 保健所に相談する

    物件の住所を伝えて、美容所の開設に必要な基準を確認します。作業面積、消毒設備、洗い場の数など、自治体ごとに運用が異なることがあります。

  3. 内装業者と現地を見る

    給排水・電気・換気は図面だけでは分かりません。契約前の内見に業者を同行させ、概算の見積もりを出してもらいます。

  4. 貸主に書面で確認する

    工事の可否、原状回復の範囲、看板の設置可否を書面で確認します。口頭の合意は後から食い違うことがあります。

この順番なら、費用をかけずに落とせる物件を先に落とせます。内装業者に見てもらう段階まで進めるのは、用途地域と保健所の確認を通った物件だけで十分です。

美容室 可能 物件|ヘアスタイルの仕上がりイメージ

電気容量が足りるかを計算する

電気容量は、契約前に自分で計算できる数少ない項目です。使う機器の消費電力を足し、同時に使う分を見積もります。

機器 1台の消費電力 台数 同時使用の見込み
ドライヤー 1,200W 3台 2台=2,400W
給湯器(電気式) 4,000W 1台 4,000W
スチーマー 800W 2台 1台=800W
洗濯乾燥機 1,300W 1台 1,300W
エアコン 1,500W 2台 3,000W
照明・その他 1,000W
同時使用の合計 12,500W

100V換算で12,500Wは125A。単相3線式であれば60A契約でも200V機器と分けて使えますが、物件の引き込み容量そのものが小さい場合、増設に15万〜60万円かかることがあります。この工事は貸主の承諾が必要で、建物全体の容量に空きがなければ実施できないこともあります。

内見の際に分電盤を見せてもらい、契約アンペア数と空き回路の数を確認してください。ここで足りないと分かれば、その物件は候補から外せます。

給排水の位置で工事費が変わる

シャンプー台は、給水・給湯・排水の3つが必要です。既存の配管から遠い位置に置こうとすると、床を上げるか、壁を伝わせるかの工事が必要になります。

目安として、既存の水回りから3m以内なら30万円程度、5mを超えると60万〜120万円になることがあります。床を上げると天井高が下がり、段差ができるため、レイアウトそのものを制約します。

そのため、レイアウトは「置きたい場所」から考えるのではなく、配管の位置から逆算して決めるほうが費用を抑えられます。シャンプー台2台なら、既存の水回りに背中合わせで並べる形が最も安く済むことが多くなります。

賃料の安さで判断しない

月2万円安い物件と、工事費が150万円安い物件を比べると、後者のほうが有利になることがあります。数字で確認してみます。

  1. 物件A:賃料13万円。給排水・電気ともに要工事で、内装費に150万円の上乗せ。
  2. 物件B:賃料15万円。前が美容室で、配管と電気はそのまま使える。
  3. 5年で比べる:Aは賃料780万円+上乗せ150万円=930万円。Bは賃料900万円。Bのほうが30万円安い計算です。
  4. 開業時の資金負担:Aは開業時点で150万円多く必要です。融資額が増え、返済も重くなります。

賃料は毎月の負担、工事費は開業時の一括負担です。資金に余裕がない段階では、工事費の少ない物件のほうが立ち上がりが安定する場合があります。

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居抜きとスケルトンの判断

前が美容室だった居抜き物件は、設備が残っているため工事費を抑えられます。ただし、残っている設備が使える状態とは限りません。

  1. シャンプー台の年式:10年以上前のものは、給湯器や配管の劣化が進んでいることがあります。使えても数年で交換が必要になる場合があります。
  2. 造作譲渡料の内訳:何にいくらの値が付いているかを一覧で出してもらいます。使わない設備に費用を払うことになっていないか確認します。
  3. 前のテナントの退去理由:立地の問題で撤退したのか、移転なのか。同じ理由で自分も苦戦する可能性があります。
  4. 残置物の扱い:不要な設備の撤去費用を、どちらが負担するかを契約前に決めます。

造作譲渡料が200万円で「設備一式付き」とされていても、実際に使える設備が半分なら、実質的な費用は倍になります。内訳のない造作譲渡には合意しないほうが安全です。

スケルトンから作る場合は自由度が高い代わりに、内装工事費が坪あたり30万〜60万円程度かかるのが一般的です。坪単価の考え方は内装の坪単価の見方を参照してください。

保健所の基準で落ちやすい点

美容所を開設するには、美容師法にもとづき所在地を管轄する保健所へ開設届を提出し、検査を受ける必要があります。基準は自治体ごとに運用が異なる部分がありますが、共通して確認されるのは次のような点です。

作業室の床面積と、作業椅子の数に応じた広さ。器具の消毒設備と、消毒済み・未消毒の器具を分けて保管できる場所。従業者専用の洗い場。換気が適切に行えること。これらは内装工事の設計段階で織り込む必要があり、完成後に指摘されると手直しが発生します。

そのため、内装の設計図ができた時点で、一度保健所に持ち込んで確認してもらうことが勧められます。多くの自治体で事前相談を受け付けており、この段階なら図面の修正だけで済みます。検査の流れは保健所の検査にまとめています。

出典:厚生労働省「美容師法」および美容所の衛生措置等に関する基準、都市計画法にもとづく用途地域の制限(各市区町村の都市計画課)。制度や統計は改定されることがあるため、実際の判断では最新の公表資料を確認し、必要に応じて税理士・社会保険労務士など専門家にご相談ください。記事内の計算は自分で置いた前提による試算です。

契約前のチェックリスト

次の7つがすべて確認できるまで、契約書に押印しないでください。1つでも不明なまま進めると、想定外の費用が発生します。

  • 用途地域を市区町村で確認し、美容業を営めることを確かめた
  • 保健所に住所を伝え、開設の基準を確認した
  • 内装業者と現地を見て、給排水・電気・換気の概算を取った
  • 電気の契約アンペア数と、必要量を計算して比べた
  • 原状回復の範囲を契約書で確認した
  • 居抜きの場合、造作譲渡料の内訳を一覧でもらった
  • 看板の設置可否と、位置・サイズの制限を書面で確認した

物件が決まったあとの手続きは開業の手続き、資金計画は開業資金の考え方を続けて確認してください。

美容室 可能 物件|美容室での施術の様子

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この記事を書いた人

美容室オーナー・経営者向けメディア「vaulta」編集部。集客・リピート・融資・求人・DX・独立の実務情報を、一次情報を確認のうえ発信。お金に関わる記事は中小企業診断士の監修を受けています。編集責任者:ISOYAMA。

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