美容室の電話対応マニュアルで決めるべきは、言葉づかいではなく「聞く順番」です。順番が揃っていないと、担当者によって聞き漏らしが出て、当日のトラブルにつながります。
この記事では、電話が経営に与えている負荷、マニュアルに載せる5項目、そのまま使える例文、そして電話そのものを減らす設計までを解説します。
結論:美容室の電話対応マニュアルは「聞く順番」を固定する
電話は施術中に鳴ります。手を止めて出る以上、短く正確に終わることが最優先になります。
そこで効くのが順番の固定です。①希望日時 ②メニュー ③指名の有無 ④氏名と連絡先 ⑤所要時間の案内。この順で聞けば、誰が出ても同じ情報が揃います。
電話そのものを減らす設計は予約システムで電話予約を減らす経営戦略にまとめています。マニュアルはその過渡期を支える仕組みです。

言葉づかいを揃えることにも意味はありますが、優先度は下がります。多少ぎこちなくても情報が正確に揃っていれば、当日のトラブルは起きません。逆に丁寧でも聞き漏らしがあれば、来店時に困るのはお客様です。
電話が奪っている時間を数える
まず、電話にどれだけ時間を使っているかを把握してください。以下は計算方法を示すためのモデルで、実測値ではありません。
| 項目 | 数値 | 考え方 |
|---|---|---|
| 1日の着信 | 12件 | 予約・変更・問い合わせの合計 |
| 1件あたり | 3分 | 対応+台帳への転記 |
| 1日の合計 | 36分 | 12件 × 3分 |
| 月間(25日) | 15時間 | 施術に回せたはずの時間 |
上表は自店で試算するためのモデルです。実際の件数と時間に置き換えてください。
問題は時間だけではありません。施術中に電話に出れば、目の前のお客様の体験が途切れます。手を止める回数が多いほど、接客の質は下がります。
経済産業省は、中小企業を含む事業者のデジタル化の必要性について継続的に提言を行っており、業務プロセスの見直しがその中心に置かれています。電話対応も、見直しの対象になる業務のひとつです。
出典:経済産業省が公表するデジタルトランスフォーメーション関連の報告書。内容は公表年により異なります。
もうひとつ数えておきたいのが、取り逃がしです。施術中で出られなかった着信のうち、何件が予約につながらずに終わっているか。折り返しの記録がなければ、そのまま他店に流れている可能性があります。着信履歴と予約台帳を突き合わせれば、おおよその数は把握できます。
この2つが分かると、電話対応は「丁寧にやるべき業務」であると同時に「減らすべき業務」でもあることが数字で見えてきます。マニュアルの整備と、件数を減らす取り組みは同時に進めてください。
マニュアルに載せる5項目
- 聞く順番。上記の5つを番号付きで書きます。順番が命なので、いちばん上に置いてください。
- 名乗りと第一声。店名と担当者名を名乗る形を統一します。ここがばらつくと印象が変わります。
- 取り次げないときの言い方。担当者が施術中の場合の対応と、折り返しの目安時間を決めます。
- 予約の重複を防ぐ確認方法。台帳や予約システムのどこを見るかを具体的に書きます。
- 記録する場所。聞いた内容をどこに残すか。ここが決まっていないと、次の担当者に伝わりません。
とくに③と④が抜けているマニュアルが多く見られます。「担当が出られないとき」と「二重予約を防ぐ確認」は、実際にトラブルが起きる場面です。
⑤の記録場所については、紙のメモを禁止するくらいの明確さが必要です。メモに書いて予約システムへの転記を忘れると、そのまま二重予約になります。電話を切る前にシステムへ入力を終える、という順番まで決めておくと確実です。
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そのまま使える例文
-
受け方
「お電話ありがとうございます。〇〇(店名)の△△(名前)でございます。」施術中で待たせた場合は「お待たせいたしました」を先に添えます。
-
予約を受ける
「ご希望のお日にちとお時間をお伺いできますでしょうか」→「ご希望のメニューはお決まりでしょうか」→「ご指名はございますか」の順で進めます。
-
担当が出られない
「あいにく△△はただいま施術中でございます。◯時頃にこちらから折り返しでもよろしいでしょうか」と、時間を示して確認します。
-
締めくくり
「◯月◯日◯時、△△(メニュー)で承りました。お待ちしております」と復唱します。復唱が二重予約と聞き間違いを防ぎます。

電話で聞いた氏名・連絡先は個人データにあたります。メモ用紙に書いて放置しない、私物の端末に残さないなど、取り扱いのルールもマニュアルに含めてください。取得の目的をお伝えしたうえで記録することをおすすめします。
クレームの電話を受けた場合の初動も、1行だけ入れておいてください。詳しい対応は別の手順に譲るとしても、「まず最後まで聞く」「その場で原因を断定しない」の2点があるだけで、初動の失敗を防げます。詳細はクレーム対応の手順にまとめています。
運用に乗せる方法
マニュアルは作った時点では機能しません。次の3つで運用に乗せてください。
第一に、1枚に収める。複数ページのマニュアルは読まれません。A4片面に収まる分量にします。第二に、電話機の横に貼る。探さないと出てこない場所にあると使われません。第三に、月1回だけ読み合わせる。朝礼で5分、例文を声に出して確認します。
新しく入ったスタッフには、実際にロールプレイをしてもらうと定着が早くなります。聞く順番さえ守れれば、言葉づかいは徐々に慣れます。
読み合わせのときは、実際に起きた事例を1つ共有すると定着が早くなります。「先週こういう聞き漏らしがあった」という具体例は、マニュアルの文言より記憶に残ります。責める場にしないことだけ注意してください。
マニュアルは一度作って終わりではありません。運用してみると、想定していなかった問い合わせが出てきます。3か月に一度、追記が必要な項目がないかを確認する時間を取ってください。
電話そのものを減らす
マニュアルの整備と並行して、電話の件数を減らす取り組みを進めてください。対応が上手くなることより、鳴らないことのほうが効果は大きくなります。
減らせる着信は3種類あります。第一に、営業時間や定休日の問い合わせ。サイトと地図情報に正しく載せるだけで減ります。第二に、予約の変更やキャンセル。オンラインで完結できる経路を用意します。第三に、営業時間外の着信。自動応答と、翌営業日の対応方針を決めておきます。

予約経路をオンラインに寄せる進め方は予約システム乗り換え手順を参考にしてください。既存客への案内を丁寧に行えば、電話からの移行は進みます。
電話対応は、なくすべき業務ではありません。声で相談したい方は一定数います。ただし、減らせるものを減らして、本当に必要な電話に丁寧に対応できる状態を作ることが、結果として満足度につながります。
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