美容室の開業は儲かるのか|損益分岐点で判断する方法と、儲からない4つの型

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美容室の開業が儲かるかどうかは、業界の平均ではなく「自分の損益分岐点を超えられるか」で決まります。同じ立地・同じ規模でも、単価と来店周期で結果はまったく変わります。

この記事では、利益が残る構造の分解、儲からない店に共通する4つの型、開業前に出しておく数字、そして判断のタイミングを整理します。

目次

結論:美容室の開業が儲かるかは損益分岐点で決まる

「美容室は儲かるのか」という問いには、平均値では答えられません。答えは「固定費 ÷(客単価 − 材料費)で出る客数を、毎月確保できるか」です。この式に自分の数字を入れれば、儲かるかどうかは計算できます。

たとえば固定費35万円、客単価8,000円、材料費800円なら、損益分岐は約49人。月20日営業で1日2.5人です。ここを超えた分が、自分の取り分になります。

上記は計算方法を示すための仮の数値です。実際の金額は規模や地域によって異なります。

開業資金の組み立ては一人で開業する資金の考え方で扱っています。この記事は、開業後に利益が残るかの見立てに絞ります。

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利益が残る構造を分解する

売上ではなく、手元に残る額から逆算します。次の順で分解すると、どこを動かせば利益が増えるかが見えます。

階層 計算 動かし方
売上 客数 × 客単価 集客と単価設計
粗利 売上 − 材料費 使用量の管理と仕入れ
営業利益 粗利 − 固定費 家賃・人件費・集客費
手取り 営業利益 − 税・返済 借入設計と節税

儲からないと感じる店の多くは、売上ではなく固定費の階層で詰まっています。家賃が売上に対して重い、借入の返済が粗利を圧迫している、といった構造です。家賃の目安は家賃は売上の何割が目安かで扱っています。

もうひとつ見落とされやすいのが「手取り」の階層です。営業利益が出ていても、所得税・住民税と借入の返済を引くと手元に残らない、ということが起こります。とくに開業2〜3年目は、前年の所得に対する税負担が増える時期です。納税用の資金を売上と分けて管理していないと、この時期に詰まります。

儲からない店に共通する4つの型

  1. 固定費が売上規模に対して重い。広い物件、多い席数、過剰な設備。売上が落ちたときに一気に苦しくなります。
  2. 単価が低いまま客数で埋めようとしている。施術者の時間には上限があるため、客数だけでは頭打ちになります。
  3. 新規に頼り続けている。集客費が毎月かかり、粗利が薄いまま回ります。既存客の再来がないと積み上がりません。
  4. 数字を月次で見ていない。悪化に気づくのが数か月遅れ、手を打つ時間が失われます。

②は特に多い型です。1日8人×6,000円と、1日5人×9,000円では、後者のほうが売上も余裕も大きくなります。時間あたりの粗利で比べてください。

③については、新規1人あたりの獲得単価を出すと判断できます。掲載料と送客手数料、クーポンの値引き分を合計し、新規客数で割る。その額が初回の粗利を超えているなら、集めるほど赤字になっています。

④は仕組みの問題です。月末に30分、売上・客数・客単価・固定費・手元資金の5項目を同じ形式で記録するだけで足ります。3か月並べると、季節変動なのか実力の低下なのかが見分けられます。

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開業前に出しておく4つの数字

  1. 損益分岐の客数

    固定費 ÷(客単価 − 材料費)。これを1日あたりに換算すると、現実的かどうかが判断できます。

  2. 生活費を含めた必要客数

    (固定費+生活費)÷(客単価 − 材料費)。実際に必要なのはこちらの数字です。

  3. 移行してくる指名客の見込み

    把握できている人数の6〜7割で計算します。全員が来る前提では組み立てません。

  4. 黒字化までにかかる月数と、その間の不足額

    各月の不足を合計した額が、開業費とは別に必要な運転資金です。

③と④が甘いと、開業から3〜6か月で資金が苦しくなります。移ってきた顧客の来店が一巡する時期に、新規が積み上がっているかが分かれ目です。

④の運転資金は、計画どおりに改善した場合の額です。実際には遅れることのほうが多いため、1.2〜1.5倍を見ておくと選択肢が狭まりません。余った分は返済に回せばよく、足りないときのような窮屈さは生じません。

公表データで確認できること

開業費用の分布は、日本政策金融公庫総合研究所の「新規開業実態調査」で公表されています。業種横断のデータですが、自分の計画が極端に外れていないかの確認に使えます。

また、美容業を含む生活衛生関係営業については、同公庫が業種別の経営指標や景気動向を公表しており、費用構成のおおよその姿を確認できます。

出典:日本政策金融公庫総合研究所「新規開業実態調査」、日本政策金融公庫「生活衛生関係営業の景気動向等調査」。いずれも公表年により数値が異なります。

出典が示されていない「美容室の平均年収」「開業◯年で年商◯円」といった数字を、事業計画や融資の資料に使わないでください。金融機関の面談では根拠を尋ねられます。自店の計算式で説明するほうが確実です。

平均値と比べて一喜一憂する必要もありません。立地、客層、営業時間、施術者の数が違えば適正な数字も変わります。使いどころは「極端にずれていないかの確認」までで、ずれているならその理由を説明できるかを考えます。

開業形態で儲かり方が変わる

同じ技術・同じ客数でも、始め方によって手元に残る額は変わります。固定費の重さが違うためです。

面貸しやシェアサロンは席料だけで済むため、客数が少ない段階でも赤字になりにくい構造です。ただし稼働を増やしても席数の制約があり、伸びしろには上限があります。収支の見方は面貸し料金の相場の見方で扱っています。

自店舗は固定費が重い一方、席数と営業時間を自分で決められるため、軌道に乗れば伸びしろが大きくなります。手持ちの資金と指名客の数で、どちらから始めるかを決めてください。

同じ立地でも、単価8,000円で周期2か月の店と、単価6,000円で周期3か月の店では、年間の売上が倍近く変わります。儲かるかどうかは業種ではなく、この2つの設計で決まります。

3つの開業形態で手残りを試算する

同じ売上でも、席数と人の抱え方で手元に残る額は変わります。ここでは月商150万円を共通の前提にし、
形態だけを変えた試算を並べます。数字は仮の設定で、実際の物件・地域では変動します。

項目 1人店(10坪) 2人店(16坪) 1人+面貸し1席
施術売上 150万円 150万円 120万円
席料収入 0円 0円 12万円
材料費(施術売上の10%) 15万円 15万円 12万円
家賃 15万円 24万円 15万円
人件費(社会保険料含む) 0円 32万円 0円
水道光熱・通信・広告 12万円 16万円 12万円
借入返済(元金) 8万円 12万円 8万円
オーナーの手残り 100万円 51万円 85万円

2人店は売上が同じなら手残りが減ります。人を入れて有利になるのは、
その人が自分の人件費を超える売上を作れたときだけです。
つまり増員の判断は「忙しいかどうか」ではなく、増員後の売上見込みで決める方が安全です。

面貸しを1席だけ併用する形は、自分の施術売上が30万円下がっても席料12万円が入るため、
1人店に近い手残りを保てる場合があります。ただし席の稼働は借り手の集客力に左右されるため、
席料収入を固定収入として計画に組み込むのは避けたほうが無難です。

損益分岐点を月商で出す3行の計算

  1. 固定費を足す

    家賃15万円+人件費0円+水道光熱等12万円+返済8万円=35万円。

  2. 限界利益率を出す

    材料費が売上の10%なら、限界利益率は90%(1-0.10)。

  3. 割る

    35万円÷0.9=約39万円。これがこの店の月商の損益分岐点です。

この39万円という水準は、単価8,000円なら月49人、1日あたり約2人です。
開業前にこの人数を「集められる根拠があるか」で判断すると、感覚に頼らずに済みます。
なお材料費率が15%に上がると分岐点は約41万円へ動くため、原価率の管理も同時に効いてきます。

出典:日本政策金融公庫総合研究所「新規開業実態調査」、厚生労働省「衛生行政報告例」(美容所数・美容師数の年次統計)。制度や統計は改定されることがあるため、実際の判断では最新の公表資料と、必要に応じて税理士・社会保険労務士など専門家の確認を受けてください。

判断のチェックリスト

「儲かるか」を調べる前に、次の6つを埋めてください。答えは自分の数字から出ます。

  1. 月の固定費を、家賃から返済まで全部合計した。
  2. 客単価と1人あたり材料費を、いまの実績から置いた。
  3. 損益分岐の客数を1日あたりに換算した。
  4. 生活費を含めた必要客数を出した。
  5. 移行してくる指名客を、控えめな前提で見積もった。
  6. 黒字化までの不足額を合計し、運転資金として別に確保した。

迷ったときは、固定費の軽い形態で始めて数字が読めるようになってから移る、という順番も選べます。実績が出てからのほうが、借入の条件も整えやすくなります。

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③が「1日2〜3人」なら現実的、「1日8人」なら計画を見直す段階です。この判断は、外部の平均値では決してできません。

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この記事を書いた人

美容室オーナー・経営者向けメディア「vaulta」編集部。集客・リピート・融資・求人・DX・独立の実務情報を、一次情報を確認のうえ発信。お金に関わる記事は中小企業診断士の監修を受けています。編集責任者:ISOYAMA。

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