美容室のパッチテストのやり方と記録|ヘアカラーの48時間ルール・毎回必要な理由・断られた時の対応とトラブル予防

ヘアカラー(酸化染毛剤)は、使用説明書に従い、染める48時間前に毎回パッチテスト(皮膚アレルギー試験)を行うことが求められています。美容室では施術日の2日前に来店してもらってテスト液を塗り、約30分後と48時間後の結果を確認・記録してから染めます。

パッチテストが必要な理由、製品の使用上の注意に基づく手順、毎回必要か、来店前に行う運用とLINEの例文、お客様に断られた場合の対応、記録の残し方、アレルギーの既往がある場合の対応を順にまとめます(2026年10月時点の情報です)。

目次

結論:美容室のパッチテスト運用の早見表

パッチテストは、「対象の製品」「タイミング」「異常時の対応」「記録」の4点を店のルールとして決め、スタッフ全員が同じ手順で行うことが基本です。

論点 ルール 根拠
対象の製品 酸化染毛剤(ヘアカラー)、非酸化染毛剤、ヘナを含む染毛料、システアミン配合のパーマ剤など、使用説明書でパッチテストが指示された製品 日本ヘアカラー工業会、日本パーマネントウェーブ液工業組合
タイミング 施術の48時間前。同じ製品・同じ色番でも毎回 製品の使用上の注意
方法 使う薬剤を指定の割合で混ぜ、腕の内側に10円硬貨大に薄く塗って自然乾燥。約30分後と48時間後に観察 日本ヘアカラー工業会
異常が出たとき こすらずにすぐ洗い流し、その製品では施術しない 日本ヘアカラー工業会
過去にかぶれた方 酸化染毛剤は使わず、パッチテストも行わない。染毛料などの代替を提案する 国民生活センター、厚生労働省の通知
過硫酸塩配合のブリーチ パッチテストはできない。過去にかぶれた方には使わない 日本ヘアカラー工業会
記録 実施日時・製品・結果・確認者をカルテに残す トラブル時に手順どおり行ったことを示す根拠になる

美容室で使う業務用の薬剤にも、使用説明書にパッチテストの指示があります。混合の割合や細かな手順は製品ごとに違うため、表の内容より各製品の説明書を優先してください。

パッチテストとは — ヘアカラーのアレルギーを施術前に確かめる試験

パッチテスト(皮膚アレルギー試験)とは、実際に使う薬剤を少量肌に塗り、かぶれなどの反応が出ないかを施術の前に確かめる試験です。ヘアカラーの使用説明書では、染める48時間前に毎回行うよう求められています。

必要とされる理由は、酸化染毛剤の性質にあります。消費者安全調査委員会の報告書(2015年10月23日)は、酸化染毛剤は酸化染料を主成分に含むため他のヘアカラーリング剤よりアレルギーを起こしやすいこと、これまで異常がなかった人も繰り返し使ううちに発症しうること、一度発症すると使うたびに重くなり全身症状が出ることもあることを指摘しています。治療に30日以上かかった例もあり、同報告書は事故情報データバンクに毛染めによる皮膚障害が毎年度200件程度登録されているとしています。

国民生活センターも、酸化染毛剤ではアナフィラキシーが起こることもあるとして、毎回のパッチテストを呼びかけています(2025年1月)。報告書を受けて厚生労働省は都道府県などに通知を出し、理容師・美容師に次の3点を求めています。

  1. 知識を身につける:酸化染毛剤とアレルギーの特性、対応策を確実に理解する。
  2. 施術時に伝え、確認する:会話を通じて特性を伝え、過去に毛染めで異常を感じた経験や当日の肌の状態を確認して、使用に適するかを判断する。
  3. 適さない人には代替案を示す:リスクを丁寧に説明し、染毛料など酸化染毛剤以外のヘアカラーリング剤を提案して、酸化染毛剤は使わない。

パッチテストのやり方 — 使用説明書に沿った6つの手順

手順は、使う薬剤を指定の割合で混ぜ、腕の内側に10円硬貨大に薄く塗って自然乾燥させ、約30分後と48時間後の2回観察するのが基本です。日本ヘアカラー工業会の案内に沿うと、次の流れになります。

  1. 塗る前に確認する

    過去にヘアカラーでかぶれたことがないか、染毛中や直後に気分が悪くなったことがないか、当日の体調や皮膚の状態を聞きます。過去にかぶれたことがある方には、テストも行いません。

  2. テスト液をつくる

    施術に使う第1剤と第2剤を、使用説明書に指定された割合で少量取り出し、新しい綿棒で混ぜます。混合の割合は製品によって異なります。

  3. 腕の内側に塗る

    10円硬貨大に薄く塗り、自然に乾かします。30分ほどたっても乾かない場合は液のつけすぎなので、こすらず軽くふき取ります。絆創膏などで覆いません。

  4. 約30分後に観察する

    塗ってから約30分後に、赤み・かゆみ・ぶつぶつなどが出ていないかを確認します。店内で待ってもらうか、お客様自身に確認してもらいます。

  5. 48時間そのままにしてもらう

    テスト中は入浴やシャワーを控え、やむを得ない場合は塗った部分を濡らさないよう伝えます。途中で発疹・発赤・かゆみ・水疱・刺激などが出たら、こすらずにすぐ洗い流してもらいます。

  6. 48時間後に判定し、記録する

    異常がなければ施術に進みます。異常があった場合は、その製品では染めません。結果はカルテに記録します。

絆創膏で覆わない理由について、消費者安全調査委員会の報告書は、覆うことで感作を促したり、過度なアレルギー反応を起こしたりするおそれがあるためと説明しています。塗る部位はお客様が自分で見やすい腕の内側にそろえておくと、自宅での確認がしやすくなります。

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パッチテストは毎回必要か — 常連のお客様でも省略しない

毎回必要です。アレルギー反応は、何年も問題なく染めていた人にも突然起こることがあるため、日本ヘアカラー工業会は同じメーカー・同じ色番の製品でも毎回行うよう案内しています。省略したくなる場面ごとの扱いは次のとおりです。

省略したくなる場面 扱い
前回も問題がなかった常連のお客様 毎回必要
同じメーカー・同じ色番を使う 毎回必要
根元だけのリタッチ、白髪ぼかし 酸化染毛剤を使うなら必要
ヘアマニキュア・カラートリートメント(化粧品の染毛料) ヘナを含む製品は毎回必要。メーカーが指示する製品もあるため説明書を確認する
過硫酸塩を配合したブリーチ(脱色剤・脱染剤) パッチテストはできない。過去にかぶれた方には使わない
システアミン配合のパーマ剤 毎回必要(日本パーマネントウェーブ液工業組合)

ヘナを使う場合は、もう1つ確認が要ります。国民生活センターは2026年5月20日、美容所でかつら用のヘナ製品が頭髪に使われ、含まれていた酸化染料でアナフィラキシーショックを起こした事例を公表しました。頭髪用の医薬部外品または化粧品として販売されている製品かを、仕入れの段階で確認してください。薬剤の保管や期限の管理はカラー剤・薬剤の管理と廃棄で整理しています。

来店前にパッチテストを行う運用 — 予約と連絡の組み方

48時間を確保するには、カラーの予約を受けた時点で施術の2日前に「テスト来店」の枠を入れ、結果はLINEで写真と一緒に報告してもらう流れにすると、運用が回りやすくなります。

タイミング やること 担当
カラーの予約を受けたとき テスト来店の日時を決める(施術の2日前の同じ時間帯が目安) 受付
テスト来店(数分〜10分程度) 確認項目を聞き、テスト液を塗る。お客様のLINEに注意事項を送る 施術者
塗布から約30分後 お客様が腕を確認し、LINEで「異常なし」か写真を送る お客様
48時間後 腕の写真をLINEで送ってもらい、店が確認して記録する 施術者
施術当日 頭皮の傷や体調を改めて確認してから施術する 施術者

テスト来店のあとに送るLINEは、次のような文面にしておくと、誰が担当しても同じ説明ができます。

パッチテスト後に送るLINEの例文

  • 本日はパッチテストにお越しいただき、ありがとうございます。
  • 塗った部分は絆創膏で覆わず、48時間そのままにしてください。入浴やシャワーは控え、やむを得ない場合は塗った部分を濡らさないようにお願いします。
  • 約30分後と、○日○時ごろ(48時間後)に、塗った部分の写真をこのトークに送ってください。
  • 途中でかゆみ・赤み・ぶつぶつなどが出たら、こすらずにすぐ洗い流し、ご連絡ください。その場合、ご予約のカラーは別の方法をご提案します。

テスト来店を無料にするか有料にするかは、店が決められます。有料にする場合は、料金表に税込の金額と、カラー代に充てるかどうかを書いておきます。確認項目の聞き漏れを防ぐには、カウンセリングシートの作り方を参考に、ヘアカラーの経験とかぶれの有無を聞く欄を設けておきます。

お客様にパッチテストを断られた場合の対応

断られたら、リスクと必要性を説明したうえで、酸化染毛剤を使わない方法か、日を改めての施術を提案します。「テストなしで施術して何かあっても店は責任を負わない」という同意書をとっても、店の責任はなくなりません。

消費者契約法第8条は、事業者の損害賠償責任を全部免除する条項や、故意・重大な過失による責任を一部免除する条項を無効としています。さらに、使用説明書の指示に反してテストを省いた施術でかぶれが起きれば、店が注意を尽くしていなかったと評価される材料になりかねません。断られたときの伝え方は、言い分ごとに用意しておきます。

  1. 「今まで大丈夫だった」:「何年も問題がなかった方にも突然出ることがあるので、薬剤の説明書で毎回のテストが決められています」と伝え、日を改めたカラーを提案します。
  2. 「時間がない」:「塗るのは数分で、あとは30分後と2日後に腕を見ていただくだけです」と伝え、テスト来店の日時をその場で一緒に決めます。
  3. 「今日どうしても染めたい」:ヘアマニキュアなど酸化染料を含まないカラー(ヘナを含む製品を除く)を提案します。ヘアマニキュアはアレルギーが少ないとされています。
  4. 「家で市販品のテストをした」:「お店で使う薬剤とは製品が違うため、お店の薬剤で確かめる必要があります」と伝えます。

それでも酸化染毛剤での当日施術を強く求められた場合は、施術を見合わせることを店のルールとして決めておきます。断る基準があいまいだと、スタッフが押し切られてしまいます。

パッチテストの記録の残し方 — カルテに残す8項目

記録は、「いつ・どの薬剤で・誰が塗り・どう確認し・結果はどうだったか」が後から分かるように、カルテに残します。トラブルが起きたときに、手順どおりに行ったことを説明する根拠になります。

項目 記入例
実施日時 2026年10月14日 14:10
使用した製品 メーカー名・製品名・色番・ロット番号、混合の割合
塗布した部位 左腕の内側
約30分後の結果 異常なし(お客様がLINEで報告、14:45)
48時間後の結果 異常なし(写真を受領、10月16日 14:20)
確認したスタッフ 担当者名
事前確認の内容 過去のかぶれなし、当日の体調に問題なし
異常があった場合 症状・時刻・洗い流した時刻・受診を案内したか

かぶれの経験や体調などの情報は、病歴として個人情報保護法の要配慮個人情報に当たる場合があり、取得には本人の同意が必要です(第20条第2項)。カウンセリングシートやLINEのフォームに利用目的と同意欄を設けておきます。文面は個人情報の同意文例を、保管期間の考え方はカルテの保管期間を参考にしてください。

アレルギーの既往がある場合と、施術中に異常が出た場合の対応

過去にヘアカラーでかぶれたことがある方には、酸化染毛剤を使わず、パッチテストも行いません。施術中に異常が出たら、すぐに洗い流して医療機関の受診を案内します。

状況 対応
過去にヘアカラーでかぶれた(かゆみ・赤み・痛み) 酸化染毛剤は使わない。製品・色番・メーカーを変えても避けられない。ヘアマニキュアや酸化染料を含まないカラーを提案する
パッチテストで異常が出た 別の日に再テストして異常がなくても、ヘアカラーはしない
酸化染料などにアレルギーの経験がある 自分でパッチテストをする前に、医師に相談するよう勧める
過硫酸塩配合のブリーチでかぶれた メーカーを問わず、過硫酸塩配合のブリーチを使わない
施術中にしみる・チクチクする すぐに薬剤をよく洗い流す
息苦しさ・めまい・じんましんが出た すぐに洗い流し、受診を案内する。呼吸が苦しいなど症状が重ければ救急車を呼ぶ
薬剤が目に入った こすらず、水かぬるま湯で15分以上洗い流し、眼科の受診を案内する

アレルギー性のかぶれは、多くの場合お客様が帰宅した後に出ます。お見送りのときに「帰宅後にかゆみや赤みが出たらご連絡ください」と伝え、連絡を受けたら事故として記録します。受診の費用や賠償の考え方は施術事故の対応にまとめています。

スタッフ自身のかぶれにも注意が必要です。日本ヘアカラー工業会は、施術やすすぎなどヘアカラーに直接触れる作業では必ず手袋を着用するよう求めています。素手でのカラー塗布やすすぎをしないことを店のルールにし、手荒れが続くスタッフには皮膚科の受診を勧めます。

パッチテストの運用を、次の8項目で点検してください。

  • 酸化染毛剤を使うカラーは、常連のお客様でも毎回テストしている
  • テスト液は施術に使う薬剤を、説明書の割合で混ぜてつくっている
  • 腕の内側に10円硬貨大に塗り、絆創膏で覆わないよう伝えている
  • 約30分後と48時間後の2回、結果を確認している
  • カラーの予約を受けるときに、テスト来店の日時も決めている
  • 結果・製品・ロット・確認者をカルテに記録している
  • 過去にかぶれた方には酸化染毛剤を使わず、代替を提案している
  • ヘナ製品が頭髪用として販売されているものかを、仕入れ時に確認している

よくある質問

パッチテストは施術の何日前に行えばよいですか?

染める48時間前(2日前)です。テスト液を塗ってから約30分後と48時間後の2回観察し、異常がなければ施術に進みます。

パッチテストで異常が出たお客様に、別の日に再テストして染めてもよいですか?

いいえ。一度でも異常が出た場合は、再テストで異常がなくてもヘアカラーはしないよう日本ヘアカラー工業会は案内しています。ヘアマニキュアなど酸化染料を含まないカラーを提案します。

ヘアマニキュアにもパッチテストは必要ですか?

ヘナを含む製品は毎回必要です。それ以外の製品でも、メーカーが使用説明書でパッチテストを指示している場合があるため、製品ごとに確認します。

ブリーチの前にもパッチテストをすべきですか?

過硫酸塩を配合したブリーチは、パッチテストができません。過去に過硫酸塩配合のブリーチでかぶれたことがある方には、メーカーを問わず使わないようにします。

パッチテストを塗った部分を絆創膏で覆ってもよいですか?

覆いません。覆うことで感作を促したり、過度なアレルギー反応を起こしたりするおそれがあるとされているため、自然に乾かしてそのままにしてもらいます。

同意書があれば、パッチテストなしでヘアカラーをしてもよいですか?

同意書があっても店の責任はなくなりません。消費者契約法第8条により、事業者の損害賠償責任を全部免除する条項は無効です。テストを受けていただくか、酸化染毛剤を使わない方法を提案します。

出典:消費者安全調査委員会「消費者安全法第23条第1項の規定に基づく事故等原因調査報告書 毛染めによる皮膚障害」(2015年10月23日)、厚生労働省「毛染めによる皮膚障害の周知等について」(平成27年10月23日)、国民生活センター「毛染めによるアレルギーに注意 アナフィラキシーが起きることも」(2025年1月30日)・「酸化染料を含むヘナ製品によるアナフィラキシーが発生」(2026年5月20日)、日本ヘアカラー工業会「皮膚アレルギー試験(パッチテスト)」「理美容師の皆さまへのお願い」「Q&A(理美容師の皆さまへ)」、日本パーマネントウェーブ液工業組合「システアミン配合製品の皮膚アレルギー試験方法について」、消費者契約法第8条、個人情報の保護に関する法律第20条第2項(消費者庁「毛染めによる皮膚障害」、国民生活センター「酸化染料を含むヘナ製品によるアナフィラキシーが発生」)。症状の判断は医師に、個別の法的判断は弁護士に確認してください。

パッチテストの運用は、カラーの予約を受けるときに「テスト来店」の日時も一緒に決めることから始めてください。予約の段階で組み込めば、当日になってテストができていないという事態を防げます。

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この記事を書いた人

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