美容室の料金表示のルール|総額表示の義務・「〜」表示・追加料金の書き方と景品表示法

美容室のメニュー表・ホームページ・予約サイトに出す料金は、消費税の課税事業者なら税込の総額で表示する義務があります(消費税法第63条)。「〜」表示や追加料金は、条件と金額を価格のすぐ近くに書かないと、景品表示法の有利誤認にあたるおそれがあります。

税込表示のOKとNGの書き方、「カット5,500円〜」の注意点、ロング料金や指名料の書き方、二重価格や予約サイトとのずれで問題になる例を、表示例の表で整理します(2026年10月時点の情報です)。

目次

結論:美容室の料金表示で守る6つのルール

料金表示で押さえるのは、「税込で見せる」「条件を価格の近くに書く」「根拠のない比較をしない」の3点です。根拠になる法律は、消費税法と景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)の2つです。

論点 ルール 根拠
① 税込表示 お客様向けにあらかじめ示す料金は税込の総額で表示する。税抜価格の併記は可 消費税法第63条
② 対象の媒体 店頭のメニュー表、ホームページ、Instagram、LINE配信、チラシ、予約サイトなど媒体を問わない。口頭は対象外 国税庁タックスアンサーNo.6902
③ 「〜」表示 料金が上がる条件(長さ・毛量・薬剤など)を同じ場所に書き、表示した最低価格で実際に受けられる設定にする 景品表示法第5条第2号
④ 追加料金 ロング料金・指名料・オプションを税込の金額で一覧にし、施術前に合計額を伝える 景品表示法第5条第2号
⑤ 割引・二重価格 「通常価格」と比べるのは、セール開始前8週間の過半の期間その価格で販売した実績がある場合だけ 消費者庁「価格表示ガイドライン」
⑥ 媒体間の一致 予約サイト・ホームページ・店頭の料金をそろえ、改定するときは全媒体を同じ日に更新する 景品表示法第5条第2号

総額表示の義務には、消費税法上の罰則はありません。一方で、料金が実際より安く見える表示は景品表示法の問題になり、消費者庁や都道府県から措置命令(同法第7条)を受けることがあります。「お客様が会計で払う額が、見た瞬間に分かるか」で料金表を点検するのが近道です。

総額表示とは — 税込価格が一目で分かればOK、「+税」だけはNG

総額表示とは、消費者に価格をあらかじめ示すときに、消費税額を含めた支払総額(税込価格)を表示することです。2021年4月1日に税抜表示を認めていた特例が終わり、現在は税抜価格だけの表示は認められていません。

国税庁が示している表示例を美容室のカット料金に当てはめると、次のようになります。税込価格がはっきり読み取れれば、税抜価格を一緒に書いても構いません。

表示例 判定 理由
カット 5,500円 OK 税込価格だけを書く最もシンプルな形
カット 5,500円(税込) OK 税込であることが明示されている
カット 5,500円(税抜価格5,000円) OK 税込を主に、税抜を補足で併記
カット 5,000円(税込価格5,500円) OK(注意) 税込価格が書かれていれば可。ただし税抜を極端に大きくして税込を小さくすると誤認を招く
カット 5,000円+税 NG 税込でいくら払うかが書かれていない
カット 5,000円(税別) NG 同上
欄外に「表示価格はすべて税抜です」 NG 個々の料金から税込額が分からない

対象は、店がお客様に向けて「あらかじめ」示す価格すべてです。店頭のメニュー表や店販の値札、ホームページ、Googleビジネスプロフィールのサービス欄、予約サイト、Instagramの投稿、LINEのクーポン、ショップカードやチラシまで含まれます。財務省は、価格を表示していない場合にまで表示を強制するものではないとしています。

税抜で料金を決めている店は、標準税率10%で直した額を書きます。税抜5,000円なら5,500円、8,000円なら8,800円、12,000円なら13,200円です。円未満の端数が出る場合の処理(切り捨て・四捨五入など)は店が決めて構いませんが、メニュー表は税込で区切りのよい額を先に決めるほうが見やすく、お会計もスムーズです。

免税事業者の美容室はどう書くか

消費税の納税が免除されている免税事業者には、消費税法第63条の総額表示義務はかかりません。ただし財務省は、免税事業者が税抜価格を示して別に消費税相当額を受け取ることは制度上予定されていないとし、消費者が支払うべき価格を表示するのが適正としています。開業したばかりの1人サロンでも、「5,500円」のように支払額そのものを書き、「+税」は付けません。

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「カット5,500円〜」の「〜」表示は使ってよいか — 条件を横に書けば使える

「〜」や「から」の表示自体は禁止されていません。ただし、表示した最低価格で受けられる人がほとんどいない場合や、何で金額が上がるのかが書かれていない場合は、実際より安く見せる表示として景品表示法第5条第2号の有利誤認表示にあたるおそれがあります。

消費者庁の「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(価格表示ガイドライン)は、価格がどの範囲のサービスに、どんな条件で適用されるのかを正確に示すことを求めています。美容室なら、髪の長さ・毛量・薬剤のグレード・担当者のランクで料金が変わるとき、その区分を「〜」のすぐ横に書くということです。

表示例 判定 直し方
「カラー 6,600円〜」とだけ書き、実際はほとんどのお客様が9,000円以上になる NG 長さ別に並べる(ショート6,600円/ミディアム7,700円/ロング8,800円)
「縮毛矯正 13,200円〜(ショート・前髪なしの場合)」と条件を同じ行に書く OK 条件は価格と同じ大きさ・同じ行に置く
「カット+カラー 8,800円〜」と書き、ロング料金は別ページにだけ載せている 要改善 追加料金を同じ画面・同じ表に入れる
「トリートメント 3,300円〜11,000円」と幅で示す OK 何で金額が変わるか(工程数・薬剤)を一言添える
「指名料別」とだけ書く 要改善 「指名料 550円(スタイリスト)/1,100円(店長)」と金額まで書く
「〜」の条件をページ最下部に小さな文字でまとめている NG 注記は強調した価格のそばに、読める大きさで置く

最後の例は「打消し表示」の問題です。消費者庁の「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」(平成30年6月)は、例外条件を伝える注記は強調表示に近い場所に、文字の大きさのバランスに配慮して置くべきだとしています。スマートフォンで見る予約サイトやInstagramでは、画面の下にまとめた注記は読まれない前提で配置してください。

ロング料金・指名料・追加メニューの料金はどう書くか

追加料金は、「何で」「いくら(税込)」「いつ確定するか」をメニュー表の同じ欄に書き、施術前のカウンセリングで合計額を口頭でも伝えます。口頭の説明は総額表示義務の対象外ですが、会計時の「聞いていない」を防ぐ最も確実な方法です。

追加料金の記載テンプレート(金額は記入例です)

  • ロング料金:肩下〜胸上 +1,100円/胸下 +2,200円(税込)。カウンセリングで確定し、施術前にお伝えします
  • 毛量調整料:毛量が特に多い場合 +1,100円(税込)。必要な場合は施術前にご相談します
  • 指名料:スタイリスト 550円/店長 1,100円(税込)
  • 薬剤の変更:オーガニックカラーへの変更 +1,650円(税込)
  • 当日の追加メニュー:ご提案の時点で金額をお伝えし、ご了承いただいてから施術します

このテンプレートの要点は、追加がかかる基準を「肩下」「胸下」のようにお客様が自分で判断できる言葉で書くことです。「長い方は別料金」では、どこからが長いのか分かりません。指名料の金額設定やスタッフへの配分は指名料の設定で詳しく整理しています。

施術前に合計額を伝える一言

カウンセリングの最後に「本日はカラーとトリートメントで、ロング料金を含めて合計13,200円(税込)になります。この内容で進めてよろしいですか」と確認します。提案で追加メニューが増えたときも、施術に入る前に合計額を言い直します。料金を改定した直後は特に認識違いが起きやすいので、事前の告知は値上げのお知らせ文例を使って全媒体で行ってください。

有利誤認になりやすい料金表示 — 二重価格・「初回半額」・「地域最安」

美容室の料金表示で問題になりやすいのは、比べる相手の価格に根拠がない表示です。「通常価格」「定価」と並べて安さを強調する二重価格表示は、比較する価格が実際に一定期間使われていなければ不当表示のおそれがあります。

価格表示ガイドラインは、過去の販売価格を比較に使う場合、セール開始前8週間(8週間未満ならその期間)のうち過半の期間その価格で販売していた実績が必要としています。ただし、その価格で販売した期間が通算2週間未満の場合や、最後に販売した日から2週間以上たっている場合は除かれます。

表示 問題になる理由 直し方
「通常カラー8,800円→今月5,500円」だが、実際は1年中5,500円で受けている 8,800円で販売した実績がない 二重価格をやめ「カラー5,500円」と書く
オープン直前に正規料金を引き上げ、「初回半額」と表示した 比較する価格に最近の販売実績がない 実際に販売している正規料金と比べる
「地域最安値」「どこよりも安い」 周辺店舗の価格を正確に調べた根拠がない 調査の範囲と時点を示せないなら使わない
「先着10名様限定」と書いたが、実際は枠の上限を決めていない、または予約をほぼ受けられない 限定の内容が実態と合わない 実際の枠数・期間・対象者を書く
「今月だけ」「期間限定」を毎月くり返している 期間限定の実態がない 期間を明記し、終了後は本当に元の料金に戻す

限定表示については、消費者庁の告示「おとり広告に関する表示」(平成5年公正取引委員会告示第17号)が、提供できる量や期間、対象が限られているのにその内容を明りょうに書かない表示を不当表示としています。新規向けの割引を出すときの割引額や条件の決め方は新規クーポンの作り方にまとめています。

景品表示法に違反すると、表示の差止めや再発防止を命じる措置命令(同法第7条)が出され、事業者名が公表されます。優良誤認・有利誤認には、対象となった売上額の3%の課徴金(同法第8条。算定額が150万円未満なら課されない)に加え、2024年10月施行の改正で100万円以下の罰金を科す規定(同法第48条)も設けられました。小さな店でも、予約サイトに載せた表示は全国のお客様の目に触れます。

予約サイト・ホームページ・店頭で料金がずれていたらどうなるか

媒体ごとに料金が違うと、お客様は一番安い表示を見て来店し、会計時に差額をめぐるトラブルになります。予約サイトの掲載内容も店が作った表示なので、古い料金が残っていれば店の表示の問題として扱われます。

媒体ごとにクーポンの内容が違うこと自体は問題ありません。「予約サイトからのご予約限定」「LINE友だち限定」のように、どこから予約した人が対象かを価格の横に書けば足ります。問題になるのは、正規料金そのものが媒体ごとに違う状態です。

  1. 料金のマスター表を1枚つくる

    メニュー名、税抜・税込価格、追加料金、適用開始日を1つの表にまとめます。どの媒体もこの表から書き写す運用にします。

  2. 料金を載せている媒体を全部書き出す

    店頭メニュー、ホームページ、Googleビジネスプロフィール、予約サイト、Instagramのハイライトや固定投稿、LINEのリッチメニューやクーポン、ショップカード、チラシの残部まで洗い出します。

  3. 適用開始日の前日までに全部書き換える

    改定前にすでに予約を受けたお客様を旧料金で受けるのか、新料金にするのかも決め、予約サイトの注意書きに反映します。

  4. 1週間後にスマートフォンで全媒体を見直す

    画像で作ったメニュー表やハイライトは更新漏れが起きやすい部分です。お客様と同じ画面で確認します。

値上げを伴う改定の進め方や既存のお客様への伝え方は、価格改定と値上げの進め方で詳しく解説しています。

料金表示を公開する前に、次の8項目を確認してください。

  • すべての施術メニュー・オプション・店販商品の価格が税込で読み取れる
  • 「+税」「税別」だけの表示がどこにも残っていない
  • 税抜を併記する場合、税込価格を同じ大きさ以上で書いている
  • 「〜」表示の横に、金額が上がる条件と上がり幅が書いてある
  • ロング料金・指名料などの追加料金を金額付きで同じ欄に書いている
  • 「通常価格」と比べる表示は、セール前8週間の過半その価格で販売した実績がある
  • 「限定」「先着」の表示が、実際の枠数・期間・対象者と一致している
  • 予約サイト・ホームページ・店頭・LINEの正規料金が同じになっている

よくある質問

免税事業者の美容室でも税込で表示する必要がありますか?

法律上の総額表示義務はありませんが、支払額そのものを表示するのが適正です。財務省は、免税事業者が税抜価格を示して別に消費税相当額を受け取ることは制度上予定されていないとしており、「+税」の表示は避けてください。

総額表示を守らないと罰則はありますか?

消費税法には総額表示義務違反の罰則はありません。ただし税抜価格を目立たせて実際より安く見せる表示は、景品表示法の有利誤認にあたるおそれがあり、こちらは措置命令や罰則の対象になります。

口頭で伝える料金も税込にしなければいけませんか?

口頭で伝える価格は総額表示義務の対象外です。ただし会計時の認識違いを防ぐため、カウンセリングでは税込の合計額で伝えるのが安全です。

税込にすると端数が出る料金はどう表示すればよいですか?

端数の処理方法は店が決めて構いません。1円単位の税込価格を書くこともできますが、税込5,000円のように区切りのよい税込価格を先に決め直すほうが、メニュー表もお会計も分かりやすくなります。

学割や平日割など、お客様によって料金が違う表示はどう書けばよいですか?

対象者と条件を価格のすぐ近くに書けば問題ありません。「学割カット3,300円(高校生まで・学生証の提示が必要)」のように誰がいつ使えるかを一文で示し、通常料金も同じ表に載せます。

出典:消費税法第63条、国税庁タックスアンサーNo.6902「『総額表示』の義務付け」(国税庁)、財務省「消費税『総額表示方式』の概要」、不当景品類及び不当表示防止法第5条・第7条・第8条・第48条、消費者庁「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(消費者庁「二重価格表示」)、消費者庁「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」(平成30年6月)、「おとり広告に関する表示」(平成5年公正取引委員会告示第17号)。表示の個別の判断は消費者庁・都道府県の景品表示法担当窓口か弁護士に、税の扱いは税理士か税務署に確認してください。

料金表示は「税込で、条件は近くに、比べる価格には根拠を」の3点です。まず全媒体の料金を1枚のマスター表にまとめ、「+税」や条件の書かれていない「〜」が残っていないかを確認してください。メニュー表全体の見せ方はメニュー表の作り方、広告表現の線引きは広告・SNSで使えない表現を参照してください。

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この記事を書いた人

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