美容室の開業で入るべき保険|賠償・休業・火災の考え方と選び方

開業前の美容室の店内

美容室の開業で優先すべき保険は、まず「他人に損害を与えたとき」に備えるものです。自分の設備が壊れる損害より、施術トラブルやお客様のケガのほうが、金額も影響も読めません。

この記事では、検討すべき保険の種類、加入の優先順位、費用の考え方、そして加入前に確認しておく項目を整理します。

目次

結論:美容室の開業では「賠償」を最優先で押さえる

保険を検討すると、種類の多さで手が止まりがちです。優先順位はシンプルで、①他人への賠償 ②営業が止まるリスク ③自分の財産、の順になります。

賠償を最優先にする理由は、金額の上限が読めないからです。設備の破損は買い替えの見積もりが出ますが、賠償は状況によって大きく変わります。

開業準備の全体像はヘアサロン開業のスケジュール、つまずきやすい点は開業で失敗する原因と対策で扱っています。

開業前の美容室の店内

検討する保険の種類

種類 備える事態 優先度
施設賠償責任保険 店内でお客様がケガをした
生産物・受託物などの賠償 預かり品の破損・紛失
店舗総合・火災保険 火災・水濡れ・盗難 中〜高
休業補償 事故で営業できない期間の減収
労災保険 スタッフの業務上のケガ 雇用時は必須

上表は検討の順番を整理したものです。商品名や補償範囲は保険会社により異なります。加入可否や条件は各社の約款をご確認ください。

スタッフを1人でも雇う場合、労働者災害補償保険(労災保険)は原則として加入が義務づけられています。厚生労働省は、労働者を使用する事業は原則として労災保険の適用事業となる旨を案内しています。

出典:厚生労働省「労働保険(労災保険・雇用保険)の加入手続き」に関する案内。適用の詳細や手続きは所轄の労働基準監督署にご確認ください。

火災保険については、賃貸物件の場合は契約条件として加入を求められることが一般的です。この場合、貸主の指定する内容で加入することになるため、まず賃貸借契約書の記載を確認してください。指定がなければ、自分で内容を選べる余地があります。

休業補償は、優先度としては賠償の次になります。ただし、店舗が水濡れや火災で数週間使えなくなった場合、家賃や人件費は発生し続けます。手元資金が薄い開業期ほど、この空白期間の影響は大きくなります。

賠償で想定される場面

  1. 薬剤による頭皮や皮膚のトラブル。パッチテストの記録が残っているかどうかで、その後の対応も変わります。
  2. お客様の衣類やアクセサリーの汚損・破損。カラー剤の付着は起こりうる事態です。
  3. 店内での転倒。濡れた床、コード類、段差が原因になります。
  4. 預かった荷物の紛失。傘やコートを預かる運用がある場合に該当します。

いずれも「起きないようにする」ことが第一ですが、ゼロにはできません。だからこそ、備えと記録の両方が必要になります。

とくに薬剤に関するトラブルは、事前の確認手順があるかどうかで状況が変わります。カウンセリングで既往やアレルギーを確認し、その内容をカルテに残しておくことは、施術の質の面でも、万一の際の記録の面でも意味があります。

転倒については、開業前の内装段階で対策できる部分があります。床材の滑りにくさ、コード類を通す位置、段差の有無は、後から直すと費用がかかります。設計の段階で確認しておくと、事故そのものを減らせます。

衣類の汚損も、運用で減らせる項目です。カラーやパーマの前に必ずケープとタオルを二重にする、貴重品は先に外してもらう、といった手順を決めておくだけで発生率は下がります。手順を決めていない店ほど、担当者によってばらつきが出ます。

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保険料をどう見積もるか

保険料は、席数・スタッフ数・補償額・免責金額などで変わります。相見積もりを取る際は、条件を揃えないと比較になりません。

  1. 補償額を先に決める

    いくらまで備えたいかを自分で決めてから見積もりを依頼します。ここが揃っていないと金額だけを比べることになります。

  2. 免責金額を確認する

    免責が大きいほど保険料は下がりますが、小さな事故は自己負担になります。手元資金と相談して決めます。

  3. 2〜3社で比較する

    同じ条件で見積もりを取り、補償範囲の違いを一覧にします。金額差の理由が説明できる状態にしてください。

  4. 年間費用として資金計画に入れる

    開業時の一時費用ではなく、毎年発生する固定費として計画に組み込みます。

美容室でカウンセリングを行う様子

補償範囲は商品によって細かく異なり、同じ「賠償責任」でも対象外となる事由が定められています。パンフレットの金額だけで判断せず、対象外となる場合の記載を必ず確認してください。不明点は契約前に代理店へ書面で質問することをおすすめします。

加入手続きは、店舗の引き渡し後すぐに使える状態にしておくのが理想です。内装工事中の事故や、開業準備中の来客も想定されるためです。開業日を基準にすると、準備期間が空白になります。

加入先の選び方については、価格だけで決めないことをおすすめします。事故が起きたときに連絡が取れるか、対応の窓口が明確かは、契約時には見えにくい部分です。美容業の取り扱い実績があるかを確認しておくと安心できます。

保険の前にやる3つの予防

保険は最後の受け皿です。先に事故そのものを減らす取り組みをしてください。

第一に、薬剤使用前の確認手順を決め、記録に残すこと。第二に、床の水濡れとコード類を営業中に点検する担当を決めること。第三に、貴重品は預からない方針を掲示して統一することです。

記録の残し方はカルテ運用と一体で考えると続きます。顧客カルテの書き方もあわせてご覧ください。施術内容と使用薬剤が残っていれば、万一の際の説明材料にもなります。

予防の3つ目、貴重品を預からない方針については、掲示するだけでなくスタッフ全員に周知してください。1人が例外的に預かってしまうと、方針そのものが機能しなくなります。断るときの言い方まで決めておくと、実行しやすくなります。

そのうえで、預かる必要がある場面もあります。コートや荷物を置く場所が必要な店では、鍵付きのロッカーを用意するなど、物理的な対策とセットで考えてください。運用でカバーしきれない部分を設備で補うという発想です。

開業後に見直すタイミング

加入して終わりにせず、次の場面で見直してください。

第一に、スタッフを増やしたとき。人数が変われば必要な補償も変わります。第二に、メニューを増やしたとき。新しい施術が補償対象かを確認します。第三に、移転や増床のとき。設備や面積の変更は契約条件に影響します。

美容室のスタッフが打ち合わせをする様子

見直しのタイミングでは、保険料の水準も確認してください。開業から数年たつと、条件に合う商品が増えていることがあります。同じ補償でも金額が変わる可能性があるため、2〜3年に一度は比較しておくと無駄がありません。

保険は使わずに済むのが一番ですが、備えがないまま起きた場合の影響は、開業初期ほど重くなります。開業前の忙しい時期でも、賠償だけは先に押さえておくことをおすすめします。

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この記事を書いた人

美容室オーナー・経営者向けメディア「vaulta」編集部。集客・リピート・融資・求人・DX・独立の実務情報を、一次情報を確認のうえ発信。お金に関わる記事は中小企業診断士の監修を受けています。編集責任者:ISOYAMA。

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