美容室の顧客データを守る方法|パスワード管理と退職時の権限整理

美容室の受付で端末を操作する様子

美容室で顧客データが漏れる原因の多くは、外部からの攻撃ではなく「退職者のアカウントが残っていること」です。予約システム、LINE公式、SNS。アクセスできる人が把握できていない店は少なくありません。

この記事では、守るべき対象の洗い出し、パスワードの管理方法、退職時の手順、そして万一のときの備えを整理します。

目次

結論:美容室の顧客データは「誰がアクセスできるか」の把握から始める

対策を考える前に、現状を知る必要があります。どのサービスに顧客情報が入っていて、それぞれ誰がログインできるのか。ここを一覧にできない店が大半です。

まず棚卸しをしてください。サービス名、用途、アクセスできる人、の3列で十分です。作ってみると、不要な権限が必ず見つかります。

顧客情報の扱いはLINEでの個人データ管理、担当交代の手順は担当者変更の引継ぎで扱っています。

美容室の受付で端末を操作する様子

棚卸しをおすすめするのは、対策の優先順位が決まるからです。全部を同時に整えることはできません。顧客の連絡先が入っているサービスから順に手を入れれば、限られた時間で影響の大きい部分を守れます。

法令上の位置づけを確認する

顧客の氏名・連絡先・来店履歴は個人データにあたります。個人情報保護委員会のガイドラインでは、事業者が個人データについて安全管理措置を講じることが求められており、組織的・人的・物理的・技術的な措置が示されています。従業者の監督や、委託先の監督も含まれます。

出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」。詳細は同委員会の公表資料をご確認ください。

難しく考える必要はありません。実務に落とすと、次の4つになります。誰がアクセスできるかを決める、記録を残す、持ち出しを制限する、退職時に権限を外す。

棚卸しを作ると、使っていないサービスが残っていることにも気づきます。過去に試したツールに顧客情報が入ったままになっているケースは珍しくありません。使わないものは、データを削除して解約してください。

棚卸しの作り方

サービス 入っている情報 アクセスすべき人
予約システム 氏名・連絡先・来店履歴 全スタッフ(閲覧)/店長(設定)
LINE公式アカウント 友だち情報・配信履歴 店長+配信担当
POSレジ 売上・購買履歴 全スタッフ(会計)/店長(集計)
SNSアカウント 顧客の写真・DM 発信担当
クラウドストレージ 写真・書類 店長

上表は棚卸しの例です。使っているサービスは店によって異なります。

ポイントは、権限を階層に分けることです。全員が設定を変更できる状態は、事故が起きやすくなります。閲覧だけでよい人には閲覧権限だけを渡してください。

権限の見直しは、人が増えたときだけでなく減ったときにも必要です。退職者の権限が残っていることに気づくのは、たいてい何か問題が起きた後です。月に一度、一覧を眺めるだけでも防げます。

委託先の確認も忘れないでください。予約システムやクラウドサービスは、顧客データを預けている委託先にあたります。安全管理の体制について、契約時に確認しておく必要があります。

権限を分けるときは、日常の業務が止まらないかも確認してください。店長しか設定を変えられない状態で店長が不在だと、その日の予約調整ができません。副担当を1名決めておくと、安全性と実務の両立ができます。

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パスワードの管理方法

  1. 共有アカウントを減らす。1つのIDを全員で使うと、誰が何をしたか分かりません。個別アカウントを作れるサービスでは分けます。
  2. 使い回さない。1つ漏れると全部に波及します。サービスごとに別のものにしてください。
  3. 紙やメモアプリに平文で置かない。バックヤードに貼ってある状態は、来店者からも見えます。
  4. 二段階認証を設定する。設定できるサービスでは有効にしてください。手間は増えますが効果は大きい対策です。

美容室のスタッフが打ち合わせをする場面

共有せざるを得ない場合は、パスワード管理ツールを使う方法があります。個々のパスワードを知らせずに使わせられるため、退職時の変更も1か所で済みます。

①については、スタッフごとに必要な権限を決めておくと運用しやすくなります。入社時に付与する権限のセットを用意しておけば、追加や削除の判断が毎回発生しません。

②の使い回しは、実際には最も起きやすい問題です。覚えられないという理由で同じものを使ってしまいます。管理ツールを使えば覚える必要がなくなるため、根本的な解決になります。

③については、店内での掲示物も一度見直してください。誰でも見える場所に情報が残っていないかの確認です。

退職時の手順

  1. 退職が決まった時点で一覧を確認する

    棚卸し表を見て、その人がアクセスできるサービスを洗い出します。

  2. 最終出勤日に権限を外す

    個別アカウントは削除、共有アカウントはパスワードを変更します。後日ではなく当日に行ってください。

  3. 端末とデータを確認する

    店の端末に個人のアカウントが残っていないか、私物端末に顧客データが入っていないかを確認します。

  4. 担当客の引き継ぎを完了する

    カルテの記録を確認し、次の担当者へ内容を共有します。

顧客情報を私物の端末や個人のアカウントで管理させないでください。退職時に回収できず、持ち出しを防げません。連絡先のやりとりが必要な場合は、店として管理するアカウントを使う運用にしてください。

③については、必ずしも本人に悪意があるとは限りません。個人の端末で予約を確認していた、という善意の運用でも同じ問題が生じます。だからこそ、日頃から店の端末で完結する形にしておく必要があります。

④の二段階認証は、受け取る端末にも注意が必要です。退職者の携帯電話が認証先になっていると、権限を外しても認証だけ残ります。設定を変更するときは、認証の受け取り先も合わせて確認してください。

スタッフへの周知も重要です。ルールを決めても、なぜ必要かが伝わっていないと守られません。顧客の情報を預かっているという前提を共有したうえで、手順を説明してください。

万一のときの備え

事故が起きた場合、対応の速さが影響を左右します。あらかじめ決めておくべきことが3つあります。

第一に、気づいたら誰に報告するか。第二に、被害の範囲をどう確認するか。第三に、外部への相談先。個人情報保護委員会への報告が必要になる場合があるため、判断できる相談先を持っておいてください。

美容室の店内の様子

また、データの消失にも備えが必要です。予約システムやカルテのデータが失われると、営業そのものが止まります。バックアップの有無と、復旧にかかる時間を提供元に確認しておいてください。

顧客データの管理は、目に見える成果が出にくい領域です。しかし一度事故が起きると、信頼の回復には長い時間がかかります。まずは棚卸し表を1枚作るところから始めてみてください。

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この記事を書いた人

美容室オーナー・経営者向けメディア「vaulta」編集部。集客・リピート・融資・求人・DX・独立の実務情報を、一次情報を確認のうえ発信。お金に関わる記事は中小企業診断士の監修を受けています。編集責任者:ISOYAMA。

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