美容室が使える雇用系の助成金|キャリアアップ助成金の考え方と準備

美容室のスタッフが打ち合わせをする様子

美容室が使える雇用系の助成金は、採用してから探すのでは間に合いません。多くの制度が「取り組みの前に計画を届け出る」ことを要件にしているためです。

この記事では、代表的な制度の考え方、準備しておく体制、申請の流れ、そして注意点を整理します。

目次

結論:美容室の雇用助成金は「先に体制を整える」ことが条件

助成金は、後から申請すればもらえるものではありません。就業規則の整備、労働保険への加入、賃金台帳の作成といった土台がないと、そもそも対象になりません。

制度を探す前に、労務の基本を整えてください。整っていれば、複数の制度が視野に入ります。

採用の設計は求人方法と美容師採用、定着の考え方はスタッフの定着と離職防止で扱っています。

美容室のスタッフが打ち合わせをする様子

体制を整えることには、助成金以外の意味もあります。就業規則や賃金台帳は、スタッフとの認識の食い違いを防ぐ土台でもあります。助成金をきっかけに整備が進むなら、それ自体が成果になります。

整っていない状態から始めるなら、まず社会保険労務士に一度相談してください。

代表的な制度の考え方

厚生労働省は、事業主向けの各種助成金制度を所管しています。雇用に関するものとしては、有期雇用労働者等の正社員化や処遇改善に取り組む事業主を支援するキャリアアップ助成金などがあります。

出典:厚生労働省が公表する事業主向け助成金の案内。制度の要件・支給額・受付状況は年度ごとに変更されるため、申請前に必ず最新の情報と管轄の労働局にご確認ください。

制度は複数あり、目的によって使い分けます。人を雇い入れる場面、処遇を改善する場面、教育訓練を行う場面。それぞれに対応する制度が用意されています。

ただし、すべての店が対象になるわけではありません。要件を満たしているかは、事前に労働局や社会保険労務士に確認してください。

年度によって制度の内容が変わる点にも注意してください。前年に使えた制度が、翌年には要件が変わっていることがあります。過去の情報をもとに進めると、要件を満たさない結果になります。

美容室で使いやすい場面としては、アシスタントを有期雇用で採用し、一定期間後に正社員へ転換するケースが挙げられます。育成の流れと制度の趣旨が合致しやすいためです。デビューまでの設計はスタイリストデビューまでの期間で扱っています。

ただし、助成金のために雇用形態を決めるのは順番が逆です。まず店として必要な採用と育成を設計し、その取り組みが制度の対象になるかを確認する、という順番にしてください。

制度名だけで判断せず、要件を読んでください。

先に整える体制

項目 内容 なぜ必要か
労働保険の加入 労災保険・雇用保険 多くの助成金で前提となる
就業規則 労働条件を定めた規則 制度の内容を規定する必要がある
賃金台帳 支給額の記録 支給要件の確認に使われる
出勤簿 労働時間の記録 実態の確認に使われる
雇用契約書 個別の労働条件 雇用区分の確認に使われる

上表は一般的に求められる書類の例です。必要な書類は制度により異なります。

この5つは、助成金の有無にかかわらず必要なものです。整っていない状態は、労務管理そのものに課題があるということでもあります。

就業規則については、スタッフ数によって作成の義務が生じます。義務がない規模でも、助成金を使うなら整備が求められることがあります。専門家に相談して、自店に必要な内容で作ってください。

労働保険は、スタッフを1人でも雇っていれば原則として加入が必要です。未加入のまま助成金を検討しても、対象になりません。まずこの点を確認してください。

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申請の一般的な流れ

  1. 制度を確認して要件を照らす

    自店が対象になるかを、労働局か社会保険労務士に確認します。ここを飛ばすと後で戻れません。

  2. 計画を届け出る

    多くの制度で、取り組みを始める前に計画の提出が必要です。順番を間違えると対象外になります。

  3. 計画に沿って実施する

    届け出た内容どおりに進めます。記録を残しながら実施してください。

  4. 期限内に支給申請する

    実施後、定められた期間内に申請します。期限を過ぎると受け付けられません。

助成金は要件を満たした場合に支給されるもので、申請すれば必ず受けられるものではありません。また、支給は後払いのため、取り組みにかかる費用はいったん自己資金で負担します。不正な受給は返還や公表の対象となります。必ず正規の手続きで進めてください。

美容室でスタイリングを行う場面

②の計画届出は、制度によって提出先や様式が異なります。労働局に確認したうえで、余裕をもって提出してください。締切間際だと不備があった場合に修正が間に合いません。

③の実施期間中は、記録を残しながら進めることが重要です。後から証拠を作ることはできません。出勤簿や賃金台帳を毎月きちんと作成していれば、申請時に慌てずに済みます。

①では、要件の細部まで確認してください。雇用期間、賃金の水準、転換後の継続期間など、細かい条件が定められています。おおまかな理解で進めると、最後の段階で対象外と判明します。

よくあるつまずき

  1. 取り組みを始めてから制度を知る。計画の届出が先の制度では、後から申請できません。
  2. 就業規則が古い。制度の内容が規定に反映されていないと要件を満たしません。
  3. 記録が不足している。出勤簿や賃金台帳の整備が不十分だと、確認ができません。
  4. 資金繰りを見込んでいない。後払いのため、実施期間中の資金が必要です。

①が最も多いつまずきです。採用や処遇改善を決めた段階で、一度専門家に相談する習慣をつけてください。

④の資金繰りは見落とされがちです。処遇を改善すれば人件費が先に増えます。支給されるのはその後です。数か月分の増加分を負担できる状態かを、事前に確認してください。資金の見通しは資金繰り表の作り方で管理できます。

社会保険労務士に依頼する場合、費用が発生します。受給できる金額と手続きの手間を比べて判断してください。自力で進められる制度もありますが、要件の判断を誤ると全て無駄になります。

相談先の選び方

制度は毎年見直されます。自力で調べ続けるのは現実的ではありません。

相談先は3つあります。第一に、管轄の労働局やハローワーク。制度の内容を直接確認できます。第二に、社会保険労務士。要件の判断と書類の作成を任せられます。第三に、商工会・商工会議所。無料の相談窓口が設けられている場合があります。

美容室の店内とセット面

補助金との違いも押さえておいてください。助成金は主に雇用に関するもので厚生労働省が所管し、補助金は事業の取り組みに対するものが中心です。事業向けの補助金は美容室が使える補助金・助成金にまとめています。

助成金は、労務の体制が整っている店ほど選択肢が増えます。制度を追いかけるより、まず基本の書類を揃えることから始めてみてください。

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この記事を書いた人

美容室オーナー・経営者向けメディア「vaulta」編集部。集客・リピート・融資・求人・DX・独立の実務情報を、一次情報を確認のうえ発信。お金に関わる記事は中小企業診断士の監修を受けています。編集責任者:ISOYAMA。

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