美容室を共同経営で始める注意点|決めておく5項目と揉めないための設計

美容室の店内とセット面

美容室の共同経営で揉める原因は、相性ではなく「決めていなかったこと」です。資金・意思決定・分配・辞めるときの扱い。始める前に書面にしておけば、多くは防げます。

この記事では、共同経営の形、先に決める5項目、書面にする方法、そして解消するときの備えを整理します。

目次

結論:美容室の共同経営は「辞めるときの条件」を先に決める

始めるときは、双方が前向きです。だからこそ、うまくいかなくなった場合の話がしにくくなります。

しかし決めておくべきはそこです。片方が抜けるとき、資金と顧客と店舗をどう扱うか。ここが決まっていれば、関係が変わっても事業は続けられます。

単独での開業は開業スケジュール、承継や譲渡の考え方は事業承継・譲渡の進め方で扱っています。

美容室の店内とセット面

この話をしにくいと感じるなら、それ自体が判断材料になります。事業として組む相手と、条件の話ができない関係では、経営判断の場面でも意見を交わせません。始める前に一度話してみてください。

形態を決めてから資金の話に進んでください。順番が逆になると調整が複雑になります。

共同経営の形を選ぶ

内容 注意点
一方が事業主 片方が開設者、もう一方は従業員や業務委託 関係が対等でなくなる
共同出資の法人 会社を設立し、双方が出資 持分比率で決定権が決まる
それぞれ個人事業 場所を共有し、各自が独立して営業 契約と会計を明確に分ける

上表は形態の整理です。法務・税務の扱いはそれぞれ異なるため、専門家にご確認ください。

形態によって、責任の範囲も税金の扱いも変わります。「一緒にやろう」という合意だけで進めず、どの形にするかを最初に決めてください。

美容所の開設届出は、開設者が誰かによって手続きが変わります。管轄の保健所に確認したうえで形態を決めてください。

3行目の形は、実質的には共同経営というより場所の共有に近くなります。トラブルは少なくなる一方、共同で事業を大きくするという狙いには合いません。何を目的に組むのかで、選ぶ形が変わります。

2行目の法人形態を選ぶ場合、出資の比率が意思決定の力に直結します。折半にすると、意見が割れたときに決まらない状態が生まれます。あえて差をつけるという選択もありますが、その場合は少数側の扱いを取り決めておく必要があります。

1行目の形は、実態としてよく見られる形です。ただし対等な関係を望んでいた側に不満が残りやすくなります。開設者になる側が意思決定を持つことを、双方が理解したうえで選んでください。

先に決める5項目

  1. 出資の割合と使途。誰がいくら出したかを記録します。口頭の約束は後で食い違います。
  2. 意思決定の方法。何を2人で決め、何を各自で決めるか。金額の基準を設けると運用しやすくなります。
  3. 利益の分配。売上の分け方か、利益の分け方か。個人の売上に連動させるかも決めます。
  4. 役割分担。技術・経理・集客・採用。誰が担当するかを明確にします。
  5. 解消の条件。抜ける場合の手続き、顧客の扱い、出資分の精算方法。

③でとくに揉めやすいのが、売上に差が出た場合です。均等に分けるのか、貢献に応じるのか。決めていないと、差が開いた時点で不満が生まれます。

②についても具体的にしてください。「大きな支出は相談する」では基準になりません。「10万円を超える支出は双方の合意」といった金額を決めておけば、判断で迷いません。

④の役割分担では、技術以外の業務を誰が担うかが重要です。経理や採用は目立たない一方で時間がかかります。片方に偏ると、不公平感が生まれます。

③の分配方法は、開業から数年で状況が変わることを前提に決めてください。最初は均等でも、指名客数に差が出れば不満が生まれます。見直しの時期をあらかじめ決めておく方法もあります。

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書面にする

  1. 話し合った内容をその場で書く

    記憶に頼らず、決めた日に文字にします。後から「そう言っていない」を防ぎます。

  2. 金額と期限を入れる

    「相談して決める」ではなく、具体的な数字と時期を書きます。

  3. 専門家に確認してもらう

    弁護士や税理士に見てもらいます。形態によって必要な取り決めが変わります。

  4. 双方が保管する

    同じ内容の書面を各自が持ちます。片方だけが持つ状態にしないでください。

共同経営には、法務・税務・労務の論点が同時に発生します。出資、持分、責任の範囲、顧客情報の扱い。当事者だけで決めると、後から無効になる取り決めが含まれる可能性があります。開始前に必ず弁護士や税理士にご相談ください。

美容室でスタイリングを行う場面

①では、貸付と出資の区別も明確にしてください。返してもらう前提の資金と、事業に出した資金では扱いが違います。曖昧なまま進めると、解消時に必ず争点になります。

⑤については、始める前に話しにくい項目です。それでも、この取り決めがないまま関係が悪化すると、店舗の営業そのものが止まります。数か月かけて交渉することになり、その間に顧客が離れます。

運用で気をつけること

書面を作っても、日々の運用が曖昧だと関係は崩れます。次の3つを習慣にしてください。

第一に、数字を共有する。売上・経費・利益を毎月2人で確認します。片方だけが把握している状態は不信のもとです。第二に、定例で話す時間を作る。月1回でも、経営について話す場を設けます。第三に、決めたことを更新する。状況が変われば取り決めも変えます。変更は必ず書面に反映してください。

数字の見方を揃えるには美容室経営の数字の見方が役立ちます。同じ指標を見ていないと、議論が噛み合いません。

③の専門家への確認は、費用をかけてでも行ってください。後から争いになった場合の費用と比べれば、はるかに小さい額です。開業資金の一部として最初から見込んでおくことをおすすめします。

作った書面は、年に一度は見直してください。事業の状況が変われば、取り決めが実態と合わなくなります。放置された書面は、いざというときに使えません。

第三の数字共有では、通帳やレジの集計を両者が見られる状態にしてください。片方だけが管理していると、疑いが生まれたときに払拭できません。

解消するときの備え

関係を解消することになった場合、争点になるのは3つです。

第一に、出資分の精算。いくら返すのか、どのタイミングでか。第二に、顧客の扱い。担当していた顧客に案内してよいのか。第三に、店舗と設備。誰が引き継ぐのか、リースや賃貸借の名義はどうするのか。

美容室のスタッフが打ち合わせをする様子

②は個人情報の扱いにも関わります。顧客の連絡先を持ち出す行為は、取り決めと法令の両面で問題になり得ます。開始時に方針を決め、書面に残しておいてください。

共同経営は、資金と労力を分担できる一方、決定に時間がかかる形でもあります。始める前に条件を詰めておけば、その負担は大きく減ります。まず5項目を紙に書き出すところから始めてみてください。

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この記事を書いた人

美容室オーナー・経営者向けメディア「vaulta」編集部。集客・リピート・融資・求人・DX・独立の実務情報を、一次情報を確認のうえ発信。お金に関わる記事は中小企業診断士の監修を受けています。編集責任者:ISOYAMA。

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