美容室の社会保険の加入義務|個人事業と法人の違いと手続きの流れ

美容室のスタッフが打ち合わせをする様子

美容室の社会保険は、個人事業か法人か、そして従業員が何人いるかで加入義務が変わります。「うちは小さいから関係ない」と判断する前に、自店がどの区分にあたるかを確認してください。

この記事では、区分ごとの考え方、労働保険との違い、手続きの流れ、そして負担の見積もり方を整理します。

目次

結論:美容室の社会保険は「法人かどうか」で扱いが分かれる

社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、法人であれば従業員の人数にかかわらず適用事業所となるのが原則です。個人事業の場合は、業種と常時使用する従業員数によって扱いが変わります。

まず自店が適用事業所にあたるかを確認してください。該当するのに未加入だと、後から遡って求められる可能性があります。

法人化の判断は法人化のタイミング、給与制度の設計は給与・歩合制度の作り方で扱っています。

美容室のスタッフが打ち合わせをする様子

個人事業の場合、業種や従業員数によって強制適用となるかが変わります。該当しない場合でも、一定の手続きを経て任意で適用を受ける仕組みがあります。将来的に人を増やす計画があるなら、この選択肢も含めて検討してください。

判断を自己流で済ませないでください。要件は細かく定められています。

労働保険と社会保険の違い

区分 制度 加入の考え方
労働保険 労災保険 労働者を使用する事業は原則適用
労働保険 雇用保険 要件を満たす労働者について加入
社会保険 健康保険 適用事業所で要件を満たす人が対象
社会保険 厚生年金保険 健康保険と同様

上表は制度の区分を整理したものです。適用の詳細は事業形態や労働条件により異なります。

厚生労働省および日本年金機構は、事業主向けに加入手続きや適用の考え方を案内しています。判断に迷う場合は、年金事務所や労働基準監督署に確認してください。

出典:厚生労働省および日本年金機構が公表する社会保険・労働保険の適用に関する案内。要件は変更されることがあります。

混同されやすいのですが、労災保険は労働者を1人でも使用していれば原則として適用されます。社会保険とは別の制度なので、それぞれ確認が必要です。

労働時間が短いスタッフについては、加入の対象になるかが労働時間や賃金などの要件で決まります。全員が対象になるとは限らないため、個別に確認が必要です。ここを誤ると、後から修正することになります。

もうひとつ押さえておきたいのが、加入によってスタッフ側の手取りも変わる点です。保険料が給与から控除されるためです。導入する際は、手取りがどう変わるかを事前に説明してください。説明がないまま控除が始まると、不信につながります。

同時に、将来受け取る年金や、病気やけがの際の保障が変わることも伝えてください。負担だけを説明すると、制度そのものが不利益に受け取られます。

手続きの流れ

  1. 適用事業所かを確認する

    年金事務所に相談し、自店が該当するかを確認します。ここが出発点です。

  2. 事業所の届出を行う

    該当する場合、新規適用の届出が必要です。期限が定められています。

  3. 被保険者の資格取得届を出す

    対象となるスタッフごとに手続きします。要件を満たすかは労働時間などで判断されます。

  4. 保険料の納付を始める

    毎月の納付が発生します。給与からの控除と事業主負担の両方が生じます。

適用事業所に該当するにもかかわらず未加入の場合、遡って加入と保険料の納付を求められることがあります。判断を先延ばしにするほど負担が大きくなります。該当するかどうか自信がない場合は、早めに年金事務所または社会保険労務士にご相談ください。

美容室の店内とセット面

②の届出には期限があります。事実が発生してから定められた日数以内に提出する必要があるため、開業や法人化のスケジュールに組み込んでおいてください。

④の納付は毎月発生します。資金繰り表に固定の支出として入れておかないと、資金の見通しがずれます。給与の支払いとセットで管理してください。

③の資格取得届では、対象者の判断が必要になります。所定労働時間が短いスタッフや、業務委託の形をとっている場合など、扱いが分かれるケースがあります。実態で判断されるため、契約書の名称だけでは決まりません。

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負担の見積もり方

社会保険料は、事業主と被保険者が分担して負担します。事業主の負担が発生する点を、人件費の計算に含めてください。

見積もりの手順は3つです。第一に、対象となるスタッフを特定する。第二に、それぞれの報酬をもとに保険料を試算する。第三に、事業主負担分を月々の固定費に加える。

この計算をしないまま採用を進めると、想定より人件費が膨らみます。人件費率の考え方は人件費率の目安と適正化を参考にしてください。

試算には、日本年金機構が公表している保険料額表が使えます。報酬の区分ごとに金額が定められているため、対象者の報酬から概算を出せます。正確な計算は社会保険労務士に確認してください。

③については、報酬額をもとに保険料が決まります。歩合の比率が高い店では、月によって報酬が変動します。標準報酬月額の考え方や、変動があった場合の手続きについても確認しておいてください。

試算は採用を決める前に行ってください。

加入がもたらす効果

  1. 採用で比較されにくくなる。求人では社会保険の有無が確認される項目のひとつです。
  2. 定着につながる。将来の保障があることは、長く働く判断材料になります。
  3. 助成金の要件を満たしやすくなる。多くの制度で労働保険への加入が前提になります。
  4. 労務管理が整う。加入手続きを通じて、雇用契約や賃金台帳の整備が進みます。

③については、雇用系の助成金の考え方を雇用系の助成金にまとめています。体制が整っていることが前提になります。

④の効果は間接的ですが実質的です。加入手続きの過程で、雇用契約書や賃金台帳を整えることになります。これらは労務トラブルを防ぐ土台でもあります。

採用の場面では、求人票に社会保険の有無を記載することになります。応募者が比較する項目のひとつであり、記載がないと不利になることがあります。求人の書き方は求人方法と美容師採用で扱っています。

迷ったときの相談先

制度は複雑で、要件も改正されます。自力で判断しきるのは現実的ではありません。

相談先は3つあります。第一に、年金事務所。適用の判断と手続きを確認できます。第二に、社会保険労務士。継続的な手続きを任せられます。第三に、商工会・商工会議所の相談窓口です。

美容室でスタイリングを行う場面

費用はかかりますが、誤った判断で遡って求められる負担と比べれば小さい額です。とくにスタッフを増やす段階では、早めに相談しておくことをおすすめします。

社会保険は、事業主にとって負担が増える制度です。一方で、人を採用し定着させるうえでは前提条件にもなります。まず自店が適用事業所にあたるかを確認するところから始めてください。

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この記事を書いた人

美容室オーナー・経営者向けメディア「vaulta」編集部。集客・リピート・融資・求人・DX・独立の実務情報を、一次情報を確認のうえ発信。お金に関わる記事は中小企業診断士の監修を受けています。編集責任者:ISOYAMA。

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