美容室でお客様に出す飲み物は、事業に必要な支出として経費になります。迷いが出るのは「誰が飲んだか」で扱いが変わる点で、お客様用・スタッフ用・自分用の3つを分けて考えると整理できます。
この記事では、飲み物の経費の科目の選び方、認められにくいケース、消費税の区分、記録の残し方を、美容室の実務に沿ってまとめます。

結論:美容室の飲み物の経費は「誰に出したか」で3つに分かれる
所得税では、事業の遂行上必要な支出が必要経費になります。お客様へのドリンクサービスは、施術の一部として提供している以上、事業に必要な支出と説明できます。ここに迷う余地はほとんどありません。
一方で、同じ飲み物でもスタッフが休憩中に飲んだもの、オーナー自身が日常的に飲んだものは、扱いが変わります。前者は福利厚生費として整理できる場合が多く、後者は原則として家事費です。
経費になるものの全体像は美容室で経費にできるもので扱っています。この記事は飲み物に絞って、線引きと科目を具体化します。
飲み物の経費の科目と線引きの早見表
| 誰に | 例 | 科目の候補 | 経費になるか |
|---|---|---|---|
| お客様 | 施術中のコーヒー・紅茶・ペットボトルの水 | 消耗品費・雑費・材料費(継続して同じ科目に) | なる |
| スタッフ全員 | 休憩用のお茶、夏場の熱中症対策の飲料 | 福利厚生費 | 全員が対象で、常識的な範囲ならなる |
| オーナー個人 | 自分だけが飲むコーヒー、通勤途中の缶コーヒー | — | 原則ならない(家事費) |
| 取引先・ディーラー | 打ち合わせ時の飲食 | 会議費・接待交際費 | なる(内容と相手の記録が要る) |
| 販売用 | 店頭で販売するボトル飲料 | 仕入(売上原価) | なる(在庫管理が要る) |
お客様用の科目は、消耗品費でも雑費でも材料費でも構いません。大事なのは一度決めた科目を毎年同じように使うことで、年によって科目が変わると帳簿の比較ができなくなります。
経費として説明しにくい3つのケース
飲み物の金額は1本あたりで見れば小さいですが、年間で積み上がると数万円から十数万円になります。金額が小さいからと雑に扱うと、他の経費の見方にも影響します。次の3つは説明が難しい場面です。
- 1人経営で「お客様用」の量が明らかに多い:月の来店が80人なのに、コーヒー豆を月3kg買っている場合、自分の消費分が混じっていると見られます。提供量から逆算した量に収まっているかを確認します。
- スタッフ用が特定の人だけに偏っている:福利厚生費は全員が対象であることが前提です。店長だけが飲む高級な飲料は、給与として扱われる可能性があります。
- スーパーのレシートに私用の食品が混ざっている:店用と私用を同じ会計で買うと、後から分ける手間が増え、分けきれなかった分が経費から外れます。会計を分けるだけで解決します。
「美容室だからお客様に出している」という説明は、お客様用の量に対してだけ通ります。自分の飲み物まで含めて経費にしていると、否認されたときに追徴だけでなく、他の経費の信頼まで失います。線引きは最初に決めてください。

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年間の金額を試算して、管理の手間を決める
飲み物の経費にどこまで手間をかけるかは、年間の金額で決めると迷いません。数字は仮の設定です。
| 項目 | 前提 | 月額 | 年額 |
|---|---|---|---|
| お客様用ドリンク | 月200人×1杯あたり40円 | 8,000円 | 96,000円 |
| スタッフ用の飲料 | 3名×1日1本120円×25日 | 9,000円 | 108,000円 |
| 使い捨てカップ・ストロー | 月200組×15円 | 3,000円 | 36,000円 |
| 合計 | — | 20,000円 | 240,000円 |
この規模なら、月に1回レシートをまとめて「お客様用」「スタッフ用」を分けて入力するだけで足ります。毎回の会計で分ける必要はありません。来店数の記録があれば、1杯あたりの単価が妥当かも確認できます。
カップやストローなどの資材は飲み物と同じ科目にまとめて構いません。分けたい場合は、飲み物を材料費、資材を消耗品費とする形が分かりやすいです。勘定科目の全体は確定申告で使う勘定科目にまとめています。
消費税とインボイスで気をつけること
飲み物は飲食料品として軽減税率8%の対象です。店で使う消耗品や光熱費は10%なので、同じレシートに8%と10%が混在します。
-
レシートの税率区分を確認する
スーパーやドラッグストアのレシートには、8%対象の品目に印が付いています。仕入税額控除を受けるには、税率ごとに区分して記帳します。
-
免税事業者なら区分は不要でも記録は残す
消費税の申告義務がない店でも、所得税の経費としては同じ記録が要ります。将来課税事業者になったときに備え、税率区分のあるレシートを保存する習慣を付けておくと移行が楽です。
-
ネット通販のまとめ買いは領収書の形式を確認する
インボイス制度のもとでは、登録番号の記載がある領収書かどうかで控除の扱いが変わります。定期購入の場合は一度確認しておけば済みます。
出典:国税庁 タックスアンサー「No.2210 やさしい必要経費の知識」、「No.5261 交際費等と福利厚生費との区分」、国税庁「消費税の軽減税率制度に関するQ&A」。制度は改正されることがあるため、実際の判断では最新の公表資料を確認し、必要に応じて税理士など専門家にご相談ください。記事内の計算は自分で置いた前提による試算です。
取引先との打ち合わせの飲み物はどうなるか
ディーラーやメーカーの担当者と店で打ち合わせをしたときの飲み物は、お客様用とは別に、会議費として整理するのが自然です。金額が小さければ消耗品費にまとめてしまっても実務上は問題になりにくいですが、外で会食をした場合は接待交際費の扱いになります。
法人の場合、1人あたりの飲食費が一定額以下なら交際費から除外できる制度があり、令和6年度の改正でその基準額が引き上げられています。個人事業主には交際費の上限規制はありませんが、相手と目的の記録は同じように必要です。
記録の残し方 — レシートに2つ書き足すだけ
飲み物の経費で必要な記録は多くありません。レシートの余白に「客用」または「スタッフ用」と、おおよその用途を書くだけで、後から見返したときに説明が復元できます。
- 店用の会計を分ける:私用の食品と一緒に買わない。事業用のカードか現金で、店用だけを買います。
- まとめ買いは月1回にする:レシートの枚数が減り、入力の手間も減ります。用途の書き込みも1回で済みます。
- 来店数と突き合わせる:月の来店数が分かれば、1杯あたりの単価で妥当性を確認できます。単価が跳ねた月は自分用が混ざっていないかを見直します。
- スタッフ用は「全員対象」を示す:休憩室に置いて誰でも飲める形にしておけば、福利厚生費としての説明がしやすくなります。
同じ考え方で判断できる支出に、待合の雑誌や備品があります。待合に置く漫画や雑誌は経費になるかと合わせて読むと、店内のサービス関連の支出をまとめて整理できます。
1人経営の店で、自分の飲み物と分ける具体的な方法
スタッフがいない店では「お客様用」と「自分用」の境目が最も曖昧になります。同じコーヒーメーカーで自分も飲むなら、その分は経費から外すのが原則ですが、1杯ごとに記録するのは現実的ではありません。
実務では、提供数から按分する方法が説明しやすい形です。たとえば月の来店が150人で、自分が1日2杯を25日飲むなら、月200杯のうち客用は150杯です。購入額の75%を経費、25%を家事費とすれば、根拠のある割合になります。数字は仮の設定です。
- お客様用は個包装のものにする:ドリップバッグやティーバッグなら、使った数がそのまま提供数になり、按分の計算が不要になります。
- 自分用は別に買う:自宅で買った豆を店に持ち込む形にすれば、店で買ったものは全部お客様用と説明できます。
- 按分するなら割合の根拠をメモに残す:来店数と自分の杯数を書いた1枚があれば、後から聞かれても説明できます。
按分の考え方は家賃や車と同じで、割合そのものより「なぜその割合か」を説明できるかが問われます。詳しくは家事按分のやり方を参照してください。
申告前のチェックリスト
飲み物の支出を計上する前に、次の5つを確認してください。1つでも「いいえ」があれば、その分は見送るか、税理士に確認するほうが安全です。
- お客様用・スタッフ用・自分用を分けて記帳している
- お客様用の量が、来店数から見て妥当な範囲に収まっている
- スタッフ用は全員が対象で、特定の人に偏っていない
- 科目は毎年同じものを使っている
- レシートの税率区分(8%/10%)を残している
飲み物は1本の金額が小さい分、線引きを曖昧にしたまま積み上がりやすい支出です。「誰に出したか」で分ける習慣を最初に作っておけば、年末に慌てることはなくなります。服や車など他の迷いやすい支出は美容室の服は経費になるかも参照してください。

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