美容室の売上原価とは何か|決算書に何を入れるか・材料費と店販仕入の分け方・年末の棚卸しのやり方

美容室 売上原価|美容室の店内の様子

美容室の売上原価は、青色申告決算書の「売上原価」欄に入れる金額で、店販商品の仕入れが中心になります。施術に使う薬剤やシャンプーは、売上原価に入れる方法と消耗品費にする方法があり、どちらかに決めて毎年同じ処理を続けることが要点です。

この記事では、売上原価の計算式、材料費と店販仕入の分け方、年末の棚卸しのやり方、決算書での書き方、原価率の読み方を整理します。

美容室 売上原価|美容室の店内の様子
目次

結論:美容室の売上原価は「店販の仕入れ+(入れると決めた)材料費」を棚卸しで調整した額

売上原価の計算式は、期首の在庫 + 当期の仕入れ − 期末の在庫です。買った金額そのままではなく、年末に残っている在庫を引くことで「その年に売れた・使った分」だけが原価になります。

美容室では、店販商品(シャンプー・トリートメント等の販売用)の仕入れが売上原価の中心です。施術用の薬剤や材料は、売上原価に含める店と消耗品費で処理する店の両方があります。税務上はどちらでも認められる余地がありますが、年によって変えると利益の比較ができなくなるため、最初に決めて固定します。

材料費率の下げ方は材料費と原価率の下げ方、科目の全体は確定申告で使う勘定科目で扱っています。この記事は「売上原価という欄に何を入れるか」に絞ります。

何を売上原価に入れるか — 美容室の支出の分け方

支出 売上原価に入れるか 理由・扱い
店販商品の仕入れ(販売用) 入れる 売るために買った商品。棚卸しの対象
施術用の薬剤・シャンプー・トリートメント 入れる/消耗品費のどちらか サービス提供の材料。入れる場合は年末に在庫を数える
タオル・ペーパー・手袋などの消耗品 入れない(消耗品費) 施術の直接材料ではない
業務委託美容師への報酬 入れない(外注費) 役務の対価。原価に近いが科目は外注費
スタッフの給与 入れない(給料賃金) 販管費として別に計上
店販商品の送料・仕入れ時の手数料 入れる 仕入れに付随する費用は取得価額に含める

迷ったら、「売るために買ったか、施術で使うために買ったか」で分けます。売るために買ったものは必ず売上原価、施術用は店の方針で決めます。

年末の棚卸しのやり方(4ステップ)

棚卸しは、12月31日時点で店に残っている店販商品(と、売上原価に入れると決めた材料)を数え、金額に直す作業です。

  1. 数える対象を決める

    店販商品は全品。材料を売上原価に入れる店は、未開封の薬剤・シャンプーも数えます。開封済みの使用中の分は少額なら含めない運用が一般的です。

  2. 12月31日の営業終了後に数える

    棚と倉庫の在庫を商品ごとに数え、棚卸表に記入します。数量と、その商品の仕入れ単価を書きます。

  3. 単価を決める(最終仕入原価法)

    評価方法を税務署に届け出ていない場合、その年の最後に仕入れた単価で評価する「最終仕入原価法」が原則として適用されます。仕入れ伝票で最後の単価を確認します。

  4. 金額を合計して決算書に転記する

    数量×単価の合計が期末商品棚卸高です。前年の期末棚卸高が今年の期首棚卸高になります。開業初年度の期首は0円です。

棚卸しをせずに「仕入れ額=売上原価」とすると、年末に大量に仕入れた年は利益が過少に、翌年は過大に出ます。税務調査で棚卸表の提示を求められる場面があり、記録がないと仕入れの計上が否認されるおそれがあります。棚卸表は7年保存します。

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試算 — 棚卸しの有無で利益がどう変わるか

店販の仕入れが年間120万円、12月に20万円分をまとめて仕入れた店で比べます。数字は仮の設定です。

項目 棚卸しをしない(仕入れ=原価) 棚卸しをする
店販売上 2,000,000円 2,000,000円
期首棚卸高 150,000円
当期仕入れ 1,200,000円 1,200,000円
期末棚卸高 −300,000円
売上原価 1,200,000円 1,050,000円
店販の粗利 800,000円 950,000円
店販の原価率 60% 52.5%

この例では、棚卸しをしないと原価が15万円多く計上され、粗利が過少に見えます。翌年は逆に粗利が過大になります。年ごとの利益を正しく比べるために、棚卸しは省けません。

売上原価を出すと、店販の原価率が正しく分かります。原価率の目安は商品構成で変わるため、他店の数字ではなく自店の前年と比べてください。店販の粗利の使い方は店販の歩合の設計にまとめています。

決算書のどこに書くか

青色申告決算書の欄 入れる金額 美容室での注意
売上(収入)金額 技術売上+店販売上の合計 店販を分けて管理したい場合は内訳を別紙に
期首商品(製品)棚卸高 前年末の棚卸高 開業初年度は0
仕入金額(製品製造原価) 店販の仕入れ(+入れると決めた材料) 送料・手数料を含める
期末商品(製品)棚卸高 12月31日の棚卸高 棚卸表を保存
差引原価(売上原価) 期首+仕入−期末 自動計算される欄
消耗品費(経費欄) 売上原価に入れない材料・消耗品 材料を消耗品費にする店はここ

白色申告の収支内訳書でも同じ構造の欄があります。会計ソフトを使う場合は、店販の仕入れを「仕入高」、施術材料を「仕入高」か「消耗品費」のどちらに登録するかを最初に設定しておくと、決算書への転記は自動で済みます。

出典:所得税法第47条(棚卸資産の売上原価等の計算及びその評価の方法)、所得税法施行令第99条・第102条(棚卸資産の評価の方法、評価方法を選定しなかった場合の最終仕入原価法)、国税庁「青色申告決算書(一般用)の書き方」、国税庁 タックスアンサー「棚卸資産の評価方法の届出」。制度は改正されることがあるため、実際の申告では最新の公表資料を確認し、必要に応じて税理士にご相談ください。記事内の計算は自分で置いた前提による試算です。

材料を売上原価に入れるか、消耗品費にするかの決め方

どちらも認められる余地がありますが、店の状況で向き不向きがあります。材料の在庫が多く、年末に数える手間をかけられる店は売上原価に入れると、施術の原価率が正しく出ます。1人店で在庫が少なく、毎月使い切る運用なら、消耗品費で処理して棚卸しの対象を店販商品だけにするほうが手間が小さいです。

いずれにしても、一度決めた方法は継続します。変えたい場合は、変更する年の申告で理由と影響を説明できるようにしておきます。

棚卸しを毎月やると経営に使える

税務のための棚卸しは年1回で足りますが、月末に店販商品だけ数える習慣を付けると、月ごとの店販の原価率と、売れていない商品が見えます。数える商品数が30品目程度なら、30分で終わります。

売れていない商品は仕入れを止め、動いている商品に絞る。この判断を年1回ではなく月1回できることが、棚卸しを経営に使う意味です。仕入れの判断は店販売上を上げる方法の「商品を絞る基準」も参照してください。

開封済みの材料・少額の在庫はどこまで数えるか

施術材料を売上原価に入れる店で迷うのが、開封して使用中のカラー剤やシャンプーです。使用中の分を厳密に量る必要はなく、未開封の在庫だけを数える運用が実務上は一般的です。ただし、その運用を毎年同じにすることが条件です。

数字は仮の設定ですが、未開封の薬剤が80本・平均単価1,200円なら在庫は96,000円、店販商品が60本・平均単価2,000円なら120,000円で、期末棚卸高は216,000円になります。この程度の規模なら、棚卸しは2人で1時間程度で終わる場合が多いです。

仕入れ値が値上がりした年の注意

最終仕入原価法は、年の最後に仕入れた単価で全在庫を評価します。年末に値上げされた商品は、年内に仕入れた古い在庫まで新しい高い単価で評価されるため、期末棚卸高が実際の取得価額より大きく出ることがあります。

結果として売上原価が小さく、利益が大きく計算される方向に働きます。制度上はこの評価で問題ありませんが、値上げの多い年は「利益が増えた」と見える理由を把握しておくと、翌年の資金計画を誤りません。評価方法を変える場合は、その年の3月15日までに届出が要るとされています。

年末までに済ませるチェックリスト

12月中に、次の6つを確認してください。

  • 店販商品の仕入れを売上原価(仕入高)で記帳している
  • 施術材料を売上原価に入れるか消耗品費にするかを決め、継続している
  • 12月31日に棚卸しをする日程とやり方(誰が・どの棚を)を決めた
  • 最終仕入原価法で単価を出せるよう、仕入れ伝票を月別に保管している
  • 棚卸表の様式(商品名・数量・単価・金額)を用意した
  • 前年の期末棚卸高を今年の期首に転記した(初年度は0)

売上原価は、「何を入れるか」を決めて「年末に数える」だけで正しく出せます。この2つを固定しておけば、店販の粗利も施術の原価率も、年をまたいで比べられる数字になります。

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この記事を書いた人

美容室オーナー・経営者向けメディア「vaulta」編集部。集客・リピート・融資・求人・DX・独立の実務情報を、一次情報を確認のうえ発信。お金に関わる記事は中小企業診断士の監修を受けています。編集責任者:ISOYAMA。

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