美容室の水道光熱費は、売上の3〜5%に収まっている店が多く、6%を超えていれば見直す余地があります。この比率は業界統計として公表されている数字ではなく、店の規模・営業時間・給湯の使い方で動くため、自店の12か月分の実績を先に出すことが出発点です。
この記事では、水道光熱費の内訳(電気・ガス・水道)、季節でどう動くか、売上比で見る目安、費用のかからない順に下げる手順、経費としての扱いを整理します。

結論:まず12か月分を「売上比」で並べる。下げる順番は契約→使い方→設備
水道光熱費は、家賃や人件費に比べて金額が小さいため後回しにされがちです。しかし毎月必ず出ていく固定的な支出で、一度下げれば効果が続くという特徴があります。月3万円下がれば年36万円、1人店の利益にとっては小さくありません。
やることは3つです。①検針票を12か月分並べて、電気・ガス・水道を月別に表にする。②売上に対する比率を出し、季節の山と谷を見る。③契約の見直し、使い方のルール化、設備の更新の順に手を付ける。設備の更新は費用がかかるため最後です。
経費の全体像は美容室の経費の比率はどう見るか、固定費全体の削減は固定費削減の進め方で扱っています。この記事は水道光熱費に絞ります。
美容室の水道光熱費の内訳 — 何にいくらかかっているか
美容室の水道光熱費は、電気・ガス・水道の3つです。店によって比率は変わりますが、電気が最も大きく、次にガス(給湯)、水道の順になる店が多いです。オール電化の店はガスがなく、電気に給湯分が上乗せされます。
| 区分 | 主な使い道 | 費用が動く要因 | 季節の影響 |
|---|---|---|---|
| 電気 | 照明、空調、ドライヤー・アイロン、シャンプー台の給湯(電気式の場合)、待機電力 | 営業時間、空調の設定温度、ドライヤーの台数と使用時間、契約容量 | 夏と冬に増える(空調) |
| ガス | シャンプーの給湯、洗濯・乾燥、暖房(ガス式の場合) | 給湯温度、シャンプーの回数、給湯器の効率 | 冬に増える(水温が低く、温めるエネルギーが増える) |
| 水道 | シャンプー、タオルの洗濯、清掃、トイレ | 客数、シャンプーの流し時間、洗濯の回数 | 比較的一定 |
電気料金は、資源エネルギー庁が説明しているとおり、基本料金・電力量料金・燃料費調整額・再生可能エネルギー発電促進賦課金などで構成されています。基本料金は契約容量で決まり、使わなくてもかかるため、契約の見直しはここに効きます。電力量料金は使った分で、使い方の改善と設備の更新で下がります。
ガスは、都市ガスかプロパン(LPガス)かで単価が大きく違います。プロパンは事業者ごとに料金が自由に設定されており、同じ地域でも差があります。水道は自治体の料金表で決まり、交渉の余地はありませんが、使用量は減らせます。
売上比で見る目安 — 「何%なら見直すか」の決め方
水道光熱費が売上の何%かは、営業時間の長さ、席数に対する客数、給湯の使い方で変わります。以下は経験的な目安で、統計として公表された値ではありません。自店の位置を知るための物差しとして使ってください。
| 売上に対する比率 | 状態 | やること |
|---|---|---|
| 3%未満 | 抑えられている。客数が多く稼働率が高い店に多い | 現状維持。月次で見る |
| 3〜5% | 多くの店が収まる範囲 | 季節の山(夏・冬)だけ対策する |
| 5〜6% | 売上に対して固定的な支出が重い。客数が少ない月に比率が上がる | 契約容量とプランを見直す。使い方のルールを決める |
| 6%超 | 契約が実態に合っていない、設備が古い、または売上が落ちている | 契約・使い方・設備を順に点検。売上側の問題なら集客と併せて |
数字は仮の設定ですが、月商150万円の店で水道光熱費が月6万円なら4%、月9万円なら6%です。比率は「売上が下がった月」に上がります。閑散期に比率が跳ねるのは正常で、金額自体が増えていないなら費用側の問題ではありません。金額と比率の両方を見ることが要点です。
12か月の表を作る手順
検針票か請求書を12か月分そろえ、月ごとに電気・ガス・水道の金額と使用量(kWh、m³)を書きます。使用量を書くのは、単価の値上がりと使い方の変化を分けて見るためです。金額が増えていても使用量が変わっていなければ、単価の問題で、契約の見直しが効きます。
表ができたら、月商を横に置き、比率を出します。夏(7〜9月)と冬(12〜2月)の平均と、春秋の平均を比べると、空調と給湯が季節でどれだけ増えているかが分かります。この差が大きい店は、設定温度と給湯温度の見直しで下がる余地があります。

下げる順番 — 費用がかからないことから(5ステップ)
現状把握:12か月分を種類別・月別に表にする
前の見出しの表です。ここを飛ばして設備を買うと、効果が測れません。売上比と前年同月比を並べ、増えている月に印を付けます。
契約の見直し:電気の契約容量とプラン、ガスの料金表
電気は、契約容量(アンペアまたはkW)が実態より大きいと基本料金を払い過ぎています。過去12か月の最大需要と、ドライヤー・空調・給湯の同時使用を見て、電力会社に相談します。ガスは、プロパンの店なら他社の見積もりを取り、単価と基本料金を比べます。都市ガスは料金メニューの選択肢を確認します。
使い方の改善:給湯温度・待機電力・空調の設定を決めて共有する
給湯器の設定温度を必要以上に高くしている店は多いです。シャンプーの適温に対して、給湯器側の設定を下げ、混合水栓で調整する方が、温めるエネルギーが減ります。空調は設定温度と稼働時間をルール化し、営業終了後の消し忘れをなくします。ドライヤー・アイロンは使わないときにコンセントを抜くか、スイッチ付きタップにします。
設備の更新:省エネ型の給湯器・照明・空調は補助金と合わせて
照明のLED化、古いエアコンの更新、高効率給湯器への交換は効果が大きい一方、費用がかかります。国や自治体の省エネ関連の補助金が使える場合があるため、資源エネルギー庁や自治体の情報を確認してから決めます。減価償却の扱いは設備ごとに異なります。
毎月の確認:売上比と前年同月比を月次で見る
下げた後も、月次で表を更新します。前年同月比で増えた月は、客数が増えたのか、設定が戻ったのか、単価が上がったのかを1行で書いておくと、翌年の判断に使えます。
契約容量を下げ過ぎると、ドライヤーと空調の同時使用でブレーカーが落ちます。営業中に落ちれば施術が止まり、お客様に迷惑がかかります。契約容量の変更は、最大同時使用の時間帯(土日の午後など)を実測してから、電力会社と相談して決めてください。
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試算 — 契約と使い方の見直しでどれだけ変わるか
数字は仮の設定です。月商150万円、席数4、営業10時間の店で、見直し前の水道光熱費が月90,000円(6.0%)だったとします。
| 項目 | 見直し前 | 見直し後 | 差 |
|---|---|---|---|
| 電気(基本料金) | 12,000円 | 9,000円(契約容量を1段階下げる) | −3,000円 |
| 電気(電力量) | 38,000円 | 33,000円(空調設定・待機電力) | −5,000円 |
| ガス(給湯) | 30,000円 | 25,000円(給湯温度の見直し) | −5,000円 |
| 水道 | 10,000円 | 9,000円(節水シャワーヘッド) | −1,000円 |
| 合計 | 90,000円(6.0%) | 76,000円(5.1%) | −14,000円/月 |
この例では月14,000円、年168,000円の差です。設備の更新をせず、契約と使い方だけで出た数字です。効果が出るかどうかは店の状況によって異なり、この試算は目安です。ただ、やることの順番は同じで、費用のかからない手から始めれば損はありません。
プロパンガスの店が先に確認すること
プロパン(LPガス)は、事業者が自由に料金を決めています。同じ地域で同じ使用量でも、事業者によって月数千円の差が出ることがあります。現在の請求書で基本料金と従量単価を確認し、他社の見積もりと比べます。設備(給湯器やボンベ)を事業者から借りている場合は、契約に解約条件や設備の残債があることがあるため、契約書を先に読みます。
自宅兼店舗の場合の按分
自宅の一部を店舗にしている場合、水道光熱費は事業に使った分だけが必要経費です。国税庁は、必要経費に算入できるのは事業に直接必要な部分だけで、家事上の費用は含めないとしています。床面積や営業時間で按分の割合を決め、その根拠をメモに残します。按分の考え方は家事按分のやり方で扱っています。
値上がりした年の見方
電気・ガスの単価が上がった年は、使用量が同じでも金額が増えます。この場合、使い方の改善で吸収できる幅は限られます。単価の上昇分は、価格改定や客数の増加で売上側から吸収する判断も要ります。値上げの考え方は価格改定と値上げの進め方を参照してください。
経費としての扱い — 科目と記帳
水道光熱費は必要経費で、勘定科目は「水道光熱費」です。国税庁は、事業所得の必要経費として、売上原価のほか販売費・一般管理費など業務について生じた費用を挙げています。電気・ガス・水道はここに含まれます。
- 記帳のタイミング:請求書の日付か引き落とし日で記帳します。毎年同じ基準にします。
- 保存する書類:検針票・請求書・引き落としの明細。帳簿とともに保存します。
- 自宅兼店舗:按分割合を決め、事業分だけを経費にします。
- 設備の更新:給湯器やエアコンの購入費は水道光熱費ではなく、金額に応じて消耗品費または減価償却資産として処理します。
- 年末の整理:12月分の請求が翌年に来る場合、未払費用として当年に計上するかを毎年同じ扱いにします。
科目の全体は確定申告で使う勘定科目、記帳の仕組みは記帳と会計ソフトの選び方で扱っています。数字の管理を含めた資金計画の相談はVAULTAの融資・資金調達支援でも受け付けています。
よくある質問
水道光熱費の「平均」はどこかで公表されていますか?
美容室に限った公的な平均値は公表されていません。中小企業の業種別の経営指標に光熱費の項目が含まれることはありますが、店の営業時間や給湯の方式で大きく変わるため、他店の平均より自店の12か月の推移と売上比を見る方が判断に使えます。
電気の契約容量はどうやって決めればよいですか?
ドライヤー・アイロン・空調・給湯の同時使用が最も多い時間帯(土日の午後など)の実測が基準です。電力会社に相談すると、過去の使用実績から適正な容量を提案してもらえる場合があります。下げ過ぎるとブレーカーが落ちるため、余裕を残します。
節水シャワーヘッドは効果がありますか?
水の使用量が減るぶん、水道代と給湯のガス代(または電気代)の両方が下がります。効果の大きさは製品と使い方で異なり、水圧が下がると流し残しが出て施術時間が延びることもあるため、試して確かめてから全台に入れる順番が安全です。
営業時間を短くすれば光熱費は減りますか?
空調と照明の分は減りますが、給湯とドライヤーは客数に比例するため、客数が同じなら大きくは減りません。営業時間の短縮は光熱費よりも人件費と売上への影響が大きいため、光熱費だけを理由に決めない方がよいです。
新電力に切り替えると安くなりますか?
プランによって安くなる場合も、燃料費調整や市場価格連動で高くなる場合もあります。契約前に、過去12か月の使用量で試算してもらい、解約条件と料金の決まり方(市場連動かどうか)を確認してください。
省エネ設備の補助金はどこで探せばよいですか?
資源エネルギー庁の省エネルギー政策のページや、自治体の中小企業向け支援の案内が入口です。年度ごとに制度が変わるため、申請前に公募要領を確認し、補助対象の設備と申請時期を合わせます。補助金全般の流れは、補助金の申請の流れの記事も参照してください。
水道光熱費の月次チェックリスト
毎月の締めのときに、次の7つを確認してください。
- 12か月分の検針票・請求書を保管している
- 電気・ガス・水道を分けて月別に記録している(金額と使用量)
- 売上に対する比率を毎月出している
- 契約容量(アンペア/kW)が実態に合っている
- 給湯器の設定温度を決めて掲示している
- 照明・空調の消し忘れルールを決めている
- 前年同月と比べて増えた月の理由を1行で書いている
水道光熱費は、「12か月の表を作る」「契約→使い方→設備の順に手を付ける」の2つで管理できます。金額は小さく見えても、下げた分は毎月続きます。売上が伸び悩む月ほど、固定的な支出の見直しが利益を守ります。

出典・参考資料
- 電気料金について(資源エネルギー庁、2026年9月16日確認)
- 省エネルギー政策について(資源エネルギー庁、2026年9月16日確認)
- No.2210 必要経費の知識(国税庁、2026年9月16日確認)
売上比の目安は統計値ではなく経験的な範囲です。料金制度・補助金は変更されることがあるため、契約や申請の前に最新の公表資料を確認してください。記事内の試算は自分で置いた前提による計算です。
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