美容室の経費の比率は、金額そのものより「売上に対して何%か」で見ると管理できるようになります。売上が変われば適正額も変わるためです。
この記事では、経費を4つの区分に分けて比率を出す方法、区分ごとの見方、比率が崩れたときの直す順番、そして毎月の記録の残し方を整理します。
結論:美容室の経費は比率で管理する
「今月は経費が多かった」と感じても、売上も多かったのなら問題ではありません。逆に経費が減っていても、売上がそれ以上に減っていれば悪化しています。金額の増減だけを見ていると、良くなったのか悪くなったのかが判断できません。
比率で見ると、売上規模が変わっても同じ物差しで比べられます。先月と今月、去年の同じ月、そして繁忙期と閑散期。どれも同じ基準で並べられるようになります。
利益を残す考え方の全体像は利益率を上げる方法で扱っています。この記事は、その手前にある「測り方」に絞ります。

経費を4つに分けて比率を出す
すべての経費をひとまとめにすると、どこが重いのか分かりません。次の4区分に分けてください。動かし方がそれぞれ違うためです。
| 区分 | 含まれるもの | 性質 | 動かし方 |
|---|---|---|---|
| 材料費 | 薬剤、タオル、ペーパー | 客数に比例 | 使用量の管理と仕入れ |
| 人件費 | 給与、社会保険、外注工賃 | ほぼ固定 | 生産性と配置 |
| 固定費 | 家賃、水道光熱費、リース、通信 | 完全に固定 | 契約の見直し |
| 集客費 | 掲載料、広告費、クーポン原資 | 裁量で変動 | 獲得単価で判断 |
それぞれ「その区分の金額 ÷ 売上」で比率を出します。4つを足したものが総経費率で、100%から引いた残りが営業利益率のおおよその姿になります。
この4つのうち、来月すぐ動かせるのは固定費と集客費です。材料費は運用の改善に1〜2か月、人件費は数か月かかります。手をつける順番はここで決まります。
比率を出すときの分母は、値引き後の実売上を使ってください。クーポンで割り引いた分を売上に含めると、経費率が実際より低く見えます。レジの集計が値引き前になっている場合は、そこだけ手で直す必要があります。
区分ごとの見方
- 材料費率。客数に比例するはずなので、客数が変わっていないのに比率が上がったら、使用量か仕入れ価格のどちらかが動いています。計量して確かめてください。下げ方は材料費と原価率の下げ方で扱っています。
- 人件費率。単純に下げればよい項目ではありません。1人あたりの生産性(粗利 ÷ 人数)とセットで見ます。比率が高くても生産性が高いなら、投資として機能しています。
- 固定費率。売上が落ちたときにいちばん効いてくる区分です。ここが重いと、少しの落ち込みで赤字になります。家賃の目安は家賃は売上の何割が目安かで扱っています。
- 集客費率。金額ではなく、獲得できた新規1人あたりの単価で判断します。比率が低くても、来た人が再来店しなければ意味がありません。
②は誤解されやすい区分です。人件費率だけを下げると、スタッフが減って回転が落ち、結果として売上も下がることがあります。比率の数字だけを目標にせず、何が起きているかを併せて確認してください。
④の集客費は、比率の目標を先に決めておくと判断が早くなります。「新規1人あたりの獲得単価が、初回の粗利を超えたら見直す」というように、金額ではなく条件で決めておく形です。条件が決まっていれば、毎月悩まずに済みます。

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比率を出す手順
-
3か月分の帳簿を用意する
1か月だけでは季節変動と区別がつきません。連続する3か月を並べてください。
-
勘定科目を4区分に割り振る
どの科目をどの区分に入れるかを決めて、メモに残します。毎月同じ割り振りにすることが前提です。
-
各区分の比率を計算する
区分の合計 ÷ その月の売上。小数第1位まで出せば十分です。
-
3か月を並べて動きを見る
上がっているのか、下がっているのか、横ばいか。1回だけの数字では判断できません。
-
いちばん動いた区分を特定する
その区分が今月の打ち手の対象です。全部を同時に直そうとしないでください。
②の割り振りは、一度決めたら変えないことが大切です。科目の入れ方が年ごとに変わると、前年比較ができなくなります。勘定科目の考え方は確定申告で使う勘定科目で扱っています。
⑤で「全部が少しずつ悪い」という結果になることもあります。その場合は経費ではなく売上側に原因があります。客数か客単価のどちらかが落ちていないかを確認してください。経費を削っても、売上の落ち込みは止まりません。
外部の数値と比べるときの注意
業種平均と比べたくなりますが、注意が必要です。美容業を含む生活衛生関係営業については、日本政策金融公庫が業種別の経営指標を公表しており、収益や費用の構成を確認できます。
出典:日本政策金融公庫「生活衛生関係営業の景気動向等調査」および同公庫が公表する業種別経営指標。調査年により数値は異なります。詳細は同公庫の公表資料をご確認ください。
ただし、比べる相手が自店と条件が違えば参考になりません。一人サロンと10人規模の店では、人件費率も固定費率もまったく違う水準になります。外部の数値は「極端にずれていないか」の確認に使い、判断の軸は自店の前月・前年に置いてください。
比率を下げること自体を目的にしないでください。教育や設備への支出を削れば短期的に比率は改善しますが、数年後の売上を落とすことがあります。削ってよい費用と、投資として残す費用を分けて考える必要があります。
比率を出すと、季節による揺れも見えてきます。閑散期は売上が下がるぶん固定費率が上がるのが普通で、それ自体は異常ではありません。前年の同じ月と比べて初めて、実力として悪化しているかが分かります。1年分たまるまでは、断定的な判断を急がないでください。
比率が崩れたときの直す順番
どの区分が動いたかが分かったら、次の順で手をつけます。効き始めるのが早い順です。
まず固定費です。使っていないサブスクリプション、稼働に合っていないリース、過剰な保険。今月中に手をつけられて、来月の数字に出ます。
次が集客費です。獲得単価を計算し、粗利に見合っていない出稿を止めます。ここも翌月から効きます。
三番目が材料費です。1人あたりの使用量を計量して、使いすぎている工程を見つけます。効くまで1〜2か月かかります。
人件費は最後です。採用や配置の変更は数か月かかるうえ、間違えると売上そのものが下がります。ほかの3つを試してから検討してください。
毎月の記録チェックリスト
次の5つを毎月同じ形で残せば、比率の管理は続きます。
- 売上、材料費、人件費、固定費、集客費の5つを月ごとに記録した。
- 勘定科目をどの区分に入れるかの割り振りをメモに残した。
- 各区分の比率を計算し、3か月並べた。
- いちばん動いた区分を特定した。
- その区分に対して、今月やることを1つ決めた。

まず直近3か月を4区分に分けてみてください。それだけで、どこが重いのかは見えます。全部を同時に直そうとせず、いちばん動いた区分から着手するほうが結果が出ます。
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