美容室のハサミは経費になるか|10万円の境目と、減価償却の考え方

美容室の店内とセット面の様子

美容室のハサミは経費になりますが、1丁の価格が10万円を超えるかどうかで処理が変わります。10万円未満ならその年の経費、超えると固定資産として複数年に分けます。

この記事では、金額ごとの処理、勘定科目の選び方、独立時に持ち込んだハサミの扱い、そして記録の残し方を整理します。

美容室 ハサミ 経費|美容室の店内の様子
目次

結論:美容室のハサミの経費処理は金額で3つに分かれる

ハサミは施術に直接使う道具なので、事業の支出であること自体に疑いはありません。問題になるのは「いつの経費にするか」だけです。

判断の基準は1丁あたりの取得価額です。セットで購入しても、通常は1丁ごとに判定します。ケースや研ぎ代は別の扱いになります。

経費全体の考え方は美容室で経費にできるものにまとめています。この記事はハサミなど施術道具に絞ります。

金額ごとの処理を表で確認する

1丁あたりの価額 処理 その年に経費にできる額
10万円未満 その年の経費(消耗品費など) 全額
10万円以上20万円未満 一括償却資産として3年で均等償却する方法も選べます 取得価額の3分の1
30万円未満 青色申告者は少額減価償却資産の特例の対象となる場合があります(年間合計300万円が上限) 全額
30万円以上 固定資産として耐用年数にわたり減価償却 耐用年数に応じた額

実務で多いのは1丁3万〜8万円の価格帯で、この場合は購入した年に全額を経費にできます。カット用・セニング用・スライド用と3丁を同じ年に買っても、1丁ずつが10万円未満なら合計15万円でもその年の経費です。

一方、1丁15万円のハサミを買った場合は、3年に分けるか、青色申告なら特例で全額をその年に入れるかを選ぶことになります。その年の利益が大きい年は全額、利益が小さい年は分けるほうが、税負担を平準化しやすい場合があります。

勘定科目はどれを使うか

  1. 消耗品費:10万円未満のハサミ・コーム・クリップなど。最も一般的な科目です。
  2. 工具器具備品:10万円以上で資産計上する場合。貸借対照表に載ります。
  3. 修繕費:研ぎ代・メンテナンス費用。金額が小さくても資産の価値を上げるものではないため経費です。
  4. 雑費に入れない:金額が把握できなくなり、後から比率の分析ができなくなります。

科目は税額に影響しませんが、後から「道具にいくら使ったか」を見返せるかどうかが変わります。消耗品費と修繕費を分けておくと、道具の買い替え周期を数字でつかめます。科目の整理は勘定科目と仕訳を参照してください。

美容室 ハサミ 経費|美容室でのカウンセリングの様子

セットで買ったときの判定はどうなるか

カット用とセニング用が2丁セットで12万円という売り方があります。この場合、1丁あたり6万円として10万円未満で処理してよいのか、12万円の資産として扱うのかで迷いやすいところです。

判定の考え方は、それぞれが単独で機能する道具かどうかです。ハサミは1丁ずつ独立して使えるため、通常は1丁ごとに判定します。一方、本体と専用部品のように、単独では使えないものが組み合わさっている場合は、まとめて1つの資産として見ます。

迷ったときは、購入時の明細に1丁ずつの単価が記載されているかを確認してください。単価が分かれていれば、その金額で判定した根拠を示せます。明細が「セット一式」としか書かれていない場合は、販売店に内訳の記載を依頼しておくと後の説明が楽になります。

研ぎ代とオーバーホールの線引き

研ぎ代は修繕費として、その年の経費になります。判断が分かれるのは、大がかりなオーバーホールを行った場合です。

税務上、修理・改良にかかった費用のうち、資産の価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする部分は「資本的支出」として資産に計上するという考え方があります。ただし、通常の維持管理や原状回復にあたるものは修繕費です。

ハサミの研ぎは、切れ味を元の状態に戻す作業なので、通常は修繕費として扱えます。1回4,000円、年6回で24,000円という規模であれば、判断に迷う水準ではありません。金額が数十万円規模になる改造や刃の全交換のようなケースでは、事前に確認しておくほうが安全です。

スタッフの道具を店が負担する場合

スタッフのハサミを店が購入して貸与する形は、店の資産として処理します。この場合、道具は店のものなので、退職時には返却してもらう取り決めが必要です。

一方、スタッフ個人が購入する道具に対して店が補助を出す形は、扱いが変わります。現金で渡すと給与として課税対象になる場合があります。店名義で購入して貸与する形にすると、この問題は起きません。

どちらの形にするかは、採用時の条件として求人票に書いておくと認識のずれが起きにくくなります。募集条件の書き方は求人票の書き方を参照してください。

「経費になるか」より重要な3つの記録

実務で問題になるのは、経費にできるかどうかではなく、後から説明できるかどうかです。次の3つを残しておけば、ほとんどのケースで足ります。

  1. 品名を具体的に書く

    領収書に「シザー」とだけあると、何に使うものか分かりません。「カット用シザー 1丁」と書き足します。

  2. 金額の判定を記録する

    10万円以上の場合は、資産計上・一括償却・特例のどれを選んだかをメモに残します。翌年の処理で迷わなくなります。

  3. 使用開始日を残す

    減価償却は使い始めた日から計算します。購入日と使用開始日がずれる場合は、両方を記録します。

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独立時に持ち込んだハサミの扱い

勤務時代に自費で購入したハサミを、独立後の店で使う場合があります。この場合、開業時にその資産を事業用に転用したものとして扱う考え方があります。

ただし、購入時の領収書がない、購入から年数が経っている、といったケースでは評価額の算定が難しくなります。金額が大きい道具については、開業前に税理士へ確認しておくほうが安全です。自己判断で高額な評価を付けると、後から説明が必要になることがあります。

実務上の目安として、購入から数年が経過した道具は、当初の価格そのままではなく使用による価値の減少を考慮した額で見ます。開業時の準備全般は開業の手続きにまとめています。

年間の道具代を試算して予算にする

ハサミは消耗品でありながら単価が高く、買い替えの時期が読みにくい支出です。年間の枠を先に決めておくと、資金繰りが崩れにくくなります。

項目 単価 頻度 年間額
カットシザー 60,000円 3年に1丁 20,000円
セニングシザー 40,000円 3年に1丁 13,000円
研ぎ(1丁) 4,000円 年2回×3丁 24,000円
コーム・クリップ類 随時 12,000円
年間合計 69,000円

月あたりに直すと約5,800円です。この額を毎月の固定費として最初から見込んでおくと、買い替えの時期に資金が足りないという事態を避けられます。数字は仮の設定で、使用頻度や道具の価格帯によって変わります。

出典:国税庁 タックスアンサー「No.2100 減価償却のあらまし」「少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例。制度や統計は改定されることがあるため、実際の判断では最新の公表資料を確認し、必要に応じて税理士・社会保険労務士など専門家にご相談ください。記事内の計算は自分で置いた前提による試算です。

道具の支出を年間で把握しておく理由

ハサミは1丁数万円と単価が高い一方、買い替えの時期が読みにくい支出です。年間の枠を決めておくと、必要になった月に資金が足りないという事態を避けられます。

目安として、年間の道具代が売上の1%を超えているかどうかを見てください。月商80万円なら年間960万円の1%=9.6万円です。これを大きく超えている場合は、買い替えの頻度か、研ぎに出す間隔を見直す余地があります。

逆に、極端に少ない場合も注意が必要です。切れ味が落ちたハサミを使い続けると施術時間が延び、手や肩への負担も増えます。道具代を削ることが、結果的に施術できる人数を減らしていることがあります。

研ぎに出す間隔を決めておく

  1. 使用頻度で決める:1日5人の施術で使うなら、4〜6か月に1回が一般的な目安とされています。
  2. 切れ味の変化で決める:毛が滑る、引っかかる感覚が出たら早めに出します。
  3. 予備を持って回す:研ぎに出している間に使う予備が1丁あると、営業に支障が出ません。

予備を1丁持つには追加の購入費が必要ですが、研ぎに出せずに切れ味の落ちた道具を使い続けるより、施術の質と時間の両方で有利になる場合があります。この予備分も、10万円未満ならその年の経費です。

記録のチェックリスト

次の5つを購入のたびに残してください。後から説明を求められたときに、これだけあれば足ります。

  • 領収書に「カット用シザー」など品名を書き足した
  • 1丁あたりの価格が10万円未満か以上かを確認した
  • 10万円以上の場合、資産計上か特例かを選んで記録した
  • 研ぎ代を修繕費として別に集計している
  • 年間の道具代の合計を出し、翌年の予算に反映した

道具以外の支出も含めた年間の整理は決算前にやることから着手すると漏れが減ります。

美容室 ハサミ 経費|美容室のスタッフ・チームの様子

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この記事を書いた人

美容室オーナー・経営者向けメディア「vaulta」編集部。集客・リピート・融資・求人・DX・独立の実務情報を、一次情報を確認のうえ発信。お金に関わる記事は中小企業診断士の監修を受けています。編集責任者:ISOYAMA。

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