美容室の面貸しの勘定科目は、貸す側は「売上高(または雑収入)」、借りる側は「地代家賃」か「支払手数料」で整理するのが一般的です。どれを使うかは、契約が「場所を貸している」のか「売上を分け合っている」のかで決まります。
この記事では、貸す側・借りる側それぞれの科目の選び方、固定制と歩合制での違い、消費税とインボイスの扱い、帳簿に残す記録を整理します。

結論:美容室の面貸しの勘定科目は「契約の形」で決まる
面貸しには大きく2つの形があります。席を固定額で貸す「賃貸型」と、借り手の売上から一定率を受け取る「歩合型」です。科目はこの形に沿って決めると、後から説明がつきます。
勘定科目そのものに法律上の決まりはなく、税務上は「何の収入・支出か」が分かり、毎年同じ処理を続けていれば問題になりにくいとされています。大事なのは科目名より、契約書と帳簿の内容が一致していることです。
面貸しの料金の決め方は面貸し料金の相場はどう見るか、貸す側の設計は面貸し経営を貸す側から考えるで扱っています。この記事は経理処理に絞ります。
貸す側・借りる側の科目の早見表
| 契約の形 | お金の流れ | 貸す側の科目 | 借りる側の科目 |
|---|---|---|---|
| 賃貸型(固定席料) | 借り手が月額を支払う | 売上高(席料収入)または雑収入 | 地代家賃 |
| 歩合型(売上の○%) | 借り手が売上の一定率を支払う | 売上高(席料収入) | 支払手数料 |
| 店が売上を預かり差額を渡す型 | お客様の支払いは店が受け取り、借り手へ取り分を支払う | 売上高(施術売上)/借り手への支払いは外注費 | 売上高(受け取った額) |
| 材料費込み | 席料に材料代が含まれる | 売上高(席料)と材料の実費部分を分けて記録 | 地代家賃と材料費に分ける |
3行目の「店が売上を預かる型」は、経理上は面貸しというより業務委託に近い形になります。契約書の名称が「面貸し」でも、お金の流れがこの形なら、外注費として処理し、支払調書や源泉徴収の要否を確認する必要が出ます。
貸す側の処理 — 事業所得か不動産所得か
貸す側でまず確認するのは、席料収入が事業所得に含まれるのか、不動産所得になるのかです。判断の目安は「場所だけを貸しているか、事業の一部として提供しているか」です。
-
提供しているものを書き出す
席・鏡・シャンプー台だけか、受付・予約管理・材料・タオル・清掃まで含むか。含むものが多いほど、美容室の事業の一部として提供している形に近づきます。
-
事業の一部なら売上高に含める
受付や材料まで提供しているなら、席料は美容室の事業収入として売上高(補助科目「席料収入」)に入れる整理が自然です。施術売上と分けておくと、面貸しの採算が後から見えます。
-
場所だけなら不動産所得の可能性を確認する
鍵を渡して場所だけを貸し、店の運営に関与しない形は、不動産の貸付けに近くなります。この場合は所得区分が変わり、青色申告特別控除の扱いにも影響するため、税理士に確認してください。
-
年をまたぐ前受けは期間で按分する
3か月分の席料を前払いで受け取った場合、当期分だけを収入にし、残りは前受金にします。
所得区分は科目より重い論点です。事業所得か不動産所得かで、控除・損益通算・社会保険の判断まで変わる場合があります。契約の形が「場所だけ」に近いなら、自己判断せず専門家に確認してください。

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借りる側の処理 — 地代家賃と支払手数料の使い分け
借りる側は、支払った席料を必要経費に入れます。固定額なら地代家賃、売上に連動する歩合なら支払手数料と分けておくと、固定費と変動費が帳簿で区別できます。
数字は仮の設定です。月商40万円、固定席料8万円、材料費実費2万円、歩合はなしの場合、帳簿は「地代家賃80,000円/材料費20,000円」となり、固定費率は20%と読めます。歩合型で売上の30%なら「支払手数料120,000円」で、売上が増えるほど費用も増える構造が数字に出ます。
- 席料と材料費は必ず分ける:まとめて1科目にすると、材料の使いすぎが見えなくなります。貸す側に内訳付きの請求書を出してもらいます。
- 自宅兼用の経費と混ぜない:面貸しで働く人は自宅で事務作業をすることが多く、自宅家賃の按分と席料を同じ地代家賃に入れると区別がつきません。補助科目で分けます。
- 保証金・敷金は経費にしない:契約時に預ける保証金は返還されるものなので、資産(差入保証金)として記録します。返還されない部分だけが経費または繰延資産の検討対象です。
借りる側の経費全体の考え方はフリーランス美容師の経費はどこまで入るかにまとめています。
消費税とインボイスで確認すること
| 項目 | 貸す側 | 借りる側 |
|---|---|---|
| 消費税の課税区分 | 席料は課税売上(事業用の場所・設備の貸付け) | 席料は課税仕入れ |
| インボイス登録 | 借り手が課税事業者なら、登録番号付きの請求書を求められる | 貸す側が未登録なら、仕入税額控除に経過措置の制限がかかる |
| 請求書の記載 | 席料・材料費・税率を分けて記載する | 受け取った請求書を7年保存する |
| 免税事業者の場合 | 登録するかは売上規模と借り手の状況で判断 | 簡易課税なら貸す側の登録有無の影響は小さい |
面貸しの席料は住宅の家賃と違い、消費税の課税対象です。貸す側が「家賃だから非課税」と思い込んで請求書を作ると、借り手側の処理が狂います。契約書に税込・税抜の別と税率を明記してください。
出典:国税庁 タックスアンサー「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」(タックスアンサー 1370)、「No.6201 非課税となる取引」、「No.6497 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」、所得税法第26条(不動産所得)・第27条(事業所得)。制度は改正されることがあるため、実際の判断では最新の公表資料を確認し、必要に応じて税理士など専門家にご相談ください。記事内の計算は自分で置いた前提による試算です。
契約書と帳簿をそろえる — 揉めたときに効くのは記録
面貸しの経理で実際に問題になるのは、科目の選び方より「契約書に書いてある内容と、実際のお金の流れが違う」ことです。契約書は固定席料なのに、実態は売上の歩合で精算していれば、税務上も契約上も説明が難しくなります。
- 毎月の請求書か精算書を残す:席料・材料費・歩合の内訳が分かる1枚を、貸す側が発行し、双方が保管します。
- お客様の支払いを誰が受けるかを決める:借り手が直接受け取るのか、店のレジを通すのかで科目が変わります。混在させないでください。
- 年に1回、契約書と帳簿を突き合わせる:料率や席料の改定があったのに契約書を直していない例は多く見られます。改定のたびに覚書を残します。
契約書に入れる項目は面貸し契約書に入れる条項の一覧、勘定科目全般は確定申告で使う勘定科目を参照してください。
歩合型で「店が売上を預かる」形にした場合の実務
歩合型の中でも、お客様の会計を店のレジで受け、月末に借り手へ取り分を支払う形は、経理の負担が最も大きくなります。店の売上高に借り手の施術売上が全額乗り、借り手への支払いが外注費として立つためです。数字は仮の設定です。
| 項目 | 店側の帳簿 | 借り手側の帳簿 |
|---|---|---|
| お客様からの受取 40万円 | 売上高 400,000円 | — |
| 借り手の取分 60% | 外注費 240,000円 | 売上高 240,000円 |
| 材料費実費 2万円を店が負担 | 材料費 20,000円 | — |
| 店の手残り | 140,000円(売上−外注費−材料費) | — |
この形では店の売上高が実態より大きく見えるため、消費税の課税事業者になる基準(前々年の課税売上高1,000万円)に早く到達する点に注意が必要です。席料だけを受け取る賃貸型なら売上に乗るのは席料だけで、同じ店でも課税事業者になる時期が変わります。
また、借り手への支払いが外注費にあたる場合、年間の支払額によっては支払調書の作成が必要になることがあります。美容師への報酬は所得税の源泉徴収の対象業種には原則含まれませんが、契約内容によって判断が分かれるため、年初に税理士へ確認しておくと安心です。
申告前のチェックリスト
面貸しの経理を締める前に、貸す側・借りる側それぞれ次を確認してください。
- 契約の形(賃貸型/歩合型/預かり型)と科目が対応している
- 貸す側:所得区分(事業か不動産か)を確認した
- 借りる側:席料と材料費を分けて記帳している
- 請求書に税率と登録番号(登録している場合)がある
- 保証金は経費にせず資産として記録している
- 料率・席料の改定が契約書か覚書に反映されている
面貸しの勘定科目は、契約の形を先に決めれば自然に決まります。迷ったら「場所を貸しているのか、売上を分けているのか」に立ち返ってください。

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面貸し・業務委託で材料費はどの勘定科目になるか — 負担者別の仕訳例
面貸しや業務委託では、薬剤やシャンプーなどの材料を「店が用意する」「借りる側が持ち込む」「店の材料を使った分だけ精算する」の3つの形があり、形によって貸す側・借りる側の勘定科目が変わります。
| 材料の形 | 貸す側(店)の科目 | 借りる側(美容師)の科目 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 店が用意し、席料に含める | 仕入高 または 材料費(自店の施術と同じ) | 計上なし(席料に含まれる) | 席料の設定に材料分を織り込む |
| 借りる側が持ち込む | 計上なし | 仕入高 または 材料費 | 店の棚に置く場合は、店の在庫と分けて管理 |
| 店の材料を使った分だけ精算する | 使った分を「売上高」または「雑収入」、仕入は通常どおり | 材料費 または 支払手数料 | 精算単価を契約書に。消費税は課税取引 |
仕訳例(数字は仮の設定)
店がカラー剤5,000円分を面貸し美容師に使わせ、月末に精算した場合です。
- 貸す側(店):仕入時「仕入高 5,000 / 現金 5,000」、精算時「現金 5,500 / 売上高(材料精算)5,000・仮受消費税 500」。材料の実費精算でも、店から見れば材料の販売にあたるため課税売上として扱うのが一般的です。
- 借りる側(美容師):「材料費 5,000・仮払消費税 500 / 現金 5,500」。インボイス登録をしていない店から買う場合は、仕入税額控除の経過措置(2026年10月以降は50%)を確認します。
- 席料に材料分を含める場合:店は「売上高(席料)」のみ、美容師は「地代家賃」または「支払手数料」のみで、材料の仕訳は出てきません。この形が最も帳簿が簡単です。
材料の実費精算を「立替金」で処理する例がありますが、店が仕入れて美容師に使わせる形は立替ではなく販売にあたる場合が多く、消費税の課税売上に含めるのが安全です。判断に迷う場合は税理士に確認してください。
出典:国税庁「No.6201 非課税となる取引」「No.6497 適格請求書等保存方式に係る経過措置」、消費税法第2条(課税資産の譲渡等)。仕訳例は自分で置いた前提によるもので、契約の形や消費税の課税区分は個別に確認してください。
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