理容室と美容室の違いは、根拠となる法律(理容師法・美容師法)と資格が別であることに始まり、業務の境目は「顔剃りは理容師のみ」「パーマ・化粧などの美容行為は美容師」にあります。カットについては、2015年の運用見直しで、理容師も美容師も男女の区別なく行えるようになりました。両方の免許を持つ人だけで営業する店は、理容所と美容所を同じ場所で重複して開設できます。
この記事では、資格の違い、できる施術の境界、2015年の運用見直しの内容、両方の免許を持つ場合の開業の形(重複開設)、保健所への届出の違いを、理容師法・美容師法と厚生労働省の資料をもとに整理します。

結論:資格は別、境目は「顔剃り」と「パーマ・化粧」。開業の形は免許とメニューで決まる
「理容」と「美容」は法律上の定義が違います。理容師法は、理容を「頭髪の刈込、顔そり等の方法により、容姿を整えること」と定め、美容師法は、美容を「パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」と定めています。この定義の違いが、資格・業務範囲・店の届出の違いにつながっています。
開業の形を決めるときは、①自分とスタッフの免許、②提供したい施術、③届け出る店の種類(理容所・美容所・両方)の順で考えます。免許が片方しかなければ、その資格の業務範囲でメニューを組みます。両方の免許を持つ人だけで営業するなら、重複開設という選択肢があります。
開業に必要な資格と届出の全体は開業に必要な資格と届出、管理美容師の要件は開業に管理美容師は必要かで扱っています。この記事は理容と美容の「違い」に絞ります。
資格の違い — 理容師と美容師
| 項目 | 理容師 | 美容師 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 理容師法 | 美容師法 |
| 業務の定義 | 頭髪の刈込、顔そり等の方法により容姿を整える | パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により容姿を美しくする |
| 免許 | 理容師免許(国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許) | 美容師免許(同) |
| 養成 | 理容師養成施設で所定の課程を修了 | 美容師養成施設で所定の課程を修了 |
| 両方の取得 | 片方の免許を持つ人が、もう片方の養成課程を短縮して受ける仕組みがある | 同左 |
| 店の種類 | 理容所(保健所に開設届) | 美容所(保健所に開設届) |
| 管理者 | 従業者2人以上の理容所は管理理容師 | 従業者2人以上の美容所は管理美容師 |
免許は別々で、理容師免許で美容所の業務を行うことも、その逆もできません。「理容師だからカットは何でもできる」「美容師だから顔周りの処理は何でもできる」という理解は誤りで、業務の境目は次の見出しのとおりです。
できる施術の境目 — 顔剃り・カット・パーマ・化粧
| 施術 | 理容師 | 美容師 | 備考 |
|---|---|---|---|
| カット(男性客) | できる | できる | 2015年の運用見直しで、美容師がカットのみを男性に行うことが認められた |
| カット(女性客) | できる | できる | 同じく、理容師がカットのみを女性に行うことが認められた |
| 顔剃り(カミソリでのシェービング) | できる | 原則できない | 美容師は、化粧に付随する軽微な産毛の処理などに限られるとされてきた |
| パーマネントウエーブ | 原則として美容行為 | できる | 理容師が行うパーマの扱いは、理容の範囲内(頭髪の刈込に付随する範囲など)に限られるとされてきた。詳細は自治体・厚生労働省の解釈で確認 |
| ヘアカラー | できる(理容の範囲で) | できる | — |
| 化粧・着付け・結髪 | 原則できない | できる | 美容の定義に含まれる |
| シャンプー・ヘッドスパ | できる | できる | 施術に付随する範囲 |
| まつ毛エクステンション | できない | できる(美容師免許が必要) | 美容行為とされている |
厚生労働省は2015年7月に、理容師・美容師の業務範囲の運用を見直し、それまで「理容師は男性客、美容師は女性客」を前提に区別されていたカットについて、性別によらず、理容師・美容師のどちらもカットのみの施術を行えるとしました。一方で、顔剃りは理容師の業務、パーマ・化粧は美容の業務という区分は変わっていません。運用の詳細は厚生労働省の通知と自治体の解釈で確認してください。
「美容室で顔剃りをしてほしい」と言われたら
美容師免許のみの店では、カミソリでの顔剃りは行えません。ブライダルのシェービングや、メンズ客の顔剃りの需要がある場合は、理容師免許を持つスタッフを置き、理容所として届け出る(重複開設)か、提携する理容室を紹介する形になります。メンズ客の集客はメンズ客を増やす方法で扱っていますが、顔剃りは免許の壁があることを踏まえてメニューを組みます。

どちらで開業するかを決める手順(5ステップ)
持っている免許を確認する
自分とスタッフ全員の免許を一覧にします。理容のみ、美容のみ、両方、のどれかで、開業の形の選択肢が決まります。
提供したい施術を書き出す
顔剃り、パーマ、カラー、化粧、着付け、ヘッドスパ、まつ毛など、メニューに入れたい施術を書き出します。
業務範囲に当てはめる
顔剃りがあるなら理容師の業務、パーマ・化粧・着付け・まつ毛があるなら美容師の業務です。両方あるなら、両方の免許と重複開設が要ります。片方しかないなら、メニューを業務範囲に合わせて絞ります。
届出の形を決める
理容所として開設届を出すか、美容所として出すか、両方を同じ場所で重複開設するか。重複開設は、従事者全員が理容師と美容師の両方の免許を持っていることが要件です。
保健所に事前相談する
構造設備の基準(理容所と美容所で異なる場合がある)、重複開設の要件、管理者の要件、検査の流れを確認します。内装の設計前に相談します。
理容所と美容所の重複開設は、「両方の免許を持つ人だけで営業する」ことが要件です。美容師免許のみのスタッフが1人でもいれば、その店は重複開設の要件を満たしません。後からスタッフを採用するときも、免許の要件が続くため、採用の条件に影響します。要件の詳細は保健所で確認してください。
VAULTA|美容室専門のLINE公式サポート
美容室特化型のLINE公式、
無料でつくれます。
集客・リピート・求人のヒントをLINEで配信。美容室に特化した公式アカウントを無料で作成・運用サポートします。
無料でLINE公式を作成する↗友だち追加だけ。相談・作成は無料です。
両方の免許を持つ場合の開業の形 — 重複開設
2015年の法改正により、理容師と美容師の両方の免許を持つ者のみが従事する場合、理容所と美容所を同じ場所に重複して開設できるようになりました。これにより、1つの店で顔剃りとパーマ・化粧の両方を提供できます。
| 項目 | 重複開設で確認すること |
|---|---|
| 従事者の要件 | 店で施術に従事する全員が、理容師免許と美容師免許の両方を持っている |
| 届出 | 理容所の開設届と美容所の開設届を、それぞれ保健所に出す。検査もそれぞれ |
| 構造設備 | 理容所・美容所それぞれの基準を満たす。自治体の条例で基準が異なる場合がある |
| 管理者 | 従業者2人以上なら、管理理容師と管理美容師(両方の講習を受けた者) |
| 採用 | 両免許を持つ人しか施術に従事できないため、採用の母数が限られる |
| 看板・表示 | 理容所・美容所の両方であることが分かる表示。屋号の使い方は保健所と確認 |
数字は仮の設定ですが、メンズ客が4割を占める店で、顔剃りを含むメニューを1人あたり1,500円上乗せして提供できれば、月200人の来店のうち80人×1,500円=月12万円の売上が加わります。重複開設の届出と設備の手間に対して、この上乗せが続くかどうかが判断の材料です。重複開設は、両免許を持つ美容師・理容師が1人で開業する形(1人店)に向いています。スタッフを増やす計画がある店は、両免許の要件が採用を制限することを踏まえて判断します。1人店の経営は一人サロンの経営を軌道に乗せる方法で扱っています。
理容所と美容所で違う届出・基準
開設届の様式、構造設備の基準(面積、作業所と待合の区分、消毒設備、照明、換気など)は、理容師法・美容師法とそれぞれの自治体の条例で定められています。基準の多くは共通していますが、細部が異なる自治体があるため、どちらで届け出るかを決めてから保健所に確認します。届出の流れは保健所の検査と基準で扱っています。
法人化・複数店舗での扱い
開設届は店舗ごと、免許は個人ごとです。法人で複数の店舗を持つ場合、店舗ごとに理容所か美容所かを届け出ます。1つの店を美容所、別の店を理容所として運営することは可能で、この場合はそれぞれの店で従事者の免許が要件に合っていれば足ります。2店舗目の判断は2店舗目を出す判断基準で扱っています。
求人・採用での書き方
求人票には、必要な免許(理容師・美容師・両方)を明記します。重複開設の店は「理容師免許と美容師免許の両方」が必須条件です。免許の要件を曖昧にして採用すると、施術に従事させられない事態になります。求人票の書き方は応募が来る美容師求人票の書き方で扱っています。免許の構成を踏まえた採用の設計はVAULTAの求人・採用・DX支援でも相談を受け付けています。
お客様への説明の仕方
理容と美容の違いは、お客様にはほとんど知られていません。「美容室なのに顔剃りができないのはなぜか」「理容室でカラーはできるのか」といった質問には、「法律で資格ごとにできる施術が決まっていて、当店は美容師の免許で営業しているため顔剃りはできません」のように、理由を短く伝えます。断るだけでなく、提携の理容室や、両免許の店を案内できると、お客様の不満が残りません。
予約サイトやメニュー表にも、顔剃りの可否、メンズカットの対応、まつ毛やヘッドスパの対応を書いておくと、来店後に「できない」と伝える場面が減ります。メニュー表の作り方はメニュー表の作り方で扱っています。
よくある質問
美容師が男性客のカットだけをするのは違法ですか?
2015年7月の厚生労働省の運用見直しにより、美容師がカットのみの施術を男性客に行うことは認められています。それ以前は、美容行為に付随する場合に限るという解釈でした。顔剃りは引き続き理容師の業務です。
理容師がパーマをかけることはできますか?
パーマネントウエーブは美容師法上の美容行為ですが、理容師が理容の範囲内で行うパーマの扱いについては、厚生労働省の解釈や自治体の運用で整理されています。自店の施術がどこまで認められるかは、管轄の保健所に確認してください。
両方の免許を取るにはどうすればよいですか?
片方の免許を持つ人がもう片方を取る場合、養成施設の課程が短縮される仕組みがあります。修業期間や科目の免除は養成施設と法令で定められており、変更されることがあるため、養成施設と厚生労働省の案内で確認してください。
美容室でまつ毛エクステはできますか?
まつ毛エクステンションは美容行為とされ、美容師免許が必要です。理容師免許では行えません。美容所の届出の範囲で、衛生基準に沿って行います。
看板に「理容・美容」と両方書けますか?
重複開設の要件を満たして両方の開設届を出していれば、両方であることを表示できます。片方しか届け出ていない店が両方を名乗ると、誤認を招き問題になります。表示の方法は保健所に確認してください。
スタッフに理容師と美容師が混在しています。重複開設できますか?
できません。重複開設は、従事者全員が両方の免許を持つことが要件です。混在する店は、理容所か美容所のどちらかとして届け出て、各スタッフはその店の種類に合う免許の業務だけを行います。
理容・美容の区分チェックリスト
開業の形を決める前に、次の7つを確認してください。
- 自分とスタッフ全員の免許(理容・美容・両方)を一覧にした
- メニューに顔剃り(シェービング)があるかを確認した
- メニューにパーマ・カラー・化粧・着付け・まつ毛があるかを確認した
- 理容所・美容所・重複開設のどれで届け出るかを決めた
- 重複開設なら従事者全員が両免許であることを確認した
- 管理理容師・管理美容師の要件(2人以上の場合)を確認した
- 保健所に構造設備の基準と検査の流れを確認した
理容と美容の違いは、「顔剃りは理容師」「パーマ・化粧は美容師」「カットは両方」と覚え、免許とメニューから開業の形を決めることで整理できます。重複開設は便利な形ですが、採用の要件が続く点を踏まえて選んでください。

出典・参考資料
- 理容師法(e-Gov法令検索、2026年9月16日確認)
- 美容師法(e-Gov法令検索、2026年9月16日確認)
- 生活衛生関係営業法の概要(厚生労働省、2026年9月16日確認)
業務範囲の運用と重複開設の要件は、法令・厚生労働省の通知・自治体の条例と解釈で定められ、変更されることがあります。開業前に管轄の保健所で確認してください。
VAULTA|美容室専門のLINE公式サポート
美容室に特化したLINE公式、
無料でおつくりします。
予約・再来店・求人・販促まで、LINEひとつで。美容室の集客と経営に効く公式アカウントを、無料で作成します。
無料でLINE公式を作成する↗友だち追加だけ。相談・作成は無料です。

コメント