美容室で備品を切らすのも抱えすぎるのも、原因は同じ「発注の基準がないこと」です。気づいた人が発注する運用では、重複と欠品の両方が起きます。
この記事では、管理する対象の絞り方、発注基準の決め方、担当の置き方、そして棚卸しの進め方を解説します。
結論:美容室の備品管理は「発注点」を決めると安定する
在庫を数えることが目的ではありません。決めるべきは、どこまで減ったら発注するかという1点です。
「残り2本になったら発注」と決めておけば、誰でも判断できます。棚を見た人が発注できる状態になり、オーナーが確認する必要がなくなります。
材料費の考え方は材料費と原価率の下げ方、衛生面の運用は衛生管理と器具消毒の運用で扱っています。

発注点を決めるもうひとつの利点は、判断をスタッフに任せられることです。オーナーが在庫を見て回る必要がなくなり、その時間を他に使えます。属人化を減らす取り組みでもあります。
まず、何を管理しないかを決めてください。
管理する対象を絞る
すべての備品を管理しようとすると続きません。金額と欠品時の影響で優先度を決めてください。
| 区分 | 例 | 管理の方法 |
|---|---|---|
| 切らせないもの | 主要なカラー剤、シャンプー剤 | 発注点を決めて毎週確認 |
| 金額が大きいもの | 店販商品、トリートメント剤 | 月次で数量を記録 |
| 消耗が読めるもの | タオル、ペーパー類 | 定期発注(月1回) |
| それ以外 | 文具、清掃用品 | 気づいた人が補充 |
上表は優先度を決めるための整理です。区分は店の規模やメニュー構成によって変わります。
上の2区分だけを管理すれば、労力の大半は回収できます。4区分目まで厳密に管理しようとすると、手間が成果を上回ります。
区分するときは、欠品したときに何が起きるかで考えてください。カラー剤が切れれば施術ができません。文具が切れても営業は続きます。この差が優先度になります。
店販商品は、金額が大きい一方で回転が読みにくい区分です。売れ行きを月次で記録し、動きの遅い商品は追加発注を控える判断が必要になります。
「気づいた人が発注する」運用の何が問題かというと、気づく人が偏ることです。多くの場合オーナーか特定のスタッフだけが在庫を見ており、その人が休むと止まります。基準を可視化すれば、誰の目にも同じ判断ができます。
逆に、基準がないまま複数人が発注できる状態も危険です。同じ商品を別々に頼み、在庫が倍になることがあります。担当を決めるか、基準を決めるか、どちらかは必要です。
発注点の決め方
-
1か月の使用量を数える
1か月分の発注履歴を見れば、おおよその使用量が分かります。厳密でなくて構いません。
-
納品までの日数を確認する
発注してから届くまでの日数を、取引先ごとに把握します。
-
発注点を計算する
納品日数分の使用量に、少し余裕を足した数量が発注点になります。
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棚に表示する
「残り2本で発注」と棚に書きます。頭の中にあるだけでは運用されません。
④が最も効きます。表示があれば、その棚を見た人が判断できます。誰かに聞く必要がなくなり、発注の遅れが減ります。

①の使用量は、季節によって変わることも押さえておいてください。繁忙期と閑散期では消費量が違います。年間を通じて同じ発注点にすると、繁忙期に切らします。必要なら季節ごとに数値を分けてください。
③の余裕分は、取引先の状況にも左右されます。欠品や納期遅延が起きやすい商品は、多めに設定しておくほうが安全です。過去に切らした経験のある品目は、余裕を厚くしてください。
②の納品日数は、取引先によって差があります。翌日に届く先と、週明けになる先が混在していると、同じ発注点では対応できません。取引先ごとに数値を分けてください。
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担当と発注のタイミング
- 発注担当を1人決める。複数人が発注できると重複します。気づいた人は担当に伝える形にします。
- 発注する曜日を固定する。週1回にまとめると、取引先とのやりとりも整理されます。
- 発注記録を残す。いつ何をいくつ頼んだかが分かると、使用量の把握にもつながります。
- 納品時に検品する。数量と品目を確認します。後から不足に気づくと、対応が難しくなります。
薬剤には使用期限があるものがあります。まとめ買いで単価を下げても、使い切れなければ損失になります。期限を確認し、先に入れたものから使う運用にしてください。開封後の扱いについては、メーカーの表示に従ってください。
②の曜日固定は、取引先にとっても分かりやすくなります。毎週決まった曜日に発注が来ると分かっていれば、先方も準備しやすくなります。納品の日程も安定します。
④の検品は、忙しいと省略されがちです。しかし後から不足が分かっても、いつの納品分か特定できません。納品書と現物を照合する数分を、運用に組み込んでください。
①の担当は、必ずしも店長である必要はありません。仕組みが決まっていれば誰でも回せます。
棚卸しの進め方
棚卸しは、決算前だけでなく月次で行うと管理の精度が上がります。ただし全品を数える必要はありません。
対象は「切らせないもの」と「金額が大きいもの」に絞ってください。この2区分だけなら、20〜30分で終わります。
記録するのは、品目・数量・日付の3項目です。表計算ソフトに月ごとの列を作れば、使用量の推移も見えるようになります。
数えた結果は、発注点の見直しにも使ってください。想定より早く減っているなら発注点を上げ、余っているなら下げます。
③の記録は、発注書や納品書をまとめておくだけでも足ります。ファイルに月ごとに綴じておけば、後から使用量を計算できます。記帳の作業とも重なるため、まとめて処理すると効率的です。
棚卸しの結果は、決算の場面でも必要になります。期末時点の在庫は資産として扱われるためです。月次で数えていれば、決算前に慌てて数える必要がなくなります。詳細は決算前にやることにまとめています。
数える対象を絞ることに抵抗があるかもしれませんが、全品を数えて続かないより、絞って毎月続けるほうが実用的です。慣れてきたら対象を増やせば構いません。
在庫を抱えないための判断
まとめ買いの提案を受けることがあります。単価は下がりますが、判断には注意が必要です。
確認するのは3つです。第一に、使い切るまでの期間。第二に、保管場所があるか。第三に、その資金を他に使う必要がないか。

3つ目は見落とされがちです。在庫は現金が物に変わった状態です。手元資金が薄い時期にまとめ買いをすると、資金繰りが苦しくなります。月々の資金の動きは資金繰り表の作り方で確認してください。
備品管理は、売上には直接つながらない業務です。しかし欠品は施術に影響し、過剰在庫は資金を圧迫します。発注点を決めて棚に書くところから始めてみてください。
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