美容室の衛生管理と器具消毒の運用|保健所の基準と日々の手順

美容室で施術の準備をする様子

美容室の衛生管理で問題になるのは、知識ではなく「毎日の手順が決まっていないこと」です。誰がいつ何をするかが曖昧だと、忙しい日から崩れます。

この記事では、法令上の基準、日々の手順の作り方、記録の残し方、そして立入検査に備える整理を解説します。

目次

結論:美容室の衛生管理は「担当と時間」を決めると回る

消毒の方法を知っていても、実行されなければ意味がありません。実行されない理由の多くは、担当と時間が決まっていないことです。

開店前・施術ごと・閉店後の3つの場面について、誰が何をするかを一覧にしてください。これだけで実行率は大きく変わります。

開業時の基準は保健所の検査、席数と設備の関係は何席にするかの決め方で扱っています。

美容室で施術の準備をする様子

担当と時間を決めるもうひとつの効果は、新しく入ったスタッフがすぐ動けることです。何をすればよいか分からないまま立っている時間が減り、教育の負担も軽くなります。

法令上の基準を確認する

美容師法および関係法令では、美容所の衛生措置として、器具の消毒、清潔な布片の使用、施設の清潔保持などが定められています。具体的な方法や基準は都道府県等の条例で定められている場合があり、地域によって異なります。自店に適用される基準は、管轄の保健所にご確認ください。

出典:厚生労働省が所管する美容師法および関係法令、各自治体の条例。基準の詳細は自治体により異なります。

実務上、押さえるべきは3点です。第一に、皮膚に触れる器具の消毒。第二に、使用した布片を再使用しないこと。第三に、施設と設備の清潔保持です。

消毒の方法は器具の材質によって適するものが異なります。金属製のはさみと、プラスチック製のくしでは扱いが変わるため、器具ごとに方法を決めておく必要があります。

消毒の記録を残すことも実務では重要です。実施したかどうかを後から確認できる状態にしておくと、検査の際にも説明できます。チェック表を用意し、日付と担当者を書く形が簡便です。

あわせて、消毒液の濃度や交換の頻度も決めておいてください。作り置きしたまま何日も使う運用は、効果の面で問題があります。いつ作ったものかが分かるよう、容器に日付を書く習慣をつけると管理しやすくなります。

日々の手順を3場面に分ける

場面 やること 担当
開店前 床・鏡・セット面の清掃、消毒液の準備 当番制
施術ごと 使用器具の消毒、布片の交換 施術担当者
閉店後 器具の洗浄と消毒、シャンプー台の清掃 当番制
週1回 換気設備・排水まわりの点検 店長

上表は運用を設計するための例です。必要な項目は施設の構造や提供するメニューによって異なります。

施術ごとの項目は、担当者本人が行うのが原則です。当番制にすると、忙しい時間帯に抜けます。使った人がその場で処理する形にしてください。

週1回の点検は、見落としがちですが効きます。排水の流れ、換気の状態、収納の中。日々の清掃では触れない場所を、定期的に確認する枠を作ってください。問題が大きくなる前に気づけます。

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仕組みとして定着させる

  1. 手順を1枚にまとめる

    場面ごとの項目を紙1枚に収めます。複数ページになると読まれません。

  2. 必要な場所に貼る

    バックヤード、シャンプー台の横、セット面。動線上に置くと実行されます。

  3. チェック表で記録する

    日付と担当者、実施したことを記録します。記録がないと、実施したかどうかを後から確認できません。

  4. 月1回、実際に見て確認する

    記録だけでなく現物を確認します。書いてあるのに実施されていない状態を防ぎます。

美容室の店内とセット面

③のチェック表は、細かくしすぎないでください。項目が20も並ぶと、形式だけの記入になります。5〜8項目に絞り、確実に実施されるものだけを残すほうが機能します。

④の確認は、抜き打ちにする必要はありません。事前に日を伝えたうえで一緒に見る形でも十分です。責める場ではなく、手順が実態に合っているかを確かめる場として扱ってください。手順どおりにできない項目があれば、手順のほうを直します。

消耗品と備品の管理

  1. 消毒液の在庫と使用期限。切らすと運用が止まります。発注の基準数量を決めておきます。
  2. タオル・クロスの枚数。1日の来店数に対して足りているか。不足すると再使用の誘惑が生まれます。
  3. 洗濯と乾燥の運用。誰がいつ回すかを決めます。生乾きは衛生面でも印象面でも問題になります。
  4. 器具の本数。消毒中に使えない時間があるため、余裕を持った本数が必要です。

④は見落とされやすい項目です。はさみやくしの本数が足りないと、消毒を省く方向に圧力がかかります。仕組みで守るには、物理的な余裕が要ります。

②のタオル枚数は、洗濯の回転も含めて考えてください。1日の来店数の2倍程度を目安に、洗濯中の分と乾燥待ちの分を見込んでおくと不足しにくくなります。枚数が足りない状態は、運用の努力では解決できません。

③の洗濯は、担当と時間を決めておかないと後回しになります。閉店後にまとめて回す運用が一般的ですが、その日の担当を決めておかないと誰も回さない日が出ます。当番表に組み込んでください。

①の消毒液は、種類ごとに置き場所を決めておくと取り違えを防げます。用途の違うものが並んでいると、忙しい場面で誤って使うことがあります。ラベルを大きく貼るだけでも効果があります。

立入検査への備え

保健所による立入検査が行われることがあります。日常の運用が整っていれば、特別な準備は必要ありません。

用意しておくとよいのは3つです。第一に、衛生管理の手順書。第二に、実施記録。第三に、器具や設備の配置が分かる状態。いずれも日々の運用の副産物です。

指摘を受けた場合は、その場で対応方法を確認し、改善したことを記録に残してください。同じ指摘が繰り返されないよう、手順書に反映することも重要です。

検査の頻度や内容は自治体によって異なります。開業時に一度受けたきりという店もあれば、定期的に訪問がある地域もあります。管轄の保健所に確認しておくと、心構えができます。

手順書は、指摘を受けたときに改訂する前提で作ってください。最初から完璧なものを目指すと、作成自体が進みません。運用しながら足りない項目を追加していく形が現実的です。

スタッフへの共有

衛生管理は、新しく入ったスタッフに最初に伝えるべき内容のひとつです。技術より先に、この部分を共有してください。

美容室のスタッフが作業する様子

伝えるときは、理由も添えると定着します。「決まりだから」ではなく、何を防ぐための手順なのかが分かると、応用が利くようになります。教育の設計は美容師の教育マニュアルを参考にしてください。

衛生管理は、できていて当たり前と見なされる領域です。目立つ成果にはなりませんが、崩れたときの影響は大きくなります。手順と担当を決めるところから、負担なく続く形を作ってください。

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この記事を書いた人

美容室オーナー・経営者向けメディア「vaulta」編集部。集客・リピート・融資・求人・DX・独立の実務情報を、一次情報を確認のうえ発信。お金に関わる記事は中小企業診断士の監修を受けています。編集責任者:ISOYAMA。

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