美容室の開業で何席にするかは、面積で決まるのではなく「自分が回せる人数」から決めます。置ける席数と回せる席数は別物で、ここを混同すると使わない席に家賃を払い続けることになります。
この記事では、席数を決める順番、面積との関係、法令上の基準、そして将来の増減を見越した設計を解説します。
結論:美容室の席数は「回せる人数」から逆算する
内見のとき、図面を見て「ここなら4席置ける」と考えがちです。しかし開業当初は、スタッフが自分1人ということも珍しくありません。
1人で同時に回せるのは、施術内容にもよりますが限られます。席が増えれば家賃と内装費が増える一方、稼働しない席は売上を生みません。まず回せる人数を決め、そこから必要な席数を出してください。
物件の選び方はヘアサロンの物件の探し方、家賃の目安は家賃は売上の何割が目安かで扱っています。

もうひとつ、席数はスタッフ採用の計画とも連動します。将来3人体制にする予定があるなら、その時点で足りる席数を見込んでおく必要があります。ただし採用は計画どおりに進まないことも多いため、増やせる余地を残す設計のほうが安全です。
席数を決める順番
-
1日に受けたい人数を決める
目標月商 ÷ 客単価 ÷ 営業日数で出します。この人数が席数を決める起点になります。
-
施術の所要時間を確認する
主要メニューの所要時間を書き出します。カラーの放置時間があるかどうかで、必要な席数が変わります。
-
同時進行できる数を数える
放置時間に別の方を受けられるなら、席は施術者数より多く必要になります。
-
シャンプー台とのバランスを見る
セット面だけ増やしてもシャンプー台が足りなければ、そこで詰まります。
③が席数を決める要になります。カラーやパーマの放置時間中に別の方を進められるなら、施術者1人でもセット面は2〜3席あったほうが効率的です。カットが中心なら、席数を増やしても回りません。
①の目標月商は、控えめに置いてください。開業初月から満席になる店はほとんどありません。半年後に到達したい水準を基準にすると、席数が過大になります。開業から3〜6か月で現実的に達成できる水準で計算するほうが安全です。
④のシャンプー台については、セット面2〜3席に対して1台が目安として使われることが多くあります。ただしメニュー構成によって必要数は変わります。スパやトリートメントを強く打ち出すなら、台の数が制約になります。
面積との関係
| 構成 | 必要になる要素 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| セット面 | 鏡・椅子・作業スペース | 椅子を引くスペースが要る |
| シャンプー台 | 給排水・スペース | 後から増設しにくい |
| 待合 | 椅子・動線 | 削ると窮屈な印象になる |
| バックヤード | 薬剤・タオル・休憩 | 狭いと働きにくさに直結 |
| 受付・レジ | 会計スペース | 会計の滞留が起きる |
上表は必要な要素を整理したものです。実際の配置は物件形状や施工により異なります。
図面上で席を最大限に配置すると、待合とバックヤードが削られます。その結果、お客様が待ちにくく、スタッフが働きにくい店になります。席数を1つ減らして余白を残すほうが、結果的に居心地は良くなります。

通路の幅も見落とされやすい項目です。図面上は席が並んでいても、椅子を引いた状態でスタッフが後ろを通れなければ、実際の運用では狭くなります。内見のときは、実寸をメジャーで測り、動線を歩いて確認してください。
待合についても、席数と釣り合いを考える必要があります。3席の店で待合が1席分しかないと、予約が重なったときに立って待ってもらうことになります。回転を重視する店ほど、待合の設計が効いてきます。
VAULTA|美容室専門のLINE公式サポート
美容室特化型のLINE公式、
無料でつくれます。
集客・リピート・求人のヒントをLINEで配信。美容室に特化した公式アカウントを無料で作成・運用サポートします。
友だち追加だけ。相談・作成は無料です。
法令上の基準を先に確認する
美容所として営業するには、美容師法および関係法令で定められた構造設備の基準を満たす必要があります。作業室の面積、器具の消毒設備、採光や換気などが対象となり、詳細は自治体の条例で定められている場合があります。物件を契約する前に、管轄の保健所へ図面を持って相談してください。
出典:厚生労働省が所管する美容師法および関係法令、各自治体の条例。基準の詳細は自治体により異なります。
基準を満たせない物件を契約してしまうと、追加の工事費が発生するか、最悪の場合そこでは営業できません。席数の検討と並行して、必ず保健所に確認してください。
また、席数によっては消防に関する届出や設備が必要になることもあります。内装業者に任せきりにせず、自分でも確認しておくことをおすすめします。
保健所への相談は、物件の目星がついた段階で行ってください。契約後に相談しても、基準を満たせない場合には手遅れになります。図面と、扱う予定のメニューを持っていくと、具体的な助言が得られます。
電気容量も確認しておいてください。ドライヤーや機器を同時に使う数が増えると、容量が足りなくなることがあります。
将来の増減を見越す
- 後から増やしにくいものを優先する。シャンプー台は給排水工事が伴うため、後付けの負担が大きくなります。
- セット面は後から足せる設計にする。配線と鏡の位置に余地を残しておけば、スタッフが増えたときに対応できます。
- 1席あたりの売上を把握する。開業後、席が足りないのか集客が足りないのかを判断する材料になります。
- 増席の判断基準を決めておく。予約の断り件数が月に何件を超えたら検討する、といった形です。
②は実務的に有効な考え方です。開業時は2席で始め、スタッフが増えたら3席目を足す。この形なら初期費用を抑えつつ、成長に対応できます。
③の1席あたり売上は、増席の判断だけでなく、席を減らして待合を広げるという逆の判断にも使えます。稼働していない席が常にあるなら、その空間を別の用途に回したほうが価値を生みます。物販の陳列や、カウンセリング用のスペースにする選択肢もあります。
④の判断基準は、開業前に決めておいてください。「月に10件以上断ったら増席を検討する」といった形です。忙しくなってから考え始めると、感覚で決めることになります。
増席の際は、保健所への届出が必要になる場合があります。事前に確認してください。
開業後に確認すること
開業したら、席数が適切だったかを数字で確認してください。
見るのは3つです。第一に、席の稼働率。同時に何席使われているかを時間帯別に見ます。第二に、予約を断った件数。席が足りない状態かどうかが分かります。第三に、1席あたりの売上。席を増やす判断の基準になります。

稼働率が低く、かつ断りもないなら、席数ではなく集客に課題があります。この場合、席を増やしても売上は変わりません。逆に断りが続いているなら、増席か営業時間の見直しが選択肢になります。
開業計画全体の流れは開業スケジュールにまとめています。席数は内装費と家賃の両方に効く項目なので、早い段階で数字を固めておいてください。
VAULTA|美容室専門のLINE公式サポート
美容室に特化したLINE公式、
無料でおつくりします。
予約・再来店・求人・販促まで、LINEひとつで。美容室の集客と経営に効く公式アカウントを、無料で作成します。
友だち追加だけ。相談・作成は無料です。
席数別の売上上限と家賃の試算表 — 後から増やすときの手続きと、後悔しやすい3パターン
席数は「多いほど売上が伸びる」わけではなく、回せる人数を超えた席は家賃と設備費だけを増やします。席数ごとの上限と固定費を並べて、自分のスタッフ計画と照らします。数字はすべて自分で置いた設定です。
| 席数 | 必要な坪数の目安 | 月の家賃(坪1.5万円) | 回すのに必要な人数 | 月商の上限(1人 月70万円) | 家賃比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2席 | 8〜10坪 | 約13.5万円 | 1人 | 70万円 | 約19% |
| 3席 | 12〜15坪 | 約20万円 | 1〜2人 | 70〜140万円 | 14〜29% |
| 4席 | 15〜18坪 | 約25万円 | 2〜3人 | 140〜210万円 | 12〜18% |
| 6席 | 22〜28坪 | 約37万円 | 3〜4人 | 210〜280万円 | 13〜18% |
3席を1人で回すと家賃比率が29%まで上がるように、席数に対して人が足りない期間は、家賃比率が重くなります。開業時の人数で回せる席数に、1席だけ余裕を持たせるのが一般的な置き方です。
後から席を増やすときの手続き
- 保健所へ構造設備の変更届:セット面やシャンプー台を増やす場合、作業室の面積要件(1席あたりの面積を定める自治体がある)と換気・照明を再確認します。変更届と、場合によっては再検査が要ります。
- 電気容量と給排水:シャンプー台の増設は給排水工事、ドライヤーの増加は電気容量の変更が要ることがあります。内装業者に事前に見積もりを取ります。
- 管理美容師の要否:常時2人以上が施術するようになれば、管理美容師の講習修了者が必要になります。席を増やして人を増やすタイミングで確認します。
後悔しやすい3パターン
- 「いつか人を雇う」前提で6席にしたが、3年間1人だった:使わない3席分の家賃と設備費が固定費になります。人が決まってから増やせる物件のほうが安全です。
- 2席で開業し、半年で予約が取れなくなった:1人で回せる上限に早く当たった例です。単価と時間の設計で上限を上げるか、3席目を置ける余白を最初から確保します。
- 席は足りているがシャンプー台が1台で詰まる:セット面の数だけを見て、シャンプー台の比率(セット面3に対して1台程度)を見落とした例です。動線と一緒に決めます。
坪数・家賃・売上はすべて自分で置いた前提による試算です。坪数の決め方は「開業の坪数と席数の決め方」の記事、家賃比率は「美容室の家賃は売上の何割か」の記事、半個室にする場合は「半個室の内装」の記事を参照してください。作業室の面積要件は所在地の保健所の構造設備基準を確認してください。
コメント