美容室で有給休暇が取れない原因は、制度の理解不足ではなく「取る前提でシフトが組まれていないこと」です。空いた枠を誰が埋めるかが決まっていないと、申請そのものが出てきません。
この記事では、法令上の義務、取得しやすくするシフトの作り方、指名客への対応、そして運用の記録方法を整理します。
結論:美容室の有給休暇は「先に枠を空けて」運用する
申請が出てから調整する運用だと、忙しい時期には断らざるを得ません。断られた経験が続くと、次から申請されなくなります。
順番を逆にしてください。あらかじめ月ごとに取得枠を確保し、その中で希望を出してもらう形にすると、現場が回ります。
シフトの組み方は美容室のシフトの作り方、休日を増やす進め方は週休2日の導入で扱っています。

枠を先に決める利点はもうひとつあります。スタッフ側が「自分が休むと迷惑がかかる」と感じなくなることです。あらかじめ用意された枠であれば、遠慮の理由が減ります。制度があっても使われない店の多くは、この心理的な障壁が原因になっています。
まず法令上の義務を確認する
労働基準法では、年次有給休暇が10日以上付与される労働者について、そのうち年5日については使用者が時季を指定して取得させることが義務づけられています。対象者に取得させていない場合、事業主が是正の対象となる可能性があります。適用の詳細は事業所の状況によって異なるため、労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。
出典:厚生労働省が所管する労働基準法および年次有給休暇に関する案内。制度の詳細は同省の公表資料をご確認ください。
実務上の要点は3つです。第一に、対象者を把握すること。パートタイムでも所定労働日数によっては付与対象になります。第二に、付与日と残日数を管理すること。第三に、年5日の取得状況を記録すること。
これらは制度以前の管理の話です。誰が何日持っているかを把握していない状態では、義務を満たしているかどうかも判断できません。
管理を紙の台帳で行っている店は、表計算ソフトへの移行をおすすめします。付与日は人によって異なるため、手計算では必ず抜けが出ます。氏名・入社日・付与日・付与日数・取得日・残日数の6列があれば足ります。
時季指定を行う場合は、本人の意見を聴いたうえで決めることとされています。一方的に日を割り当てるのではなく、希望を聞く工程を運用に入れてください。
取得しやすくするシフトの作り方
-
月ごとの取得枠を先に決める
「毎月2人まで、1人1日」のように上限を決めます。枠があると申請しやすくなります。
-
閑散期に多めに配分する
予約の少ない曜日や時期に枠を厚くします。売上への影響を抑えられます。
-
希望の締切を決める
前月の中旬までなど、期限を設けます。直前の申請だけになると調整できません。
-
指名客への案内を先に行う
担当が休む日が決まったら、その周辺の予約を持つ方に早めに伝えます。
④が最も見落とされやすい工程です。担当が休むこと自体は問題になりませんが、当日になって知らされると不満につながります。

①の枠の決め方は、スタッフ数と予約の状況から逆算してください。3人体制で毎月2人が休むと、その日の対応力は3分の1落ちます。枠を決めるときは、休む日の売上見込みも合わせて確認しておくと判断しやすくなります。
②については、閑散期が読めていることが前提です。曜日別・月別の売上を3か月分並べれば傾向は見えます。感覚で「この時期は暇」と決めると、実際には忙しい時期に枠を置いてしまうことがあります。
③の締切は、予約の受付開始時期に合わせると運用しやすくなります。予約を受け始める前に休みが確定していれば、そもそも調整が発生しません。
VAULTA|美容室専門のLINE公式サポート
美容室特化型のLINE公式、
無料でつくれます。
集客・リピート・求人のヒントをLINEで配信。美容室に特化した公式アカウントを無料で作成・運用サポートします。
友だち追加だけ。相談・作成は無料です。
指名客がいる場合の対応
| 状況 | 対応 | 注意点 |
|---|---|---|
| 予約が入る前 | その日を予約不可にする | 早めの設定が前提 |
| 予約が入った後 | 前後の日程を提案する | こちらから連絡する |
| どうしても動かせない | 他のスタッフが担当 | 事前に本人へ説明する |
上表は対応の考え方を整理したものです。実際の判断は関係性によって変わります。
3行目を選ぶ場合、カルテの引き継ぎが前提になります。記録が残っていないと、仕上がりが変わって不信につながります。記録の残し方は顧客カルテの書き方を参考にしてください。
1行目を選べる状態にしておくのが理想です。取得希望を早めに出してもらう運用と、予約受付の設定をセットにすれば、そもそも調整が不要になります。締切を設ける目的は、ここにあります。
2行目の場合、連絡は早いほど良い結果になります。前日ではなく、決まった時点で伝えてください。代替日を2つ提示すれば、多くの方は調整に応じてくれます。
3行目を選ぶ場合は、代わりに担当するスタッフにも事前に伝えてください。当日に急に任されると、準備なく対応することになります。前回の施術内容を確認する時間を確保できるかどうかで、仕上がりが変わります。
オーナー自身の休みも設計する
スタッフの有給を整えても、オーナーが休めない状態が続くと、その姿を見たスタッフは申請しづらくなります。
まず自分が月に1日休むところから始めてください。その日に店が回るかどうかは、体制の健全さを測る指標にもなります。回らないなら、それは属人化の問題です。
自走できる体制かどうかは、多店舗化の判断にも関わります。考え方は2店舗目を出す判断基準で扱っています。
予約が入る前に設定するのが最も摩擦が少ない方法です。予約システムで担当者ごとの受付を停止できるなら、希望が決まった時点で設定してください。後から動かすより、はるかに手間がかかりません。
オーナーが休む日は、月初に先に決めてしまうのが確実です。予約が埋まってから休もうとしても、その日は来ません。スタッフの枠と同じように、先に空けておく形にしてください。
店が回らない状態が続くなら、育成と権限委譲が先の課題になります。
記録と見直し
- 付与日と残日数を一覧にする。表計算ソフトで十分です。誰が何日残しているかを毎月確認します。
- 取得実績を記録する。年5日の状況を把握するために必要です。
- 取得できなかった理由を聞く。制度があっても取れていないなら、原因は運用側にあります。
- 年に一度、枠の配分を見直す。人数や予約状況が変われば、適切な枠も変わります。

③が改善の起点になります。「忙しくて言い出せない」という理由が出てくるなら、枠の設定か、申請の仕方に問題があります。面談で聞く方法はスタッフ面談のやり方にまとめています。
有給休暇は、法令上の義務であると同時に、採用の場面で比較される条件でもあります。取得実績が示せる店は、求人でも選ばれやすくなります。管理表を作るところから始めてみてください。
VAULTA|美容室専門のLINE公式サポート
美容室に特化したLINE公式、
無料でおつくりします。
予約・再来店・求人・販促まで、LINEひとつで。美容室の集客と経営に効く公式アカウントを、無料で作成します。
友だち追加だけ。相談・作成は無料です。
コメント