美容室の髪質改善メニューの作り方|定義・価格設定・薬機法と景表法で使えない表現の言い換え表・リピート周期の設計

髪質改善は法令上の定義がない言葉なので、メニューには施術の中身と所要時間を明記し、価格は「目標時間単価×施術時間+材料費」で下限を決めます。広告では「修復」「根本から変わる」を避け、「ツヤと手触りを整える」と事実の範囲で書きます。

髪質改善の型の整理、メニュー構成と価格の決め方、薬機法・景品表示法で使えない表現の言い換え表、カウンセリングでの説明、来店周期とリピートの設計、導入コストの回収までを順にまとめます(2026年10月時点の情報です)。

目次

結論:髪質改善メニューを作るときに決める6つのこと

髪質改善メニューは、名前を決める前に「中身・価格・表現・説明・周期・導入費」の6点を決めておくと、スタッフごとの説明のぶれと、広告表示のトラブルを防げます。

決めること 決め方 根拠・注意点
① 施術の中身 自店の「髪質改善」がトリートメント型・酸熱トリートメント型・ストレート型のどれか(組み合わせか)を決め、メニュー名に併記する 法令上の定義はない。中身が曖昧だと説明と広告が誇大になりやすい
② 価格 目標時間単価×施術時間+材料費で下限を出し、長さ・髪の履歴で分ける 料金は税込の総額で表示する(消費税法第63条)
③ 表現 使う製品の効能は化粧品の効能の範囲(頭皮・毛髪は16項目)で、施術の効果は事実で書く 医薬品医療機器等法(薬機法)第66条、景品表示法第5条
④ 説明 持ちの目安・向かない髪・ホームケアの3点を施術前に伝える 期待とのずれが、不満とやり直し依頼の原因になる
⑤ 周期 質感の持ちをカルテに残し、集中期と維持期に分けて提案する 「回数を重ねるほど良くなる」は根拠がなければ言えない
⑥ 導入費 薬剤・機器・研修時間を合計し、1回の粗利で何人分かを出す 研修を店の指示で行えば労働時間になる

6点のうち、トラブルに直結しやすいのは③の表現です。「髪質改善」という言葉を使うこと自体を禁じる規定は見当たりませんが、言葉が曖昧な分、「髪が生まれ変わる」「ダメージが修復される」といった言い過ぎの表現と結びつきやすく、薬機法と景品表示法の両方に触れるおそれがあります。

髪質改善とは何か — 法令上の定義がなく、店ごとに中身が違う

髪質改善とは、髪の手触り・ツヤ・まとまりを整えることを目的にした施術を指して美容室が使う呼び名で、法令上の定義はありません。同じ「髪質改善」でも、トリートメントだけの店もあれば、還元剤でくせを伸ばすストレートを指す店もあります。

型 主な工程 使う薬剤の区分(一般的な例) 向く悩み 注意点
トリートメント型 複数の工程でトリートメント剤をなじませ、ドライとブローで仕上げる 化粧品(ヘアトリートメント) パサつき・手触り 質感の持ちは洗髪の回数で変わる。くせは伸びない
酸熱トリートメント型 酸性の処理剤を塗布し、アイロンの熱を加えて仕上げる 化粧品か医薬部外品かを製品ごとに確認する 広がり・ツヤ不足 カラー直後やブリーチ毛への使用条件は製品の説明書に従う
ストレート型 還元剤でくせを伸ばし、アイロンと酸化剤で形を整える 医薬部外品(パーマ剤)、または還元剤を配合した化粧品のセット剤 くせ・うねり 縮毛矯正と同じ扱い。パーマ剤と染毛剤は1週間程度の間隔をあける
組み合わせ型 根元と毛先などで上記を使い分ける 部位ごとに異なる 根元のくせと毛先のパサつき 工程と薬剤を記録しないと次回に再現できない

表のうち、くせを伸ばせるのは還元剤を使うストレート型だけです。トリートメント型や酸熱トリートメント型を「くせ毛が伸びる」と打ち出すと、実際の施術内容より優れていると受け取られ、景品表示法の優良誤認に当たるおそれがあります。くせを伸ばしたいお客様には縮毛矯正として提案し、周期の考え方は縮毛矯正客のリピート設計を参考にしてください。

メニュー名は「髪質改善トリートメント(酸熱・アイロン仕上げ/90分)」のように、型と時間を併記するのがおすすめです。予約サイトでメニューを見比べるお客様にとっても、何をされるかが分かる名前のほうが選びやすくなります。

髪質改善メニューの価格はどう決めるか — 時間単価から下限を出す

価格の下限は「目標時間単価×施術時間+材料費」で出し、そのうえで長さや髪の履歴による手間の差を、追加料金として分けて反映します。近隣の相場は「下限を下回っていないか」を確かめるために見るもので、相場から逆算すると時間のかかる髪質改善ほど採算が崩れます。

試算 — 90分の髪質改善トリートメントの価格(仮の設定)

自店の目標時間単価を税込7,000円、施術時間を90分(1.5時間)、1回の材料費を1,500円と置きます。下限は7,000円×1.5時間+1,500円=12,000円です。カラーに追加するオプション版(30分・材料費500円)なら、7,000円×0.5時間+500円=4,000円になります。数字は自分で置いた前提です。実際の時間単価は時間単価の出し方で自店の値を出してください。

メニュー(仮の設定) 時間 価格(税込) 設定の理由
髪質改善トリートメント(ショート〜ミディアム) 90分 12,000円 下限の試算どおり
同(ロング) 110分 15,000円 7,000円×110分+材料費2,000円=約14,800円を切り上げ
カラー+髪質改善オプション 30分追加 +4,000円 単品より安く見えるが、時間単価は単品と同じ
ブリーチ履歴がある髪の前処理 15分追加 +2,000円 7,000円×0.25時間+材料費250円

オプション版を用意しておくと、カラーの来店に追加しやすく、来店回数を増やさずに客単価を上げられます。組み合わせ方は追加メニュー(オプション)の作り方で整理しています。

料金表では税込の総額を表示します。「12,000円〜」と幅を持たせる場合は、どの条件でいくら上がるのか(長さ・履歴の追加料金)を同じ画面に書いておかないと、会計時に高くなったという不満につながります。表示の決まりは料金表示のルールで確認してください。

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髪質改善の広告で使えない表現と言い換え — 薬機法と景品表示法の線引き

髪質改善の広告では、「修復」「再生」「髪質が根本から変わる」「ダメージゼロ」「くせ毛が治る」は使わず、化粧品の効能の範囲と施術の事実に置き換えます。ホームページ・SNS・予約サイト・店頭POPのどれでも考え方は同じです。

関係する法律は2つあります。1つは医薬品医療機器等法(薬機法)第66条で、「何人も」化粧品や医薬部外品の効能・効果について、明示的・暗示的を問わず虚偽・誇大な広告をしてはならないと定めています。メーカーだけでなく、製品を使って施術し効果を発信する美容室も対象です。違反には2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(第85条)、課徴金(対価の合計額の4.5%、第75条の5の2)の定めがあります。

もう1つは景品表示法第5条第1号の優良誤認です。施術というサービス(役務)の品質を、実際より著しく優れていると示す表示が禁止されています。消費者庁は表示の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求めることができ、出せなければ不当表示とみなされます(第7条第2項)。優良誤認には課徴金(売上額の3%、第8条)と、100万円以下の罰金(第48条)の定めもあります。

化粧品として言える頭皮・毛髪の効能は、「頭皮、毛髪をすこやかに保つ」「毛髪にはり、こしを与える」「毛髪の水分、油分を補い保つ」「毛髪につやを与える」「クシどおりをよくする」「裂毛、切毛、枝毛を防ぐ」「毛髪の帯電を防止する」など16項目です(化粧品の効能の範囲)。これを基準に、次の表のように言い換えます。

使えない表現 問題になる理由 言い換えの例
「ダメージを修復」「髪が再生する」「傷んだ髪がよみがえる」 化粧品の効能の範囲を超える医薬品的な表現 「毛髪の水分・油分を補い、まとまりやすい手触りに整えます」
「髪質が根本から変わる」「髪質が改善し続ける」 永続的な変化を示す。根拠がなければ優良誤認 「施術後はツヤとまとまりを感じやすい質感に。持ちは洗髪の回数やホームケアで変わります」
「くせ毛が治る」「縮毛矯正いらず」 還元剤を使わない施術ではくせは伸びない。「治る」は医療的な表現 「広がりを抑え、まとまりやすい質感に整えます」(くせを伸ばすなら「縮毛矯正」と明記)
「ダメージゼロ」「髪が傷まない」「100%安全」 安全性を保証する表現 「髪の状態に合わせて薬剤と工程を選びます」
「エイジング毛が若返る」「白髪が減る」 化粧品の効能にない、身体の変化を示す表現 「年齢とともに気になるパサつきやツヤ不足の手触りを整えます」
「抜け毛が減る」「頭皮の炎症を抑える」「育毛効果」 医薬品・医薬部外品の効能。化粧品では言えない 「頭皮、毛髪をすこやかに保ちます」「フケ、カユミを抑えます」
「皮膚科医も推薦」「医師監修だから安心」 医師などが効果や安全を保証したと受け取られる 監修の事実を書く場合も、効果や安全の保証と結びつけない
「地域No.1」「最高峰の髪質改善」 根拠のない最上級の表現は誇大・優良誤認のおそれ 「2026年9月の当店予約数で最も多いメニュー」など、期間と根拠を示せる事実だけ
「通常20,000円が今だけ9,800円」 通常価格で販売した実績がなければ有利誤認(第5条第2号) 実際に販売していた価格だけを比較に使う

言い換えた表現でも、事実と違えば問題になります。「まとまりやすい質感に整えます」と書くなら、施術前後の写真や手触りの記録で説明できる状態にしておくのが安全です。広告表現全般の線引きは広告・SNSで使えない表現にまとめています。

ビフォーアフター写真は、照明・角度・加工で差を大きく見せると、施術の効果を実際より優れて見せる表示になります。「仕上がりには個人差があります」と小さく添えても、写真そのものが誤認を与えれば問題は解消しません。同じ場所・同じ光で撮り、加工はしないルールにしておきます。

カウンセリングでの説明 — 持ち・向かない髪・ホームケアを先に伝える

施術前に「どんな質感が、どれくらい続く見込みか」「この髪に向くか」「家で何をすると持ちやすいか」の3点を伝えると、期待とのずれによる不満ややり直しの依頼を減らせます。

  1. 履歴を聞く

    過去1年のカラー・ブリーチ・縮毛矯正、ホームカラー、毎日のアイロンの使用を確認します。同じ薬剤でも履歴で仕上がりが変わるため、事前のカウンセリングシートやLINEの質問フォームで来店前に聞いておくと、当日の時間を短くできます。

  2. 悩みを質感の言葉でそろえる

    「広がる」「パサつく」「うねる」「ツヤがない」のどれが一番気になるかを決めます。うねりを伸ばしたいなら縮毛矯正、手触りとツヤならトリートメント型と、施術の型を先に選び分けます。

  3. 持ちの目安は幅で伝える

    自店のカルテの記録をもとに「当店では○〜○週間ほどで質感の変化を感じる方が多いです」と幅で伝えます。記録がたまるまでは「洗髪の回数で変わるので、次回一緒に確かめましょう」と伝え、期間を約束しません。

  4. 向かない条件を先に言う

    頭皮に傷や炎症がある、直近にパーマや縮毛矯正をしたなど、製品の使用上の注意に当てはまる場合は、施術内容を変えるか日を改めます。パーマ剤と染毛剤は1週間程度の間隔をあけるよう使用上の注意に書かれています。

  5. ホームケアは1つだけ提案する

    乾かし方か洗い流さないトリートメントなど、続けやすいものに絞ります。店販品の説明も「毛髪につやを与える」「枝毛を防ぐ」など、化粧品の効能の範囲で行います。

説明の例:「今日の施術は、髪にうるおいを補ってツヤとまとまりを出すトリートメントです。くせを伸ばす施術ではないので、うねりが気になる場合は縮毛矯正をご提案します。質感の持ちはシャンプーの回数で変わるので、次回いらしたときに持ち具合を一緒に確かめて、次の時期を決めましょう。」

髪質改善の来店周期とリピートの設計 — 集中期と維持期に分ける

来店周期は、自店で記録した質感の持ちから逆算し、最初の2〜3回は持ちを確かめる「集中期」、その後はカラーなど既存メニューの周期に合わせる「維持期」に分けると提案しやすくなります。

段階 間隔の例(仮の設定) 目的 店がやること
初回 — 質感と持ちを確かめる 施術前後の写真と手触りのメモをカルテに残し、2〜3週間後にLINEで状態を聞く
集中期(2〜3回目) 4〜6週間 自店の髪質改善がどれくらい持つかを確かめる 会計時に次回の時期を伝え、仮予約を提案する
維持期 カラーの周期(例:6〜8週間)に合わせる 来店回数を増やさずに続けてもらう 単品から「カラー+オプション」への切り替えを提案する

集中期の目的は、あくまで持ちを確かめて周期を決めることです。「回数を重ねるほど髪質がよくなる」と伝えるのは、根拠となる記録がなければ避けます。施術の効果を実際以上に期待させ、優良誤認と受け取られるおそれがあるためです。

次回予約をしなかったお客様には、カルテに残した周期の1〜2週間前にLINEで案内を送ります。配信の時期とタグの付け方は来店周期に合わせたLINE配信を参考にしてください。

髪質改善メニューの導入コストと回収の目安

導入費は薬剤の初期在庫、アイロンなどの機器、スタッフ研修の時間の3つで、1回あたりの粗利で割ると、何人の施術で回収できるかが分かります。

試算 — 導入費を何人の施術で回収できるか(仮の設定)

薬剤の初期在庫を60,000円、ストレートアイロンの追加1台を25,000円、研修をスタッフ3人×4時間×時給1,300円=15,600円とすると、合計は100,600円です。1回の価格12,000円から材料費1,500円を引いた10,500円で割ると、約10人分の施術で回収できる計算になります。

月に4人の予約が入れば約2.5か月、月に2人なら約5か月かかります。数字は自分で置いた前提です。研修を店の指示で営業時間外に行う場合は労働時間となり、賃金の支払いが必要です。人件費を含めた採算は、施術時間を時間単価で評価して確かめます。

髪質改善メニューを公開する前に、次の8項目を確認してください。

  • メニュー名に施術の型(トリートメント・酸熱・ストレート)と所要時間を書いている
  • 価格が「目標時間単価×施術時間+材料費」を下回っていない
  • 料金を税込の総額で表示し、追加料金の条件を同じ場所に書いている
  • 「修復」「再生」「根本から変わる」「ダメージゼロ」「治る」を使っていない
  • 還元剤を使わない施術で「くせが伸びる」と書いていない
  • No.1や最上級の表現には、期間と根拠を示せる事実がある
  • ビフォーアフター写真を同じ場所・同じ光で撮り、加工していない
  • 施術ごとの薬剤・工程・質感の持ちをカルテに残す欄がある

よくある質問

「髪質改善」というメニュー名は使ってもよいですか?

使えます。名称そのものを禁じる規定は見当たりませんが、何をする施術かが分からないと効果を大きく受け取られやすいため、「髪質改善トリートメント(酸熱・90分)」のように型と時間を併記してください。

トリートメント型の髪質改善で「くせ毛が伸びる」と書いてもよいですか?

書けません。還元剤を使わない施術ではくせを伸ばせないため、実際より優れた効果を示す表示として景品表示法の優良誤認に当たるおそれがあります。くせを伸ばす場合は縮毛矯正として案内します。

メーカーの資料に書いてある効果を、そのまま店の広告に使ってもよいですか?

そのまま使えるとは限りません。薬機法第66条は「何人も」が対象なので、店の広告も規制を受けます。業務用の技術資料の説明が、一般向けの広告で言える化粧品の効能の範囲を超えていることもあるため、範囲内かを確かめてから使ってください。

ビフォーアフター写真をSNSに載せてもよいですか?

載せられますが、照明・角度・加工で差を誇張しないことが条件です。施術の効果を実際より優れて見せる写真は優良誤認のおそれがあるため、同じ場所・同じ光で撮影し、お客様から掲載の許可を得たものだけを使います。

髪質改善とカラーは同じ日にできますか?

型によります。還元剤を使うストレート型とカラーは同じ日に行わないのが原則で、パーマ剤と染毛剤は1週間程度の間隔をあけて使うよう使用上の注意に書かれています。トリートメント型・酸熱トリートメント型は、使う製品の説明書の指示に従います。

「回数を重ねるほど髪がきれいになる」と伝えてもよいですか?

根拠となる記録がなければ伝えません。施術の効果が回を追って高まるように受け取られ、実際以上の期待を生むためです。伝えるなら「持ちを確かめながら次の時期を決めましょう」と、周期を決める目的で説明します。

出典:医薬品医療機器等法第66条・第75条の5の2・第85条、不当景品類及び不当表示防止法第5条・第7条・第8条・第48条、消費税法第63条、厚生労働省「医薬品等適正広告基準の改正について」(平成29年9月29日薬生発0929第4号)、「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日薬食発0721第1号)、東京都健康安全研究センター「化粧品を知って使おう」、日本パーマネントウェーブ液工業組合「毛髪・パーマのQ&A集」(e-Gov法令検索「医薬品医療機器等法」、e-Gov法令検索「景品表示法」)。個別の表現の判断は、都道府県の薬務担当課の事前相談か弁護士に確認してください。

髪質改善メニューは、まず自店の「髪質改善」が何をする施術かを1行で書き出すことから始めてください。中身が決まれば、価格・表現・説明・周期は順番に決められます。

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この記事を書いた人

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