美容室の忘年会・社員旅行は経費になるか|福利厚生費になる条件・交際費との違い・給与とみなされる場合

美容室の忘年会や社員旅行は、スタッフ全員を対象にした社会通念上一般的な内容なら、福利厚生費として経費にできます。社員旅行は「4泊5日以内」「全従業員の50%以上が参加」が国税庁の目安で、オーナーや家族だけの会は福利厚生費になりません。

勘定科目の分け方、全員参加が条件とされる理由、1人あたりの金額の考え方、社員旅行の条件、一人社長や家族経営の場合、取引先を招いた場合の交際費、給与とみなされたときの扱いを、国税庁の資料に沿って整理します(2026年10月時点の情報です)。

目次

結論:忘年会・社員旅行が経費になる条件の一覧表

判断の軸は「誰を対象にした会か」と「内容が社会通念上一般的か」の2つです。従業員全体の慰安なら福利厚生費、外部の人をもてなすなら交際費、特定の人だけが得をするなら給与と考えると整理できます。

場面 扱い 判断のポイント 根拠
全スタッフを対象にした忘年会(店内の納会を含む) 福利厚生費 全員に参加の機会があり、内容が一般的 所得税基本通達36-30
有志だけの飲み会を店が負担 交際費か給与 対象が一部の人に限られる 所得税基本通達36-30
社員旅行(4泊5日以内・参加50%以上) 福利厚生費 期間・参加割合・金額などを総合して判断 国税庁 No.2603
5泊6日以上の旅行 参加者の給与 社会通念上一般的な旅行と認められない 国税庁 No.2603
不参加者に代わりの現金を渡す 全員の給与 参加者も含め、渡した額に相当する給与があったとされる 国税庁 No.2603
役員だけの会・旅行 交際費か役員給与 従業員の慰安に当たらない 所得税基本通達36-30
取引先や業務委託の美容師を招く 招いた人の分は交際費 従業員以外へのもてなし 租税特別措置法第61条の4
個人事業主と同じ生計の家族だけの会 経費にならない 事業ではなく家計の支出 所得税法第45条第1項第1号

法人の場合、「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」は交際費から除くと法律に書かれています(租税特別措置法第61条の4第6項第1号)。個人事業でも、従業員全体の慰安のための費用は必要経費になります(所得税法第37条)。

忘年会費の勘定科目は福利厚生費 — 3つの条件

全スタッフを対象にした忘年会の費用は「福利厚生費」で処理します。条件は、対象がスタッフ全員であること、内容が社会通念上一般的であること、参加しない人に代わりの金銭を渡さないことの3つです。

  1. 全員が対象:正社員だけでなく、パート・アルバイト・受付スタッフも含めて全員に声をかけます。都合で来られない人がいても、全員に参加の機会があれば構いません。
  2. 内容が一般的:高級店の貸し切り、高額な景品、何次会も店が払う会は「社会通念上一般的」から外れやすくなります。
  3. 代わりの金銭を渡さない:自己都合で参加しなかった人に会費相当の現金を渡すと、参加者を含む全員の給与として扱われます。

営業後に店内で出前を取る打ち上げや納会も、全員を対象にした通常の飲食なら同じく福利厚生費です。仕訳は「福利厚生費 42,000円/現金 42,000円(摘要:12月○日 忘年会 ○○店 参加7名)」のように、日付・店名・人数を摘要に残します。飲食代は消費税の課税仕入れで、本則課税の店はインボイス(適格請求書)を保存します。

レシートで足りるか、宛名が要るかは領収書と経費の扱いで、科目全体の分け方は確定申告で使う勘定科目で整理しています。

なぜ「全員参加」が条件とされるのか

福利厚生費は、従業員全体の慰安のための費用だからです。一部の人だけが参加する会を店が負担すると、その人たちだけが経済的な利益を受けたことになり、給与か交際費として扱われます。

根拠は所得税基本通達36-30です。店が従業員のレクリエーションのために、社会通念上一般的に行われている旅行・運動会・演芸会・忘年会などの費用を負担した場合、参加した人が受ける利益には課税しなくて差し支えないとされています。ただし、次の2つは除かれます。

  • 参加しなかった人に、参加に代えて金銭を渡す場合
  • 役員だけを対象にして費用を負担する場合

「全員参加」は、全員の出席が必須という意味ではありません。全員に案内して参加の機会を与えることが前提です。営業日の閉店後に開くと遅番やパートのスタッフが来にくいため、店休日や早じまいの日に開くと全員が参加しやすくなります。2店舗以上ある店は、店舗ごとに開いても構いません。

業務の都合で参加できなかった人に代わりの金銭を渡した場合は、ほかの参加者の扱いには影響しないとされていますが、受け取った人にとっては給与です。

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1人あたりいくらまでなら福利厚生費になるか

忘年会の1人あたりの金額に、法令上の上限はありません。判断の基準は「社会通念上一般的か」で、地域の一般的な宴会の価格帯、毎年の水準、役職で差をつけていないかで説明できるかがポイントです。

よくある誤解が「1人1万円以下なら経費になる」というものです。この1万円の基準は、取引先など社外の人との飲食費を交際費から除くためのルールで、役員や従業員だけの社内の飲食には使えません(国税庁 No.5265)。社内の忘年会は、金額ではなく「全員が対象で一般的な内容か」で判断します。

金額の目安を考えるときは、国税庁の社員旅行の事例が参考になります。4泊5日・費用25万円のうち店の負担が10万円、参加割合100%の旅行は、参加者の給与にしなくてよい例として示されています。

試算 — スタッフ6人の店の年末行事の扱い(仮の設定)

スタッフ6人とオーナー1人の7人で忘年会を開き、1人6,000円・計42,000円を店が払ったとします。全員に案内した一般的な会なので、42,000円は福利厚生費です。

そのあと有志3人で二次会に行き、15,000円を店が払うと、二次会は全員を対象にした会ではないため、交際費か参加者の給与として扱われるおそれがあります。ビンゴの景品に3,000円の商品券を出すと、換金性が高いため受け取った人の給与として扱われやすくなります。二次会は自己負担、景品は商品券ではなく品物にしておくと迷いません。数字は自分で置いた前提による例です。

社員旅行が福利厚生費になる条件 — 4泊5日・参加率50%

社員旅行は、旅行期間が4泊5日以内(海外は現地での滞在日数)で、参加者が全従業員の50%以上(店舗ごとの旅行は店舗ごと)なら、原則として参加者の給与にしなくてよいとされています。ただし最終的には、旅行の目的・規模・行程・参加割合・費用の負担割合などを総合して判断されます(国税庁 No.2603)。

国税庁の事例 期間 費用(うち店の負担) 参加割合 扱い
事例1 3泊4日 15万円(7万円) 100% 給与にしなくてよい
事例2 4泊5日 25万円(10万円) 100% 給与にしなくてよい
事例3 5泊6日 30万円(15万円) 50% 参加者の給与として課税

事例3は参加割合が50%あっても、期間が5泊6日以上なので課税されています。期間と参加割合の両方を満たすことが前提です。このほか、役員だけで行く旅行、取引先の接待のための旅行、実質的に私的な旅行、金銭との選択ができる旅行は、社員旅行に当たりません。

海外のヘアショーやサロン視察を兼ねる旅行は、業務に直接必要な研修部分と観光部分を分けて考えます。同業者団体が主催する観光中心の団体旅行は、業務上直接必要な研修とは認められにくいとされています。研修費の線引きは本・セミナー代は経費になるかを参照してください。

試算 — 不参加者に現金を渡すとどうなるか(仮の設定)

スタッフ5人のうち4人が参加する2泊3日の旅行(参加割合80%)で、店が1人6万円・計24万円を負担したとします。この24万円は条件を満たすので福利厚生費です。

ここで、自己都合で参加しなかった1人に「代わりに2万円」を渡すと、参加者4人と不参加者1人の全員に2万円ずつ、計10万円の給与を払ったものとして扱われます。店は5人分の源泉徴収をしなければならず、旅行の扱いまで複雑になります。数字は自分で置いた前提による試算です。

一人社長・家族だけの美容室の忘年会は経費になるか

原則としてなりません。福利厚生費は従業員の慰安のための費用なので、従業員のいない店の「忘年会」は、個人事業なら家事費、法人なら交際費か役員給与として扱われます。

店の形と参加者 忘年会の費用の扱い
個人事業・オーナー1人 経費にならない(家事費)
個人事業・オーナーと同じ生計の家族(専従者を含む)だけ 経費にならない(家事費)
個人事業・家族と雇っているスタッフ全員 全員が対象なら福利厚生費
法人・社長1人、または役員(夫婦など)だけ 福利厚生費にならない。交際費(社内飲食費)か、私的な色が強ければ役員給与
法人・役員と従業員全員 全員が対象なら福利厚生費

法人で役員給与とみなされると、定期同額給与などに当たらないため損金になりません。夫婦で法人化している店は、スタッフを雇うまでは「忘年会費」を経費にしないと決めておくと安全です。法人と個人事業で経費の範囲がどう違うかは法人にすると経費はどう変わるかで整理しています。

取引先や業務委託の美容師を招いた場合は交際費

ディーラーの担当者や、面貸し・業務委託の美容師など、従業員以外の人を招いた分は交際費です。スタッフと一緒の会なら、人数で按分して従業員の分を福利厚生費、外部の人の分を交際費に分けます。

たとえばスタッフ6人とディーラー2人の8人で48,000円なら、「福利厚生費 36,000円/交際費 12,000円」と分けて記帳します。業務委託の美容師は雇用契約がないため、店に毎日いても従業員としては数えません。

区分 交際費の扱い(2026年10月時点)
法人(資本金1億円以下の中小法人) 年800万円までの全額損金算入か、接待飲食費の50%損金算入のいずれかを選ぶ(令和9年3月31日までに開始する事業年度)
法人の社外飲食費 1人あたり10,000円以下なら、参加者の氏名や人数などを記録した書類の保存を条件に交際費から除く。社内の飲食には使えない
個人事業 交際費に金額の上限はない。事業との関係を説明できる記録が必要

800万円の定額控除の期限は、延長されるかどうかが今後の税制改正で決まります。決算の時期によって適用が変わるため、法人は顧問税理士に確認してください。

給与とみなされると何が起きるか

福利厚生費の条件から外れて給与とみなされると、1人あたりの金額がその人の給与に加わり、店は源泉徴収をして納める義務を負います。税務調査で後から指摘されると、源泉所得税に加えて不納付加算税や延滞税がかかることがあります。

法人では、役員への経済的利益と判断されると役員給与として損金になりません。消費税では、旅行代金や飲食代を店が支払った場合は課税仕入れですが、現金で渡した分は給与なので課税仕入れになりません。忘年会の飲み物や待合の飲み物の科目の考え方はお客様用の飲み物は経費になるか、経費全体の判断基準は経費にできるもので確認できます。

忘年会・社員旅行を経費にする前に、次の7項目を確認してください。

  • パート・アルバイトを含むスタッフ全員に案内を出した
  • 店休日や早じまいの日など、全員が参加しやすい日程にした
  • 会場や景品が、毎年の水準と比べて豪華すぎない
  • 不参加者に代わりの現金や商品券を渡していない
  • 社員旅行は4泊5日以内で、参加者が全従業員(店舗ごとなら店舗)の50%以上
  • 取引先や業務委託の美容師が参加した分は、交際費に分けて記帳した
  • 領収書に加えて、参加者名簿・人数・目的のメモを残した

よくある質問

忘年会に来なかったスタッフに、会費相当の現金を渡してもよいですか?

渡さないほうが安全です。自己都合で参加しなかった人に代わりの金銭を渡すと、参加者を含む全員に、その金額に相当する給与を払ったものとして扱われます。

忘年会の二次会の費用も福利厚生費にできますか?

原則として難しいと考えてください。二次会は参加が任意で一部の人だけになりやすく、全員を対象にした行事として説明しにくいため、交際費か参加者の給与として扱われるおそれがあります。

忘年会の領収書のほかに残しておくものはありますか?

あります。日付、店名、金額、参加者の名前と人数、会の目的をメモに残します。外部の人が参加した場合は、その人の氏名と関係も書いておくと、交際費との区分を説明できます。

社員旅行の積立金を給与から天引きしてもよいですか?

労使協定を結べば天引きできます。賃金は全額払いが原則で、税金や社会保険料以外を差し引くには労働基準法第24条の労使協定が必要です。積立金は経費ではなく預り金として管理し、参加しなかった人には返します。

営業後に店内で出前を取った打ち上げも福利厚生費になりますか?

なります。全スタッフを対象にした社会通念上一般的な飲食であれば、店内の打ち上げや納会も福利厚生費として処理できます。特定の人だけの飲食が続く場合は、給与や交際費として扱われることがあります。

出典:所得税基本通達36-30、「所得税基本通達36-30(課税しない経済的利益…使用者が負担するレクリエーションの費用)の運用について」(昭和63年5月25日付 法令解釈通達)、国税庁「No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」(国税庁)、国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」(国税庁)、租税特別措置法第61条の4、所得税法第37条・第45条、労働基準法第24条。個別の判断は税理士か所轄の税務署に確認してください。

忘年会と社員旅行は「全員が対象」「内容が一般的」「代わりの金銭を渡さない」の3点がそろえば福利厚生費です。まず今年の忘年会の案内をスタッフ全員に出し、参加者名簿と目的のメモを残すところから始めてください。

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