美容室の車は経費になるか|按分の決め方・減価償却・リースと購入の比べ方

美容室の車は、事業で使った割合のぶんだけ経費にできます。全額を落とすには「事業専用」と説明できる必要があり、通勤や私用が混ざる車は按分が前提です。

この記事では、按分割合の決め方、購入した車の減価償却、リースと購入のどちらが有利かを、数字を置いて整理します。

美容室 経費 車|美容室の店内の様子
目次

結論:美容室の車の経費は「事業で使った割合」で決まる

車の費用は、購入代金(または リース料)、ガソリン代、保険料、車検、税金、駐車場代と多岐にわたります。これらすべてに同じ按分割合をかけるのが基本です。

按分割合の根拠になるのは走行距離です。1か月だけでも、事業で走った距離と全体の距離を記録すれば、割合の説明ができます。感覚で「7割くらい」と置くより、実測した1か月分の記録のほうが説得力があります。

経費全体の考え方は美容室で経費にできるものを、按分の基本は家事按分のやり方を参照してください。

美容室で「事業の走行」にあたるもの

用途 事業性 記録に書くこと
材料・備品の仕入れ(問屋・量販店) 高い 行き先・目的・距離
出張施術・訪問美容 高い 訪問先・日時・距離
撮影・講習会・展示会への移動 高い イベント名・距離
銀行・税理士・保健所への移動 高い 用件・距離
自宅と店の通勤 判断が分かれる 通勤は原則私用寄り。自宅兼店舗なら発生しない
買い物・送迎・レジャー なし 記録不要(全体距離には含める)

通勤の扱いは迷いやすい点です。個人事業主の場合、自宅から店への通勤は事業の一部と説明できる場合もありますが、税務上は私用と見られることもあります。比率を決める際は、通勤を除いた保守的な数字と、含めた数字の両方を出しておき、税理士と相談して決めると安全です。

按分割合を1か月の記録から出す手順

  1. 月初にオドメーターを記録する

    スマホで撮影しておくだけで足ります。月末にも同じように撮ります。

  2. 事業で走った日だけメモする

    「4/8 問屋 往復22km」のように、日付・行き先・距離を書きます。私用は書きません。

  3. 月末に割り算する

    事業距離の合計 ÷ 全体距離。たとえば事業420km ÷ 全体1,200km = 35%。

  4. 年に1〜2回は取り直す

    繁忙期と閑散期で走り方が違うなら、両方の月で取って平均します。

この記録があれば、年間の車関連費が60万円のとき、35%の21万円を経費として説明できます。記録が無いまま50%と置くより、記録付きの35%のほうが認められやすいのが実務の感覚です。

美容室 経費 車|美容室でのカウンセリングの様子

VAULTA|美容室専門のLINE公式サポート

美容室特化型のLINE公式、
無料でつくれます。

集客・リピート・求人のヒントをLINEで配信。美容室に特化した公式アカウントを無料で作成・運用サポートします。

無料でLINE公式を作成する↗

友だち追加だけ。相談・作成は無料です。

購入した車は減価償却で分けて落とす

車を購入した場合、代金を買った年に全額経費にはできません。法定耐用年数にわたって分割して経費にする「減価償却」を行います。新車の普通自動車は6年、軽自動車は4年が耐用年数です。

項目 新車・普通車(200万円) 新車・軽自動車(150万円) 4年落ち中古・普通車(100万円)
耐用年数 6年 4年 2年(中古の簡便法)
年間の償却費(定額法) 約333,000円 375,000円 500,000円
按分35%後の経費 約116,000円 約131,000円 175,000円

数字は仮の設定で、月割りや残存価額の扱いで実額は変わります。この表から分かるのは、中古車は耐用年数が短いぶん、1年あたりに落とせる額が大きくなることです。ただし修理や燃費のコストも増えるので、償却だけで選ぶのは勧められません。

個人事業主の減価償却は原則として定額法です。法人は定率法を選べる場合があります。どちらになるかは申告の形態で決まるので、開業時に確認しておいてください。

リースと購入はどちらが有利か

  1. リース:月額が全額(按分後)経費になり、計算が単純。手元資金を減らさない。ただし総支払額は購入より高くなることが多い。
  2. 購入(現金):総額は最も安いが、まとまった資金が出ていく。経費化は減価償却で数年に分かれる。
  3. 購入(ローン):元金は経費にならず、利息だけが経費。減価償却は別途行う。資金繰りと経費の考え方を分けて理解する必要がある。

「リースなら全額経費になるから得」と聞くことがありますが、按分は購入でもリースでも同じようにかかります。私用が混ざる車である限り、リース料も事業割合のぶんだけです。

開業直後で手元資金を厚く持ちたい時期はリース、資金に余裕があり長く乗るなら購入、という分け方が一般的です。資金計画の全体は運転資金の目安と併せて考えてください。

出典:国税庁 タックスアンサー「No.2100 減価償却のあらまし」「No.2210 やさしい必要経費の知識」、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(別表第一:車両運搬具)。制度は改定されることがあるため、実際の判断では最新の公表資料を確認し、必要に応じて税理士など専門家にご相談ください。記事内の計算は自分で置いた前提による試算です。

車にかかる費用を全部書き出す

按分割合が決まったら、対象になる費用を漏れなく拾います。ガソリン代だけを経費にして、保険や税金を忘れている店が少なくありません。年間で見ると差が大きくなります。

費目 年額の例 按分35%後 勘定科目
ガソリン代 120,000円 42,000円 車両費(旅費交通費)
自動車保険 60,000円 21,000円 損害保険料
自動車税 35,000円 12,250円 租税公課
車検(2年に1回を年割) 60,000円 21,000円 車両費(修繕費)
駐車場代 144,000円 50,400円 地代家賃
減価償却費(200万円・6年) 333,000円 116,550円 減価償却費
合計 752,000円 263,200円 —

数字は仮の設定です。この例では、ガソリン代だけ計上した場合の42,000円に対し、全費目を拾うと263,200円と6倍以上になります。拾い漏れは、按分割合の設定よりも影響が大きいことがあります。

按分割合を変えるときの注意

一度決めた按分割合を、年によって大きく変えると説明を求められることがあります。変える場合は「訪問美容を始めたので事業の走行が増えた」のように理由を記録しておきます。

  1. 上げる場合:増えた理由(新サービス・仕入先の変更・2店舗目)と、その月の走行記録をセットで残す。
  2. 下げる場合:正直に下げるほうが安全。過大に見えた割合を維持するより、実態に合わせて修正した記録があるほうが信頼される。
  3. 車を買い替えた場合:旧車の未償却残高の処理(売却益・売却損)が発生する。買い替え時は税理士に一度相談する。

按分割合は「一度決めたら固定」ではなく「実態に合わせて記録つきで見直す」ものです。記録さえあれば、割合が変わること自体は問題になりにくいとされています。逆に記録なしで毎年同じ50%を置き続けるほうが、実態と乖離したときに説明できなくなります。

事業専用にして100%落とす条件

按分せずに全額を経費にするには、その車が事業専用であると説明できる必要があります。現実的には「私用の車が別にある」ことが最も分かりやすい根拠です。

  1. 私用の車を別に持っている:家族の車でも構いません。私用はそちらで賄っていると説明できます。
  2. 店名のラッピングや社名入りマグネットを付けている:外観で事業用と分かる状態は、私用に使いにくいことの傍証になります。
  3. 店の駐車場に置き、自宅に持ち帰らない:保管場所が店であれば、通勤や私用が混ざりにくくなります。
  4. 訪問美容など、業務上の走行が主になっている:業務日報に訪問先が残っていれば、走行の大半が事業であることを示せます。

1台しか持っていない場合は、100%と主張するより高めの按分割合(8〜9割)を記録付きで置くほうが、否認のリスクを抑えられる場合があります。全額か按分かで迷うときは、記録の有無で決めてください。記録があるなら按分、記録がなく事業専用と言い切れるなら100%、記録もなく専用とも言えないなら控えめな按分、という順です。

今月やることのチェックリスト

車を経費に入れているなら、次の5つを今月のうちに整えてください。

  • 月初と月末のオドメーターを写真で残した
  • 事業で走った日の行き先と距離をメモしている
  • 按分割合を「通勤を含む場合/含まない場合」の2通りで出した
  • 車検証・購入契約書・リース契約書を事業用のファイルにまとめた
  • ガソリン代・保険料・駐車場代のレシートを車のフォルダに分けている

車は金額が大きいぶん、按分の根拠を求められやすい項目です。1か月の記録があるかどうかで、説明のしやすさがまったく変わります。

美容室 経費 車|美容室のスタッフ・チームの様子

VAULTA|美容室専門のLINE公式サポート

美容室に特化したLINE公式、
無料でおつくりします。

予約・再来店・求人・販促まで、LINEひとつで。美容室の集客と経営に効く公式アカウントを、無料で作成します。

無料でLINE公式を作成する↗

友だち追加だけ。相談・作成は無料です。

車の按分の計算例3つと、車種別の注意・売却時の処理

按分の手順が分かっても、自分の使い方がどの計算に当たるかで迷います。3つの典型例で年間の経費額まで出し、自店に近いものを選んでください。数字はすべて自分で置いた前提です。

例 使い方 按分の根拠 年間の車関連費(仮) 経費になる額
① 走行距離で按分 仕入・銀行・講習・訪問美容で使い、私用も多い 1か月の走行記録:事業320km/全体800km=40% ガソリン12万円・保険8万円・車検整備6万円・減価償却30万円=56万円 約22.4万円
② 使用日数で按分 営業日は店の駐車場に置き、休日だけ私用 営業日24日/30日=80% 同上56万円 約44.8万円
③ 通勤と業務の併用 自宅から店への通勤が主で、業務は週1回の仕入 通勤は原則「事業の走行」に含めにくい。業務分のみ:週1回×往復20km×52週=1,040km/年間8,000km=13% 同上56万円 約7.3万円

③の通勤分を経費に入れると、調査で否認されやすいとされています。通勤が主の車は、業務の走行だけを記録して按分してください。

車種別の注意

  1. 軽バン・商用車:店名のラッピングや荷室の仕入専用化で、事業割合を高く説明しやすい。耐用年数は軽自動車4年。
  2. 普通乗用車:私用との区別が最も問われる。走行記録を毎日残すことが前提。耐用年数6年、中古は残存年数で短くなる。
  3. 高額車(数百万円超):事業に必要な範囲を超える部分は否認される場合があります。業務に必要な理由(送迎・訪問美容の機材運搬など)を説明できるかで判断します。

売却・買い替え・事故のときの処理

場面 処理
売却した 事業割合分は譲渡所得(総合課税)として計算。帳簿価額との差が利益か損失になる
買い替えた 旧車は売却の処理、新車は取得価額から減価償却を再スタート。下取り額を値引きと混同しない
事故で修理した 修理費は事業割合分を修繕費。保険金を受け取ったら、その分を差し引く
事業をやめた・私用に戻した 帳簿価額で事業から外す。以後の費用は経費にしない

税務調査で聞かれる4つと答え方

  1. 「按分割合の根拠は」

    走行記録(日付・行き先・km)か営業日数の記録を見せる。記録がない年は、直近1か月の記録から推定した旨を説明する。

  2. 「家族も使っているか」

    使っていれば正直に。その分を私用に含めた按分であることを示す。

  3. 「店の駐車場はどこか」

    店に置いている時間が長いことが事業割合の裏付けになる。駐車場契約の名義と領収書を揃える。

  4. 「この車でないと業務ができないか」

    仕入の荷物・訪問美容の機材・送迎など、具体的な用途を答える。

金額・割合はすべて自分で置いた前提による試算で、統計値ではありません。家事関連費の扱いは所得税法第45条・所得税法施行令第96条、減価償却の耐用年数は減価償却資産の耐用年数等に関する省令、売却時の譲渡所得は所得税法第33条を参照してください。経費の全体像は「経費の早見表」、領収書の残し方は「領収書と経費の扱い」、送迎付きの開業は「送迎付き美容室の開業」の記事を参照してください。

按分割合を裏付ける記録と、否認されやすいケース

車の経費は割合を出して終わりではなく、その割合を説明できる記録が残っているかが問われます。「だいたい半分」では裏付けになりません。日々の走行を簡単に残す形を決めておくと、後からの説明が楽になります。

  1. 1か月だけ運行を記録する

    日付・行き先・目的(仕入れ・銀行・講習など)・走行距離を手帳かアプリに残します。毎日でなくても、代表的な1か月を取れば割合の根拠になります。

  2. 事業の走行距離の割合を出す

    その月の総走行距離に対する事業の走行距離の割合を、按分割合として使います。計算の過程も残します。

  3. 毎年見直す

    生活が変われば割合も変わります。年に一度は記録を取り直し、割合を更新します。

否認されやすいケース なぜ問題か どうする
割合の根拠がない 「事業で使った」の裏付けがない 運行記録で割合を示す
事業割合が高すぎる 生活の実態と合わない 通勤・私用分を差し引く
高級車を全額経費 事業の必要性を説明しにくい 按分し、必要性を記録に残す
家族の車を名義も分けず計上 誰の・何の費用か不明確 使用実態と負担を整理する

按分割合に法律で決まった数字はありません。自店の使い方に合う割合を、記録で説明できる範囲で置くのが基本です。割合に迷う場合や高額な車の場合は、顧問税理士に確認してください。

出典: 国税庁タックスアンサー(家事関連費の必要経費算入)。割合・金額はすべて自分で置いた前提による試算です。按分の計算例と減価償却は本記事の各節、化粧品や消耗品の経費区分は「美容室の化粧品の経費区分」、領収書と経費の扱いは「美容室の領収書と経費」の記事を参照してください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

美容室オーナー・経営者向けメディア「vaulta」編集部。集客・リピート・融資・求人・DX・独立の実務情報を、一次情報を確認のうえ発信。お金に関わる記事は中小企業診断士の監修を受けています。編集責任者:ISOYAMA。

コメント

コメントする

目次