美容室の化粧品は、「施術に使う」「お客様に売る」「自分が使う」の3つに分けた時点で、経費になるかどうかがほぼ決まります。同じ商品でも用途で扱いが変わります。
この記事では、3つの区分の見分け方、それぞれの勘定科目、混ざりやすい場面の線引きと記録の残し方を整理します。

結論:美容室の化粧品は用途で3つに分ける
| 用途 | 例 | 経費になるか | 勘定科目 |
|---|---|---|---|
| 施術に使う | カラー剤、パーマ液、トリートメント、スタイリング剤 | なる | 材料費(仕入高) |
| お客様に販売する | 店販のシャンプー、オイル、ワックス | なる(売れた分が原価) | 仕入高。期末に在庫を棚卸し |
| 自分やスタッフが私的に使う | 自宅用のスキンケア、私用のメイク用品 | ならない | 事業主貸(個人の支出) |
1つ目と2つ目は経費になりますが、処理の仕方が違います。施術用は使った時点で費用ですが、店販用は売れるまで在庫(資産)で、期末に残っている分は経費から外します。
経費全体の判断基準は美容室で経費にできるもので扱っています。この記事は化粧品に絞ります。
店販用の化粧品は「売れた分だけ」が経費になる
店販の商品は、仕入れた時点では経費になりません。年度末に残っている在庫の金額を計算し、その分を仕入高から差し引く(棚卸)ことで、売れた分だけが売上原価として経費になります。
-
年間の仕入額を集計する
店販用の仕入れだけを分けて集計します。施術用と同じ問屋から買っていても、伝票で区別します。
-
期末に在庫を数える
12月31日(個人)または決算日(法人)時点で、棚にある店販商品を数え、仕入単価をかけます。
-
売上原価を出す
期首在庫 + 年間仕入 - 期末在庫 = 売上原価。この額が経費です。
たとえば期首在庫8万円・年間仕入60万円・期末在庫12万円なら、売上原価は56万円です。仕入の60万円をそのまま経費にすると4万円多く計上することになり、誤りになります。
施術用と店販用が同じ商品のとき
トリートメントのように、施術でも使い、お客様にも売る商品があります。この場合は仕入時に「施術用○本・店販用○本」と分けて記録するか、店販用として仕入れて施術で使った分を材料費へ振り替える、のどちらかで処理します。どちらにするかを決めて、年間を通して同じ方法で続けることが大切です。

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私用と混ざりやすい3つの場面
- 自分の髪を店の薬剤で施術する:練習やスタイル撮影のためなら事業性を説明できます。単に自分のためなら私用です。目的をメモしておきます。
- 店販商品を自分で使う:在庫から持ち出した時点で、その商品の仕入額を事業主貸に振り替えます。「サンプルとして試す」場合は、期間と目的を記録すれば経費として説明できる余地があります。
- メイク用品を「接客のため」に買う:美容師個人の身だしなみは、原則として私用と見られます。店で共用し、お客様の仕上げに使うものであれば材料費として説明できます。
「美容師だから化粧品はすべて仕事に必要」という説明は、税務上は通りにくいとされています。お客様への施術や販売に直接使うものと、自分の身だしなみに使うものを、購入の時点で分けるほうが安全です。
材料費率の目安と、上がったときに疑うこと
施術用の化粧品・薬剤は、売上に対する比率で管理すると異常に気づけます。一般に美容室の材料費率は売上の10%前後に収まることが多いとされますが、メニュー構成によって幅があります。
| 月商 | 材料費8% | 材料費10% | 材料費13% |
|---|---|---|---|
| 80万円 | 6.4万円 | 8.0万円 | 10.4万円 |
| 150万円 | 12.0万円 | 15.0万円 | 19.5万円 |
| 250万円 | 20.0万円 | 25.0万円 | 32.5万円 |
数字は仮の設定です。比率が急に上がったときは、店販用の仕入が材料費に混ざっていないかを最初に疑ってください。区分の誤りが原価率を見かけ上悪化させていることがよくあります。原価率そのものの下げ方は材料費と原価率の下げ方、店販の伸ばし方は店販売上を上げる方法を参照してください。
出典:国税庁 タックスアンサー「No.2210 やさしい必要経費の知識」、国税庁「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」(棚卸資産の評価)。制度は改定されることがあるため、実際の判断では最新の公表資料を確認し、必要に応じて税理士など専門家にご相談ください。記事内の計算は自分で置いた前提による試算です。
在庫管理表は3列で足りる
店販の棚卸を年末にまとめてやろうとすると、数が合わず時間がかかります。月1回、商品名・本数・仕入単価の3列だけを更新しておけば、年末の作業は10分程度で済む場合があります。
| 商品名 | 月初在庫 | 仕入 | 販売 | 施術振替 | 月末在庫 | 仕入単価 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| シャンプー300ml | 12本 | 24本 | 20本 | 2本 | 14本 | 1,400円 |
| ヘアオイル100ml | 8本 | 12本 | 9本 | 1本 | 10本 | 1,800円 |
| トリートメント200g | 6本 | 12本 | 7本 | 3本 | 8本 | 2,200円 |
「施術振替」の列があるのがポイントです。店販用として仕入れたものを施術で使った分は、この列で材料費に振り替えることで、店販の在庫と施術の材料費が両方とも正しくなります。この例では月末在庫の金額は 14本×1,400円+10本×1,800円+8本×2,200円=55,200円 です。
サンプルと試用品の扱い
メーカーから無償で提供されるサンプルは、仕入額がゼロなので経費にはなりません。問題になるのは、自店で仕入れた商品を「試供品」としてお客様に配る場合です。
- お客様に無償で渡す:販売促進費(広告宣伝費)として経費にできる場合があります。「誰に何本渡したか」の記録を残します。
- スタッフが商品知識のために試す:研修目的として説明できる余地があります。期間と目的を記録し、1人1本程度の常識的な範囲にとどめます。
- オーナーが自宅で使う:事業主貸。在庫から外し、私的な消費として処理します。
試供品として大量に持ち出す運用は、実質的な私的消費と見られる可能性があります。本数と目的の記録が無いものは、私用として処理するほうが安全です。
在庫の数え方や棚卸資産の評価方法(最終仕入原価法など)は、届出をしていなければ原則の方法が適用されます。方法を変えたい場合は税理士に確認してください。
仕入先が同じでも伝票を分ける理由
多くの美容室は、施術用の薬剤と店販用の商品を同じディーラーから仕入れています。1枚の納品書に両方が載っていると、年末に「これは施術用だったか店販用だったか」を思い出せなくなります。
対策は単純で、発注の時点で分けることです。ディーラーに「施術用と店販用で伝票を分けてほしい」と頼めば対応してもらえることが多く、それが難しければ納品書に自分で印を付けます。この一手間で、年末の棚卸にかかる時間が数時間単位で変わる場合があります。
もう1つの方法は、会計ソフトの補助科目を使うことです。「仕入高:施術用」「仕入高:店販用」のように分けて入力しておけば、集計は自動で出ます。記帳の仕組みは記帳と会計ソフトの選び方で扱っています。
店販の在庫を過小に申告すると、その分だけ経費が過大になり、所得が少なく計算されます。棚卸を省略したり概算で済ませたりすると、調査で指摘を受けやすい項目とされています。年1回の実地棚卸は省かないでください。
仕入れるときのチェックリスト
化粧品を仕入れるたびに、次の4つを1分で確認してください。ここで分けておくと、年末の棚卸と申告が楽になります。
- 伝票に「施術用」「店販用」の区分を書いた
- 店販用は在庫管理表(本数・単価)に追加した
- 私用に持ち出した商品は、その日のうちに事業主貸として記録した
- 施術用と店販用が同じ商品の場合、決めた方法(仕入時に分ける/後で振り替える)を守っている
化粧品は毎月発生する支出なので、区分の習慣が付くと年間の記帳がまるごと軽くなります。仕入の瞬間に分けることが、いちばん手間の少ない方法です。

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美容室の「仕入」と「消耗品」はどこで分けるか — 棚卸しの要否で決める早見表
美容室で「仕入」と「消耗品費」の分け方に迷うのは、同じ棚に売る商品と使う材料が並んでいるからです。分ける基準は「売るために買ったか、使うために買ったか」と「年末に在庫として数えるか」の2つです。
| 品目 | 科目 | 年末の棚卸し | 理由 |
|---|---|---|---|
| 店販用シャンプー・トリートメント | 仕入高(売上原価) | 必要(未販売分を期末棚卸高に) | 売るために買っている |
| 施術用カラー剤・パーマ剤 | 仕入高 または 材料費 | 店の方針で統一(数えるなら毎年) | 売上に直接対応する材料 |
| 施術用シャンプー(業務用) | 消耗品費 または 材料費 | 原則不要(少額・短期で使い切る) | 使うために買っている |
| タオル・ペーパー・手袋・ラップ | 消耗品費 | 不要 | 施術に付随する消耗品 |
| ブラシ・コーム・クリップ(10万円未満) | 消耗品費 | 不要 | 少額の器具 |
| お客様に出す飲み物 | 消耗品費 または 福利厚生費以外の接客費 | 不要 | 販売しない |
施術用の薬剤を「仕入高」に入れるか「材料費」に入れるかは、どちらも経費になる点では同じです。違いは棚卸しをするかどうかで、一度決めた方針を毎年変えないことが条件です。棚卸しの手順は「美容室の売上原価と棚卸し」の記事にまとめています。
数字で見る — 分け方で利益がどう動くか(仮の設定)
年間の薬剤の仕入れが120万円、年末に未開封の薬剤が15万円分残っていた店で、①棚卸しをする(仕入高+期末棚卸)と②棚卸しをしない(消耗品費)を比べます。
- ①仕入高として棚卸しをする:売上原価=120万円−15万円=105万円。残った15万円は翌年の経費に繰り越されます。
- ②消耗品費として全額計上する:その年の経費は120万円。翌年は翌年に買った分だけが経費になります。
- 差は15万円分の「経費にする年」のずれだけで、2年合計の経費は同じです。ただし年末の大量仕入れを消耗品費で落とす運用は、税務調査で棚卸しの有無を確認される場合があります。
出典:国税庁「No.2222 事業所得の課税のしくみ」「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」(売上原価と棚卸資産の扱い)、所得税法第47条(棚卸資産の評価)。金額はすべて自分で置いた前提による試算です。
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