美容室オーナーの小規模企業共済|退職金づくりと節税の考え方

美容室の店内とセット面

美容室オーナーには退職金がありません。小規模企業共済は、その退職金を自分で積み立てる公的な制度です。掛金が所得控除の対象になるため、節税と将来の備えを同時に進められます。

この記事では、制度の仕組み、加入の条件、掛金の決め方、そして注意点を整理します。

目次

結論:美容室オーナーの小規模企業共済は「早く始めるほど有利」

この制度は、掛けた期間が長いほど受け取れる額の条件が良くなる設計です。したがって、始める時期が早いほど効果が出ます。

ただし、途中で資金繰りが厳しくなって解約すると不利になる場合があります。無理のない金額から始めることが前提です。

経費の考え方は確定申告と経費の知識、資金の管理は資金繰り表の作り方で扱っています。

美容室の店内とセット面

早く始めるほど有利になる理由は、納付した月数が受け取り条件に関わる設計だからです。同じ総額を積むにしても、短期間でまとめて掛けるより、長い期間をかけて掛けたほうが条件が整いやすくなります。

制度の仕組み

小規模企業共済は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する制度です。小規模企業の経営者や個人事業主が、廃業や退職に備えて資金を積み立てる仕組みとして設けられています。

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「小規模企業共済」の案内。制度の要件・掛金・共済金の取り扱いは変更されることがあるため、最新の情報は同機構の公表資料をご確認ください。

大きな特徴は3つあります。第一に、掛金が所得控除の対象になること。第二に、受け取り時にも税制上の取り扱いが定められていること。第三に、掛金の範囲内で貸付を受けられる制度があることです。

3つ目は資金繰りの面で意味があります。急に資金が必要になったとき、積み立てた範囲で借りられる仕組みがあります。

加入を検討する前に、まず自分が対象になるかを確認してください。業種ごとに従業員数の上限が定められており、規模が大きくなると対象外になる場合があります。美容業は多くの場合対象となりますが、店舗数や雇用人数によって判断が変わります。

加入の条件と手続き

項目 内容
対象 小規模企業の個人事業主・会社等の役員
従業員数の要件 業種ごとに上限が定められている
掛金 月額で設定し、範囲内で変更できる
申込先 金融機関や商工会などの委託機関

上表は概要を整理したものです。要件や金額の詳細は中小企業基盤整備機構の案内をご確認ください。

手続きは、取引のある金融機関や商工会・商工会議所の窓口で行えます。確定申告書や開業届の控えなど、事業を営んでいることを示す書類が必要になります。

貸付制度については、資金繰りの選択肢として知っておく価値があります。融資の審査を待つ余裕がない場面で、積み立てた範囲から借りられる仕組みがあることは安心材料になります。ただし借入である以上、返済は必要です。

受け取り方についても、一括か分割かなど複数の方法が用意されています。税務上の扱いが異なるため、受け取る時期が近づいたら税理士に相談してください。

申込先は複数あるため、普段取引している金融機関で聞いてみるのが手軽です。窓口で必要書類を確認できます。

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掛金の決め方

  1. 月の利益から無理のない額を出す

    直近12か月の平均的な手残りを確認します。生活費を引いた残りが原資です。

  2. 閑散期でも払える額にする

    好調な月を基準にすると、売上が落ちた月に苦しくなります。低い月に合わせてください。

  3. 少額から始めて後で増やす

    掛金は範囲内で変更できます。まず小さく始め、余裕が出てから増やすほうが続きます。

  4. 年に一度見直す

    決算のタイミングで、増額や減額を検討します。

掛金の納付月数が短い段階での解約は、受け取れる額が掛金の合計を下回る場合があります。また、任意解約の場合の取り扱いは、廃業や退職の場合と異なります。加入前に、解約時の条件を必ず確認してください。税務上の取り扱いを含め、判断の前に税理士にご相談ください。

美容室でスタイリングを行う場面

②は特に重要です。美容室の売上は季節や天候で変動します。繁忙期の数字を基準に掛金を決めると、閑散期に払えなくなります。掛金の減額は可能ですが、手続きの手間が発生します。

③の考え方は、続けることを優先する発想です。少額でも継続していれば納付月数は積み上がります。無理な額で始めて途中でやめるより、確実に続く額のほうが結果的に有利になります。

④の見直しは、決算の数字を見てから行うのが合理的です。利益が想定より出た年は増額を、厳しかった年は減額を検討します。掛金を固定したまま放置すると、実態と合わなくなります。

減額そのものは可能ですが、条件があります。安易に増額して後から減らす前提にせず、続けられる額から始めてください。

節税だけで判断しない

掛金が所得控除の対象になることは大きな利点ですが、それだけで判断しないでください。

理由は2つあります。第一に、控除されるのは所得税と住民税の計算上の話であって、支払った金額が戻るわけではありません。第二に、資金は積み立てに回るため、手元の現金は減ります。

手元資金が薄い時期に無理な金額を設定すると、資金繰りが苦しくなります。運転資金の6か月分を確保したうえで、余裕分から掛けるのが安全です。

この考え方は繰上返済と同じです。判断の基準は繰上返済すべきかの判断でも扱っています。

法人化を検討している場合は、その前後で扱いが変わる可能性もあります。個人事業主として加入していた場合、法人の役員になった後の継続について確認が必要です。法人化の判断は法人化のタイミングで扱っています。

控除の効果は、所得の水準によって変わります。利益が小さい年は、控除できる額に対する効果も限られます。逆に利益が大きい年ほど効果は出ますが、その年だけ多く掛けるという使い方は制度の趣旨と合いません。

①の計算では、生活費を先に引いてください。事業の利益がそのまま使える金額ではありません。オーナー個人の生活が回る前提で、残りから掛金を決めます。

あわせて検討する制度

中小企業基盤整備機構は、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)という制度も運営しています。取引先の倒産に備える制度で、掛金の税務上の取り扱いが定められています。

美容室で施術を受けるお客様

ただし美容室の場合、取引先の倒産による連鎖的な影響は限定的です。加入の必要性は事業の形態によって変わるため、税理士と相談して判断してください。

いずれの制度も、加入は義務ではありません。まず自店の資金状況を把握し、余裕がある範囲で始めることが前提になります。

美容室オーナーは、雇われている人と違って退職金も年金の上乗せもありません。だからこそ、自分で備える仕組みを早めに作っておく価値があります。まずは月々いくらなら無理なく続けられるかを計算してみてください。

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この記事を書いた人

美容室オーナー・経営者向けメディア「vaulta」編集部。集客・リピート・融資・求人・DX・独立の実務情報を、一次情報を確認のうえ発信。お金に関わる記事は中小企業診断士の監修を受けています。編集責任者:ISOYAMA。

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