美容室の移転で失客が出る最大の原因は、距離ではなく「知らないうちに移っていた」という状態です。告知の回数と経路を設計すれば、多くは防げます。
この記事では、移転時に必要な届出、告知のスケジュール、伝える内容の順番、そして移転後に来なくなった方への対応を整理します。
結論:美容室の移転は「3か月前から3回」伝える
美容室の来店周期は1〜3か月が中心です。1回の告知では、周期の長い方に届きません。掲示だけで済ませると、次の来店時に閉まっている店の前に立つことになります。
設計の基本はシンプルです。移転の3か月前・1か月前・直前の3回、来店時とメッセージの両方で伝えます。回数と経路を重ねることで、届く確率が上がります。
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移転の告知は、単に情報を伝える作業ではありません。通っていただいている方に対して、これからも来てほしいという意思表示でもあります。事務連絡として流すか、関係を続ける機会として使うかで、結果は変わります。
まず届出を確認する
移転は手続きが伴います。美容師法では、美容所を開設する場合に都道府県知事等(保健所)への届出が必要とされており、構造設備が基準に適合しているかの確認を受けます。
出典:厚生労働省が所管する美容師法および関係法令。移転時の手続きの詳細や必要書類は自治体によって異なるため、移転先を管轄する保健所にご確認ください。
実務上は、移転先での新規開設の手続きと、旧店舗の廃止に関する手続きの両方が必要になるのが一般的です。工事のスケジュールと合わせて、早めに保健所へ相談してください。
手続きが遅れると、内装が完成していても営業を開始できません。告知した開店日に間に合わないと、そこでも信用を損ないます。
あわせて、移転先の物件を決める段階でも保健所への確認が有効です。構造設備の基準を満たせない物件を契約してしまうと、追加工事の費用が発生します。契約前に図面を持って相談しておくと、後戻りを防げます。
看板や広告の表示についても、移転前後で情報が食い違わないよう注意してください。ポータルサイトや地図サービスの住所が古いままだと、移転後に旧店舗へ向かう方が出ます。更新の対象を一覧にして、漏れなく直す形にしておくと確実です。
告知のスケジュール
| 時期 | 手段 | 伝える内容 |
|---|---|---|
| 3か月前 | 来店時の口頭+店内掲示 | 移転すること・時期の目安 |
| 1か月前 | メッセージ配信+口頭 | 新住所・開店日・アクセス |
| 直前 | メッセージ+旧店舗の掲示 | 最終営業日・新店舗の地図 |
| 移転後1か月 | 未来店の方へ個別連絡 | 移転済みの案内と予約提案 |
上表は告知の設計例です。来店周期や客層に応じて回数を調整してください。
最後の行が抜けている店が多く見られます。移転後1か月たっても来ていない方は、告知が届いていない可能性があります。ここで一度連絡を入れるかどうかで、戻ってくる人数が変わります。
3か月前の段階では、詳細が固まっていないこともあります。その場合でも「近くに移転します」という事実だけは早めに伝えてください。時期や住所は後から補えますが、聞かされていなかったという印象は取り返しにくくなります。
逆に、確定していないことを断定して伝えるのは避けてください。工事の遅れで開店が延びると、二度手間の連絡になります。「◯月頃を予定しています」という表現で十分です。
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伝える順番を間違えない
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これまでのお礼を先に置く
移転の連絡は事務的になりがちです。まず通っていただいたことへの感謝から始めると、受け取り方が変わります。
-
変わらないことを伝える
担当者、メニュー、価格、予約方法。変わらない点を先に示すと、不安が減ります。
-
変わることを具体的に伝える
住所、最寄り駅、徒歩分数、駐車場の有無。地図と合わせて示します。
-
次回の予約を提案する
「新店舗での初回をお取りしましょうか」と、その場で次につなげます。告知だけで終わらせません。

移転を機に価格やメニューを変更する場合は、移転の告知と同時に伝えないほうが混乱を避けられます。同時に伝えると「移転で値上げされた」という印象が残ります。時期をずらすか、変更の理由を分けて説明してください。
④の予約提案は、失客を防ぐうえで最も効果があります。次回の予約が入っていれば、移転先に足を運ぶ理由が具体的になります。逆に予約がない状態では、移転を機に他店を試す判断がされやすくなります。
移転先までの経路も、口頭だけでなく紙かメッセージで残る形で渡してください。最寄り駅からの徒歩分数、目印になる建物、駐車場の有無。この3つがあれば、初めてでも迷いにくくなります。
担当スタイリストから直接伝えることも効果があります。店からのお知らせより、いつもの担当者の言葉のほうが届きます。
距離で離れる人への対応
どれだけ丁寧に告知しても、通えなくなる方は出ます。ここで大切なのは、無理に引き止めないことです。
むしろ、通いやすさを理由に離れる方には、次のような対応が現実的です。第一に、来店の間隔を延ばした形での提案。3か月ごとなら通えるという方は少なくありません。第二に、施術時間をまとめる提案。回数を減らして1回を充実させる形です。第三に、無理のない見送り。関係を良い形で終えれば、引っ越しや転職で戻ってくることもあります。
顧客の状況を分けて考えるには優良顧客のランク分けの基準が役立ちます。誰に個別連絡をするかの優先順位が決まります。
通える方であっても、移転直後は来店が途切れやすい時期です。旧店舗の最終営業日から新店舗の開店までに空白があると、その間に他店へ行く方が出ます。空白を短くするか、事前に予約を押さえておくことで影響を抑えられます。
離れる方が出ることを前提に、移転前の数か月は新規の受け入れを少し厚くしておくという考え方もあります。移転後に空きが出てから慌てて集客するより、事前に接点を作っておくほうが立ち上がりは滑らかになります。
移転を機に増やす視点
移転は失うことばかりではありません。新しい商圏で認知を作る機会でもあります。
第一に、新住所でのGoogleビジネスプロフィールの更新。住所変更を早めに反映し、写真も差し替えます。第二に、新しい商圏の分析。周辺にどんな店があり、どんな層が住んでいるかを確認します。第三に、開店直後の枠の使い方。既存客の予約が落ち着くまでは、新規向けの枠を確保しておきます。

周辺の状況を調べる手順は競合調査のやり方にまとめています。移転先が決まった時点で一度調べておくと、開店後の打ち手が決めやすくなります。
移転は準備の量が多く、告知は後回しになりがちです。しかし失客の影響は工事費より大きくなることがあります。物件が決まったら、まず告知の計画から作ってみてください。
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