美容室の器具は、構造が単純で状態を目で確かめられるセット椅子・ワゴン・待合家具なら中古、水回りの部品やドライヤーなどの電気機器は新品が基本です。中古は保証と搬入・設置費を含む総額で新品と比べ、減価償却は簡便法で出した耐用年数で行います。
中古に向く器具・向かない器具の線引き、購入先ごとの違い、状態チェックの項目、保証と搬入の注意、中古資産の耐用年数の計算式と少額資産の扱いまでを整理します(2026年10月時点の情報です)。
結論:中古でよい器具・新品にすべき器具の早見表
中古を選んでよいかは、壊れたときに営業が止まるか、状態を見た目と動作で確かめられるかで判断します。開業時によく揃える器具を3段階に分けると次のとおりです。
| 器具 | 判断 | 理由と確認点 |
|---|---|---|
| セット椅子(スタイリングチェア) | 中古でよい | 油圧と回転を実際に動かして確かめられる。座面は張り替えもできる |
| ワゴン、待合のソファ・テーブル | 中古でよい | 構造が単純で、傷以外の劣化が少ない |
| 受付カウンター、収納家具 | 中古でよい | 店の寸法に合うかが最優先 |
| セット面(ミラー・ドレッサー) | 条件付き | 照明やコンセント付きは配線と器具の状態を確認 |
| シャンプー台 | 条件付き | ボウルとチェアは可。水栓・ホース・パッキンは新品に替える前提 |
| スチーマー・促進機などの施術機器 | 条件付き | メーカーの修理対応と部品供給が続いている型番か確認 |
| 紫外線消毒器 | 条件付き | 保健所の検査で見られる消毒設備。ランプの点灯と交換部品を確認 |
| ドライヤー・ヘアアイロン | 新品が基本 | 消耗が早い。事業者が売る中古品はPSEマークが必要 |
| 給湯器 | 新品が基本 | 故障すると営業が止まる。設置工事も必要 |
中古で浮いた費用は、開業直後の運転資金に回すのが基本です。揃えるもの全体は開業で揃える備品・什器リストで先に洗い出し、その中から中古にできるものを選ぶ順番にすると、必要なものの抜けを防げます。
中古が向く器具の3つの条件
中古に向くのは、構造が単純で、状態を見た目と動作で確かめられ、壊れてもすぐ代わりを用意できる器具です。セット椅子・ワゴン・待合家具はこの3つを満たしやすく、新品との価格差がそのまま節約になります。
- 構造が単純:油圧や回転など動く部分が少ないほど、劣化の見落としが減ります。電子制御の部品が多い機器ほど、中古の故障リスクは外から読みにくくなります。
- 状態を確かめられる:座る・回す・上げ下げするなど、実物の動作で判断できる器具は、写真だけで買うより失敗が減ります。
- 代わりがきく:セット椅子が1脚壊れても他の席で営業できますが、シャンプー台や給湯器が止まると予約全体に響きます。
セット椅子は中古の代表例ですが、最優先で見るのは油圧ポンプです。いちばん上まで上げて数分置き、座面が下がってこないか、オイルがにじんでいないかを確かめます。座面の破れは張り替えで直せるため、油圧と回転のガタつきのほうが優先度の高い確認項目です。
新品にすべき器具 — 水回りの部品と電気機器
新品が基本なのは、水回りの部品と電気機器です。水漏れや故障が営業停止や階下への被害につながるうえ、中古では劣化の程度を外から判断しにくいためです。
ドライヤー・アイロンなどの電気機器
電気用品安全法は、電気用品の製造・輸入・販売の事業者に対し、PSEマークなど法定の表示がない電気用品の販売を禁じています(同法第27条)。中古品でも、事業者から買うならPSEマークの有無を確かめます。ドライヤーやアイロンは毎日長時間使うため、モーターや発熱部の消耗が進みやすく、中古で買う利点が小さい器具です。
シャンプー台の水回り
シャンプー台のボウルやチェアは中古でも使えますが、水栓金具・シャワーホース・パッキンは使った年数に応じて劣化します。中古で買う場合は、水回り部品の交換費と、給排水につなぐ設置工事費を最初から見積もりに入れます。種類や設置条件はシャンプー台の選び方を参照してください。
修理部品が手に入るか
スチーマーや促進機、電動チェアなど機械部分のある器具は、メーカーが補修用部品の供給を終えた型番だと、故障しても直せないことがあります。購入前に型番と製造年を控え、メーカーや取引のあるディーラーに修理対応が続いているかを問い合わせてください。
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中古美容器具はどこで買うか — 購入先ごとの違い
主な購入先は、中古美容器具の専門業者、ディーラー経由の再生品、閉店・移転する店からの直接譲渡、ネットオークションやフリマアプリの4つです。価格が安い購入先ほど、保証・搬入・設置を自分で手配する範囲が広くなります。
| 購入先 | 価格 | 保証 | 搬入・設置 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 中古美容器具の専門業者 | 中程度 | 有無・期間は業者ごとに違う | 配送や設置まで頼めることが多い | 古物商の許可番号の表示を確認する |
| ディーラー経由の再生品・下取り品 | 中程度〜やや高い | 点検・整備済みで保証が付く場合がある | 取引ディーラーが手配する | 在庫が少なく、欲しい時期に見つかるとは限らない |
| 閉店・移転する店からの直接譲渡(居抜きを含む) | 安い | 原則なし(現状渡し) | 自分で手配する | 動作確認と、撤去・搬出の段取り |
| ネットオークション・フリマアプリ | 安い〜相場次第 | 原則なし | 送料と搬入を自分で手配する | 実物を確認できない。大型品は送料が高くなる |
中古品を業として売買するには都道府県公安委員会の古物商の許可が必要で、古物商は氏名や名称、許可した公安委員会の名称、許可証の番号をホームページなどで公表することになっています(古物営業法第3条・第12条)。ネットで業者を選ぶときは、まずこの表示を確かめます。
注意したいのは、店で使う器具を買う契約は消費者としての契約に当たらない点です。消費者契約法の「消費者」は事業のために契約する個人を除いており(同法第2条)、クーリング・オフも営業のための契約には適用されません(特定商取引法第26条)。保証や返品の条件は、注文書や契約書に書かれた内容がすべてと考えてください。
個人から買う場合はインボイス(適格請求書)が出ません。消費税を本則課税で計算している店では、インボイスのない仕入れの税額控除は経過措置の割合(2026年10月からは7割)に限られます。簡易課税の店は控除額の計算に影響しません。
中古器具の状態チェックのポイント
状態チェックは、実物を動かして確かめるのが基本です。器具ごとに見る場所が決まっているため、内見や引き取りの前に次の表で確認項目を共有しておきます。
| 器具 | 確認すること |
|---|---|
| セット椅子 | 最上段まで上げて数分置き、下がらないか。オイルのにじみ、回転時のガタつき、フットレストの固定 |
| シャンプー台 | ボウルのひび・欠け、チェアのリクライニング動作、水栓の型番(交換部品が手に入るか)、製造年 |
| セット面(ミラー) | 鏡の縁の黒ずみ(腐食)、照明の点灯、コンセントや配線の焦げ・傷 |
| 電気機器全般 | PSEマーク、製造年、電源コードの傷、異音や異臭がないか |
| 紫外線消毒器 | ランプが点灯するか、交換用ランプが手に入るか |
| ワゴン・家具 | キャスターの回り、引き出しのレール、天板の反り |
写真だけで判断する場合は、動いている様子の動画と、型番や製造年が書かれた銘板の写真を出品者に求めます。製造年は減価償却の計算にも使うため、購入時に書面や画面の記録で残しておくと後で困りません。
中古か新品かは、保健所の検査では問われません。見られるのは、店が清潔に保たれているか、消毒設備が使える状態か、採光・照明・換気が十分かといった点です(美容師法第13条)。中古の紫外線消毒器を使う場合は、検査の前にランプが点灯することを確かめておきます。
保証と搬入・設置費 — 総額で新品と比べる
中古が得かどうかは本体価格ではなく、本体・部品交換・送料と搬入・設置工事を足した総額に、保証がない分の故障リスクを加えて判断します。大型の器具ほど、本体以外の費用の割合が大きくなります。
試算 — セット椅子4脚とシャンプー台1台を中古にした場合(仮の設定)
| 項目 | 新品 | 中古 |
|---|---|---|
| セット椅子4脚 | 15万円×4=60万円 | 6万円×4=24万円 |
| シャンプー台1台(本体) | 50万円 | 20万円 |
| 水回り部品の交換 | 0円 | 5万円 |
| 送料・搬入(階段搬入を想定) | 3万円 | 8万円 |
| 取付・配管工事 | 15万円 | 15万円 |
| 合計 | 128万円 | 72万円 |
数字は自分で置いた前提による試算で、実際の価格は型番や状態で大きく変わります。この設定では中古が約56万円安くなりますが、保証のない中古シャンプー台が1年以内に故障すれば、修理費と休業の損失で差は縮みます。差額の一部を修理の予備費として残しておくのが現実的です。
搬入で確認すること
大型の器具は、搬入経路で止まることがあります。エレベーターの扉の幅と奥行き、階段の幅と曲がり角、入口の扉の幅を測り、器具の梱包サイズと比べます。内装工事の前と後のどちらに搬入するかで床や壁の傷のリスクと養生の手間が変わるため、内装業者と搬入日を決めておきます。
保証と契約書
保証は、期間、対象(動作全体か部品だけか)、修理の出張費の扱いを書面で確認します。事業者どうしの取引では「現状渡し」「返品不可」の条件がそのまま有効になりやすいため、口頭の説明は注文書か請求書に書いてもらうことが大切です。
購入資金が足りない場合は、中古ではなく新品をリースで入れる選択肢もあります。比べ方は設備資金はリースと購入どちらが得かと機器リース料金の相場と仕組みで整理しています。
中古器具の減価償却 — 中古資産の耐用年数の計算式
中古で買った器具は、法定耐用年数ではなく、買ってから使える期間を見積もった年数で減価償却できます。見積もりが難しい場合は、次の簡便法の式で耐用年数を出します(減価償却資産の耐用年数等に関する省令第3条)。
- 法定耐用年数の全部を経過した資産:法定耐用年数×20%
- 法定耐用年数の一部を経過した資産:(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%
- 共通のルール:1年未満の端数は切り捨て、2年に満たない場合は2年とする
美容機器の多くは「器具及び備品」の「理容又は美容機器」に当たり、法定耐用年数は5年です。洗濯機や乾燥機は「電気冷蔵庫、電気洗濯機その他これらに類する電気又はガス機器」として6年です。この2つで計算すると、経過年数ごとの耐用年数は次のようになります。
| 買った時点の経過年数 | 理容又は美容機器(法定5年) | 電気・ガス機器(法定6年) |
|---|---|---|
| 1年 | (5−1)+1×0.2=4.2→4年 | (6−1)+1×0.2=5.2→5年 |
| 2年 | (5−2)+2×0.2=3.4→3年 | (6−2)+2×0.2=4.4→4年 |
| 3年 | (5−3)+3×0.2=2.6→2年 | (6−3)+3×0.2=3.6→3年 |
| 4年 | (5−4)+4×0.2=1.8→2年 | (6−4)+4×0.2=2.8→2年 |
| 5年以上 | 全部経過:5×0.2=1→2年 | 5年:(6−5)+5×0.2=2年、6年以上:6×0.2=1.2→2年 |
経過年数は、その器具が製造・使用されてから買うまでに経った年数です。分からない場合は、構造や型式、表示されている製造時期などから見積もります。簡便法は事業に使い始めた年に計算する必要があり、後の年になってから使うことはできません。また、使える状態にするための修理などの支出が取得価額の50%を超える場合は、簡便法を使えません。
少額の器具は一度に経費にできる
中古でも、取得価額で判定する少額資産の扱いは新品と同じです。10万円未満は全額をその年の経費に、10万円以上20万円未満は一括償却資産として3年で均等に経費にできます。
青色申告の中小事業者は、少額減価償却資産の特例で、2026年4月1日以後に取得したものは40万円未満(それより前は30万円未満)まで、年間合計300万円を上限に全額をその年の経費にできます(2029年3月31日までの取得分)。器具ごとの法定耐用年数は設備の耐用年数一覧にまとめています。
中古器具を買う前に、次の9項目を確認してください。
- 開業に必要な器具を一覧にし、中古にするものと新品にするものを分けた
- ドライヤー・アイロンなどの電気機器は新品にした(中古ならPSEマークを確認した)
- 型番と製造年を控え、メーカーの修理対応が続いているか確認した
- セット椅子の油圧、シャンプー台のリクライニングを実物か動画で確かめた
- 業者の古物商の許可番号の表示を確認した
- 保証の期間と対象、返品の条件を注文書に書いてもらった
- 送料・搬入・設置工事・部品交換を含めた総額で新品と比べた
- エレベーター・階段・入口の寸法と搬入日を内装業者と決めた
- 簡便法の耐用年数を計算するため、製造年の記録を残した
よくある質問
中古のシャンプー台は自分で取り付けられますか?
自分で取り付けるのは避けてください。給排水の配管接続は設備業者に、コンセントの増設などの電気工事は電気工事士の資格を持つ業者に依頼する必要があります。接続の不具合による水漏れは、階下への被害にもつながります。
中古の器具でも保健所の検査に通りますか?
通ります。検査で新品か中古かは問われず、店が清潔に保たれているか、消毒設備が使える状態か、採光・照明・換気が十分かが見られます(美容師法第13条)。中古の紫外線消毒器は、検査の前に点灯を確かめておいてください。
フリマアプリで個人から買った器具も経費にできますか?
できます。取引画面と支払いの記録を保存し、金額に応じて経費または減価償却資産として処理します。ただし個人からの購入はインボイスがないため、本則課税の店では消費税の仕入税額控除が経過措置の割合に限られます。
中古器具の耐用年数が2年になるのはどんなときですか?
簡便法の計算結果が3年未満になったときです。1年未満の端数は切り捨て、2年未満なら2年とするため、法定耐用年数5年の美容機器では、経過年数が3年以上の中古品の耐用年数は2年になります。
中古のドライヤーを買っても問題ありませんか?
避けるのが無難です。事業者はPSEマークのない電気用品を販売できず、PSEマークがあってもドライヤーはモーターや発熱部の消耗が進みやすいため、毎日使う店の器具としては新品のほうが安心です。
出典:減価償却資産の耐用年数等に関する省令第3条・別表第一、国税庁「No.5404 中古資産の耐用年数」「No.2100 減価償却のあらまし」「耐用年数(器具・備品)」、租税特別措置法第28条の2・第67条の5、古物営業法第3条・第12条、電気用品安全法第27条、消費者契約法第2条、特定商取引法第26条、美容師法第13条(国税庁「中古資産の耐用年数」、e-Gov法令検索「電気用品安全法」)。個別の判断は税理士、取引先のディーラー、管轄の保健所に確認してください。
中古器具は、「止まると困るものは新品、確かめられるものは中古」の線引きで選ぶと失敗が減ります。まず開業に必要な器具を一覧にして中古候補に印を付け、型番と製造年を控えたうえで、保証と搬入費を含めた総額で見積もりを比べてください。
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