美容室の市場規模は、リクルート「美容センサス」の推計で1兆3,063億円(2026年上期調査、前年比5.9%減)、矢野経済研究所の予測で1兆5,100億円(2026年度の美容室分)です。2024年度まで続いた伸びが止まり、直近は減少から横ばいに転じています。
2つの統計の定義の違い、2021年以降の推移、客単価と来店回数の変化、店舗数・人口との関係を公表値だけで整理し、自店の商圏の市場規模を出す計算式も紹介します(2026年10月時点の情報です)。
結論:美容室の市場規模の早見表
美容室の市場規模を示す代表的な公表値は、消費者の支出から推計する「美容センサス」と、事業者の売上から推計する矢野経済研究所の調査の2つです。数字の大きさは定義によって変わるため、出典と定義をセットで使います。
| 統計 | 定義 | 最新値 | 前年比 | 公表時期 |
|---|---|---|---|---|
| 美容センサス2026年上期<美容室編>(リクルート ホットペッパービューティーアカデミー) | 消費者ベースの推計。美容室の施術への支出 | 1兆3,063億円 | 5.9%減 | 2026年6月25日 |
| 理美容サロン市場に関する調査(矢野経済研究所) | 事業者売上高ベース。理容室と美容室の合計で、店販を含む | 2兆1,030億円(2025年度) | 1.0%減 | 2026年8月6日 |
| 同上の予測(美容室分) | 2026年度の予測値 | 1兆5,100億円 | 0.1%減 | 2026年8月6日 |
| 衛生行政報告例(厚生労働省) | 美容所の施設数と従業美容師数 | 277,752施設・588,291人(2025年3月末) | 施設1.3%増 | 2025年10月21日 |
矢野経済研究所は、2025年度の理美容サロン市場が2020年度以来の減少に転じたと発表しています。店の数が増える一方で市場は伸びておらず、1店舗あたりの取り分は小さくなっています。
美容室の市場規模はいくらか — 2つの統計で数字が違う理由
美容室の市場規模は、数え方によって約1.3兆円から約1.5兆円の幅があります。美容センサスは「人口×利用率×1回の金額×年間回数」で消費者側から積み上げ、矢野経済研究所は事業者の売上から推計しているためです。
| 項目 | 美容センサス(リクルート) | 矢野経済研究所 |
|---|---|---|
| 推計の基準 | 消費者の支出(アンケート) | 事業者の売上高 |
| 計算方法 | 男女・年代ごとに人口×1年以内の利用率×1回あたり利用金額×年間利用回数 | 参入事業者への調査などから市場全体を推計 |
| 対象 | 15〜69歳の男女。調査対象は人口20万人以上の都市の居住者 | 理容室・美容室。訪問・無店舗を含み、まつげサロンは除く |
| 店販 | 店販の購入額は別の設問で集計し、市場規模の計算式には使っていない | 店頭・ECの物販を含む |
| 美容室の最新値 | 1兆3,063億円(2026年上期調査) | 1兆5,100億円(2026年度予測) |
美容センサスは14歳以下と70歳以上を含まず、店販の購入額も計算に入れていないため、事業者売上ベースより小さく出ます。どちらが正しいかではなく、「消費者が払った施術代」を見たいなら美容センサス、「店の売上の合計」を見たいなら矢野経済研究所と使い分けます。世帯の家計簿から見た支出は、総務省「家計調査」をもとにした美容室の年間支出の統計で整理しています。
美容室の市場規模の推移 — 2025年まで微増、2026年調査で減少
美容センサスの美容室市場は、2021年の1兆3,129億円から2025年の1兆3,884億円までおおむね横ばいから微増で推移し、2026年上期調査で1兆3,063億円(5.9%減)に落ちました。矢野経済研究所の理美容サロン市場も、2024年度に4年連続で伸びた後、2025年度に減少しています。
| 調査年 | 美容室市場(全体) | 前年比 | 女性 | 男性 |
|---|---|---|---|---|
| 2021年 | 1兆3,129億円 | 6.7%減 | 9,818億円 | 3,312億円 |
| 2022年 | 1兆3,445億円 | 2.4%増 | 1兆159億円 | 3,286億円 |
| 2023年 | 1兆3,558億円 | 0.8%増 | 1兆235億円 | 3,323億円 |
| 2024年 | 1兆3,543億円 | 0.1%減 | 1兆59億円 | 3,484億円 |
| 2025年 | 1兆3,884億円 | 2.5%増 | 1兆343億円 | 3,542億円 |
| 2026年 | 1兆3,063億円 | 5.9%減 | — | — |
出典:リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2025年上期<美容室編>」(2021〜2025年)、「美容センサス2026年上期<美容室編>」(2026年)。各年とも上期調査で、回答者の過去1年間の利用を集計。2024年調査から人口比率に合わせたウェイトバック集計に変更し、2021〜2023年も再集計済み。2026年の男女別は公表ページで確認できなかったため「—」。
矢野経済研究所の理美容サロン市場(理容室と美容室の合計)は、2024年度2兆1,240億円(前年度比1.5%増)、2025年度2兆1,030億円(1.0%減)で、2026年度は2兆1,002億円とほぼ横ばいの予測です。2つの統計とも、2025〜2026年に減少へ転じたという方向は一致しています。
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客単価と来店回数はどう変わったか — 単価は上がり、回数と利用率が落ちた
市場規模の動きを分解すると、1回あたりの利用金額は上がり続けた一方で、利用する人の割合と年間の来店回数が下がったことが分かります。2026年上期調査では単価の伸びも止まり、市場規模の減少につながりました。
| 調査年 | 女性 利用率 | 女性 1回の金額 | 女性 年間回数 | 男性 利用率 | 男性 1回の金額 | 男性 年間回数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021年 | 81.5% | 7,054円 | 4.16回 | 33.5% | 4,441円 | 5.42回 |
| 2022年 | 81.2% | 7,368円 | 4.19回 | 32.8% | 4,577円 | 5.40回 |
| 2023年 | 80.4% | 7,293円 | 4.36回 | 33.4% | 4,680円 | 5.26回 |
| 2024年 | 78.2% | 7,482円 | 4.31回 | 34.2% | 4,708円 | 5.38回 |
| 2025年 | 79.2% | 7,668円 | 4.30回 | 34.5% | 4,879円 | 5.24回 |
| 2026年 | 77.5% | 7,686円 | 4.18回 | 32.7% | 4,853円 | 5.05回 |
出典:同上。利用率は15〜69歳のうち過去1年間に美容室を1回以上利用した人の割合。1回の金額と年間回数は利用者の平均。
女性の1回あたりの金額は5年で約9%上がりましたが、年間回数は2023年の4.36回から2026年の4.18回へ減っています。矢野経済研究所も、2022年秋から2023年の値上げ直後は来店頻度への影響が小さかったものの、その後に来店間隔が延びたと分析しています。来店周期の目安は来店周期の平均で確認できます。
店舗数・美容師数との関係 — 1店舗あたりの市場は約470万〜510万円
美容室の数は増え続けているため、市場規模を店舗数で割った1店舗あたりの市場は縮んでいます。厚生労働省の衛生行政報告例の施設数で美容センサスの市場規模を割ると、2021年の約509万円から2026年は約470万円になります。
| 調査年(市場) | 美容室市場(美容センサス) | 美容所数(各年3月末) | 1施設あたり(計算値) |
|---|---|---|---|
| 2021年 | 1兆3,129億円 | 257,890施設 | 約509万円 |
| 2022年 | 1兆3,445億円 | 264,223施設 | 約509万円 |
| 2023年 | 1兆3,558億円 | 269,889施設 | 約502万円 |
| 2024年 | 1兆3,543億円 | 274,070施設 | 約494万円 |
| 2025年 | 1兆3,884億円 | 277,752施設 | 約500万円 |
| 2026年 | 1兆3,063億円 | 277,752施設(2026年3月末は未公表のため前年値) | 約470万円 |
美容センサスは70歳以上や店販を含まないため、1施設あたりの値は実際の売上より小さく出ます。それでも同じ物差しで比べると、店が増えるほど1店舗の取り分が薄くなる流れは明らかです。2025年3月末の従業美容師588,291人で割ると、美容師1人あたりの市場は約236万円(2025年、計算値)です。施設数と美容師数の詳しい推移は美容室の数と美容師の数の推移、店の淘汰の状況は美容室の倒産・休廃業の動向にまとめています。
今後の需要を左右する要因 — 人口・来店回数・専門店・男性客
今後の美容室の需要は、人口の減少と高齢化、来店回数の減少、専門店や低価格店への分散で決まっていきます。公表データから読み取れる要因は次の5つです。
- 働く世代の人口が減る:総務省「人口推計」では、2026年4月1日の総人口は1億2,283万8千人で前年同月比0.45%減、15〜64歳は7,333万6千人(0.30%減)です。客数の母数は毎年少しずつ減ります。
- 高齢の客が増える:65歳以上は3,621万1千人で総人口の29.5%、75歳以上は前年同月比2.27%増えています。美容センサスでも60代女性の年間利用回数は5.61回と最も多く(2025年上期調査)、通いやすさの工夫が需要を左右します。
- 来店回数が減っている:女性の年間利用回数は2026年上期調査で4.18回と、2023年の4.36回から減りました。1人の客の来店を年1回増やせるかどうかが売上に直結します。
- カット専門店などに分散している:2025年上期調査で、ヘアカット専門サロンの利用経験は女性27.4%、男性36.7%でした。主な理由は「金額が安く済む」です。
- 男性客は伸びてきたが足踏み:男性市場は2021年の3,312億円から2025年の3,542億円へ増えましたが、2026年上期調査では男性の利用率が32.7%に下がっています。
矢野経済研究所は、予約プラットフォームへの依存が続き、広告費や手数料が小規模店の利益を圧迫していることも課題に挙げています。市場が伸びない局面では、新規の獲得より既存客の来店回数を守るほうが費用対効果は高くなります。
自店の商圏の市場規模を出す方法 — 美容センサスの式を当てはめる
全国の市場規模は、そのままでは自店の判断に使えません。美容センサスと同じ式に商圏の人口を入れると、自店の商圏でお客様が美容室に使う金額の目安が出ます。
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商圏の15〜69歳の人口を男女別に調べる
市区町村の人口統計やe-Statの地域データで、店から通える範囲の男女別人口を出します。調べ方は出店エリアの人口と需要の調べ方を参照してください。
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利用率・1回の金額・年間回数を掛ける
全国値として、女性は利用率77.5%・1回7,686円・年4.18回、男性は32.7%・4,853円・5.05回(美容センサス2026年上期調査)を使います。
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自店の年間売上を割ってシェアを出す
自店の施術売上を商圏の市場で割り、シェアが毎年どう動くかを見ます。売上の水準感は美容室の売上の平均と目安と合わせて確認します。
試算 — 15〜69歳が男女各1万人の商圏の市場規模(仮の設定)
商圏の15〜69歳人口を女性1万人・男性1万人と仮定し、全国値を当てはめます。人口は自分で置いた仮定で、地域の利用率や単価は全国値と異なります。
| 区分 | 計算式 | 商圏の年間市場 |
|---|---|---|
| 女性 | 10,000人×77.5%×7,686円×4.18回 | 約2億4,899万円 |
| 男性 | 10,000人×32.7%×4,853円×5.05回 | 約8,014万円 |
| 合計 | — | 約3億2,913万円 |
| 自店の施術売上が年3,000万円の場合 | 3,000万円÷3億2,913万円 | シェア約9.1% |
この商圏で女性客の年間来店が全国平均の4.18回から5回に増えれば、女性の市場は計算上約2億9,783万円になります。人口が減る中でも、来店回数を上げれば商圏の需要は広げられることを示す計算です。
市場規模の数字を使うときは次の5点を確認してください。
- 出典(調査主体・調査名)と公表時期を併記している
- 消費者ベースか事業者売上ベースかを書いている
- 理容室を含む数字か、美容室だけの数字かを区別している
- 店販を含むかどうかを確認している
- 全国値を自店の商圏の人口に置き換えて判断している
よくある質問
美容室と理容室を合わせた市場規模はいくらですか?
矢野経済研究所の推計で2兆1,030億円(2025年度、事業者売上高ベース、前年度比1.0%減)です。2026年度は2兆1,002億円で、うち理容室が5,902億円、美容室が1兆5,100億円と予測されています。
エステやネイルを含む美容サロン全体の市場規模はいくらですか?
美容センサス2026年上期調査では、美容室・理容室・エステ・リラクゼーション・ネイル・アイビューティーを合わせた美容サロン全体で2兆5,299億円と推計されています。そのうち美容室は1兆3,063億円で、約半分を占めます。
美容室の数が増えているのに市場が伸びないのはなぜですか?
利用する人の割合と年間の来店回数が下がり、単価の上昇で補いきれなくなったためです。美容所は2025年3月末で277,752施設と増えていますが、1施設あたりの市場(計算値)は2021年の約509万円から2026年は約470万円に減っています。
市場規模の統計はいつ更新されますか?
美容センサスは毎年6月下旬(2026年は6月25日)、矢野経済研究所の理美容サロン市場の調査は年1回(2026年は8月6日)、厚生労働省の衛生行政報告例は例年10月下旬に公表されています。
市場規模の数字を融資の事業計画書に使ってよいですか?
使えますが、出典と定義を併記し、自店の商圏の数字に置き換えることが大切です。全国の市場規模だけでは売上見込みの根拠にならないため、商圏の人口と利用率・単価・回数から積み上げた数字を示します。
出典:リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2025年上期<美容室編>」(2025年6月26日)・「美容センサス2026年上期<美容室編>」(2026年6月25日)・「【ポイント解説】美容センサス2026年上期」(2026年6月25日)、矢野経済研究所「理美容サロン市場に関する調査を実施(2025年)」(2025年6月25日)・「同(2026年)」(2026年8月6日)、厚生労働省「令和6年度衛生行政報告例の概況」(2025年10月21日、厚生労働省「衛生行政報告例」)、総務省統計局「人口推計(2026年9月報)」(2026年9月24日、総務省統計局「人口推計」)。1施設あたり・1人あたりの金額はVAULTA編集部の計算値。出店や事業計画の判断は中小企業診断士や金融機関などの専門家に確認してください。
美容室の市場は、店が増える中で横ばいから減少に転じています。まず自店の商圏の市場規模を計算し、自店のシェアと来店回数を毎年記録するところから始めてください。
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