美容師の作品撮りの費用は経費になるか|モデル謝礼・撮影・衣装・スタジオ代の科目と源泉徴収

作品撮りの費用は、集客用の写真やコンテストなど事業のために撮るなら経費になり、科目は広告宣伝費が基本です。モデルへの謝礼は源泉徴収の対象(10.21%)で、スタッフに給与を払っている店は謝礼から差し引いて翌月10日までに納めます。

スタジオ代・衣装・カメラマンへの支払いの科目、源泉徴収が要る支払いと要らない支払い、勤務美容師が自分で費用を出したときの扱いを順に整理します(2026年10月時点の情報です)。

目次

結論:作品撮りの費用の科目と源泉徴収の早見表

作品撮りの支出は、「撮った写真を何に使うか」で科目を決め、「誰に払うか」で源泉徴収の要否を決めます。ホットペッパーやInstagram、店頭パネルなど集客に使うなら広告宣伝費、外に出さない技術練習やコンテスト出品が目的なら研修費として、1年を通じて同じ基準で処理します。

支出 科目の例 源泉徴収 注意点
モデルへの謝礼(現金) 広告宣伝費(練習・コンテスト目的なら研修費) 必要(給与を払っている店) 現金で渡す交通費も謝礼に含めて計算する
モデルへの謝礼(無料施術・商品) 広告宣伝費 対象になり得る 物品や経済的利益で払う場合も報酬に含まれる
個人のカメラマンへの撮影料 広告宣伝費または外注費 雑誌・広告など印刷物用の写真は必要 Web・SNS専用の写真は条文に明記がない
法人のカメラマン・制作会社 広告宣伝費または外注費 不要 法人への支払いは対象外
スタジオ・ロケ地の使用料 広告宣伝費または賃借料 不要 場所代は報酬・料金に当たらない
衣装・小物の購入 消耗品費 不要 1点10万円以上は資産として扱う
衣装のレンタル 賃借料または広告宣伝費 不要 レンタル期間と料金の明細を残す
ウィッグ・エクステ・薬剤 材料費または消耗品費 不要 施術用の在庫と分けて記録する
コンテストの参加費・遠征費 研修費、旅費交通費 不要 大会名と日程が分かる資料を保存する
写真を使ったポスター・パネルの印刷 広告宣伝費 不要 店内掲示や販促物も同じ科目

表で「必要」とした支払いでも、オーナーが1人で営業していて誰にも給与を払っていない個人事業の店なら、源泉徴収そのものが不要です(所得税法第204条第2項第2号)。科目の決め方の全体像は美容室の確定申告で使う勘定科目で整理しています。

作品撮りが経費になる条件 — 撮影の目的と使い道を説明できること

作品撮りの費用は、店の集客、技術の向上、コンテスト出場など、事業との関係を説明できれば経費になります。家族の記念写真や、仕事に使わない個人的な撮影は経費になりません。

事業所得の必要経費は、売上を得るために直接かかった費用と、販売費・一般管理費などの業務上の費用です(所得税法第37条)。税務調査で作品撮りについて聞かれるのは「誰を、何のために撮り、どこで使ったか」です。撮影のたびに次の記録シートを1枚残しておくと、領収書だけでは伝わらない事業との関係を示せます。

作品撮りの記録シート(1回分)に書く7項目と記入例

  • 撮影日・場所:2026年11月9日、レンタルスタジオ(市内)
  • 目的:冬のヘアカタログ用。予約サイト・Instagram・店頭パネルに使用
  • 店側の参加者:スタイリスト2人、アシスタント1人(勤務時間内)
  • モデル:氏名、謝礼の額と源泉徴収額、掲載同意書の有無
  • 支払先と金額:スタジオ、カメラマン、衣装レンタルなど支払先ごとの金額
  • 使用先:掲載したページ、掲載期間、パネルの設置場所
  • 保存した証拠:領収書・請求書、源泉税の納付日、撮影データの保存場所

科目は「公開して集客に使う写真は広告宣伝費、外に出さない練習用やコンテスト出品用は研修費」と決めておくと迷いません。迷ったときは広告宣伝費に寄せ、翌年以降も同じ基準を使います。撮影の手順や光の当て方はスタイル写真の撮り方、モデルから取る掲載の同意は写真撮影と掲載許可の取り方を参照してください。モデル自身のカット代やカラー剤の扱いはカット代は経費になるかで場面別に整理しています。

モデルへの謝礼に源泉徴収は必要か — 給与を払っている店は10.21%を差し引く

必要です。所得税法はモデルの業務に関する報酬を源泉徴収の対象に挙げ(第204条第1項第4号)、政令で雑誌・広告などの印刷物に容姿を載せて報酬を受ける人もモデルに含めるとしています(所得税法施行令第320条第3項)。職業モデルに限らず、美容学生や知人に謝礼を払う場合も対象として処理するのが安全です。

税率は謝礼の額の10.21%(同じ人に1回で100万円を超える部分は20.42%)で、所得税と復興特別所得税を合わせた率です(所得税法第205条)。2027年分以後は防衛特別所得税も含めた合計になりますが、国税庁の説明でも10.21%で計算する点は変わっていません。源泉徴収をしなければならないかは、店の形で決まります。

店の状態 源泉徴収 理由
法人の美容室 必要 個人に認められている適用除外がない
個人事業でスタッフに給与を払っている 必要 給与の支払者に当たる
個人事業で家族に青色事業専従者給与だけを払っている 必要 専従者給与も給与に含まれる(国税庁タックスアンサーNo.2793)
個人事業で誰にも給与を払っていない(1人営業、業務委託のみ) 不要 所得税法第204条第2項第2号
業務委託・面貸しで働く美容師が自分で払う 原則不要 本人が給与を払っていなければ対象外

試算 — 謝礼1万円のモデル1人の源泉徴収(仮の設定)

スタッフを雇う店がモデルに謝礼1万円を払う場合、源泉徴収は10,000円×10.21%=1,021円で、モデルに渡すのは8,979円です。「手取りで1万円」と約束した場合は、額面を10,000円÷(1−0.1021)=11,137円とし、源泉徴収1,137円を差し引いて1万円を渡します。どちらで約束したかを撮影前に決め、謝礼の額と一緒に書面かLINEのメッセージで残してください。

謝礼のほかに注意する点が3つあります。現金で渡す交通費は謝礼に含めて計算し、店が切符やタクシーを直接手配して払った交通費は含めなくてかまいません。無料のカットやカラー、商品を謝礼にする場合も、物品その他の経済的利益での支払いは報酬に含まれるとされています(国税庁タックスアンサーNo.2792)。同じモデルへの支払いが年5万円を超えた店は、翌年1月31日までに「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を税務署に出すため、撮影前にマイナンバーの提供を頼めるかも確認しておきます。

給与の源泉税を年2回にまとめる「納期の特例」を受けている店でも、特例の対象は給与・退職金と弁護士・税理士などの一定の報酬に限られます。モデルへの謝礼から差し引いた源泉税は、支払った月の翌月10日までに納付します。源泉徴収を忘れた場合も納める義務は店に残り、不納付加算税や延滞税がかかることがあります。

業務委託の美容師に払う報酬が源泉徴収の対象になるかは別の論点です。業務委託美容師への報酬に源泉徴収は必要かで条文に沿って整理しています。

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カメラマン・スタジオへの支払いに源泉徴収は必要か

個人のカメラマンに払う撮影料は、雑誌・広告その他の印刷物に載せるための写真なら源泉徴収の対象です(所得税法施行令第320条第1項)。法人への支払いやスタジオの使用料は対象になりません。

支払先 源泉徴収 確認すること
個人のカメラマン(ポスター・チラシ・雑誌用) 必要(10.21%) 請求書で消費税が区分されていれば税抜額に掛ける
個人のカメラマン(Web・SNS専用) 条文に明記がない 使い道を確認し、判断に迷えば所轄の税務署に相談する
法人のカメラマン・制作会社 不要 請求書の名義が法人かどうか
レンタルスタジオ・ロケ地 不要 使用時間と料金の明細
個人のメイクアップアーティスト 通常は列挙された報酬に当たらない デザイン料など対象の報酬を含む契約でないか

カメラマンの請求書が「撮影料30,000円、消費税3,000円、合計33,000円」のように区分されていれば、源泉徴収は30,000円×10.21%=3,063円で、支払額は29,937円です(国税庁タックスアンサーNo.2792)。消費税の区分がない請求書なら、税込額に10.21%を掛けます。

本則課税で消費税を納めている店は、インボイス(適格請求書)を出せない個人のカメラマンやモデルへの支払いについて、仕入税額控除が経過措置の割合までに限られます。2026年9月までは8割で、その後は段階的に縮小します。簡易課税や免税の店は控除額の計算に影響しません。詳しくは業務委託と消費税・インボイスで整理しています。

衣装・小物・撮影機材はいつ経費にするか — 1点10万円が境目

衣装や小物、撮影用のライトなどは、1点の取得価額が10万円未満なら買った年に消耗品費として全額を経費にできます。10万円以上は資産として扱い、一括償却か、青色申告者が使える少額減価償却資産の特例で処理します。

1点の取得価額 処理 根拠
10万円未満 消耗品費として買った年に全額 所得税法施行令第138条
10万円以上20万円未満 一括償却資産として3年間で3分の1ずつ(特例も選べる) 所得税法施行令第139条
10万円以上40万円未満(青色申告者) 少額減価償却資産の特例で買った年に全額。年合計300万円まで。2026年3月31日までの取得分は30万円未満が対象 租税特別措置法第28条の2
上記を超えるもの 耐用年数で減価償却。カメラは5年 減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一

「1点」は、通常1単位として取引される単位で数えます(国税庁タックスアンサーNo.5403)。消費税の免税事業者は税込価格で、税抜経理をしている課税事業者は税抜価格で判定します。撮影用に買ったウィッグやエクステは1回の撮影で使い切ることが多いため、材料費か消耗品費で処理します。

試算 — 作品撮り1回の費用と源泉徴収(仮の設定)

スタッフ3人を雇う個人事業の美容室が、冬のヘアカタログを1日で撮影する例です。金額はすべて自分で置いた仮の数字です。

支出 金額 科目 源泉徴収
レンタルスタジオ(4時間) 20,000円 広告宣伝費 なし
個人のカメラマン(店頭パネル・チラシにも使用) 30,000円 広告宣伝費 3,063円
モデル謝礼(2人×10,000円) 20,000円 広告宣伝費 2,042円
衣装・小物 11,000円 消耗品費 なし
ウィッグ・エクステ 6,000円 材料費 なし
合計 87,000円 — 5,105円

この例では、カメラマンに26,937円、モデルに8,979円ずつを渡し、差し引いた5,105円を撮影した月の翌月10日までに納付します。同じ撮影をオーナー1人で給与を払わずに営業している店が行う場合、源泉徴収は不要で、全額をそのまま支払います。

勤務美容師が自分で払った作品撮りの費用は経費になるか

給与で働く美容師が自分で払った作品撮りの費用は、確定申告で経費にすることはできません。給与所得には必要経費を差し引く仕組みがなく、給与所得控除で一律に差し引かれているためです。

例外として「給与所得者の特定支出控除」(所得税法第57条の2)がありますが、対象は通勤費・研修費・資格取得費・図書費などに限られ、店の証明が必要です。しかも控除されるのは特定支出の合計が給与所得控除額の半分を超えた部分だけなので、作品撮りの費用で使える場面はほとんどありません。

  1. 店の撮影として行う:店の集客に使う撮影なら、費用は店が負担し、スタジオやカメラマンへの支払いも店の名義で行います。
  2. 立て替えは実費で精算する:スタッフが立て替えた分は領収書と引き換えに精算します。実費の精算は給与になりませんが、一律の「作品撮り手当」は給与として課税されます。
  3. 撮影の時間を整理する:店が日時を指定したり、参加を事実上強制したりする撮影は労働時間として扱います。休日に行う場合はシフトと賃金の扱いを先に決めます。
  4. 写真の使い道を決める:店が費用を出した写真をスタッフが退職後に使えるか、カメラマンやモデルの了解の範囲で事前に決めておきます。

業務委託や面貸しで働く美容師は事業所得として申告するため、自分の集客のための作品撮りは本人の経費になります。店と費用を分け合う場合は、自分が負担した分だけを経費にし、負担の割合を契約書かメッセージで残してください。

作品撮りの前後に次の7項目を確認してください。

  • 撮影の目的と写真の使い先を記録シートに書いた
  • 集客用は広告宣伝費、練習・コンテスト用は研修費など、科目の基準を決めている
  • 給与を払っている店かどうかで、源泉徴収の要否を確認した
  • モデル謝礼が額面か手取りか、交通費を含むかを撮影前に決めた
  • 源泉税を支払った月の翌月10日までに納付する段取りがある
  • 同じ人への支払いが年5万円を超えそうな場合に、支払調書の準備をしている
  • 1点10万円以上の衣装や機材を、資産として処理する方法を決めた

よくある質問

モデルに謝礼を払わず、無料でカットやカラーをした場合も源泉徴収が必要ですか?

撮影に協力してもらう対価として無料施術を提供するなら、源泉徴収の対象になり得ます。国税庁は物品その他の経済的利益で支払う場合も報酬に含まれるとしています。金額の評価や徴収の方法は、謝礼の内容を決める前に税理士か所轄の税務署に確認してください。

美容学生や知人など、プロではないモデルへの謝礼も源泉徴収の対象ですか?

対象として処理するのが安全です。所得税法施行令は、雑誌・広告などの印刷物に容姿を載せて報酬を受ける人もモデルに含めると定めており、職業モデルに限る書き方になっていません。

モデルの交通費を現金で渡した場合、源泉徴収の計算に含めますか?

含めます。現金で渡す交通費は謝礼の一部として扱います。店が切符やタクシーを直接手配して交通機関に支払った通常必要な範囲の交通費は、含めなくてかまいません。

給与を払っていない1人営業の美容室でも源泉徴収は必要ですか?

不要です。給与の支払いがない個人は、モデルやカメラマンへの報酬について源泉徴収をしなくてよいと定められています(所得税法第204条第2項第2号)。ただし家族に青色事業専従者給与を払っている場合と、法人の美容室は必要です。

作品撮りのために買った10万円のカメラはすぐに経費にできますか?

白色申告では全額をすぐには経費にできません。10万円以上なので、一括償却資産として3年で3分の1ずつ経費にするか、耐用年数5年で減価償却します。青色申告者なら、少額減価償却資産の特例で買った年に全額を経費にできます。

出典:所得税法第37条・第57条の2・第204条・第205条・第225条、所得税法施行令第138条・第139条・第320条、租税特別措置法第28条の2、減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一、国税庁タックスアンサーNo.2505・No.2792・No.2793・No.5403・No.7431(国税庁「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」、国税庁「報酬・料金等の源泉徴収義務者」、e-Gov法令検索「所得税法」)。個別の判断は税理士か所轄の税務署に確認してください。

作品撮りの経理は「目的の記録」と「源泉徴収の確認」の2点で決まります。次の撮影の前に、記録シートの項目と、店が源泉徴収をする立場かどうかを確かめるところから始めてください。

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この記事を書いた人

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