美容室の開業に管理美容師が必要かどうかは、その店で美容師が常時2人以上働くかで決まります。1人で開く店には不要で、スタッフを雇った時点で必要になります。
この記事では、法律上の要件、1人開業から増員したときに何が起きるか、講習を受けて資格を取る手順と費用の目安を整理します。

結論:美容室の開業で管理美容師が要るのは「美容師が常時2人以上」の店
美容師法では、美容師が常時2人以上いる美容所には、その美容所を衛生的に管理させるため、管理美容師を置かなければならないと定められています。
逆に言えば、オーナー1人で施術する店には管理美容師は要りません。「開業したら全員が取らなければならない資格」ではなく、店の人数で発生する義務です。ここを誤解して開業前に慌てる人が多くいます。
開業に必要な資格と届出の全体像は美容室開業に必要な資格と届出で扱っています。この記事は管理美容師に絞ります。
店の形態別に、必要になるタイミングを整理する
| 店の形態 | 管理美容師 | 補足 |
|---|---|---|
| オーナー1人で施術 | 不要 | 受付・清掃のみのスタッフは「美容師」に数えない |
| オーナー+美容師1人(計2人) | 必要 | どちらかが管理美容師の資格を持つ |
| オーナー+アシスタント(美容師免許あり) | 必要 | 免許を持っていれば人数に入る |
| 面貸しで別の美容師が同じ店内で施術 | 必要になる場合がある | 同一の美容所に常時2人以上いる状態と見られ得る。保健所に確認 |
| 2店舗目を出す | 店ごとに必要 | 管理美容師は1つの美容所にしか置けない |
見落とされやすいのは面貸しと2店舗目です。管理美容師は1人が1か所しか担当できないので、2店舗目を開くなら、もう1人資格者が要ります。
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1人で開業して、あとから人を雇うときに起きること
1人開業の店がスタッフを雇うと、その時点で管理美容師の設置義務が発生します。資格者がいない状態で2人体制を続けると、法律上の要件を満たさないことになります。
-
採用を決めたら講習の日程を確認する
管理美容師の講習は年に数回しか開かれない地域があります。採用の3〜6か月前から予定を押さえます。
-
受講資格を確認する
美容師免許を取得後、美容の業務に3年以上従事した経験が必要です。オーナー自身が要件を満たすことが多いです。
-
講習を修了し、保健所に届け出る
修了後、美容所の管理美容師として保健所に届け出ます。開設届の変更として扱われます。
採用してから講習を探すと、次の開催まで数か月空くことがあります。「1人で開業するが、いずれ人を雇う予定がある」なら、開業前に取っておくほうが結果的に安全です。

資格を取る手順と費用の目安
管理美容師の資格は、都道府県知事が指定する講習会を修了することで得られます。試験ではなく講習の修了です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受講資格 | 美容師免許取得後、3年以上の実務経験 |
| 講習の内容 | 公衆衛生・美容所の衛生管理など(都道府県により構成が異なる) |
| 日数 | 数日間(地域により異なる) |
| 費用 | 数万円程度(実施団体が公表する額を確認) |
| 申し込み先 | 各都道府県の指定講習実施団体(美容業の生活衛生同業組合など) |
日数と費用は地域と年度で変わるため、自分の都道府県の実施団体の最新案内を必ず確認してください。ここで具体的な金額を断定しないのは、確認せずに書くと誤りになるためです。
講習を受けられないときの現実的な選択肢
- 資格を持つ人を採用する:求人票に「管理美容師資格歓迎」と書くと、経験者が集まりやすくなります。
- 既存スタッフに取ってもらう:実務3年以上のスタッフがいれば、講習費を店で負担して受講してもらう形が取れます。
- 2人目の採用時期をずらす:講習の修了時期に合わせて採用時期を調整します。
採用の進め方は正社員か業務委託か、開業全体の段取りは開業の手続きを参照してください。
出典:厚生労働省「美容師法」第12条の3(管理美容師)、美容師法施行規則、各都道府県の管理美容師資格認定講習会の実施要領。制度は改定されることがあるため、実際の判断では最新の公表資料を確認し、必要に応じて税理士など専門家にご相談ください。記事内の計算は自分で置いた前提による試算です。
「常時2人以上」の数え方で迷いやすい場面
要件の「常時2人以上」は、その美容所で美容の業務に従事する美容師の人数です。数えるのは免許を持ち、施術に関わる人で、受付や清掃だけの人は含まれません。
| 場面 | 人数に入るか | 考え方 |
|---|---|---|
| 週2日だけ来るパートの美容師 | 入る場合がある | 「常時」の解釈は保健所により幅がある。事前に確認する |
| 美容師免許を持つ受付専任スタッフ | 判断が分かれる | 施術に一切関わらないなら含めない解釈もあるが、免許者として数える保健所もある |
| 研修中で施術をまだしないアシスタント | 入る場合が多い | 免許があり、シャンプー等の業務に関わるなら数える |
| 業務委託の美容師(面貸し) | 入る場合がある | 同一の美容所内で施術していれば、雇用形態に関係なく数えられ得る |
| オーナー自身 | 入る | 施術するなら1人として数える |
表のとおり、判断が分かれる場面が多くあります。「うちは要らないはず」と自己判断せず、開設届を出す保健所に人数構成を伝えて確認するのが確実です。保健所ごとに運用の細部が異なることがあるため、他店の例をそのまま当てはめないほうが安全です。
管理美容師が実際に担う仕事
資格を取って届け出れば終わりではありません。管理美容師は、その美容所の衛生管理に責任を持つ立場です。
- 器具の消毒の管理:ハサミ・コーム・クリッパー等の消毒方法と頻度が守られているかを確認する。
- 従業員の健康管理:体調不良時の対応や手指衛生のルールを定め、実施させる。
- 施設の衛生:換気・採光・清掃の状態を維持し、保健所の立入検査に対応する。
- 記録:消毒や清掃の記録を残し、求められたときに示せるようにしておく。
これらは講習で学ぶ内容そのものです。資格を「名義だけ」にせず、実際に衛生管理を回す人に持たせるほうが、店の運営としても筋が通ります。開業時の保健所検査の内容は保健所検査で見られる点を参照してください。
管理美容師がいない状態が続くとどうなるか
2人以上の体制なのに管理美容師を置いていない場合、保健所の立入検査で指導を受ける場合があります。すぐに営業停止になるとは限りませんが、是正を求められ、期限内に対応できなければより重い措置に進む可能性があります。
実務上のリスクはそれだけではありません。求人に応募してきた経験者から「管理美容師はいますか」と聞かれることがあり、いない店は衛生管理への意識が低いと受け取られる場合があります。採用面でも不利になり得ます。
- すぐにできること:現状の人数構成を保健所に伝え、猶予や対応の順番を相談する。隠すより先に相談したほうが対応は穏やかになる傾向があります。
- 数か月でできること:オーナーまたは実務3年以上のスタッフが次回の講習を受ける。
- それまでの間:衛生管理の記録(消毒・清掃)を管理美容師がいる店と同じ水準で残しておく。実態が整っていれば、指導の際の心証は変わり得ます。
開業後に人を増やす計画があるなら、講習の日程を採用計画に組み込んでおくのがいちばん確実です。増員のタイミングで慌てるより、開業準備の一部として片付けておくほうが負担は小さく済みます。
開業前のチェックリスト
次の5つに答えられれば、管理美容師についての準備は足りています。
- 開業時点で、美容師免許を持つ人が店に何人いるかを数えた
- 2人以上なら、誰が管理美容師になるかを決めた
- 1人開業でも、増員の予定があるなら講習の日程を調べた
- 自分の都道府県の講習実施団体と申込方法を確認した
- 面貸しを予定している場合、保健所に人数の数え方を確認した
管理美容師は「取らなければ開業できない資格」ではありません。店の人数で必要になる義務だと理解しておけば、タイミングを外さずに済みます。

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管理美容師講習の申込みから修了までの流れと、実務経験3年の数え方
「必要になるタイミング」が分かったら、次は講習の日程が年に数回しかないことへの備えです。開業や採用の予定から逆算して申し込みます。
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実施団体と日程を調べる
管理美容師資格認定講習会は、厚生労働大臣が指定した団体が都道府県ごとに実施しています。実施団体のサイトで年間の開催地・日程・定員を確認します。地域によっては年1〜2回のため、半年前に確認します。
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受講資格を確かめる
美容師免許を受けた後、美容所で3年以上の実務経験があること。勤務先の証明が要ります(下の数え方を参照)。
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申込み
申込書・美容師免許証の写し・実務経験証明書・写真・受講料を期限までに提出。定員に達すると締め切られるため、受付開始日に出します。受講料は実施団体の案内で確認してください。
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講習を受ける
公衆衛生と美容所の衛生管理の2科目で、合計18時間(3日程度)の講習です。全時間の出席が修了の条件になるため、日程を店のシフトから外します。
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修了証の受け取りと、保健所への届出
修了証(修了証書)を受け取ったら、その人を管理美容師として置く美容所の管轄保健所へ、開設届または変更届で届け出ます。
実務経験3年の数え方(迷いやすい例)
| 状況 | 扱いの目安 |
|---|---|
| 免許取得前のアシスタント期間 | 算入されない。免許を受けた日から数える |
| パート・週3日勤務 | 美容所での実務として算入される場合が多い。期間の数え方は実施団体に確認 |
| 複数の店を転々とした | 各店の実務経験証明書を合算できる。退職した店にも証明を依頼する |
| 面貸し・業務委託での施術 | 美容所での実務として認められるかは、証明者(開設者)が書けるかによる。事前に実施団体へ確認 |
| 育休・ブランク | ブランク期間は算入されないが、前後の期間は合算できる |
よくある質問
- オーナー自身が管理美容師でなくてよいか:構いません。常時2人以上の美容師が従事する美容所に「管理美容師を置く」義務で、誰が担うかは店の判断です。ただし退職すると欠けるため、2人いると安心です。
- 2店舗の管理美容師を兼ねられるか:原則として1人が1つの美容所の管理者になります。2店舗目を開く前に、もう1人の有資格者を用意します。
- 理容師の管理理容師資格は使えるか:別の資格です。美容所には管理美容師が要ります。
根拠は美容師法第12条の3(管理美容師)と同法施行規則、講習の科目・時間は管理理容師及び管理美容師資格認定講習会の実施要領を参照してください。受講資格の数え方の個別判断は実施団体と保健所に確認してください。開業に関わる資格の全体は「独立・開業に必要な資格と届出」、スタッフを雇う前の手続きは「開業に関わる法律一覧」、保健所への変更届は「保健所へのスタッフ登録と変更届」の記事を参照してください。
管理美容師が不在になったら — 退職・休職時の対応と、兼任・複数店舗の考え方
管理美容師は、美容師が常時2人以上いる美容所に置くことが義務づけられています(美容師法)。置いている人が辞める・長期で休むと、要件を満たさなくなる場合があります。いなくなってから慌てないよう、代わりの立て方を先に決めておきます。
| 状況 | 起きること | とる対応 |
|---|---|---|
| 管理美容師が退職する | 常時2人以上なら要件を満たさなくなる | 後任を用意し、保健所へ変更届。後任の講習修了を確認 |
| 長期の休職・産休育休 | 一時的に不在になる | 別の修了者を管理美容師に充てられるか保健所へ相談 |
| 修了者が店に1人しかいない | その人が抜けると代わりがいない | 2人目に講習を受けさせ、備えを二重にする |
| 複数店舗を1人で兼任 | 各店に常勤で置けるかが問われる | 各店ごとに置くのが原則。兼任の可否は保健所に確認 |
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店内の講習修了者を把握する
今いるスタッフのうち、管理美容師講習を修了しているのが誰かを一覧にします。1人だけなら手当が薄い状態です。
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2人目を計画的に受講させる
実務経験3年を満たす人から、講習を受けてもらう順番を決めます。退職の申し出があってからでは間に合わない場合があります。
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不在が決まったら保健所へ相談する
後任の届出の時期と、不在期間の営業の扱いを所管の保健所に確認します。自治体で運用が異なります。
管理美容師を置かないまま営業を続けると、是正の指導を受ける場合があります。複数店舗を1人で掛け持ちできるかは、常勤でどの店にいるかが問われるため、自己判断せず所管の保健所に確認してください。
出典: 美容師法(管理美容師の設置義務)。不在時の扱いと兼任の可否は自治体で運用が異なるため、所管の保健所で確認してください。講習の申込みから修了までの流れは本記事の各節、スタッフの入退社で出す保健所の変更届は「美容室の保健所へのスタッフ登録」、衛生管理の運用は「美容室の衛生管理と器具消毒の運用」の記事を参照してください。
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