美容室の電気容量・ガス・給湯の設備要件|ドライヤーの台数から逆算する契約容量と、物件で確認する項目

美容室の電気容量・ガス・給湯の設備要件|ドライヤーの台数から逆算する契約容量

美容室の電気容量は「同時に使う機器の消費電力の合計」で決まり、ドライヤー1台で約1.2kW、業務用エアコン・給湯・照明・洗濯乾燥を足すと、4席の店で単相の契約では足りないことがあります。給湯はシャンプー台の同時使用数で給湯器の能力が決まり、ガスは都市ガスかプロパンかで毎月の費用が変わります。

この記事では、電気・ガス・給湯の3つについて、必要な容量の考え方、物件の内見で確認する項目、不足したときの工事と費用の考え方、貸主の承諾と工程を整理します。

美容室の設備要件の要点|同時使用の合計で電気を、シャンプー台数で給湯を決める
目次

結論:電気は「同時使用の合計」、給湯は「シャンプー台の同時使用数」で決め、物件を決める前に確認する

電気・ガス・給湯の要件は、内装のデザインより先に確認すべき項目です。理由は、容量が足りない物件では、幹線の引き直しや給湯器の交換で数十万円以上の工事費が加わり、貸主の承諾が下りなければ開業できないからです。物件を契約してから分かると、逃げ場がありません。

確認の順番は、①機器の一覧と消費電力を書き出す、②土日の午後など同時使用が最大になる場面で合計を出す、③物件の現状(契約容量、分電盤、給湯器、配管、ガス種別)を内見で確認する、④不足分の工事を見積もる、⑤貸主の承諾と契約容量の変更を手配する、です。

物件の法令・設備の全体は美容室が可能な物件かを見分ける方法、契約の条項は店舗賃貸借契約で確認する条項で扱っています。この記事は電気・ガス・給湯に絞ります。

電気 — 同時使用の合計から契約容量を逆算する

美容室で電気を多く使う機器は、ドライヤー、アイロン、エアコン、給湯(電気式の場合)、洗濯乾燥機、照明です。数字は機器の仕様で変わりますが、目安を表にします。

機器 消費電力の目安(1台) 4席の店の台数(例) 同時使用の想定
業務用ドライヤー 約1.2〜1.5kW 4台+予備 土日午後は3〜4台が同時に動く
ヘアアイロン 約0.1〜0.2kW(立ち上がり時は高い) 4台 2台同時
業務用エアコン 約1.5〜3kW(能力による) 1〜2台 夏冬は常時
電気給湯器(電気式の場合) 数kW(瞬間式は大きい) 1台 シャンプー中は常時
洗濯乾燥機(乾燥時) 約1〜1.5kW 1台 営業中に回すなら加算
照明(LED) 店全体で約0.3〜0.6kW — 常時
スチーマー・促進機 約0.5〜1kW 1〜2台 施術時

数字は仮の設定ですが、土日の午後にドライヤー4台(5kW)+エアコン2台(4kW)+照明(0.5kW)+アイロン2台(0.3kW)+スチーマー1台(0.8kW)が同時に動くと、合計は約10.6kWです。単相100Vに換算するとおよそ106A相当で、家庭用の契約(30〜60A)では足りません。店舗では、単相3線式や動力(三相200V)の契約、または契約容量を大きくした低圧契約が使われます。

資源エネルギー庁の案内のとおり、電気料金の基本料金は契約容量で決まります。大き過ぎる容量は基本料金の無駄、小さ過ぎる容量はブレーカーの遮断につながるため、同時使用の最大に2〜3割の余裕を加えた容量を、電力会社と電気工事業者に相談して決めます。

分電盤と回路数

契約容量が足りていても、分電盤の回路(ブレーカー)の数と配置が足りないと、1つの回路にドライヤーが集中して落ちます。セット面ごとに専用の回路を分け、エアコン・給湯器・洗濯乾燥機は別回路にするのが基本です。内見では、分電盤の回路数と空きを確認し、内装工事で回路を増やせるかを電気工事業者に見てもらいます。

ドライヤーに加えて促進機やスチーマーも同時に使う店では、促進機・スチーマーの選び方に、定格消費電力と回路の確かめ方があります。

給湯 — シャンプー台の同時使用数で給湯器の能力を決める

項目 考え方 内見で確認すること
給湯器の能力(号数) 1分間に水温+25℃のお湯を何リットル出せるか。シャンプー台1台で1分あたり数リットル使う 設置されている給湯器の号数と設置年。2台同時にシャンプーするなら余裕のある号数
給湯の方式 ガス給湯器(瞬間式)、電気温水器(貯湯式)、エコキュートなど 貯湯式は湯切れの可能性。瞬間式は同時使用数で能力を決める
配管の経路と距離 給湯器からシャンプー台までの距離が長いと、お湯が出るまで時間がかかり水も無駄になる 給湯器の位置と、シャンプー台を置く場所までの距離。配管の延長工事の可否
排水 シャンプー台の排水は毛髪が詰まりやすい。勾配と排水口の位置 排水の位置と勾配。ヘアキャッチャーの設置
水圧 上階の物件や古い建物では水圧が弱いことがある 蛇口を開けて水圧を確認。シャワーヘッドの選定に影響

給湯器の号数の選び方は、設置業者やメーカーの資料で、同時使用する水栓の数から決めます。「家庭用の20号で足りるか」は、シャンプー台の台数と同時使用数によって答えが変わるため、シャンプー台を何台置き、最大で何台を同時に使うかを先に決めてから相談します。

美容室の電気・ガス・給湯の要件を確認する5ステップのフロー図

電気・給湯の次に確認したい換気量とエアコン能力の計算は、設備業者への条件書つきの美容室の換気と空調設備で確認できます。

設備要件を確認する手順(5ステップ)

  1. 機器の一覧と消費電力を書き出す

    置く予定の機器を型番まで決め、仕様書の消費電力(W)を一覧にします。台数も書きます。給湯は、シャンプー台の台数と同時使用数を決めます。

  2. 同時使用の最大を計算する

    土日の午後を想定し、同時に動く機器の消費電力を合計します。kWをアンペアに直す(単相100Vなら kW×10、単相200Vなら kW×5 が目安)と、契約容量の話がしやすくなります。余裕として2〜3割を足します。

  3. 物件の現状を内見で確認する

    電気の契約容量(電力会社の契約票や分電盤の表示)、分電盤の回路数、給湯器の号数と設置年、給湯配管の経路、ガスの種別(都市ガスかプロパンか)とガス管の位置、排水の位置を確認します。写真を撮っておきます。

  4. 不足分の工事を見積もる

    電気工事業者と給湯設備業者に、現状と必要な容量を伝えて見積もりを取ります。幹線の引き直し、分電盤の交換、給湯器の交換、配管の延長が主な項目です。内装の見積もりとは別に出してもらいます。

  5. 貸主の承諾と契約容量の変更を手配する

    幹線や給湯器の工事は建物に関わるため、貸主の承諾が要るのが一般的です。承諾に日数がかかることがあるため、内装の工程の最初に入れます。電力会社への契約容量の変更も、工事の完了に合わせて申し込みます。

電気の幹線の引き直しは、建物全体の受電設備に関わるため、貸主が認めない場合や、工事費が想定の数倍になる場合があります。「後で増やせる」と考えて契約すると、開業できない事態になります。契約前に、必要な容量が現状で足りるか、足りない場合の工事の可否と費用を書面で確認してください。

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試算 — 容量が足りない物件で起きる追加費用

数字は仮の設定です。4席・シャンプー台2台の店で、内見の結果によって追加工事がどう変わるかを比べます。工事費は地域・建物・業者で大きく異なります。

物件の状態 必要な工事 追加費用の目安(仮) 工程への影響
前の借主が美容室(居抜き)。容量・給湯器が足りる 分電盤の点検、給湯器の動作確認 数万円 ほぼなし
飲食店の居抜き。電気は足りるが、給湯器の位置が遠い 給湯配管の延長、給湯器の移設 10〜30万円 内装と同時に施工
事務所のスケルトン。契約容量が小さい 幹線の引き直し、分電盤の交換、給湯器の新設、配管の新設 50〜150万円 貸主の承諾に2〜4週間、工事に1〜2週間
上階の物件。水圧が弱く、給湯の号数も不足 給湯器の交換、加圧ポンプの設置 30〜80万円 設備業者の調査が要る

同じ家賃でも、設備の状態によって初期費用が100万円以上変わることがあります。物件を比べるときは、家賃だけでなく「設備の追加工事費」を足した総額で比べてください。内装費用の相場は内装費用の相場と内訳、居抜きの確認は居抜き開業の注意点で扱っています。

ガス — 都市ガスとプロパンで変わること

給湯をガスにする場合、都市ガスが引かれている物件とプロパン(LPガス)の物件があります。プロパンは事業者ごとに料金が自由に設定され、同じ使用量でも都市ガスより高くなることが多い一方、設備をガス事業者が貸与する契約もあります。プロパンの物件では、契約前にガス事業者の料金表と、設備の貸与条件(解約時の残債など)を確認します。都市ガスが引かれていない物件で、給湯を電気にする選択肢もあり、その場合は電気容量に給湯分を加えます。月々の費用の見方は水道光熱費の目安と下げ方で扱っています。

エアコンの能力と電源

美容室はドライヤーの熱と人の出入りで、同じ広さの事務所より冷房の負荷が大きくなります。エアコンの能力は「畳数」の目安より1〜2ランク上を選ぶ店が多く、業務用の天井埋込型は動力(三相200V)の電源が必要な機種があります。動力を引くと基本料金の契約が別に発生するため、機種の選定と電源の種類を電気工事業者と一緒に決めます。

洗濯乾燥機の置き場所と電源

タオルの洗濯乾燥は営業中に回すことが多く、乾燥時の消費電力が大きい機種は専用回路が要ります。ガス乾燥機を使う場合はガス栓と排湿の経路が必要です。置き場所を内装の設計段階で決め、給水・排水・電源・排湿を確認しておくと、後から「置けない」を防げます。

内見で持っていくもの・聞くこと

  • 持っていくもの:機器の一覧と消費電力の合計、シャンプー台の台数、レイアウトの案、メジャー、カメラ
  • 電気:契約容量、分電盤の回路数と空き、単相か三相か、幹線の引き直しの可否
  • 給湯:給湯器の種類・号数・設置年、配管の経路、シャンプー台の予定位置までの距離
  • ガス:都市ガスかプロパンか、ガス栓の位置、プロパンなら事業者と料金表
  • 水:水圧、排水の位置と勾配、グリストラップの有無(飲食店の居抜き)
  • 承諾:設備工事に貸主の承諾が要るか、指定業者の有無、過去の工事の記録

設備の工事費は融資の設備資金として申し込めます。区分は設備資金と運転資金の分け方で扱っています。物件選びと資金計画の相談はVAULTAの融資・資金調達支援でも受け付けています。

よくある質問

1人店で席2つなら、家庭用の契約で足りますか?

ドライヤー2台+エアコン+照明+給湯(電気式なら加算)で、同時使用が5〜6kWになることがあり、40〜60Aの契約では余裕がありません。機器の消費電力を合計し、電力会社と相談して容量を決めてください。

動力(三相200V)は必要ですか?

業務用エアコンの機種や、大型の乾燥機で動力が必要な場合があります。動力は基本料金が別に発生するため、機種の選定で単相で済むものを選べば不要になることもあります。電気工事業者と機種を決めてから判断してください。

給湯器の号数はどう選べばよいですか?

シャンプー台の台数と同時使用数、水温の低い冬に必要な湯量から、設置業者やメーカーの資料で選びます。同時に2台でシャンプーする店では、家庭用の標準的な号数では不足することがあります。

プロパンの物件は避けた方がよいですか?

一概には言えません。都市ガスより単価が高いことが多い一方、設備の貸与や供給の安定など利点もあります。事業者の料金表と契約条件を確認し、月々の費用を試算して比べてください。給湯を電気にする選択肢もあります。

工事は内装業者に任せられますか?

電気工事は電気工事士の資格が必要で、ガス工事もガス事業者や有資格者が行います。内装業者が手配する形が一般的ですが、見積もりは項目ごとに分けてもらい、電気・給湯・ガスの工事が誰の責任で行われるかを確認してください。

開業後に容量が足りないと分かったら?

まず同時使用の見直し(乾燥機を営業時間外に回す、ドライヤーの機種を見直す)で対応し、それでも足りなければ契約容量の変更と幹線工事を検討します。貸主の承諾と工事費が要るため、営業しながらの工事の日程も含めて業者に相談してください。

電気・ガス・給湯の物件確認チェックリスト

物件を契約する前に、次の7つを確認してください。

  • 現状の契約容量(アンペアまたはkW)と分電盤の回路数を確認した
  • 同時使用の最大消費電力を計算し、余裕を含めて必要な容量を決めた
  • シャンプー台の台数に対して給湯器の能力(号数)が足りる
  • 給湯配管の経路と、シャンプー台までの距離を確認した
  • ガスの種別(都市ガス・プロパン)と単価を確認した
  • 容量増設・給湯器交換の工事費の見積もりを取った
  • 増設工事に貸主の承諾が要るかを契約で確認した

電気・ガス・給湯は、「同時使用の合計」と「シャンプー台の同時使用数」の2つの数字を先に出し、物件の現状と突き合わせることで、契約後の追加費用と工程の遅れを防げます。内装のデザインより先に確認してください。

美容室の電気・ガス・給湯の物件確認チェックリスト

出典・参考資料

機器の消費電力・給湯器の能力・工事費は、機種・建物・地域・業者によって異なります。記事内の数字は自分で置いた仮の設定で、実際の容量と工事は電気工事業者・設備業者・電力会社・ガス事業者に確認してください。

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居抜きで引き継ぐ設備の確認 — 給湯器・エアコン・分電盤の年式の見方、交換判断の表、交換費用の試算

居抜き物件は設備が付いてくる分だけ初期費用が下がって見えます。ただし、年式の古い給湯器やエアコンは開業後1〜2年で交換になることがあり、その費用は譲渡価格にも内装見積にも入っていません。契約前に4つの設備の「年式・容量・故障歴」を確認することが、この記事の電気・ガス・給湯の要件を居抜きで満たすための前提になります。

設備 年式・容量を見る場所 交換を考える目安 交換費用の目安(仮の設定)
ガス給湯器 本体側面の銘板(製造年月・号数) 製造から10年前後。号数がシャンプー台の同時使用数に足りない 20〜40万円(号数・設置場所で変わる)
業務用エアコン 室内機・室外機の銘板(製造年・馬力) 製造から13〜15年。修理部品の供給が終わっている機種 1台30〜60万円
分電盤・契約容量 分電盤の主幹ブレーカー表示、電力会社の契約票 ドライヤー同時使用の合計に主幹が足りない。回路数に空きがない 増設工事10〜30万円+契約変更
ガスの種類・メーター ガス会社の開栓時の確認、メーターの表示 都市ガスとプロパンの違いが機器と合わない。メーター号数が不足 給湯器の機種変更で対応(上の費用に含めて見る)

年式の目安は、経済産業省の長期使用製品安全点検・表示制度でメーカーが示す「設計上の標準使用期間」(家庭用の給湯器やエアコンでは10年とされていることが多い)を手がかりにしています。業務用はメーカーの推奨更新時期を型番で調べてください。費用は自分で置いた前提で、地域・機種・配管の状態で大きく変わります。

  1. 銘板を全部撮影する

    給湯器・エアコン室内外機・分電盤・ガスメーターの銘板をスマホで撮り、型番と製造年を控えます。内見の同行者に聞くより確実です。

  2. 前オーナーに故障歴・修理歴を聞く

    「冬に湯温が安定しない」「ブレーカーが落ちる」の有無を具体的に聞きます。修理伝票が残っていれば写しをもらいます。

  3. 電力会社・ガス会社に契約内容を照会する

    現契約のアンペア(または kVA)とガスの種類を確認し、自分の機器構成で足りるかをこの記事の逆算手順に当てはめます。

  4. 見積に「設備更新の予備費」を入れる

    年式が目安を超えている設備は、交換費用を予備費として資金計画に入れます。入れずに契約すると、開業初年度の運転資金から出ていくことになります。

造作譲渡契約に「現状有姿で引き渡す」と書かれている場合、引渡し後に故障しても売主へ修理費を請求できないのが通常です。引渡し前に給湯・空調・全回路の通電を一緒に確認し、その結果を契約書か覚書に残しておくと、後の行き違いを防ぎやすくなります。

出典: 経済産業省「長期使用製品安全点検・表示制度」。費用と年数はすべて自分で置いた前提による目安です。居抜き物件全体の見方は「美容室の居抜き開業の注意点」、シャンプー台の台数と給湯の関係は「シャンプー台の選び方」、売る側の造作譲渡の進め方は「美容室の売り物件はどう見るか」の記事を参照してください。

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この記事を書いた人

VAULTA編集部は、美容室・美容師向けに集客、リピート率向上、LINE公式活用、MEO対策、独立・開業、資金調達に関する実践的な情報を発信しています。

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