スタッフが無断欠勤して連絡が取れないときは、当日の予約を振り替え、本人→緊急連絡先→自宅訪問の順に安否を確かめて記録し、数日のうちに書面で出勤を促します。欠勤した日の固定給は差し引けますが、退職扱いにできるのは就業規則に規定がある場合だけで、規定がなければ30日前の予告か平均賃金30日分の予告手当、または2週間以上の無断欠勤などで労働基準監督署長の除外認定を受けて解雇します(労働基準法第20条)。
何日目に何をするかの判断表、欠勤控除と歩合給を含む解雇予告手当の試算、連絡記録シート・出勤督促書・就業規則の条文例、現場でつまずく点を整理します(2026年10月時点の情報です)。
結論:無断欠勤への対応の早見表
順番は予約の振り替え→安否確認→書面での出勤の督促→退職扱いか解雇かの判断です。処分を急ぐより、記録を残しながら段階を踏むことが後の判断を支えます。
| 項目 | 目安・ルール | 根拠・理由 |
|---|---|---|
| 安否確認 | 電話・LINE→緊急連絡先→自宅訪問の順。日時・手段・結果を記録 | 事故や急病の可能性を先に確かめる |
| 欠勤日の給与 | 働かなかった日の分は控除できる。働いた日の分は支払日に全額払う | ノーワークノーペイ、労働基準法第24条 |
| 出勤の督促 | 書面で出勤と連絡を求め、期限を示す | 退職扱いや解雇の判断の前提になる |
| 退職扱い(自然退職) | 就業規則に「連絡が取れない状態が〇日続いたら退職」と定めていれば、その規定に沿う | 規定がなければ解雇の手続きが必要 |
| 解雇 | 30日前の予告か、平均賃金30日分以上の解雇予告手当。予告の日数を手当で短縮できる | 労働基準法第20条第1項・第2項 |
| 解雇予告除外認定 | 2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合が例。労働基準監督署長が認定 | 労働基準法第20条第1項ただし書・第3項 |
何日目に何をするか — 状況別の判断表
判断の分かれ目は「連絡がついたか」「就業規則に退職の規定があるか」「無断欠勤が2週間に達したか」の3つです。日数は無断欠勤の初日を1日目として数えます。
| 状況 | 判断 | 店がやること |
|---|---|---|
| 1日目:始業時刻を過ぎても来ず、連絡もない | 安否不明として扱う | 当日の予約を振り替え、本人に電話・LINEを3回以上。時刻と結果を記録 |
| 前日に体調不良を訴えていた、一人暮らしで持病があるなど | 命に関わるおそれがある | 日数を待たずに緊急連絡先と警察に相談する |
| 2日目:本人と連絡がつかない | 家族などの協力を求める段階 | 緊急連絡先に「連絡が取れず心配している」とだけ伝える |
| 3日目:まだ連絡がつかない | 所在の確認が必要 | 2人で自宅を訪ねる。室内には入らず、異変があれば管理会社・警察へ |
| 連絡がつき、体調不良や家庭の事情を話した | 欠勤として扱う。処分の対象にはしない | 復帰の見込みを聞き、連絡ルールを伝え直す |
| 本人が「辞めたい」と言った、家族が本人の意向を伝えてきた | 退職の申出として扱う(家族の話だけでは確定しない) | 本人が署名した退職届かメールをもらい、退職日と返却物を書面で決める |
| 4〜5日目:所在は分かるが連絡に応じない、または所在不明 | 督促の段階 | 出勤督促書を内容証明郵便と特定記録郵便、LINE・メールで同時に送り、7日前後の期限を示す |
| 督促の期限を過ぎ、就業規則に退職の規定がある | 規定の日数に達した日に退職 | 規定の日数を数え、退職の通知を送る |
| 規定がなく、無断欠勤が14日以上で督促にも応じない | 解雇を検討する段階 | 除外認定を申請するか、予告または予告手当で解雇する |
| 書面が届かず、所在がまったく分からない | 意思表示が本人に届かない | 簡易裁判所の公示による意思表示(民法第98条)を使う |
1〜3日目の動き方 — 予約の振り替えと安否確認の記録
始業時刻を過ぎても来ないときは、本人への連絡と並行して、その日の担当客の予約を動かすことを優先します。事情が分からない段階で、お客様に欠勤の理由は伝えません。
-
本人に連絡し、時刻を記録する
電話とLINEで「無事か心配しているので連絡がほしい」と伝えます。責める言い方はしません。
-
当日の担当客を振り替える
ほかのスタイリストで受けられる予約と、日時変更をお願いする予約に分け、「担当の〇〇が本日急きょお休みをいただくことになりました」と伝えます。
-
翌日以降の指名予約を止める
出勤が確認できるまで、本人を指名する新しい予約の受付を止め、シフトを組み替えます。
-
緊急連絡先と自宅訪問で所在を確かめる
緊急連絡先には勤務態度の話をせず、安否の確認にとどめます。自宅は2人で訪ね、無断で室内に入りません。
連絡記録シート(1回ごとに1行、店長とオーナーで共有)
- 記入する項目:日時/手段(電話・LINE・メール・訪問・郵送)/相手(本人・緊急連絡先・管理会社など)/伝えた内容/結果(不在、既読にならない、家族の話など)/対応者
- 記入例:11月12日 10:05/電話/本人/無事か心配している旨を留守番電話に残した/呼び出し音のみ/店長〇〇
- 記入例:11月13日 12:30/電話/緊急連絡先(母)/連絡が取れず心配していると伝えた/「本人から連絡はない」とのこと/店長〇〇
- 記入例:11月14日 15:00/訪問(2人)/本人宅/インターホンに応答なし。郵便受けに郵便物なし/不在と判断/オーナー〇〇・店長〇〇
- 保管:シートと送った書面の控え、郵便の受領証・配達記録を同じファイルに綴じ、退職や解雇の判断が終わってからも保管する
代わりの担当の決め方やお客様への案内は、スタッフが体調不良のときの営業判断と同じ考え方で進められます。緊急連絡先を把握していない店は、今いるスタッフの分も届け出てもらいます。
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欠勤控除と解雇予告手当を数字で出す — 歩合給スタイリストの試算
次のモデルでは、11月の欠勤控除は136,363円、平均賃金は9,293円47銭、即時解雇するときの解雇予告手当は278,804円です。歩合給は、欠勤控除の対象にせず、平均賃金には含めます。
試算の前提(仮定):スタイリストのEさん、期間の定めのない雇用、火曜定休・水曜公休の週5日勤務。月給の固定部分200,000円、歩合給は8月90,000円・9月84,000円・10月81,000円、8〜10月の労働日数は計65日。賃金は毎月末日締め。11月の所定労働日数22日。就業規則の欠勤控除は「固定部分÷その月の所定労働日数×欠勤日数(円未満切り捨て)」。2026年11月12日(木)から無断欠勤し、11月26日に解雇を通知する。
| 項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 11月の欠勤日数(11月30日まで在籍する場合) | 11月12日〜30日のうち火曜・水曜を除く出勤予定日 | 15日 |
| 欠勤控除 | 200,000円÷22日×15日 | 136,363円 |
| 無断欠勤14日目 | 11月12日を1日目として数える | 11月25日 |
| 平均賃金の算定期間 | 通知日の直前の締切日(10月31日)からさかのぼる3か月 | 8月1日〜10月31日(92日) |
| 平均賃金(原則) | (600,000円+255,000円)÷92日 | 9,293円47銭 |
| 最低保障額 | 600,000円÷92日+255,000円÷65日×60% | 8,875円58銭(原則の方が高いので原則を使う) |
| 即時解雇の予告手当 | 9,293円47銭×30日 | 278,804円 |
| 11月26日に予告し12月10日に解雇 | 予告期間14日。不足する16日分を払う:9,293円47銭×16日 | 148,696円 |
| 予告だけで解雇する場合 | 11月26日の予告の翌日から30日 | 12月26日以降に解雇 |
| 就業規則に30日の退職規定がある場合 | 11月12日を1日目として30日目 | 12月11日に退職(予告手当は不要) |
平均賃金の銭未満は切り捨ててよく、支払う手当は円未満を四捨五入します。算定期間に欠勤が多いと原則の額が下がり、歩合給の部分は労働日数で割った額の60%が最低保障になるので、両方を計算して高い方を使います。欠勤日数分を超えて差し引く部分は減給の制裁にあたり、就業規則の定めと、1回は平均賃金の1日分の半額・合計は1賃金支払期の賃金総額の10分の1という上限(労働基準法第91条)が適用されます。月次の給与計算の流れは美容室の給与計算のやり方で確認できます。
退職扱いと解雇の違い — 就業規則の規定があるかで手続きが変わる
就業規則に「行方が分からず連絡が取れない状態が〇日続いたら退職」と定めていれば退職扱い(自然退職)、定めがなければ解雇の手続きになります。
- 自然退職(当然退職):規定に当てはまった時点で労働契約が終わる扱いで、解雇予告は要りません。何日とすべきかの公的な基準はないため、督促の期限より後で、解雇予告除外認定の例の2週間より長い日数(例:30日)にしておくと、連絡を尽くしたと説明できます。
- 普通解雇・懲戒解雇:解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です(労働契約法第16条)。懲戒解雇は、就業規則に懲戒の種類と事由を定めておく必要があります。
- 解雇予告除外認定:本人の責めに帰すべき事由による解雇で労働基準監督署長の認定を受ければ、予告も手当も不要です。認定は原則として解雇日までに受けます。認定は手続き上の例外を認めるだけで、解雇そのものが有効かどうかを決めるものではありません。
- 通知が届かないとき:解雇の意思表示は本人に届いたときに効力が生じます(民法第97条)。所在が分からないときは、相手の最後の住所地の簡易裁判所で公示による意思表示の手続きをとります(民法第98条)。
解雇の要件や退職勧奨との違いはスタッフに辞めてもらうときの手順で詳しく扱っています。
そのまま使える書面 — 出勤督促書・退職の通知・就業規則の条文例
督促書は、内容証明郵便と特定記録郵便の両方で送り、同じ文面をLINEやメールでも送ります。内容証明は受け取られないと戻ってくるため、郵便受けに届く特定記録郵便を組み合わせます。
例文 出勤督促書と、規定による退職の通知
- 出勤督促書:〇〇〇〇様 あなたは2026年11月12日以降、連絡のないまま欠勤が続いており、当店からの電話・LINE(11月12日、13日、14日)、緊急連絡先へのご連絡、11月14日のご自宅への訪問でも連絡が取れていません。ご無事かどうかを心配しています。
- 出勤督促書(続き):2026年11月24日までに、店長〇〇(電話〇〇〇-〇〇〇〇、メール〇〇)へ連絡のうえ出勤するか、欠勤の理由を書面でお知らせください。期限までに連絡がない場合は、就業規則第〇条に基づき、退職または解雇の手続きを進めます。2026年11月16日 ヘアサロン〇〇(株式会社〇〇) 代表取締役 〇〇
- 退職の通知:〇〇〇〇様 2026年11月16日付の書面で出勤と連絡をお願いしましたが、期限の11月24日を過ぎても連絡がなく、無断欠勤の初日から30日目となる2026年12月11日をもって、就業規則第〇条第〇号により退職となりましたのでお知らせします。退職日までに働いた日の分の給与は、通常の支払日に登録の口座へ振り込みます。店の鍵と制服は〇〇あてにご返送ください。離職票などの書類はこの住所あてに郵送します。
就業規則の条文例(欠勤・退職・懲戒)
- 第〇条(緊急連絡先)従業員は、入社時に本人以外の緊急連絡先を届け出なければならない。変更があったときは速やかに届け出る。
- 第〇条(欠勤の手続)従業員は、欠勤するときは、始業時刻の1時間前までに店長に電話または業務用チャットで連絡しなければならない。やむを得ず事前に連絡できなかったときは、事後速やかに連絡しなければならない。
- 第〇条(欠勤の控除)欠勤した日の賃金は、基本給及び〇〇手当の合計額をその月の所定労働日数で除した額(円未満切り捨て)に欠勤日数を乗じた額を控除する。歩合給は控除の対象としない。
- 第〇条(退職)従業員が次のいずれかに該当するときは、退職とする。(〇)行方が分からず、会社が出勤の督促その他の連絡を尽くしても連絡が取れない状態が、欠勤の初日から起算して30日に達したとき(30日目を退職日とする)
- 第〇条(懲戒の事由)従業員が次のいずれかに該当するときは、諭旨解雇または懲戒解雇とする。(〇)正当な理由なく無断欠勤が連続14日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき
常時10人以上が働く店は就業規則の作成と届出が義務ですが(労働基準法第89条)、10人未満でも規定を作って周知しておけば判断の根拠になります。作成と周知の手順は美容室に就業規則は必要かで確認してください。
現場でつまずく点 — 6つの落とし穴と防ぎ方
無断欠勤で店が不利になるのは、記録と書面が足りないまま、給与や退職の処理を先に進めてしまうときです。
| 落とし穴 | 何が問題か | どう防ぐか |
|---|---|---|
| LINEの既読だけで督促したことにする | 書面が本人に届いたことを示せない | 内容証明・特定記録・LINEで同じ文面を送り、記録を綴じる |
| 退職の規定を「3日で退職」など短くする | 督促に応じる機会を与えたと説明できない | 督促の期限より後の日数(例:30日)にする |
| 欠勤控除で歩合給や手当まで多く引く | 欠勤日数分を超える部分は減給の制裁になる | 固定部分だけを規程の計算式で控除する |
| 「取りに来たら給与を渡す」とする | 支払日に払わないと全額払いの原則に反する | 働いた日の分を支払日に振り込む |
| 除外認定を待たずに「即日解雇」と通知し、手当も払わない | 認定が出なければ予告手当が必要になる | 認定を申請するか、試算した予告手当を用意して通知する |
| 家族の話だけで退職の手続きを進める | 退職の意思表示は本人がするもの | 本人が署名した退職届かメールを受け取ってから資格喪失などを進める |
連絡を絶つ形の退職の背景には、体調の不良、人間関係、辞めたいと言い出せない気持ちが隠れていることがあります。退職の申出先と時期を入社時に伝え、定期の面談で遅刻の増加や練習を休みがちになる変化を拾います。面談の進め方はスタッフ面談のやり方、指導が原因になっていないかの線引きは美容室のパワハラ防止で整理しています。
無断欠勤が起きたときは、次の8項目を確認してください。
- 当日の担当客の予約を振り替えるか、日時変更の連絡をした
- 連絡記録シートに、日時・手段・相手・結果を毎回書いた
- 緊急連絡先への連絡を安否の確認にとどめ、自宅訪問は2人で行った
- 命に関わるおそれがあるときは、日数を待たずに警察に相談した
- 欠勤控除は固定部分だけを規程の計算式で行い、働いた日の給与は支払日に払う
- 出勤督促書を内容証明・特定記録・LINEで送り、期限を日付で示した
- 就業規則の退職・懲戒の規定と日数を確認した
- 解雇するなら、平均賃金を計算して予告手当を用意するか、除外認定を申請した
よくある質問
無断欠勤が何日続いたら解雇できますか?
法律に「何日続いたら解雇できる」という決まりはありません。解雇には合理的な理由と社会通念上の相当性が必要で、安否確認と出勤の督促を尽くしたうえで判断します。解雇予告除外認定では、2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、督促に応じない場合が例として示されています。
無断欠勤したスタッフの給与を、欠勤日数分より多く減らしてもよいですか?
欠勤した日数分を超えて差し引く部分は減給の制裁にあたります。就業規則に定めがあることが前提で、1回の額は平均賃金の1日分の半額、合計は1賃金支払期の賃金総額の10分の1が上限です(労働基準法第91条)。
連絡が取れないまま給料日が来たら、給与はどうすればよいですか?
働いた日の分の給与は、通常の支払日に全額を支払います(労働基準法第24条)。振込口座が分かっていれば振り込み、欠勤日の分は就業規則で決めた方法で控除します。
家族から「本人はもう辞めたいと言っている」と連絡があったら、退職として扱えますか?
退職の意思表示は本人がするものなので、家族の話だけで確定せず、本人が署名した退職届や本人からのメールで意思を確かめます。確認できたら、退職日や貸与品の返却を書面で取り決めます。
解雇予告手当はいくら払えばよいですか?
即時解雇なら平均賃金の30日分以上です。平均賃金は、解雇を通知した日の直前の賃金締切日からさかのぼる3か月の賃金総額を暦日数で割って出し、歩合給がある人は最低保障額とも比べて高い方を使います。予告した日数分だけ手当を減らすこともできます。
無断欠勤で予約に穴が空いた損害を、本人に請求できますか?
請求が認められるのは、損害の額と本人の行為との因果関係を店が証明できる場合に限られ、実際には難しいことが多いです。欠勤のたびに払う罰金をあらかじめ決めておくことは、労働基準法第16条で禁止されています。
出典:労働基準法第12条・第16条・第20条・第24条・第89条・第91条(e-Gov法令検索「労働基準法」)、労働契約法第16条(e-Gov法令検索「労働契約法」)、民法第97条・第98条(e-Gov法令検索「民法」)、厚生労働省「解雇の手続について労働基準法の規定はありますか」、福井労働局「解雇予告除外認定の申請について」、神奈川労働局「平均賃金について」、千葉労働局「平均賃金(労働基準法第12条)」。個別の判断は社会保険労務士、弁護士、管轄の労働基準監督署に確認してください。
まず、全スタッフの緊急連絡先がそろっているかと、就業規則に欠勤の連絡方法と退職の規定があるかを確認してください。退職が決まった後の社会保険・保健所の手続きはスタッフ退職時の手続き一覧にまとめています。
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