美容室のインバウンド対応は、予約・カウンセリング・料金表示・決済の4か所を、日本語が話せないお客様でも迷わない形に整えることです。通訳できるスタッフがいなくても、英語のメニュー、写真と指差しで使えるカウンセリングシート、国籍に関係なく同じ税込料金の表示があれば受け入れを始められます。
この記事では、訪日客と日本に住む外国人のお客様の違い、準備の優先順位、予約からお会計までの手順と英語の定型フレーズ、多言語カウンセリングで聞く項目、料金表示と「外国人料金」の考え方、決済・前払い・トラブル時の対応を整理します。

結論:外国人客の受け入れは「情報・確認・表示・決済」の4か所から整える
言葉の壁で困る場面は、予約前の情報収集、施術前の確認、料金の理解、支払いの4つにほぼ集まります。全部を完璧にするより、この4か所に「読めば分かる」「指させば伝わる」仕組みを置くほうが、少ない準備で受け入れられます。会話の上手さは、仕組みを整えた後に少しずつ足せば十分です。
決済端末の選び方はキャッシュレス決済導入ガイド、シートの基本的な作り方はカウンセリングシートの作り方で扱っています。この記事は、外国人のお客様を受け入れるための準備に絞ります。外国人スタッフの雇用はここでは扱いません。
訪日客と在留外国人:誰を受け入れるかで準備が変わる
インバウンド対応とは、訪日外国人旅行者(インバウンド)を受け入れるための情報発信・接客・決済の準備のことです。美容室では、旅行で来る方と日本に住む方の両方を想定しておくと、同じ準備が二重に役立ちます。訪日客は滞在中の1回きりの来店になりやすく、在留外国人のお客様は通い続けてくださる可能性があります。
日本政府観光局(JNTO)の統計では、2025年の訪日外客数は4,268万人でした。出入国在留管理庁によると、2025年末の在留外国人数は412万5,395人で、初めて400万人を超えています。国籍・地域別では中国(約93万人)、ベトナム(約68万人)、韓国(約41万人)、フィリピン(約36万人)、ネパール(約30万人)の順です。
月ごとの訪日客数は、国際情勢や為替で増減します。自店の商圏にどの国・地域のお客様が多いかは、全国の数字より、問い合わせや来店の記録で確かめるほうが確実です。
| 項目 | 訪日客(旅行者) | 在留外国人のお客様 |
|---|---|---|
| 来店のきっかけ | Googleマップ、SNS、宿泊先の紹介 | Googleマップ、知人の紹介、通勤・通学の途中 |
| 予約の方法 | Googleマップの予約リンク、SNSのメッセージ、当日の来店 | 予約サイト、LINE、電話 |
| 言語 | 英語か母語。日本語は使わない前提で準備する | 日本語の得意さは人によって違う。最初に話しやすい言語を聞く |
| 時間の制約 | 滞在日数が短く、パッチテストや再来の予定が組みにくい | 日本語のお客様と同じく、周期で通える |
| 準備のポイント | 予約前の料金・所要時間の明示、前払いの検討 | 次回予約とカルテの記録、連絡手段の確認 |
在留外国人のお客様は、カルテに呼んでほしい名前、話しやすい言語、連絡に使う手段を記録しておくと、担当が替わっても同じ対応ができます。次回予約の取り方は、日本語のお客様と変わりません。
受け入れ準備の優先順位:最低限と、余裕があればやること
準備は「最低限」から始め、来店が増えてから広げます。どの項目も、日本語のお客様と同じ料金・同じ条件で提供することが前提です。
言語は、まず英語を用意し、次に問い合わせや来店の記録で多かった言語を足します。日本に住むお客様が多い地域なら、在留外国人の上位の国籍(中国・ベトナム・韓国など)も、2番目の言語を選ぶ参考になります。
| 準備する場所 | 最低限 | 余裕があれば | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 店舗情報・予約 | 英語のメニューページと、Googleマップからの予約導線 | 問い合わせの多い言語でのページ追加 | 料金・所要時間・支払い方法を予約前に見られるようにする |
| カウンセリング | 写真と指差しで使える英語のシート | 中国語・韓国語など、来店の多い言語の版 | 過去の薬剤の履歴は具体的に聞く |
| 会話 | 定型の英語フレーズ集と翻訳アプリ | 業務用の翻訳機 | アプリの利用条件(業務で使えるか)を確認する |
| 料金表示 | 英語を併記した税込のメニュー表 | 施術時間の目安の併記 | 言語ごとに料金を変えない |
| 決済 | 国際ブランドのクレジットカード | QRコード決済の追加 | 海外で発行されたカードに対応しているか契約内容を確かめる |
| キャンセル | 英語で書いたキャンセル規定 | 事前決済か予約金 | 予約時に規定への同意を得る |
Googleマップに店を正しく出す手順はGoogleビジネスプロフィールの登録、予約ボタンの出し方はGoogleマップに予約ボタンを出す方法で解説しています。英語のメニューページは、そこからたどれる位置に置くと、予約前の問い合わせが減ります。

予約からお会計までの5つの手順
-
受け入れる範囲を決める
対応する言語、受けるメニュー、1日に受ける人数を決めます。たとえば「英語でのカウンセリング、カットとカラーまで、1日2人まで」のように、無理なく続けられる範囲から始めます。
-
英語の店舗情報と予約導線を整える
メニュー名・税込料金・所要時間・支払い方法・キャンセル規定を英語で1ページにまとめます。Googleマップの予約リンクやSNSのプロフィールから、そのページへ1回の操作で届くようにします。
-
多言語のカウンセリングシートと指差し表を作る
希望のスタイル写真、切る長さ、過去の施術、アレルギーを、選択肢と図で答えられる形にします。長さは「1cm・3cm・5cm」のように数字と絵で示すと、言葉より誤解が減ります。
-
料金・前払い・キャンセル規定を予約時に確認する
予約の確定前に、税込の合計額と支払い方法、キャンセル料の条件を英語で送り、了承の返信をもらいます。旅行者の予約では、事前決済か予約金を検討します。
-
当日の流れを決め、スタッフで練習する
受付からお会計までの定型フレーズを決め、実際に読み上げて練習します。切る前・流す前・仕上げの3回、鏡の前で長さと形を確認する流れにすると、言葉が少なくても合意を取れます。
受付からお会計までの英語フレーズ(例)
フレーズは場面ごとに1〜2文に絞り、受付と各席に置いておきます。発音より、同じ文を毎回使うことのほうが大切です。
- 受付:Hello. Do you have a reservation? May I have your name?(ご予約はありますか。お名前をお願いします)
- シートの記入:Please fill out this sheet. You can point to the pictures.(この用紙にご記入ください。絵を指さしても大丈夫です)
- シャンプー:Is the water temperature okay?(お湯の温度は大丈夫ですか)
- 施術中:Please let me know if anything hurts.(痛いところがあれば教えてください)
- 仕上がりの確認:Is this length okay? Would you like it shorter?(この長さでよろしいですか。もっと短くしますか)
- お会計:The total is 13,200 yen, including tax. Would you like to pay by card?(税込13,200円です。カードでお支払いですか)
- お直しの案内:If you have any concerns, please contact us within 7 days.(気になる点があれば7日以内にご連絡ください。日数は店の規定に合わせる)
VAULTA|美容室専門のLINE公式サポート
美容室特化型のLINE公式、
無料でつくれます。
集客・リピート・求人のヒントをLINEで配信。美容室に特化した公式アカウントを無料で作成・運用サポートします。
友だち追加だけ。相談・作成は無料です。
多言語カウンセリングで確認する項目と聞き方
外国人のお客様とのトラブルは、仕上がりのイメージ違いと、薬剤の履歴の聞き漏れから起きやすくなります。質問は短い英文と選択肢にし、答えを紙かタブレットに残して、施術の根拠にします。次の表は、シートに入れる項目と英語の聞き方の例です。
| 確認項目 | 英語の聞き方(例) | 確認する理由 |
|---|---|---|
| 希望のスタイル | Please show me a photo of the style you want. | 言葉で説明してもらうより、写真のほうが誤解が少ない |
| 切る長さ | How much would you like to cut? Please point to the length on this chart. | 長さの感覚は人によって違う。図を指してもらう |
| 過去の施術 | Have you had bleach, color, perm or straightening in the last year? | 海外で受けた施術は薬剤が分からないことがあり、傷みの判断に要る |
| 皮膚の反応 | Have you ever had a skin reaction to hair dye? | ヘアカラーでかぶれた経験があれば、染毛を受けない判断が要る |
| パッチテスト | We need a skin test 48 hours before hair coloring. | 業界団体は毎回、染毛の48時間前のパッチテストを求めている |
| 滞在の予定 | How long will you stay in Japan? | お直しや再来ができるかで、提案の範囲が変わる |
指差し表には、切る長さ(1cm・3cm・5cmの図)、前髪(切る・切らない・長さ)、すく量(少なめ・普通・多め)、普段のスタイリング(乾かすだけ・アイロンを使う)を入れます。選んだ答えに印を付けてもらえば、そのまま記録になります。
日本ヘアカラー工業会は、ヘアカラーの前に毎回、48時間前からパッチテストを行うよう案内しています。滞在が短い旅行者は、テストのための来店と施術の来店を2日空けて組めるかを予約時に確認します。組めない場合の扱いは、店の方針として事前に決めておきます。
髪質の違いも、先入観で判断せず本人に聞きます。くせの強さ、毛量、普段のスタイリング方法を選択肢で答えてもらい、分からない履歴がある場合は、目立たない毛束で薬剤の反応を確かめてから進めます。
宗教や文化による要望にも備えます。女性スタッフの担当や、ほかのお客様から見えない席の希望などは、予約フォームやシートに「希望があれば記入」の欄を作り、対応できるかを予約の段階で答えます。
料金表示と「外国人料金」の考え方
料金は、日本語のメニューと英語のメニューで同じ内容なら同じ税込価格にそろえます。国籍や言語を理由に料金を変えると、差別と受け取られるおそれがあります。消費税の課税事業者は、消費者に示す価格を税込で表示する義務があり、英語のメニューも同じです。
説明に時間がかかる負担は、国籍ではなく「提供する内容」で考えます。たとえば、カウンセリング時間を延ばすメニューを、言語に関係なく誰でも選べる形で設けるか、予約の枠を長めに取って料金は据え置く方法があります。
英語メニューの書き方
- 料金は「¥5,500 (tax included)」のように税込で書き、日本語のメニューと同じ額にする
- 所要時間を「about 60 min」のように併記し、予約枠の長さと合わせる
- 髪の長さなどによる追加料金は、条件と金額を「+¥1,100 (hair below the shoulders)」のように明記する
- 使える支払い方法(カード、QRコード決済、現金)とキャンセル規定を同じページに載せる
訪日客から「免税になるか」と聞かれることがあります。免税店(輸出物品販売場)の制度は、非居住者に物品を販売する場合の仕組みで、カットやカラーなどの施術は対象になりません。店販品を免税で売るには、店舗ごとに所轄の税務署長の許可が要ります。2026年11月1日からは、購入時は消費税込みで販売し、出国時の税関確認の後に返金するリファンド方式に変わります。
試算:説明の時間を枠に含めた場合(仮の設定)
仮の設定:カット+カラー13,200円(税込)、通常の枠は120分。外国人のお客様はカウンセリングに10分、仕上がりの確認に5分を足し、135分で枠を取る。
| 項目 | 通常の枠 | 説明の時間を足した枠 |
|---|---|---|
| 枠の長さ | 120分 | 135分(+15分) |
| 1時間あたりの売上 | 13,200円÷2時間=6,600円 | 13,200円÷2.25時間=約5,867円 |
| 1時間あたりの差 | — | 約733円 |
| 同じ時間単価に必要な料金 | — | 6,600円×2.25時間=14,850円 |
1日に1〜2人なら、差は1時間あたり約733円の範囲に収まります。受け入れが増えて負担が大きくなったら、国籍で上乗せするのではなく、カウンセリング延長のような内容別のメニューで回収します。
決済・前払い・トラブル時の対応
旅行者は、手持ちの現金が少なく、カードやスマートフォンで払う前提で来店することがあります。国際ブランドのカードに対応していても、海外で発行されたカードの扱いは決済サービスの契約で違うため、導入時に確認します。Googleビジネスプロフィールには、使える決済方法を属性として登録できる項目もあります。
旅行者の予約は、旅程の変更で直前に来られなくなることがあります。予約時に英語のキャンセル規定を送り、了承の返信をもらったうえで、事前決済か予約金を検討します。規定の考え方は無断キャンセル対策と同じで、損害の根拠を説明できる額にします。
よくある失敗と防ぎ方
- 英語のメニューだけ料金が古い:値上げのときに日本語の表だけ直し、英語の表の料金が違ったまま残る。料金の改定は全言語の表を同時に直します。
- 写真だけ見て切り始める:写真の長さと本人の希望が違い、切った後に食い違いが分かる。切る前に指で長さを示し、うなずきではなく言葉か指差しで合意を取ります。
- パッチテストの説明を当日にする:カラーの予約で来店してから48時間前のテストの話になり、施術できない。予約の返信の時点で説明します。
- 翻訳アプリの結果を確かめない:施術の説明が誤訳のまま伝わる。大事な内容は短い文で訳し、相手に言い直してもらって確認します。
- お直しの条件を決めていない:帰国後に連絡が来ても対応できない。滞在中に来られる期間を会計時に伝え、店の対応範囲を決めておきます。
仕上がりへの不満が出たときは、まず写真とカウンセリングの記録を一緒に見て、どこが違うかを確かめます。その後の進め方は、日本語のお客様と同じくクレーム対応の手順に沿います。英語で書かれたGoogleの口コミにも、口コミへの返信の書き方と同じ考え方で、短い英文で返信します。
法務省の人権啓発のページでは、外国人であることを理由に理容店でサービスの提供を拒否された事例が紹介されています。対応できない場合は、国籍ではなく「対応できる内容」で線を引いて説明してください。たとえば「英語でのカウンセリングが難しい日は、写真とシートでの確認になります」のように伝えます。
よくある質問
- 英語が話せないスタッフだけでも受け入れられますか?:受け入れられます。予約前の英語の情報、写真と指差しのシート、定型フレーズの3つがあれば、会話が少なくても施術の合意は取れます。受ける人数やメニューを絞って始めると、スタッフの負担も抑えられます。
- 外国人料金を設けてもよいですか?:国籍や言語で料金を分けると、差別と受け取られるおそれがあります。説明に時間がかかる負担は、枠を長めに取るか、誰でも選べる内容別のメニューで考えます。表示は税込で、日本語と英語の料金をそろえます。
- 訪日客のカットやカラーは免税になりますか?:なりません。免税店の制度は物品の販売が対象で、施術は対象外です。店販品を免税で売るには、税務署長の許可を受けて免税店になる必要があります。
- 翻訳アプリは業務に使ってよいですか?:アプリごとに利用条件が違います。国の研究機関NICTの「VoiceTra」は33言語に対応する無料アプリですが、個人の旅行者の試用を想定した研究用で、商用利用は同じ技術を使った民間サービスの検討を勧めています。業務で使う前に利用規約を確認してください。
- ヘアカラーを当日に受けられますか?:業界団体は、毎回染毛の48時間前にパッチテストを行うよう案内しています。当日の受付の可否は店の方針として決め、予約前に英語で伝えます。
- 予約なしで来店されたらどうしますか?:決めておいた受け入れ範囲(言語・メニュー・人数)の中で、空きがあれば英語の料金表を見せ、税込の合計額に合意してから受けます。空きがない場合は、英語の予約ページのQRコードを載せたカードを渡すと、後日の予約につながります。
インバウンド対応のチェックリスト
- 受け入れる言語・メニュー・1日の人数を決めた
- 英語のメニューに税込料金と所要時間を載せた
- 日本語と英語のメニューの料金をそろえた
- 写真と指差しで答えられるシートを用意した
- パッチテストと滞在日程の確認を予約時に行う
- 英語のキャンセル規定と前払いの方法を決めた
- 海外発行カードに対応しているかを確認した

出典:観光庁「訪日外国人旅行者数・出国日本人数」(日本政府観光局「訪日外客数」、2026年1月更新)、出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」(2026年3月27日)、観光庁「免税店とは」「新制度(リファンド方式)特設ページ」、国税庁「No.6902 『総額表示』の義務付け」、法務省人権擁護局「外国人の人権(啓発ページ)」、日本ヘアカラー工業会「パッチテスト(皮膚アレルギー試験)」、情報通信研究機構(NICT)「VoiceTra」、Google ビジネス プロフィール ヘルプ「ビジネス情報の属性」。2026年9月時点の情報です。英語のフレーズと試算は仮の設定による例です。免税の許可や決済サービスの対応範囲は、税務署や各サービスの公式情報で確認してください。
インバウンド対応は、予約前に英語で料金と条件を見せ、写真と指差しで施術の合意を取り、国籍に関係なく同じ税込料金で受けることが要点です。小さな範囲から始めて、問い合わせの多い言語とメニューから広げていけば、日本に住む外国人のお客様の定着にもつながります。
VAULTA|美容室専門のLINE公式サポート
美容室に特化したLINE公式、
無料でおつくりします。
予約・再来店・求人・販促まで、LINEひとつで。美容室の集客と経営に効く公式アカウントを、無料で作成します。
友だち追加だけ。相談・作成は無料です。

コメント