2025年の美容室の倒産は、帝国データバンクの集計で235件(前年215件)、東京商工リサーチの集計で120件(前年114件)となり、両社とも過去最多の水準でした。原因の8割超は販売不振で、倒産した店の9割以上が資本金1,000万円未満の小規模経営です。
2社の件数がなぜ違うのか、2015年以降の推移、休廃業や閉店との違い、倒産が増えている理由を公表データで整理し、続く店が先に打っている手と危険サインを試算つきでまとめます(2026年10月時点の情報です)。
結論:美容室の倒産・休廃業の数字の早見表
美容室の倒産件数は、2023年から増え続け、2025年に民間信用調査会社2社の集計でともに過去最多の水準になりました。一方で美容室の数そのものは増えており、「業界が縮んでいる」のではなく「競争の中で小さな店の退出が増えている」と読むのが正確です。
| 指標 | 数値 | 調査主体・対象・公表時期 |
|---|---|---|
| 美容室の倒産件数(2025年) | 235件(前年215件) | 帝国データバンク。「美容室」の負債1,000万円以上・法的整理。2026年1月6日公表 |
| 美容業の倒産件数(2025年) | 120件(前年114件、5.2%増) | 東京商工リサーチ。日本標準産業分類「美容業」の負債1,000万円以上。2026年1月31日公表 |
| 倒産の原因 | 販売不振が100件(83.3%) | 東京商工リサーチ(2025年の120件の内訳) |
| 倒産の形態 | 破産が111件(92.5%) | 同上 |
| 設立10年未満の割合 | 49.0%(2008年以降で最高) | 帝国データバンク(2025年の235件) |
| 「人手不足」が理由の倒産 | 11件(2013年以降で最多) | 同上 |
| 美容所(美容室)の数 | 277,752施設(前年度末比3,682増) | 厚生労働省「衛生行政報告例」2025年3月末。2025年10月21日公表 |
| 全業種の倒産・休廃業(2025年) | 倒産10,300件、休廃業・解散67,210件 | 東京商工リサーチ(全国・全業種)。2026年1月公表 |
2026年10月時点で確認できる最新の年間集計は2025年分です。2026年の美容室の倒産件数は、両社の次回の業種別レポートで確認してください。
美容室の倒産件数は何件か — 2社の集計で数字が違う理由
2025年の美容室の倒産件数は、帝国データバンクでは235件、東京商工リサーチでは120件です。どちらも負債1,000万円以上を数えていますが、業種の分け方と「倒産」に含める手続きの範囲が違うため、件数は一致しません。
| 項目 | 帝国データバンク | 東京商工リサーチ |
|---|---|---|
| 対象の業種 | 「美容室」 | 日本標準産業分類の「美容業」 |
| 負債の下限 | 1,000万円以上 | 1,000万円以上 |
| 倒産に含める手続き | 法的整理(破産・民事再生など) | 法的整理に加え、取引停止処分なども含む |
| 2025年の件数 | 235件(2年連続で過去最多) | 120件(過去20年で最多) |
| 主な分析 | 業歴、平均寿命、人手不足倒産 | 原因、形態、負債額、資本金 |
どちらの数字が正しいという話ではありません。件数の大小を比べず、それぞれの年ごとの増減を見るのが統計の正しい使い方です。記事や資料で引用するときは「どの会社の、どの定義の数字か」を必ず併記してください。
なお、負債1,000万円未満の店や、借金を返し終えてから閉める店はどちらの集計にも入りません。個人経営の1人サロンの閉店の多くは、倒産統計の外にあります。
美容室の倒産件数の推移 — 2023年から急増し2025年に過去最多
美容室の倒産は、コロナ禍の2021〜2022年に支援策で抑えられた後、2023年から急増しました。帝国データバンクの集計では2022年の117件から2025年の235件へ、3年で約2倍になっています。
| 年 | 帝国データバンク「美容室」 | 東京商工リサーチ「美容業」 |
|---|---|---|
| 2015年 | 113件 | — |
| 2016年 | 117件 | — |
| 2017年 | 135件 | — |
| 2018年 | 147件 | 95件 |
| 2019年 | 166件 | 105件 |
| 2020年 | 147件 | 78件 |
| 2021年 | 113件 | 65件 |
| 2022年 | 117件 | 70件 |
| 2023年 | 162件 | — |
| 2024年 | 215件 | 114件 |
| 2025年 | 235件 | 120件 |
帝国データバンクの2015〜2023年の値は同社「『美容室』の倒産動向(2025年)」掲載グラフの数値。東京商工リサーチの値は各年の公表記事に記載された年間件数で、「—」は公表記事で年間値を確認できなかった年。
2社とも、2019年に一度ピークをつけ、2021年に底を打ち、2024〜2025年に過去最多を更新するという同じ形を描いています。東京商工リサーチは2025年1〜9月の時点で92件(前年同期比5.7%増)と、集計開始以来最多のペースだったと公表していました。
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美容室の倒産が増えている原因 — 競争・コスト高・値上げ難・人手不足
倒産の直接の原因は「販売不振」、つまり売上が足りないことです。帝国データバンクはその背景を人手不足・コスト高・値上げ難の「三重苦」と表現しており、各社の公表データを重ねると次の4つに整理できます。
- 店の数が増え続けている:美容所は2025年3月末で277,752施設と過去最多です。大手チェーン、低価格のカット専門店、新規開業との競合が激しくなっています(帝国データバンク・東京商工リサーチ)。
- 材料・光熱・家賃・人件費が上がった:シャンプーやカラー剤の値上げ、電気代、テナント料、美容師の賃金上昇が重なり、同じ売上でも手元に残る額が減っています。
- 値上げが浸透しにくい:料金を上げてもキャンペーン割引で実質の単価が上がらない店があると指摘されています。矢野経済研究所は、値上げ後しばらくして来店頻度が下がり、来店間隔が延びていると分析しています(2026年8月公表)。
- 来店回数と利用率が落ちている:リクルート「美容センサス2026年上期」では、女性の美容室の年間利用回数が4.18回、1年以内の利用率が77.5%(前年差1.7ポイント減)で、美容室市場の推計は前年比5.9%減でした。
- 美容師の取り合い:「人手不足」を理由とする倒産は2025年に11件と2013年以降で最多です。予約を受けきれず売上が伸びない、という形の倒産も出ています。
市場全体の数字は美容室の市場規模の推移で詳しく整理しています。売上が減る一方でコストは固定的に出ていくため、客数が数%減るだけで手残りが大きく削られるのが美容室の構造です。
倒産と休廃業・閉店はどう違うか — 倒産は退出のごく一部
「倒産」は借金を払えなくなって法的整理などに至ったケースだけを数えたもので、借金を残さずに店を閉める「休廃業・解散」はその何倍もあります。美容室の閉店の実態を知るには、倒産件数だけを見ても足りません。
| 区分 | 意味 | 公表されている数字の例 |
|---|---|---|
| 倒産 | 負債を払えなくなり、破産・民事再生などに至ったもの(負債1,000万円以上を集計) | 美容室235件(帝国データバンク、2025年) |
| 休廃業・解散 | 倒産以外の理由で事業をやめたもの。資産が負債を上回る状態で閉じる例も多い | 全業種67,210件(東京商工リサーチ、2025年)。美容室に限ると2018年に242件、同年の倒産は95件(同社、2019年11月公表) |
| 保健所への廃止届 | 美容所を閉めるときに出す届出。個人の小さな店の閉店もここに表れる | 全国の廃止件数は公表統計では確認できない。衛生行政報告例は年度末の施設数のみ |
美容所の数は2021年3月末の257,890施設から2025年3月末の277,752施設へ増えましたが、1年ごとの純増は6,333、5,666、4,181、3,682施設と4年続けて小さくなっています。純増は「開設数-廃止数」なので、開業の勢いが落ちたか、閉める店が増えたか、その両方が起きていると読めます。施設数と美容師数の推移は美容室の数と美容師の数の推移にまとめています。
倒産しやすい美容室の特徴 — 小規模で、開業から10年未満
倒産した美容室の多くは、資本金1,000万円未満・負債1億円未満の小さな店です。東京商工リサーチの2025年集計では、負債1億円未満が109件(90.8%)、資本金1,000万円未満(個人企業を含む)が111件(92.5%)を占めました。
もう一つの特徴が「短命化」です。帝国データバンクの集計では、倒産した美容室のうち設立10年未満の割合が上がり続け、倒産までの平均業歴は短くなっています。
| 年 | 設立10年未満の割合 | 倒産までの平均業歴 |
|---|---|---|
| 2019年 | 39.2% | 11.8年 |
| 2020年 | 37.4% | 14.2年 |
| 2021年 | 39.9% | 14.8年 |
| 2022年 | 40.2% | 14.4年 |
| 2023年 | 41.3% | 15.9年 |
| 2024年 | 46.0% | 14.1年 |
| 2025年 | 49.0% | 13.0年 |
出典:帝国データバンク「『美容室』の倒産動向(2025年)」。平均業歴は設立年または創業年の古い方を起点とした満年数。
開業から数年で行き詰まる店は、開業時の借入の返済が始まる時期と、オープン時の新規客が一巡する時期が重なりやすいのが特徴です。融資の据置期間が終わる前に、2回目・3回目の来店で売上が立つ形を作れているかが分かれ目になります。
続く美容室が先に手を打っていること — 値上げ幅を客数の目減りまで織り込む
続いている店に共通するのは、コストが上がる前に価格と客数の両方を数字で管理していることです。帝国データバンクは、カット料金だけを上げてカラーとのセットは据え置く、地域ごとに値上げ幅を変えるといった方法で価格転嫁に成功した例を紹介しています。
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毎月、客数・客単価・再来率を前年同月と比べる
倒産の原因の8割は販売不振です。売上を「客数×客単価」に分け、どちらが落ちているかを月次で確認します。数字の見方は潰れる確率より先に見る4つの数字で解説しています。
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コストの上昇分を「必要な値上げ幅」に換算する
材料費率や人件費の上昇を、客単価にして何円上げれば手残りが戻るかを計算します(下の試算を参照)。値上げの伝え方は価格改定と値上げの進め方が参考になります。
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来店周期が延びた分を、次回予約と配信で取り戻す
来店間隔の長期化は各社の調査で共通して指摘されています。次回予約、来店周期に合わせたLINE配信など、既存客の来店回数を守る仕組みを先に整えます。
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資金繰り表で2〜3か月先の手元資金を見ておく
黒字でも返済や納税の月に資金が足りなくなることがあります。資金繰り表の作り方で月ごとの入出金を先に並べておきます。
試算 — コストが上がったとき、客単価をいくら上げれば手残りが戻るか(仮の設定)
オーナーとスタッフ2人の店で、月の客数300人、客単価7,500円(売上225万円)、材料費率10%、人件費55万円、家賃25万円、水道光熱費7万円、予約サイト・広告10万円、その他10万円、手残り95.5万円と仮定します。ここで材料費率が11%に、人件費が4%、水道光熱費が15%上がったとします。数字はすべて自分で置いた仮定です。
| ケース | 客数 | 客単価 | 売上 | 手残り |
|---|---|---|---|---|
| コスト上昇前 | 300人 | 7,500円 | 225.0万円 | 95.5万円 |
| 値上げなし・客数維持 | 300人 | 7,500円 | 225.0万円 | 90.0万円 |
| 値上げなし・来店周期が延び客数3%減 | 291人 | 7,500円 | 218.3万円 | 84.0万円 |
| 手残りを戻す(客数維持) | 300人 | 7,706円(2.7%増) | 231.2万円 | 95.5万円 |
| 手残りを戻す(客数3%減) | 291人 | 7,944円(5.9%増) | 231.2万円 | 95.5万円 |
コスト上昇だけなら2.7%の値上げで戻りますが、来店周期が延びて客数が3%減ると、必要な値上げは5.9%と倍以上になります。何もしなければ手残りは月11.5万円、年間で138万円減ります。値上げ幅は、コスト増と客数の目減りの両方を織り込んで決めるのが、続く店の考え方です。
値上げと同時に割引クーポンを増やすと、表示価格は上がっても実際の客単価が上がらず、コストだけが残る状態になります。値上げをしたら、割引後の実際の客単価で効果を確かめてください。
経営の危険サインを次の8項目で点検してください。
- 前年同月と比べて客数が3か月続けて減っている
- 新規客は来ているのに、2回目の来店率が下がっている
- 材料費や人件費が上がったのに、料金を2年以上見直していない
- 予約サイト・広告費の売上に占める割合が年々上がっている
- 手元資金が、家賃と人件費の2か月分を下回る月がある
- 借入の返済のために、別の借入やカード払いを増やしている
- 税金や社会保険料の支払いを先延ばしにしている
- スタイリストの退職が続き、予約を断る日が出ている
当てはまる項目が多いときは、早めに取引金融機関や商工会議所などの公的窓口に相談してください。失敗の典型パターンは美容室経営の失敗例でも確認できます。
よくある質問
美容室の倒産率は何%ですか?
公表された倒産率はありません。参考までに帝国データバンクの2025年の倒産235件を美容所数277,752施設で割ると約0.08%ですが、倒産は事業者単位、施設数は店舗単位で、負債1,000万円未満や借金のない廃業は含まれないため、閉店の確率としては使えません。
2026年の美容室の倒産件数はもう発表されていますか?
2026年10月時点で確認できる最新の年間集計は2025年分です。帝国データバンクは2026年1月6日、東京商工リサーチは2026年1月31日に2025年分を公表しており、2026年分も例年どおりなら年明けに公表される見込みです。
個人経営の美容室も倒産件数に含まれますか?
含まれます。東京商工リサーチの2025年1〜9月の集計では、倒産92件のうち個人企業などが39件でした。ただし負債1,000万円未満の店はどちらの集計にも入らないため、小さな個人店の閉店の多くは倒産統計に表れません。
美容室の数は減っていますか?
減っていません。厚生労働省の衛生行政報告例では、美容所は2025年3月末で277,752施設と前年より3,682施設増えています。ただし1年ごとの増え方は4年続けて小さくなっています。
倒産と廃業は何が違いますか?
倒産は負債を払えなくなって法的整理などに至った状態で、廃業は倒産以外の理由で事業をやめることです。全業種では2025年の休廃業・解散が67,210件と、倒産10,300件の6倍以上ありました。
出典:帝国データバンク「『美容室』の倒産動向(2025年)」(2026年1月6日)、東京商工リサーチ「美容業の倒産、過去20年で最多」(2026年1月31日)・「1-9月の『美容室』倒産、過去最多の92件」(2025年10月30日)・「『美容室』の倒産 107件で過去最多を更新」(2024年12月6日)・「2019年(1-10月)『美容室』の倒産状況」(2019年11月11日)・「2025年(令和7年)の全国企業倒産」・「2025年『休廃業・解散企業』動向調査」(2026年1月9日)、厚生労働省「令和6年度衛生行政報告例の概況」(2025年10月21日、厚生労働省「衛生行政報告例」)、リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2026年上期<美容室編>」(2026年6月25日)、矢野経済研究所「理美容サロン市場に関する調査を実施(2026年)」(2026年8月6日)。個別の経営判断は税理士・中小企業診断士や商工会議所などの専門家に確認してください。
倒産件数の増加は、小さな店ほど「客数の目減り」と「コスト高」に弱いことを示しています。まず今月の客数・客単価・再来率を前年同月と比べるところから始め、値上げ幅と資金繰りを数字で決めてください。
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