厚生労働省の生活衛生関係営業経営実態調査(美容業)は、公表されている最新回が2015年(平成27年)11月時点の調査で、平日の1施設1日あたりの平均客数は5.5人、客1人あたりの平均利用料金は5,681.3円、1施設あたりの平均従業者数は2.6人、経営上の問題点は「客数の減少」が79.9%で最多でした。自店と比べるときは同じ定義で数字を出し、従業者1人あたり売上(個人経営で約359万円)まで並べて、差が1割を超える指標にだけ手を打つのが実用的な使い方です。
調査の概要と主な結果、比べた結果から次の一手を決める判断表、2人の店を例にした比較の試算と記入表、数字を比べるときにつまずく点を整理します(2026年10月時点で公表されている最新の結果です)。
結論:経営実態調査(美容業)の主な数字の早見表
調査の回答は個人経営が9割近くを占める小規模な美容所が中心です。主な結果を一覧にします。
| 項目 | 結果(2015年11月時点) | 補足 |
|---|---|---|
| 平日の1日平均客数 | 5.5人(5年前より2.1人減) | 「0〜4人」の施設が56.7% |
| 休日の1日平均客数 | 7.3人(5年前より2.4人減) | 平日より多い |
| 客1人あたりの平均利用料金 | 5,681.3円(5年前より253.9円減) | 「4,000〜5,999円」の施設が35.9%で最多 |
| 1施設あたりの平均従業者数 | 2.6人 | 株式会社(有限会社を含む)6.2人、個人経営2.2人 |
| 経営者の年齢 | 60〜69歳が32.4%で最多、70歳以上が19.0% | 70歳以上は5年前の10.8%から増加 |
| 後継者 | 「後継者なし」78.2% | 個人経営で後継者ありは14.3% |
| 経営上の問題点(複数回答) | 客数の減少79.9%、店舗・設備の老朽化35.2%、客単価の減少26.8% | 人手不足・求人難は15.1% |
| 1施設あたりの平均売上高 | 総数1,153万7千円、個人経営790万8千円、株式会社3,864万3千円 | 乙票(収支)に回答した144施設の平均 |
生活衛生関係営業経営実態調査とは — 業種ごとに約5年おきに行われる国の調査
生活衛生関係営業経営実態調査とは、厚生労働省が理容業・美容業・飲食店など生活衛生関係営業の経営の実態と収支を、業種ごとに調べる調査のことです。美容業は平成17年度、22年度、27年度に行われ、厚生労働省の調査一覧で公表されている最新回は平成27年度(2015年11月9日現在)で、報告書は平成30年3月付で公表されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 美容師法第2条に定める美容所 |
| 調査日 | 平成27年11月9日現在 |
| 甲票(経営の実態) | 284施設が回答。経営主体、営業年数、客数、料金、経営上の問題点、従業者、設備など |
| 乙票(収支の状況) | 144施設が回答。損益計算書、貸借対照表、税務申告の方法など |
| 目的 | 振興指針づくりの基礎資料、経営指標・原価指標の作成、経営指導の参考 |
回答した施設の数は全国の美容所(当時約24万施設)のごく一部で、個人経営の割合が88.7%と高い集団です。立地は「住宅地区」が62.7%を占め、フランチャイズ・チェーンに加入していない施設は97.2%でした。法人の多店舗展開の店や都市部の大型店の実態は、この調査には表れにくい点に注意します。
経営者の年齢と後継者 — 60歳以上が半数を超え、8割近くが後継者なし
経営者の年齢は60〜69歳が32.4%で最も多く、70歳以上が19.0%で、60歳以上が半数を超えています。「後継者なし」と答えた施設は78.2%でした。
| 経営者の年齢 | 施設の割合 |
|---|---|
| 30歳未満 | 0.7% |
| 30〜39歳 | 6.0% |
| 40〜49歳 | 15.1% |
| 50〜59歳 | 26.1% |
| 60〜69歳 | 32.4% |
| 70歳以上 | 19.0%(5年前は10.8%) |
経営主体は個人経営が88.7%、株式会社(有限会社を含む)が10.6%で、後継者がいる施設は株式会社で36.7%、個人経営で14.3%でした。営業年数は「10〜19年」が23.6%で最も多く、開業から5年未満の施設は7.7%、50年以上は9.2%です。半径200m以内に同業店が「1〜2店」ある施設が39.8%、「なし」は14.1%で、生活衛生同業組合に加入している施設は個人経営・株式会社とも約40%でした。
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客数・客単価・メニュー料金 — 平日5.5人、客単価5,681.3円
平日の1日平均客数は5.5人、休日は7.3人で、どちらも5年前より2人以上減っていました。客1人あたりの平均利用料金は5,681.3円で、5年前より253.9円下がっています。平日の1日平均客数は「0〜4人」が56.7%、「5〜9人」が21.5%、「10〜14人」が7.4%で、15人以上の施設は合わせて6.4%でした。
| メニュー | 1施設あたりの平均単価 |
|---|---|
| 縮毛矯正 | 11,609.6円 |
| パーマ | 7,046.5円 |
| カラー | 5,732.5円 |
| 着付け | 5,566.2円 |
| 客1人あたりの平均利用料金 | 施設の割合 |
|---|---|
| 2,000円未満 | 0.0% |
| 2,000〜3,999円 | 19.7% |
| 4,000〜5,999円 | 35.9% |
| 6,000〜7,999円 | 22.2% |
| 8,000〜9,999円 | 8.1% |
| 10,000円以上 | 3.5% |
| 不詳 | 10.6% |
前年度と比べた売上は、「5%以上減少」が37.7%、「1〜4%減少」が19.8%で、合わせて57.5%の施設で減っていました。「増加」は5.6%にとどまります。インターネットで予約を受け付けている施設は12.3%でした。提供しているサービス(複数回答)は「飲み物やマッサージのサービス」63.4%、「高齢者や身体の不自由な方への介助」38.7%、「割引券の配布やサービスデーなどの価格サービス」31.7%、「在宅・施設などへの訪問美容」17.3%の順で、利用者からのクレームが「あった」施設は27.1%、内容は「仕上がりへの不満」71.4%、「パーマ液・染毛剤による皮膚障害」16.9%が多くなっていました。
従業者・店舗・経営上の問題点と収支 — 平均2.6人、客数の減少が8割、欠損企業は約2割
1施設あたりの平均従業者数は2.6人で、経営上の問題点(複数回答)は「客数の減少」が79.9%で突出しています。従業者のうち「個人事業主又は有給役員」が39.5%、「家族従業員」が16.8%と家族で営む店が多く、延べ床面積は「30㎡未満」が39.1%、「30〜40㎡未満」と「40〜50㎡未満」がそれぞれ15.8%、「土地・建物とも自己所有」が45.4%、「土地・建物とも借用」が39.4%でした。日本政策金融公庫は「利用したことがある」が37.3%、「知らない」が34.2%です。健康診断を「年1回」実施している施設は29.9%(「実施なし」24.3%、「従業者が独自で実施」18.7%)、65歳以上の人を「既に雇用している」施設は4.6%、「雇用を考えている」は5.3%で、過去3年間の設備投資の主な資金は「自己資金」が53.7%、理由は「老朽設備の更新・補強」が51.6%で最多でした。
| 経営上の問題点(複数回答) | 施設の割合 |
|---|---|
| 客数の減少 | 79.9% |
| 店舗・設備の老朽化 | 35.2% |
| 客単価の減少 | 26.8% |
| 原材料費の上昇 | 22.9% |
| 水道・光熱費の上昇 | 22.5% |
| 後継者難 | 15.8% |
| 人手不足・求人難 | 15.1% |
| 人件費の上昇 | 10.2% |
収支を答えた144施設では、健全企業が117施設(81.3%)、欠損企業が27施設(18.8%)でした。1施設あたりの平均売上高(当年分)は総数で1,153万7千円、個人経営で790万8千円、株式会社(有限会社を含む)で3,864万3千円です。個人経営の売上は前年分の808万円から減り、株式会社は3,818万9千円から増えていました。平均売上高を平均従業者数で割ると、従業者1人あたりは総数で約444万円、個人経営で約359万円、株式会社で約623万円です(甲票と乙票で回答した施設が違うため目安です)。
比べた結果で次の一手を決める判断表 — 差が1割を超えた指標にだけ手を打つ
回答が284施設の調査との比較なので、差が1割以内の指標は同水準とみなし、1割を超えて下回る指標から手を打ちます。本記事ではこれを目安にしています。客数・客単価・従業者1人あたり売上の組み合わせで、次の一手を決めます。
| 比べた結果 | 読み方 | 次の一手 |
|---|---|---|
| 客数が調査より多く、客単価が1割以上低い | 来店は取れているが、料金かメニュー構成に伸びしろ | メニュー別の単価と構成比を出し、価格改定かメニューの組み直しを検討する |
| 客単価は高いが、客数が1割以上少ない | 新規か再来のどちらかが足りない | 新規数と再来率を分けて出し、少ない方に手を打つ |
| 客数・客単価とも1割以上低い | 立地・集客の土台から見直しが要る | 集客の経路と再来の仕組みを両方点検する |
| 客数・客単価とも高いのに、従業者1人あたり売上が約359万円(個人経営)を下回る | 人数に対して予約が埋まっていない | スタッフごとの稼働率を出し、シフトと予約枠を組み直す |
| 経営者が60歳以上で、後継者がいない | 調査でも後継者なしは78.2%で、多くの店が同じ課題を抱える | 譲るか閉じるかの時期を決め、引き継ぎの準備を始める |
指標の意味は美容室経営の指標(KPI)用語集、客単価の分け方は客単価の計算方法、市場全体の最近の動きは美容室の市場規模の推移で確認できます。
2人の店で比べる試算と記入表 — 強みは休日と1人あたり売上、伸びしろは平日
次の表の「自店の出し方」に沿って数字を入れると、調査との比がそのまま出ます。オーナーとスタイリストの2人で営む個人経営の店を例にします。
試算の前提(仮定):オーナーとスタイリスト1人の2人の店(家族従業員なし)。平日は月18日営業で1日平均6人、休日は月8日営業で1日平均9人、客単価7,200円(売上÷来店客数)。月の来店は6人×18日+9人×8日=180人、月の売上は180人×7,200円=129.6万円です。
| 指標 | 調査の値(2015年) | 自店の出し方 | 記入例 | 調査との比 |
|---|---|---|---|---|
| 平日の1日平均客数 | 5.5人 | 平日の来店客数÷平日の営業日数 | 6.0人 | 1.09倍(同水準) |
| 休日の1日平均客数 | 7.3人 | 休日の来店客数÷休日の営業日数 | 9.0人 | 1.23倍 |
| 客単価 | 5,681.3円 | 売上÷来店客数(技術のみと店販込みの2通り) | 7,200円 | 1.27倍 |
| 年間売上 | 個人経営790万8千円 | 月の売上×12 | 1,555.2万円 | 1.97倍 |
| 従業者1人あたり年間売上 | 個人経営約359万円 | 年間売上÷従業者数 | 777.6万円 | 2.16倍 |
この店は休日の客数と1人あたり売上で調査を大きく上回る一方、平日の客数は1.09倍で同水準です。客単価の1.27倍には2015年以降の料金改定や消費税率の引上げ(2019年10月に8%から10%)による時点の差も含まれるため、伸びしろは平日の空き枠にあると読むのが妥当です。平日の予約を増やす方法は平日集客のやり方で確認できます。
調査と比べるときにつまずく5つの点 — 定義・単位・時点のずれ
比べ方を誤ると、強みを弱みと読み違えます。よくある5つと防ぎ方をまとめます。
- 客単価の定義がずれる:自店の客単価に店販を含めるかで数字が変わります。防ぎ方:技術のみと店販込みの2通りを出し、両方を調査と並べます。
- 施設の数字と1人あたりの数字を混ぜる:1日平均客数5.5人は1施設あたりの数です。防ぎ方:スタッフの多い店は、施設全体の数字と、従業者数で割った数字の両方で比べます。
- 甲票と乙票の違いを忘れる:客数や従業者は284施設、売上は144施設の回答です。防ぎ方:従業者1人あたり売上は目安として扱い、差が大きいときだけ判断に使います。
- 平均だけで自店の位置を決める:平均は売上の大きい店に引っ張られます。防ぎ方:料金の分布表で自店がどの価格帯に入るか(最も多いのは4,000〜5,999円の35.9%)も確かめます。
- 比べる相手を取り違える:回答は個人経営が88.7%、住宅地区が62.7%です。防ぎ方:駅前の法人の店は、株式会社の数字(平均売上3,864万3千円、従業者6.2人)と比べます。
経営実態調査の数字を自店と比べる前に、次の7項目を確認してください。
- 調査の時点が2015年11月で、回答は個人経営が9割近い集団だと理解した
- 自店の平日・休日それぞれの1日平均客数を出した
- 自店の客単価を、技術のみと店販込みの2通りで出した
- 年間売上と従業者1人あたり売上を出し、経営主体の近い数字と比べた
- 記入表で調査との比を出し、1割を超えて下回る指標に印をつけた
- 料金改定や消費税率の引上げを、時点の差として差し引いて読んだ
- 判断表で次の一手を1つに絞った
よくある質問
生活衛生関係営業経営実態調査の美容業の最新回はいつですか?
厚生労働省が公表している美容業の最新回は、平成27年(2015年)11月9日現在の調査で、報告書は平成30年3月付です。厚生労働省の調査一覧には、これ以降の美容業の調査結果は掲載されていません。
美容室の平均客単価はいくらですか?
平成27年度の調査では、客1人あたりの平均利用料金は5,681.3円で、5年前より253.9円下がっていました。最も多い価格帯は「4,000〜5,999円」で35.9%です。2015年時点の数字のため、現在の水準とは差がある前提で読みます。
美容室の1日の平均客数は何人ですか?
同じ調査で、平日の1施設1日あたりの平均客数は5.5人、休日は7.3人でした。平日に「0〜4人」の施設が56.7%を占めており、1人か2人で営む小さな店が多いことが表れています。
美容室の従業者1人あたりの売上はどれくらいですか?
調査の平均売上高を平均従業者数で割ると、総数で約444万円、個人経営で約359万円、株式会社で約623万円です。売上と従業者は回答した施設が違うため、目安として使ってください。
自店の数字が調査の平均より低いと問題がありますか?
すぐに問題とは言えません。調査は2015年の個人経営中心の数字で、店の規模や立地、メニュー構成が違えば平均との差は自然に出ます。差が1割を超えて下回る指標を見つけ、原因を分けて考える材料として使います。
出典:厚生労働省「平成27年度生活衛生関係営業経営実態調査報告 美容業(平成27年11月9日現在)」(第2章 甲票、第3章 乙票)、厚生労働省「生活衛生関係営業経営実態調査(年度ごとのページ)」、国税庁「軽減税率制度の概要」(2019年10月1日からの標準税率10%)。1施設あたりの平均売上高は報告書の図の数値で、従業者1人あたり売上と調査との比は本記事で計算しました。
まずは記入表の「自店の出し方」に沿って先月の数字を入れ、調査との比が1割を超えて下回る指標に印をつけることから始めてください。毎月見ておきたい数字と危険サインは美容室が潰れる確率より先に見るもので確認できます。
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