美容室のオリジナルシャンプー(OEM)の作り方|作るかの判断表、ロット別の原価と売れ残りの試算、表示と言い換え

美容室のオリジナルシャンプーは、化粧品製造販売業の許可を持つOEM会社が製造と市場への出荷の責任を負い、美容室は「発売元」などとして自店の名前で売る形が一般的です。作るかどうかは「ロットの本数÷月に売れる本数」が12か月以内に収まるかで判断し、300本のロットの試算では約6割(178本)売れるまで赤字で、7割しか売れなければメーカー品を同じ本数売るより残る額が少なくなります。

OEMの仕組み、作るか見送るかの判断表、ロット別の原価と売れ残りを含めた試算、OEM会社への見積もり依頼シート、容器と外箱の表示、化粧品として言える効能と言い換え、つまずく点を整理します(2026年10月時点の情報です)。

目次

結論:OEMでオリジナルシャンプーを作るときの早見表

OEMとは、他社のブランドの商品を、製造の設備と許可を持つ会社が代わりに作ることです。美容室のオリジナルシャンプーでは、許可・費用・表示・在庫の4つを先に押さえます。

項目 目安・ルール 根拠・理由
誰が作るか 化粧品製造販売業・製造業の許可を持つOEM会社 許可がなければ化粧品を製造し、市場に出荷できない(医薬品医療機器等法)
美容室の立場 発売元・販売元として自店の名前で売る 容器に製造販売業者として表示されるのはOEM会社
作るかの判断 ロットの本数÷月に売れる本数が12か月以内 売り切るまでが長いほど、使用期限と資金の負担が増える
損益分岐 製造費と販促費の合計÷(売価−販売手当)の本数 ロットを売り切れなかった分は損失になる
表示 全成分、製造販売業者の名称と住所、名称、製造番号など 医薬品医療機器等法第61条
効能 化粧品の効能の範囲(56項目)の中で書く 育毛・発毛などは医薬部外品の範囲で、化粧品ではうたえない
他店に卸す場合 卸先の販売価格を拘束しない 再販売価格の拘束は独占禁止法の不公正な取引方法
商品名 J-PlatPatで第3類の登録を調べる 他社の登録商標と同じか似た名前は使えない

OEMの仕組み — 許可を持つ会社が作り、美容室は発売元になる

化粧品を作って市場に出すには、化粧品製造販売業の許可(出荷と品質・安全の責任)と化粧品製造業の許可(製造の工程)が必要です。OEMでは、OEM会社が品目ごとの製造販売届、品質と安全の管理、市場への出荷、問題が起きたときの回収を担い、工場が充填・包装・表示・保管を含む製造を担います。美容室は販売者として、店頭やネットでの説明と広告の表現、お客様からの問い合わせの受付を担います。

美容室が自分で製造販売業の許可を取るには、要件を満たす総括製造販売責任者を置き、品質管理と製造販売後の安全管理の基準(GQP・GVP)に沿った体制を整える必要があり、小規模な店には現実的ではありません。業務用の大容量品を小さな容器に詰め替えて売ることも製造にあたるため、許可なしにはできません。

作るか見送るか — 販売本数とロットの判断表

判断の出発点は、今のメーカー品のシャンプーが店頭で月に何本売れているかです。3か月ほど数え、その本数を「月に売れる本数」の上限として使います。

店の状況(判断の条件) 判断 次にやること
メーカー品のシャンプーの店販が月10本未満 まだ作らない メーカー品で提案の型と購入の割合を作る
ロットの本数÷月の販売本数が12か月以内 進める 2社以上に同じ条件で見積もりを依頼する
12〜24か月 条件を変えれば進められる 小ロットに対応するOEM会社、既製の容器、品目をシャンプー1つに絞るなどで本数を下げる
24か月を超える 見送る 使用期限と保管、資金の負担が大きい
「薬用」「育毛」などをうたいたい 化粧品では作れない 医薬部外品として品目ごとの承認が必要で、対応できるOEM会社と期間・費用を別に確かめる
他の美容室にも卸したい 進められるが契約に注意 卸先の販売価格は「希望小売価格」として示すにとどめ、守らない店への出荷停止などで拘束しない

月10本・12か月・24か月のしきい値は編集部の目安で、公的な基準ではありません。

月に売れる本数は、月の来店客数×購入する人の割合で見積もります。月400人が来店し5%が買うなら月20本で、300本のロットは15か月かかる計算です。オリジナルになったからといって購入の割合が大きく上がる前提は置かず、今の実績の割合で計算します。

最小ロットと1本あたりの原価 — ロットで原価率が倍近く変わる

1本あたりの原価は、「中身・容器・充填などの製造費+初期費用÷ロットの本数」で決まります。ロットを大きくすると1本の原価は下がりますが、売り切るまでの期間が延び、最初に払う総額も増えます。

項目 300本のロット 1,000本のロット
製造費(1本あたり) 900円 650円
初期費用15万円の1本あたり 500円 150円
1本あたりの原価 1,400円 800円
税抜の売価3,000円に対する原価率 約47% 約27%
最初に払う総額 42万円 80万円
月30本売れる店で売り切る期間 10か月 約33か月

試算の前提(仮定):税込3,300円(税抜3,000円)で売るシャンプー。最小ロット、製造費、初期費用(デザイン、版代、試作など)はOEM会社と処方、容器によって大きく異なり、数字はすべて計算の仕方を示すための仮定です。

1,000本のロットは原価率が下がる一方、月30本の店では売り切るまで約33か月かかり、使用期限と保管の問題が出ます。原価率ではなく「売り切れる本数」から逆算してロットを決めるのが原則です。仕入れた在庫は売れるまで店の資産で、年末には棚卸しの対象になります。原価と棚卸しの扱いは売上原価と棚卸しのやり方で確認できます。

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売り切れなかったらどうなるか — 3つのケースの試算

オリジナル商品は返品で在庫を調整できないため、売り切った場合だけでなく、7割・5割しか売れなかった場合の残る額を先に出します。300本のロットで計算します。

項目 300本を売り切る 7割(210本)売れる 5割(150本)売れる
売上(税抜3,000円) 900,000円 630,000円 450,000円
製造の支払い(原価1,400円×300本) −420,000円 −420,000円 −420,000円
スタッフの販売手当(売価の10%) −90,000円 −63,000円 −45,000円
販促費(POP・撮影・サンプル) −60,000円 −60,000円 −60,000円
残る額 330,000円 87,000円 −75,000円
同じ本数をメーカー品で売った場合(1本900円) 270,000円 189,000円 135,000円

試算の前提(仮定):メーカー品は定価3,000円(税抜)を掛け率60%で仕入れ、販売手当10%を引いて1本900円が残るものとしました。販促費と販売手当の率も仮定です。

損益分岐の本数は、製造費と販促費の合計48万円÷(売価3,000円−手当300円)で約178本、ロットの約6割です。売り切ればメーカー品より6万円多く残りますが、7割にとどまるとメーカー品を同じ本数売った場合より約10万円少なくなります。最初に払う42万円と販促費は運転資金から出ていくため、資金繰りの見通しに入れてから発注します。

OEM会社の選び方と進め方 — 見積もり依頼シート

OEMは、美容室が「誰に、どんな悩みに、いくらで、月に何本売るか」を決め、OEM会社が処方と製造を担う分担で進みます。試作のやり直しやデザインの修正で時間が延びやすいため、販売開始の時期から数か月単位で逆算します。

  1. 企画を1枚にまとめる

    対象のお客様、髪の悩み、使用感、香り、税込の売価、月の販売本数の見込みを書きます。

  2. 2社以上に同じシートで見積もりを依頼する

    下の依頼シートを送り、許可の有無と条件を同じ項目で比べます。

  3. 処方を決めて試作する

    既存の処方をもとに調整するか新しく作るかを決め、スタッフが施術と同じ条件で使い、泡立ち、すすぎやすさ、仕上がり、香りを記録します。

  4. 容器・ラベル・外箱を作り、表示の原稿を確認する

    法定の表示を載せる場所を先に確保し、全成分、製造販売業者の名称と住所、効能の表現をOEM会社の確認に通します。

  5. 製造・納品と記録

    OEM会社が製造販売届を出して製造し、出荷します。納品時に本数と製造番号を確かめ、製造番号ごとに販売の記録を始めます。

OEM会社への見積もり依頼シート(同じ内容で2社以上に送る)

  • 依頼の概要:美容室の店販用シャンプー1品目(化粧品)、内容量(例:300mL)、税込の売価(例:3,300円)、月の販売見込み(例:20〜30本)
  • 許可:化粧品製造販売業と化粧品製造業の許可番号、製造する工場
  • ロット:最小ロットの本数、追加生産の最小本数、追加生産の発注から納品までの期間
  • 費用:1本あたりの製造費(ロット別)、処方の調整・試作・デザイン・版代などの初期費用、試作のやり直しの費用
  • 容器:既製の容器の選択肢と、容器・ラベル・外箱それぞれの最小発注数
  • 表示:全成分表示と法定表示の原稿の作成・確認をどこまで担うか、「発売元」の表示の書き方
  • 品質と問い合わせ:使用期限の考え方、肌の不調の申し出があったときの連絡の流れ、回収になった場合の費用負担
  • 契約:処方とデザインの権利、他社での製造の可否、契約終了時の在庫と資材の扱い

OEM会社は、化粧品の展示会、インターネットでの検索、取引のあるディーラーの紹介などで探せます。美容室向けの商品の実績と、小ロットに対応しているかを最初に確かめます。

容器・外箱の表示ルール — 全成分と法定表示

化粧品の直接の容器などには、製造販売業者の氏名(名称)と住所、名称、製造番号、成分などを表示することが法律で決まっています(医薬品医療機器等法第61条)。OEMの商品では、製造販売業者として表示されるのはOEM会社です。

表示事項 内容
製造販売業者の名称・住所 OEM会社の名称と住所
名称 商品の名前
製造番号または製造記号 製造のロットを特定する番号
成分 配合したすべての成分を表示する(全成分表示)。配合量の多い順に書き、1%以下の成分と着色剤は順不同でよい
使用期限 製造後3年以内に品質が変わるおそれがあるものなど、国が指定する化粧品に表示する
内容量 重量や容量
美容室の名前 「発売元」「販売元」などとして併記するのが一般的。書き方はOEM会社と確認する

成分名は日本語の表示名称で書き、名前と順番はOEM会社の処方の資料をもとに作ります。ラベルのデザインを外部のデザイナーに頼む場合も、表示の原稿は必ずOEM会社の確認を通します。外箱に入れて売る場合、中の容器の表示が外から見えないときは、外箱にも同じ事項を表示します。

化粧品として言える効能 — 56項目の範囲で書き、言い換える

化粧品の効能として表示・広告できるのは、国が定めた56項目の範囲のうち、その商品に当てはまるものです。シャンプーや頭髪用の化粧品に関わるのは、次の16項目です。

頭皮・毛髪に関わる化粧品の効能の範囲(56項目のうち)

  • 頭皮、毛髪を清浄にする/香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える
  • 頭皮、毛髪をすこやかに保つ/毛髪にはり、こしを与える
  • 頭皮、毛髪にうるおいを与える/頭皮、毛髪のうるおいを保つ
  • 毛髪をしなやかにする/クシどおりをよくする
  • 毛髪のつやを保つ/毛髪につやを与える
  • フケ、カユミがとれる/フケ、カユミを抑える
  • 毛髪の水分、油分を補い保つ/裂毛、切毛、枝毛を防ぐ
  • 髪型を整え、保持する/毛髪の帯電を防止する

POPや商品ページの言い換えは、「抜け毛を防ぐ」なら「頭皮、毛髪をすこやかに保つ」、「髪が生き返る」なら「毛髪にはり、こしを与える」、「パサつきを治す」なら「毛髪の水分、油分を補い保つ」のように、56項目の言葉に寄せます。「育毛」「発毛を促す」は医薬部外品で認められる効能で、「白髪が減る」「ダメージを修復する」のように髪や頭皮の状態を変えると受け取られる表現には言い換えがないため書きません。店頭のPOP、ホームページ、SNSでの例は広告・SNSで使えない表現と言い換え例、棚での見せ方は店販の棚・ディスプレイ・POPの作り方で確認してください。

オリジナル商品でつまずく6つの点と防ぎ方

発売後に困るのは、中身以外の資材と、在庫と販売の記録です。

  1. 容器・ラベル・外箱の最小発注が中身より多い:資材だけが余り、次の生産まで保管費がかかります。見積もりの段階で資材ごとの最小発注数を聞き、既製の容器を選んで数を合わせます。
  2. デザインを先に決めて表示の場所が足りない:全成分と製造販売業者の表示を削ることはできません。ラベルの下書きの段階で、法定の表示の枠を先に置きます。
  3. 商品名を決めた後に登録商標とぶつかる:容器と販促物を作り直すことになります。名前の候補の段階でJ-PlatPatの第3類を調べ、迷う名前は弁理士に確認します。
  4. 追加生産が間に合わず欠品する:追加生産の発注点は「月の販売本数×発注から納品までの月数+1か月分」で決めます。月25本・納品まで2か月なら、残り75本で発注します。
  5. 他店への卸で販売価格を守らせようとする:卸先の販売価格を拘束すると独占禁止法上の問題になります。示すのは希望小売価格にとどめ、価格を理由に出荷を止める取り決めはしません。
  6. 肌の不調の申し出に記録で答えられない:どの製造番号をいつ誰に売ったかを記録し、申し出があればOEM会社へすぐ連絡する手順を決めておきます。スタッフの販売手当は、手当を高くしすぎると合わない提案が起きやすくなります。決め方は店販の歩合の設計で扱っています。

OEM会社に発注する前に、次の8項目を確認してください。

  • メーカー品のシャンプーの月の販売本数を3か月数えた
  • ロットの本数÷月の販売本数が12か月以内に収まる
  • 売り切り・7割・5割の3つのケースで残る額と損益分岐の本数を出した
  • OEM会社の化粧品製造販売業・製造業の許可を確かめ、2社以上で同じシートの見積もりを比べた
  • 容器・ラベル・外箱の最小発注数と、追加生産の期間を確かめた
  • 容器に全成分と製造販売業者の名称・住所を載せる場所がある
  • 商品の説明とPOPが化粧品の効能の範囲に収まっている
  • 商品名をJ-PlatPatの第3類で調べた

よくある質問

美容室が自分でシャンプーを作って売ることはできますか?

化粧品製造販売業と化粧品製造業の許可がなければ、シャンプーを作って売ることはできません。業務用の大容量品を小さな容器に詰め替えて売ることも製造にあたるため、許可を持つOEM会社に製造を任せます。

OEMのシャンプーに美容室の名前を載せられますか?

載せられます。商品名や「発売元」「販売元」として美容室の名前を表示するのが一般的です。ただし、製造販売業者であるOEM会社の名称と住所の表示は省けません。

最小ロットは何本くらいですか?

最小ロットはOEM会社、処方、容器によって大きく異なり、決まった基準はありません。少量から受けるOEM会社は1本あたりの原価が高くなる傾向があるため、2社以上から同じ条件で見積もりを取って比べます。

「薬用」や「育毛」とうたうシャンプーにできますか?

化粧品のシャンプーではうたえません。「薬用」や育毛などの効能を表示するには、医薬部外品として品目ごとの承認が必要で、開発の期間と費用が大きく増えます。

オリジナル商品にすると、メーカー品より利益は増えますか?

ロットを売り切れば原価率が下がって残る額は増えますが、売れ残りのリスクを店が負います。試算の例では7割しか売れないとメーカー品より残る額が少なくなるため、今の販売本数から売り切れるロットを決めます。

オリジナルシャンプーを他の美容室に卸してもよいですか?

卸すことはできます。卸先での説明の仕方や返品の可否を取り決める一方、卸先の販売価格を拘束することは独占禁止法上の問題になるため、示すのは希望小売価格にとどめます。

出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条・第12条・第13条・第61条(e-Gov法令検索「医薬品医療機器等法」)、三重県医療保健部薬務課「初めて化粧品を製造販売・製造・輸入される方へ」(令和7年12月版)、厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日薬食発0721第1号)、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第2条第9項第4号(e-Gov法令検索「独占禁止法」)。表示や許可の個別の扱いは都道府県の薬務主管課に確認してください。

オリジナルシャンプーを考え始めたら、まず今のメーカー品の店販の月の販売本数を3か月数え、判断表の12か月の条件に収まるロットを出すことから始めてください。店販全体の提案の組み立て方は店販売上を上げる方法で確認できます。

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