美容室の個人事業税|税率5%・事業主控除290万円の見積もりシート、差し引けるものの判断表と法人成りの年の扱い

個人経営の美容室には、青色申告特別控除を引く前の事業所得から事業主控除290万円を引き、美容業の税率5%をかけた個人事業税がかかります(地方税法第72条の49の14・第72条の49の17)。前年の所得をもとに店のある都道府県から8月に納税通知書が届き、原則として8月と11月の2回に分けて納めます。

この記事では、自分で税額を出せる見積もりシートとスタッフ3人の店の試算、差し引けるもの・引けないものの判断表、開業した年の月割、申告と納付、現場でつまずく点、法人成りする年の見込控除を、個人事業主のオーナーの立場で整理します(2026年10月時点の情報です)。

目次

結論:美容室の個人事業税の早見表

個人事業税は、青色申告特別控除前の所得が290万円を超えた部分に5%と覚えておけば、おおよその額をつかめます。

項目 目安・ルール 根拠・理由
美容業の区分 第3種事業(法定業種) 地方税法第72条の2第10項第18号の2
税率 5%(標準税率) 地方税法第72条の49の17第1項
事業主控除 年290万円。営業期間が1年未満なら月割 地方税法第72条の49の14
青色申告特別控除 差し引けない(控除前の所得で計算) 個人事業税には適用がないため所得に足し戻す
課税する都道府県 店(事務所・事業所)のある都道府県 住所と店の都道府県が違えば、店の側から通知が届く
課税される年 前年の所得に対して翌年に課税 2026年の所得は2027年に納める
申告 所得税の確定申告をしていれば別の申告は不要 確定申告書の「事業税に関する事項」で足りる
納付 原則8月と11月の2回(東京都は8月31日・11月30日) 納期は都道府県の条例が定める(地方税法第72条の51)

所得税・住民税を含めた美容室の税金の全体像と節税の方法は美容室の節税対策一覧にまとめています。この記事では個人事業税だけを扱います。

個人事業税とは — 美容業は第3種事業で税率5%

個人事業税とは、個人が営む法律で定められた事業(法定業種)の所得に対して、都道府県が課す地方税のことです。美容業は第3種事業に入っており、標準税率は5%です。都道府県は条例で標準税率の1.1倍までの税率を定められるため、実際の税率は納税通知書で確認してください。

所得税・住民税との違いは、事業そのものにかかる税である点です。基礎控除や扶養控除のような人に関する控除はなく、代わりに事業主控除290万円があります。このため、青色申告特別控除前の所得が290万円以下なら個人事業税はかかりません。

税額はいくらか — 見積もりシートとスタッフ3人の店の試算

計算式は(青色申告特別控除前の事業所得 − 事業用資産の譲渡損失など − 事業主控除290万円)× 5%です。昨年の青色申告決算書を手元に置き、次のシートの順に数字を入れれば、8月の通知が届く前に税額が分かります。

試算の前提(仮定):スタイリスト2人+アシスタント1人を雇う個人事業の美容室で、1年を通して営業。2026年の青色申告決算書の所得金額(青色申告特別控除65万円を引いた後)は515万円。2026年に古いシャンプー台を売却し、事業用資産の譲渡損失が20万円出た。税率5%、損失の繰越はない。

行 項目 試算の店
① 青色申告決算書の所得金額(控除後) 5,150,000円
② 青色申告特別控除額を足し戻す +650,000円
③ 事業用資産の譲渡損失(申告書の事業税の欄に書いた額) −200,000円
④ 繰り越した事業の損失(青色申告で3年以内のもの) 0円
⑤ 事業主控除(1年営業なら290万円、開業年は月割) −2,900,000円
⑥ 税率をかける額(①+②−③−④−⑤、千円未満切り捨て) 2,700,000円
⑦ 年税額(⑥×5%、百円未満切り捨て) 135,000円
⑧ 8月・11月の各回(都道府県の通知で確定) 67,500円ずつ
⑨ 毎月の積立額(⑦÷12) 11,250円

決算書の515万円から290万円を引いて計算すると(515万円−290万円)×5%=112,500円となり、実際の135,000円より22,500円少なく見積もってしまいます。また、③の譲渡損失を申告書に書かないと、税額は145,000円になり1万円多くなります。

2027年に納める135,000円は2027年分の経費(租税公課)になり、2027年の所得がその分下がるため、2028年の個人事業税は約6,700円下がります。所得別の年税額の目安は次のとおりです。

青色申告特別控除前の所得 税率をかける額 年税額 毎月の積立の目安
290万円以下 0円 かからない ―
300万円 10万円 5,000円 約400円
400万円 110万円 55,000円 約4,600円
500万円 210万円 105,000円 約8,800円
600万円 310万円 155,000円 約12,900円
800万円 510万円 255,000円 約21,300円

1年を通して営業し、譲渡損失・損失の繰越などがない場合。積立の目安は年税額を12で割り、100円未満を四捨五入した額です。

何を差し引けるか — 所得税と扱いが違うものの判断表

個人事業税で差し引けるのは、事業の経費、専従者の給与・控除、事業の損失の繰越、事業用資産の譲渡損失、事業主控除です。所得税で引ける青色申告特別控除と所得控除は引けません。

状況 個人事業税での扱い やること
青色申告特別控除(65万円・55万円・10万円)を受けている 引けない 見積もりでは所得に足し戻す
家族に青色事業専従者給与を払っている 実際の支給額が経費として差し引かれる 届け出た範囲で支給し、記帳する
白色申告で家族が専従している 事業専従者控除(配偶者86万円、その他の親族1人50万円が上限) 確定申告書の専従者の欄を書く
青色申告で過去3年以内に事業の赤字が出た 翌年以降3年間、繰越控除できる 確定申告書の事業税の欄に損失額を書く
機械・器具・車両など店で直接使う資産を売って損が出た(土地・建物は除く) 譲渡損失を差し引ける。青色申告なら3年間繰り越せる 確定申告書の事業税の欄に損失額を書く
年の途中で開業・廃業した 事業主控除が営業月数で月割になる 確定申告書の事業税の欄に開業・廃業の日を書く
基礎控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除 引けない 見積もりに入れない

確定申告で事業所得をどう計算するかは美容師の確定申告のやり方、家族への給与と役員報酬の違いは夫婦で経営する美容室の法人化で確認できます。

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開業した年は事業主控除が月割になる — 1年目の計算例

年の途中で開業した場合、事業主控除は290万円×営業した月数÷12に減ります(地方税法第72条の49の14第2項)。1か月に満たない月は1か月として数えます。

開業日(2026年) 営業月数 事業主控除 所得250万円の場合の年税額
4月1日 9か月 217万5,000円 16,200円
7月15日 6か月(7月を1か月と数える) 145万円 52,500円
10月1日 3か月 72万5,000円 88,700円

所得は青色申告特別控除前の額。税額は(所得−事業主控除)を千円未満切り捨て、5%をかけて百円未満を切り捨てた概算です。

同じ所得でも営業月数が短いほど控除が小さくなり、税額は増えます。開業した年の所得に対する個人事業税は翌年8月に初めて届きます。開業2年目は、所得税の確定申告、住民税、個人事業税、場合によっては予定納税が続く年です。2年目の税金に備える準備は美容室の開業1年目にやることで確認してください。

申告と納付はいつまでに — 3月の確定申告、8月と11月の納付

個人事業税は3月15日までの所得税の確定申告で申告を兼ね、8月に届く納税通知書で8月と11月に納めます。自分で税額を計算して申告書を出す必要はありません。

  1. 開業したら都道府県にも届け出る

    税務署への開業届とは別に、店のある都道府県に開業の申告をします。東京都は「事業開始等申告書」を事業の開始から15日以内です。名称と期限は都道府県ごとに確認します。

  2. 確定申告書の「事業税に関する事項」を書く(3月15日まで)

    開業・廃業の日、他の都道府県の事務所の有無、事業用資産の譲渡損失、繰り越す損失などを書きます。会計ソフトやe-Taxの入力画面にも同じ項目があります。

  3. 8月に納税通知書が届く

    年税額と、第1期(8月)・第2期(11月)の納付額が書かれています。東京都の納期限は8月31日と11月30日で、休日なら翌日です。

  4. 8月と11月に納め、納めた年の経費にする

    口座振替、金融機関やコンビニの窓口などで納めます。納めた個人事業税は、その年の必要経費(租税公課)です。所得税・住民税は経費にならないため、事業用口座から払ったときは事業主貸で区別します。

開業届と青色申告承認申請書の出し方は美容室の開業届の書き方と出す順番にあります。年の途中で廃業した場合は、廃業から1か月以内(死亡による廃業は4か月以内)に都道府県へ個人事業税の申告が必要です。

現場でつまずく5つの点 — 見積もり・記入漏れ・支払の重なり

個人事業税は自動で計算される分、申告書の書き漏れと、夏から秋の支払の集中に気づきにくい税です。

  1. 決算書の所得のまま見積もる:青色申告特別控除を足し戻さないと、65万円控除の店では32,500円少なく見積もります。防ぎ方:見積もりシートの②を必ず埋めます。
  2. 譲渡損失や損失の繰越を事業税の欄に書かない:所得税の計算とは別の欄のため、書かないと差し引かれません。防ぎ方:設備を売った年と赤字の翌年は、確定申告の前に事業税の欄を確認します。
  3. 住所と店の都道府県が違うことを忘れる:神奈川県に住み東京都で店を営むなら、通知も開業の申告も東京都です。防ぎ方:開業時に店の所在地の都道府県税事務所を調べ、問い合わせ先として控えます。
  4. 夏から秋の税金の支払が重なる:予定納税がある人は7月と11月に所得税、普通徴収の住民税は6月・8月・10月・1月、個人事業税は8月と11月です。防ぎ方:見積もりシートの⑨の額を毎月別口座に移し、資金繰り表に支払月を入れます。
  5. 法人成りした翌年の通知に慌てる:個人で営業した期間の所得に対する個人事業税が、法人成りの翌年8月に個人あてに届きます。防ぎ方:下の見込控除を使って、個人の最終年分で経費にしておきます。

法人化すると個人事業税はどう変わるか — 法人事業税に切り替わる

美容室を法人にすると、店の所得には個人事業税ではなく法人事業税と特別法人事業税がかかります。法人では役員報酬を経費にできるため、法人に残る所得の大きさで税額が決まります。

項目 個人事業 法人(資本金1億円以下の普通法人)
控除 事業主控除290万円 事業主控除はない
税率 5% 所得割の標準税率は所得に応じて3.5%〜7.0%。特別法人事業税は所得割額(標準税率で計算)の37%
オーナーの報酬 事業所得そのものが課税対象 役員報酬は法人の経費になり、オーナー個人には所得税・住民税がかかる
赤字の年 個人事業税はかからない 所得割はかからないが、法人住民税の均等割はかかる

法人成りで個人事業を廃止した年は、翌年に課される個人事業税の見込額を、その年分の事業所得の必要経費に入れられます(所得税基本通達37-7)。見込額は(見込控除前の事業所得±事業税の計算で加減する額)×税率÷(1+税率)です。たとえば2027年6月末に法人成りし、1〜6月の事業所得が335万円(青色申告特別控除65万円の後)なら、(335万円+65万円−月割の事業主控除145万円)×5%÷1.05=約12万1千円を経費にできます。個人事業税だけを比べて法人化を決めることはせず、社会保険料や役員報酬を含めた全体で判断してください。判断の目安は美容室の法人化のタイミングで解説しています。

個人事業税で慌てないために、次の7項目を確認してください。

  • 見積もりシートで、青色申告特別控除を足し戻した税額を出した
  • 設備を売った損失や繰り越す損失があれば、確定申告書の事業税の欄に書いた
  • 開業した年は、事業主控除を営業月数で月割にして計算した
  • 店のある都道府県に開業の申告を出し、問い合わせ先を控えた
  • 8月と11月の納付額と、予定納税・住民税の支払月を資金繰り表に入れた
  • 納めた個人事業税を、その年の租税公課として記帳した
  • 法人成りする場合、個人の最終年分で見込控除を使うか税理士と決めた

よくある質問

所得が290万円以下でも個人事業税の申告は必要ですか?

所得税の確定申告をしていれば、個人事業税のために別の申告書を出す必要はありません。青色申告特別控除前の所得が事業主控除の290万円以下なら、個人事業税はかかりません。

開業1年目の美容室にも個人事業税はかかりますか?

開業した年の所得に対して、翌年の8月と11月に課税されます。開業した年は事業主控除が営業月数に応じた月割になるため、同じ所得でも1年通して営業した場合より税額が大きくなります。

青色申告特別控除の65万円を使っても個人事業税は安くならないのですか?

安くなりません。個人事業税には青色申告特別控除の適用がなく、控除前の所得で計算します。一方で、家族に払う青色事業専従者給与は経費として差し引かれます。

住所と店が別の都道府県の場合、どこに納めますか?

店(事務所・事業所)のある都道府県に納めます。確定申告は住所地の税務署に出しますが、個人事業税の納税通知書は店のある都道府県から届きます。

面貸しや業務委託で働く美容師にも個人事業税はかかりますか?

個人で美容の事業を営んでいれば、美容業として課税されるのが一般的で、所得が290万円を超えると税額が出ます。働き方の実態で判断が変わることがあるため、迷う場合は事業を行う都道府県の都道府県税事務所に確認してください。

出典:地方税法第72条の2・第72条の49の14・第72条の49の17・第72条の51(e-Gov法令検索「地方税法」)、東京都主税局「個人事業税」(東京都主税局)、国税庁「所得税基本通達37-7」(国税庁)。納期限・端数処理・開業の申告の様式は都道府県により異なるため、納税通知書と店のある都道府県の案内で確認してください。

まず、昨年の青色申告決算書で見積もりシートの①〜⑨を埋め、⑨の額を毎月の積立として資金繰り表に書き込むことから始めてください。資金繰り表の作り方は美容室の資金繰り表の作り方にあります。

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この記事を書いた人

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