美容室の店名は商標登録すべきか|判断表・第44類の費用と開業から逆算するスケジュール・出願書の記入例

美容室の店名は商標登録しなくても使えますが、同じか似た名前を他人が先に第44類(美容)で登録すると、その名前を使い続けられなくなるおそれがあるため、2店舗目・のれん分け・オリジナル商品の予定がある店は開業前に出願し、1店舗で続ける店も最低限J-PlatPatでの調査は済ませます。特許庁に払う費用は第44類の1区分なら出願時1万2,000円と登録時3万2,900円(10年分)の計4万4,900円で、最初の審査結果が届くまで平均で半年以上かかるため、開業日には間に合わない前提で看板の発注時期を決めます。

商標権と商号・屋号の違い、登録すべきかの判断表、出願する区分、J-PlatPatでの調べ方、開業日から逆算するスケジュールと費用、商標登録願の記入例、名前がかぶったときの対応、つまずく点を整理します(2026年10月時点の情報です)。

目次

結論:美容室の商標登録の早見表

商標登録は義務ではありませんが、名前を守る仕組みは「先に出願した人が優先」です。費用と期間、判断の目安を先に一覧にします。

項目 目安・ルール 根拠・理由
登録の必要性 登録しなくても店名は使える。他人の登録が先だと使えなくなるおそれがある 同じ・似た商標は先に出願した人が登録を受ける(先願主義)
区分 美容室のサービスは第44類。オリジナル商品は第3類 区分ごとに費用がかかる
事前の調査 J-PlatPatで同じ・似た読み方の商標を検索する 無料で使える特許情報のデータベース
特許庁の費用 出願3,400円+区分数×8,600円、登録は区分数×32,900円(10年分) 特許庁の料金表。専門家の報酬は別
期間 最初の審査結果まで平均6.9か月(2024年) 特許行政年次報告書2025年版
期限 拒絶理由通知への意見書は40日以内、登録料は登録査定から30日以内 国内に住む出願人の場合
権利の期間 登録から10年。更新できる 更新登録料は区分数×43,600円

商標権と商号・屋号の違い — 登記しても名前は守られない

商標とは、商品やサービスについて、自分のものと他人のものを区別するために使う名前やマークのことで、特許庁に登録すると、登録した区分の商品・サービスについて全国で独占して使え、似た名前の使用もやめさせられる商標権が生じます。開業届に屋号を書いても独占して使える権利はなく、会社の商号を登記しても同じ所在地で同じ商号を登記できなくなるだけで、他の地域の同名の店は防げません。

ドメイン名やSNSのアカウント名も、取得しただけでは商標権は生じません。反対に、他人の登録商標と同じ名前のアカウントで美容のサービスを宣伝すると、商標の使用にあたるおそれがあります。店名そのものの付け方は屋号の決め方で扱っています。

登録すべきか — 店の状況別の判断表

名前を他人に使わせる、商品に付ける、複数の店で使う予定がある店ほど、登録の価値が高くなります。J-PlatPatの調査の結果と、今後3年の予定で決めます。

店の状況(判断の条件) 判断 次にやること
J-PlatPatの第44類で、同じか読み方の近い名前が登録・出願されている 開業前なら名前を変える 開業後に気づいた場合は、相手の登録番号と指定サービスを控えて弁理士に相談する
調査で見つからず、3年以内に2店舗目・のれん分け・フランチャイズの予定がある 開業前に第44類で出願する 看板とロゴの発注前に出願を済ませる
調査で見つからず、店名入りのオリジナル商品を作る・ネットで売る 第44類と第3類で出願する 商品名を店名と別にするなら、商品名でも調べる
調査で見つからず、1店舗で続け、名前の変更もいとわない 出願は後回しでもよい 開業前の調査だけは行い、多店舗化を決めた時点で出願する
「地名+美容室」「ヘアサロン」のような名前 登録できない 造語や言葉の組み合わせで独自性のある名前にする(商標法第3条)
個人で開業し、2年以内に法人化する予定 出願の名義を先に決める 個人で出願して後で会社に移すか、会社の設立後に会社名義で出願する

出店の判断基準は2店舗目を出す判断基準、名前を使わせる仕組みはフランチャイズ開業とはとのれん分け・独立支援制度の作り方で確認できます。

美容室はどの区分で出願するか — 第44類が基本

商標は、使う商品・サービスを指定し、その区分ごとに出願します。美容室の店名で守るべき中心は第44類(美容・理容など)で、商品やほかの事業に名前を使う予定があれば区分を足します。

区分 主な対象 美容室で必要になる場面
第44類 美容、理容など 店名・ロゴを守る基本の区分
第3類 シャンプー、化粧品など オリジナルのシャンプーやスタイリング剤に店名を付ける
第35類 化粧品などの小売の業務で行う顧客への便益の提供など 店販やネットショップでの販売を事業として広げる
第41類 技術の講習やセミナーの開催など 美容師向けの講習を事業にする

出願書には区分だけでなく、守りたい商品・サービスの名前(指定商品・指定役務)を書きます。美容室なら第44類の「美容」が中心で、店で提供するほかのサービスがその範囲に含まれるかは、特許庁の類似商品・役務審査基準で確かめます。登録後に区分や指定商品・指定役務を追加することはできず、追加したい範囲は新しく出願します。

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J-PlatPatで同じ名前を調べる手順

J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)では、登録済み・出願中の商標を無料で検索できます。商標が似ているかどうかは、見た目、読み方、意味の3つで判断されるため、表記だけでなく読み方で調べます。

  1. 「商標検索」を開く

    J-PlatPatのトップページから商標の検索画面に進みます。

  2. 店名の読み方をカタカナで、揺れも含めて入れる

    英語やフランス語の店名は、考えられる読み方(例:「ルミエール」と「ルミエル」)をすべて入力して検索します。

  3. 区分を44に絞り、使う予定の区分も調べる

    オリジナル商品の予定があれば第3類も同じように調べます。

  4. ヒットした商標の状態と指定サービスを確かめる

    権利が存続中か、出願中か、消滅しているかと、指定されている商品・サービスを確認します。

  5. 迷うときは弁理士に相談する

    一部が同じ名前や、読み方が近い名前は類似の判断が難しいため、出願前に専門家の意見を聞きます。

検索で何も見つからなくても、出願されたばかりでまだ検索に反映されていないものや、読み方が少し違う名前が登録の妨げになることがあります。地図アプリや予約サイトで、同じ名前の店が近くにないかも確かめます。

費用と期間 — 開業日から逆算するスケジュール

特許庁に払う費用は出願料(3,400円+区分数×8,600円)と登録料(区分数×32,900円、10年分)です。登録料は5年分ずつの分割(区分数×17,200円を2回)でも払えます。

出願する区分 出願料 登録料(10年分) 合計 5年分割にした場合の10年の合計
第44類のみ 12,000円 32,900円 44,900円 46,400円
第44類+第3類 20,600円 65,800円 86,400円 89,400円
第44類+第3類+第35類 29,200円 98,700円 127,900円 132,400円

計算式:出願料=3,400円+8,600円×区分数。5年分割の合計=出願料+17,200円×区分数×2回。弁理士に依頼する場合は各段階の報酬が別にかかり、紙で出願すると電子化手数料も必要です。

特許行政年次報告書2025年版によると、2024年の商標の最初の審査結果の通知までの期間は平均6.9か月です。開業の6か月前に出願しても、結果は開業後に届くのが通常の見込みです。開業日を2027年5月1日とした場合の逆算は次のとおりです。

時期(開業日2027年5月1日の例) やること 期限・費用
2026年11月上旬 店名の候補3つをJ-PlatPatで調べ、1つに決める 物件の契約前に済ませる
2026年11月中旬 第44類(必要なら第3類)で出願する 1区分12,000円
2026年12月〜2027年3月 看板、ロゴ、ショップカード、予約サイトの登録を進める 拒絶された場合に作り直す可能性を承知のうえで
2027年6月ごろ 最初の審査結果が届く(平均6.9か月の場合) 拒絶理由通知なら40日以内に意見書・補正
登録査定の後 登録料を納付し、設定登録で商標権が生じる 登録査定から30日以内、1区分32,900円
登録から10年後 更新登録を申請する 満了の6か月前から申請できる。1区分43,600円

すでに店名を使っている、または使う準備を相当程度進めているなどの条件を満たせば、早期審査を申し出て審査を早めてもらえる制度があります。開業日やロゴの発注が迫っている場合は、出願と同時に検討します。

自分で出願する — 商標登録願の記入例

商標の出願は個人でも会社でもでき、店名を文字で守るなら「標準文字」で出願するのが基本です。標準文字とは、書体やデザインを指定せず、文字そのものを出願する方式です。電子出願の場合の記載の並びは次のとおりです。

商標登録願の記入例(標準文字・第44類・個人が電子出願する場合)

  • 【書類名】商標登録願
  • 【整理番号】SHOP01(任意。自分で管理しやすい番号)
  • 【あて先】特許庁長官殿
  • 【商標登録を受けようとする商標】(店名の文字。アルファベットの店名ならそのつづり)
  • 【標準文字】
  • 【指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分】
  • 【第44類】
  • 【指定商品(指定役務)】美容
  • 【商標登録出願人】
  • 【識別番号】(特許庁から付与されていれば記載)
  • 【住所又は居所】(住所)
  • 【氏名又は名称】(氏名。会社なら会社名と代表者)
  • 【手数料の表示】
  • 【予納台帳番号】(予納している場合)
  • 【納付金額】12000

第3類も出願する場合は、区分の番号順に【第3類】と【指定商品(指定役務)】を繰り返し、納付金額は20600になります。複数のサービスを書くときはコンマで区切り、「その他本類に属する役務」のような包括的な書き方はできません。手数料の納付方法によって【手数料の表示】の書き方が変わるため、電子出願ソフトの案内で確かめます。

名前がかぶったときの対応 — 先に登録した人が優先

他人が先に第44類で登録している名前は、同じか似た名前を美容のサービスに使うと、商標権の侵害として使用の中止を求められるおそれがあります。開業前に分かった場合は、名前を変えるのが最も手間の少ない対応です。

状況 主な対応 ポイント
自分が後から同じ名前を使い始めた 名称変更、または使用の許諾(ライセンス)を求める 許諾には使用料などの条件が付くことがある
相手の出願より前から使っていた 先使用権を主張できる場合がある 相手の出願時に、その名前が需要者の間に広く知られていたことが要件(商標法第32条)
相手が登録した名前を使っていない 不使用取消審判を請求できる 継続して3年以上使われていない登録が対象(商標法第50条)
似た名前で自分も登録したい 先の権利者の承諾を得て出願する 2024年4月以降の出願は、承諾があり混同のおそれがなければ登録できる(商標法第4条第4項)

警告書や内容証明が届いたら、放置せず、相手の登録番号と指定サービスを確かめて弁理士や弁護士に相談します。開業後の名称変更は、看板、ショップカード、予約サイト、Googleビジネスプロフィール、SNSのアカウント名まで変える必要があり、費用と失客の両面で負担が大きくなります。

商標登録でつまずく6つの点と防ぎ方

手続きそのものより、調べ方の漏れと期限の見落としで失敗が起きます。

  1. 読み方を1通りしか検索しない:外国語の店名は読み方が揺れます。考えられる読み方をすべて書き出し、1つずつ検索します。
  2. 指定役務を独自の言葉で書く:「トータルビューティーサロンの運営」のような書き方は、範囲が明確でないとして補正を求められることがあります。審査基準に載っている「美容」などの表示を使います。
  3. 拒絶理由通知の40日を繁忙期に見落とす:特許庁からの通知は出願書に書いた住所に届きます。届いたらその日に期限を予約台帳とカレンダーに入れ、間に合わなければ期間の延長を請求します。
  4. 登録料の納付を忘れる:登録査定から30日以内に払わないと登録を受けられなくなるおそれがあります。出願と同時に、登録料を払う資金を取り分けておきます。
  5. 個人名義のまま法人化して移転を忘れる:会社が使う名前の権利が個人に残ります。法人化の手続きの一覧に、商標権の移転登録の申請を入れておきます。
  6. ロゴを変えたら登録の形と違う:ロゴで登録した場合、デザインを変えると登録した形と一致しなくなります。店名を守る目的なら文字で出願し、ロゴは変更の予定がなくなってから別に出願します。

店名を決める前と出願の前に、次の8項目を確認してください。

  • J-PlatPatで、店名の読み方の揺れをすべて第44類で検索した
  • 地図アプリや予約サイトで、近くに同じ名前の店がないか確認した
  • 判断表で、出願するか・どの区分で出すかを決めた
  • 出願の名義を、個人か会社か決めた
  • 開業日から逆算して、出願日と看板の発注日を決めた
  • 出願料と登録料(区分数×費用)を予算に入れ、登録料の資金を取り分けた
  • 文字で出すか、ロゴで出すか、両方かを決めた
  • 拒絶理由通知(40日)と登録料(30日)の期限を管理する方法を決めた

よくある質問

個人事業主でも美容室の店名を商標登録できますか?

できます。商標の出願は個人でも会社でも行えます。個人で登録した後に法人化した場合は、商標権を会社に移す手続きを特許庁に行います。

同じ名前の美容室がほかの県にあっても、商標登録できますか?

相手が第44類で商標登録していなければ、出願して登録を受けられる可能性があります。ただし相手の名前が広く知られている場合は登録できないことがあり、相手が先に使っていた範囲では先使用権が認められる場合もあります。

商標登録は自分でもできますか?

できます。特許庁への電子出願か書面での出願で手続きできます。ただし似た商標があるかの判断や、指定する商品・サービスの書き方で登録の可否が変わるため、迷う場合は弁理士に相談します。

文字とロゴのどちらで登録すればよいですか?

店名を守ることが目的なら、まず標準文字で出願するのが基本です。ロゴのデザインも守りたい場合は、ロゴを別に出願します。ロゴを変えると登録した形と違ってしまうため、変更の予定も考えて決めます。

商標登録をしないまま開業しても問題ありませんか?

営業すること自体に問題はありません。ただし、後から他人が同じか似た名前を第44類で登録すると、その名前の使用の中止を求められるおそれがあります。少なくとも開業前にJ-PlatPatで調べ、多店舗化や商品化の予定があれば開業前に出願します。

登録した商標は何年有効ですか?

設定登録の日から10年です。更新登録の申請で10年ずつ延ばせ、申請は満了の6か月前からでき、更新登録料は区分数×43,600円です。

出典:商標法第3条・第4条・第20条・第32条・第40条・第50条(e-Gov法令検索「商標法」)、特許庁「産業財産権関係料金一覧」、特許庁「特許行政年次報告書2025年版」、特許庁「商標登録出願:標準文字のみによって商標登録を受けようとする場合」、特許庁「商標早期審査・早期審理の概要」、J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)。個別の類否判断は弁理士に確認してください。

店名の候補が決まったら、まず読み方の揺れをすべて書き出し、J-PlatPatで第44類を検索することから始めてください。名前に込める店の考え方と発信のそろえ方はブランディングの作り方で確認できます。

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この記事を書いた人

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