美容室にカフェを併設して飲食物を有料で出すには、美容所の開設届とは別に、保健所の食品衛生の窓口で飲食店営業許可(食品衛生法第55条)を取り、施設ごとに食品衛生責任者を置きます。施術のお客様への無料の飲み物は調理の有無や出し方で扱いが変わりうるため、出し方を書いた相談メモと図面を持って保健所に確認し、専任のスタッフを置くなら赤字にならない杯数(モデルでは1日約24〜26杯)を先に計算します。
やりたいこと別の手続きの判断表、保健所への相談メモの記入例、調理場と作業室の分け方、赤字にならない杯数の計算、衛生管理の記録表、テイクアウトの税率など現場でつまずく点をまとめます(2026年10月時点の情報です)。
結論:美容室にカフェを併設するときの許可と基準の早見表
カフェ併設で押さえることは、飲食店営業許可、食品衛生責任者、調理場の区画、衛生管理の記録の4つです。
| 項目 | 目安・ルール | 根拠・理由 |
|---|---|---|
| カフェとして有料で飲食を出す | 飲食店営業許可が必要 | 食品衛生法第55条 |
| 施設の基準 | 食品を扱う場所の区画、流水式の手洗い設備、洗浄設備など | 同法第54条。国の基準を参酌して都道府県等が条例で定める |
| 食品衛生責任者 | 施設ごとに1人。調理師・栄養士などの資格者か養成講習会の修了者 | 同法第51条に基づく施行規則の基準 |
| 衛生管理 | HACCPに沿った衛生管理。小規模な店は業界団体の手引書に沿った方法でよい | 同法第51条 |
| 無料の飲み物 | 調理の有無と出し方で扱いが変わりうる。保健所に確認する | 「営業」は業として食品を調理・販売等すること(同法第4条第7項) |
| 未開栓のお酒の販売 | 酒類販売業免許(税務署)が別に必要 | 酒税法第9条 |
| 消費税の税率 | 店内飲食は10%、持ち帰りは8%。提供のときに店内か持ち帰りかを確認する | 国税庁「軽減税率制度に関するQ&A」 |
| 建物の用途 | 飲食店部分を加える用途変更で、床面積200㎡超は建築確認が必要になる場合がある | 建築基準法第6条・第87条 |
手続きと設備の負担が大きいため、飲み物のサービスにとどめて待ち時間の満足度を上げる選択もあります。お客様用の飲み物の経費の扱いはお客様用の飲み物は経費になるかで確認できます。
やりたいことに何の手続きが要るか — 出し方別の判断表
手続きは「何を、誰に、料金を取るか、調理するか」の組み合わせで決まります。「無料なら許可は要らない」とは単純に言えないため、今の出し方も含めて自店の行を探します。
| やりたいこと | 必要になる手続き | 次にやること |
|---|---|---|
| 施術中のお客様に、未開栓のペットボトルや缶を無料で渡す | 調理も販売もないため、通常は手続きなし | 迷う場合は保健所に出し方を伝えて確認する |
| 施術中のお客様に、お茶やコーヒーを淹れて無料で出す | 調理や営業に当たるかの判断が自治体で異なることがある | 下の相談メモで保健所に確認する |
| ドリンク付きのメニュー・プランとして料金に含める | 対価を得た提供と見られやすく、許可が必要になる可能性が高い | 飲食店営業許可を取る前提で設備を計画する |
| 施術しない人にもカフェとして有料で出す | 飲食店営業許可と食品衛生責任者 | 図面を美容所と飲食店の両方の担当に見せる |
| 店で淹れたドリンクを持ち帰り用に売る | 飲食店営業許可の範囲 | ふた付きの容器にし、税率8%でレジに登録する |
| 常温で保存できる包装済みの菓子をそのまま売る | 冷凍・冷蔵が不要な容器包装食品の販売は、許可・届出が不要とされている | 表示のある商品を仕入れ、開封して小分けしない |
| 冷蔵が必要な包装済みの食品を仕入れて売る | 営業届出などが必要になる場合がある | 保健所に確認する |
| 未開栓のお酒を持ち帰り用に売る | 酒類販売業免許(税務署) | 飲食店営業許可だけでは売れない |
保健所には何を持って相談するか — 飲食店営業許可と相談メモの記入例
飲食店営業許可とは、食品を調理して客に飲食させる営業に必要な、都道府県知事等(窓口は保健所)の許可のことで、美容所の開設届を出していてもカフェ部分は別に取ります。保健所の中でも美容所と食品衛生で担当が分かれるため、内装工事の前に次のメモと平面図を持って食品衛生の担当に相談します。
| 手続き | 美容室部分(美容所) | カフェ部分(飲食店) |
|---|---|---|
| 法律と手続き | 美容師法。開設届→構造設備の検査→確認 | 食品衛生法。営業許可の申請→施設の確認→許可 |
| 置く人 | 美容師2人以上なら管理美容師 | 食品衛生責任者 |
| 主な基準 | 作業室の面積、消毒設備、照明・換気 | 区画、手洗い設備、洗浄設備、冷蔵設備など |
保健所(食品衛生の担当)への相談メモの記入例
- 店名・所在地・営業者:Hair〇〇(東京都〇〇区〇〇)、個人事業、2027年4月開業予定
- 提供するもの:ドリップコーヒー、紅茶、アイスドリンク(製氷機の氷を使用)、仕入れた個包装の焼き菓子
- 調理の工程:豆を挽いて抽出、茶葉を湯で抽出、氷とシロップを加える。加熱調理と盛り付けはしない
- 提供の相手と料金:施術のお客様には無料で1杯。カフェ利用の一般のお客様には1杯600円
- 持ち帰り:ふた付きのカップで販売する予定
- 設備:調理場内の流水式手洗い、洗浄用シンク、食品専用の冷蔵庫、給湯器、製氷機
- 区画:美容室の作業室とは間仕切りと扉で分ける(平面図を添付)
- 食品衛生責任者:オーナーが養成講習会を受講予定
- 聞きたいこと:無料提供の扱い、客席を待合と兼ねてよいか、シンクの槽の数、確認検査を美容所の検査と近い日にできるか
許可が下りる前に営業を始めることはできません。美容所側の手続きの流れは保健所の検査と基準で確認できます。
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調理場と作業室はどう分けるか — 薬剤と毛髪が食品に入らない動線
美容室の作業室・シャンプー台とカフェの調理場を壁や間仕切りで分け、薬剤や毛髪が食品に触れない動線にすることが設計の前提です。
- 調理場の区画:壁、間仕切り、扉で、食品を扱わない場所と分けます。客席を美容室の待合と兼ねる場合の扱いは、図面で保健所に確認します。
- 手洗い設備:従業者が手指を洗浄・消毒できる流水式の手洗い設備を調理場に置きます。シャンプー台や薬剤の流しを手洗いに使いません。
- 洗浄設備と給湯:食器や器具を洗うシンクと給湯を用意します。シンクの槽の数などの細目は条例で差があるため、設計前に確認します。
- 保管場所と冷蔵庫:食品とカラー剤・パーマ剤・洗剤の保管場所を分けます。冷蔵庫は食品専用にし、扉に表示します。
- 換気とにおい:パーマ液やカラー剤のにおいが調理場と客席に流れないよう、排気の位置と空気の流れを決めます。
- 物件の条件:賃貸物件では、飲食店としての利用、排水、排気ダクトの条件を貸主に確認します。
図面は美容所と飲食店の両方の担当に見せます。書き方は保健所に出す図面の書き方、物件の段階で確かめる項目は美容室が可能な物件かを見分ける方法で確認できます。
何杯売れば赤字にならないか — 専任と兼任で分けて計算する
赤字にならない杯数は「月の固定費÷1杯の粗利÷月の営業日数」で出し、専任のスタッフを置くか、受付やアシスタントが兼ねるかで大きく変わります。
試算の前提(仮定):ドリンクの平均単価600円(税抜)、原価率30%、月25日営業。専任のパートは時給1,200円×1日6時間で月18万円。光熱費・容器・消耗品は月4.5万円。設備(エスプレッソマシン・製氷機・冷蔵庫・シンクと給湯の工事)を150万〜300万円とし、60か月で割って月2.5万〜5万円。美容室の客単価は8,500円、粗利率は88%。
| 計算する項目 | 計算式 | モデルの結果 |
|---|---|---|
| 1杯の粗利 | 単価×(1−原価率) | 600円×70%=420円 |
| 月の固定費(専任を置く) | 人件費+消耗品+設備の月割り | 18+4.5+2.5〜5=25万〜27.5万円 |
| 赤字にならない杯数(専任) | 固定費÷420円÷25日 | 1日約24〜26杯 |
| 赤字にならない杯数(兼任) | (消耗品+設備の月割り)÷420円÷25日 | 1日約7〜9杯 |
| 1日20杯・専任の月の収支 | 20杯×25日×420円−固定費 | 21万円−25万〜27.5万円=マイナス4万〜6.5万円 |
| その赤字を美容室で取り返す新規客の数 | 月の赤字÷(客単価×美容室の粗利率) | 4万〜6.5万円÷7,480円=月約6〜9人 |
カフェがきっかけの新規客が月にこの人数を超えるか、再来で取り返せるかが、続けるかどうかの判断材料です。兼任にする場合は、カフェに取られる時間で施術の予約枠が減らないかも確かめます。カフェを店の特徴として打ち出すなら、差別化の考え方に沿って、誰に何が伝わるかを先に言葉にしておきます。
衛生管理は誰が何を記録するか — 食品衛生責任者と記録表
営業許可を受けるには、施設ごとに食品衛生責任者を1人置き、HACCPに沿った衛生管理の計画を作って記録を続けます。食品衛生責任者とは、施設の衛生管理の中心になる人のことです。オーナーが講習を受けてなることもでき、交代したときは保健所に届け出ます。小規模な飲食店は、業界団体の手引書に沿って温度管理・手洗い・清掃の方法を決め、毎日記録します。
| 日付 | 冷蔵庫の温度(開店時・閉店時) | 手洗い・消毒 | 従業者の体調 | 清掃・確認者 |
|---|---|---|---|---|
| 11月4日 | 4℃・6℃ | 開店前と施術から移るたびに実施 | 全員異常なし | 製氷機・シンク/〇〇 |
| 11月5日 | 4℃・5℃ | 同上 | アシスタント1人が発熱のため調理に入らない | シンク/〇〇 |
上の表を記録の様式として使います。管理する温度と点検の項目は、使う手引書に合わせて決めます。下痢・発熱・嘔吐などの症状がある人や手に傷がある人は、調理と盛り付けをしないルールにします。
カフェ併設で実際につまずく6つの点 — 起きる場面と防ぎ方
つまずくのは、美容室の道具や習慣がそのまま食品の側に入り込む場面と、2つの手続き・2つの税率が重なる場面です。
- 冷蔵庫にカラー剤を一緒に入れる:薬剤を冷蔵保管している店では、食品と同じ冷蔵庫を使いがちです。食品専用の冷蔵庫を分け、扉に「食品専用」と表示します。
- 施術の手のまま食器を扱う:美容師が施術と調理を兼ねると、手指に薬剤が残ったまま食品に触れるおそれがあります。調理に移る前の手洗い・消毒、エプロンの使い分け、毛髪の付いた服で調理場に入らないことを決めます。
- 2つの検査の日程がずれて開業が遅れる:美容所の検査と飲食店の確認は担当が別です。同じ図面で両方に相談し、検査日を近づけられるかを最初の相談で聞きます。
- テイクアウトと店内の税率を同じにしている:店内飲食は10%、持ち帰りは8%です。提供のときに店内か持ち帰りかを確かめ、レジのボタンを分けます。持ち帰りが大半なら、店内で飲む場合は申し出てもらう掲示で確かめる方法もあります。
- 賃貸借で飲食の利用が認められていない:契約の用途が美容室だけだと、カフェ営業ができないことがあります。排水と排気の条件も含めて、設計前に貸主の承諾をとります。
- お酒をそのまま持ち帰り用に売る:未開栓のお酒の販売には酒類販売業免許が要ります。店内で出すだけなら飲食店営業の範囲で考え、出すのは施術後にするなど店のルールを決めます。
カフェ併設を決める前に、次の8項目を確認してください。
- やりたい出し方を判断表に当てはめ、必要な手続きを書き出した
- 相談メモと平面図を持って、保健所の食品衛生の担当に相談した
- 図面を美容所と飲食店の両方の担当に見せ、検査の日程を相談した
- 調理場の区画、流水式の手洗い、食品専用の冷蔵庫を図面に入れた
- 賃貸借契約で飲食店としての利用・排水・排気が認められているか確認した
- 専任か兼任かを決め、赤字にならない杯数を計算した
- 食品衛生責任者を決め、記録表の様式と担当を決めた
- テイクアウトと店内の税率をレジで分けた
よくある質問
美容室でお客様にコーヒーを無料で出すのに許可は要りますか?
調理の有無や出し方によって扱いが変わる可能性があるため、一律には言えません。料金に含めたメニューにする場合や、施術しない人にも出す場合は許可が必要になる可能性が高くなります。今の出し方を説明して、管轄の保健所に確認してください。
食品衛生責任者は美容師のオーナーでもなれますか?
なれます。調理師や栄養士などの資格がなくても、養成講習会を修了すれば食品衛生責任者になれます。ただし施術で忙しい時間帯にカフェの衛生管理が手薄にならないよう、実際に現場で管理できる人を選びます。
美容室の待合でカフェの客席を兼ねてもよいですか?
客席の扱いは、美容所の作業室と待合の区分、飲食店の施設基準の両方に関わります。調理場は区画する必要がありますが、客席の配置は自治体で判断が分かれることがあるため、図面で保健所に確認してください。
テイクアウトと店内で消費税の税率は変わりますか?
変わります。店内の飲食設備で飲む場合は標準税率の10%、持ち帰りは軽減税率の8%です。税率は提供するときに店内か持ち帰りかを確かめて決めるため、レジの登録とお客様への確認の仕方を決めておきます。
お酒をサービスで出すときに注意することはありますか?
店内でお酒を出す場合も飲食店営業の範囲で考え、許可の要否を保健所に確認します。施術前の飲酒は体調や判断に影響することがあるため、出すのは施術後にするなど、店のルールを決めておきます。
出典:食品衛生法第4条・第51条・第54条・第55条(e-Gov法令検索「食品衛生法」)、食品衛生法施行規則(e-Gov法令検索「食品衛生法施行規則」)、厚生労働省「営業規制(営業許可、営業届出)に関する情報」(厚生労働省)、厚生労働省「食品衛生法の改正について」(厚生労働省)、酒税法第9条(e-Gov法令検索「酒税法」)、国税庁「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」(国税庁)、建築基準法第6条・第87条。施設基準の細目、手数料、許可の有効期間は自治体で異なるため、管轄の保健所に確認してください。試算の数字は説明のための仮定です。
次にやることは、出したいメニューと出し方を相談メモに書き、平面図を持って保健所の食品衛生の担当に相談することです。開業に関わる法律の全体像は開業に関わる法律一覧で確認できます。
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