美容室で税金・社会保険料が払えないとき|猶予の選び方の判断表・12回分納の延滞税試算・相談の文例

美容室の消費税・所得税・住民税・社会保険料が期限までに払えないときは、放置せずに納期限の前か直後に税務署・市区町村・年金事務所へ相談し、納期限から6か月以内に申請できる「換価の猶予」や、災害・病気・事業の大きな損失などのときの「納税の猶予」を使って分割で納めます(国税徴収法第151条の2、国税通則法第46条)。猶予が認められると差押えを避けられ、換価の猶予などの猶予期間中は延滞税・延滞金が年1.3%(2026年)に軽くなります。

この記事では、状況別にどの猶予を申請するかの判断表、消費税120万円を12回で納める店の延滞税の試算、相談に持っていく月次の収支と電話の文例、融資の返済条件の変更との順番、猶予中につまずく点を整理します(2026年10月時点の情報です)。

目次

結論:税金・社会保険料が払えないときの早見表

相談先は税の種類ごとに違い、どれも「早く相談するほど使える制度が多い」のが共通点です。

払えないもの 相談先 主な制度 延滞税・延滞金(2026年)
消費税・所得税・源泉所得税・法人税(国税) 所轄の税務署(徴収担当) 換価の猶予(納期限から6か月以内に申請)、納税の猶予 2か月以内は年2.8%、その後は年9.1%
個人事業税・法人事業税など(都道府県税) 都道府県税事務所 徴収猶予、換価の猶予 1か月以内は年2.8%、その後は年9.1%
住民税・償却資産税(市区町村税) 市区町村の納税担当 徴収猶予、換価の猶予 1か月以内は年2.8%、その後は年9.1%
健康保険料・厚生年金保険料(法人の店、任意適用している個人の店) 管轄の年金事務所 換価の猶予(納期限から6か月以内に申請)、納付の猶予 3か月以内は年2.8%、その後は年9.1%(督促状の指定期日までに納めればかからない)
国民健康保険料・国民年金保険料(オーナー本人) 市区町村の窓口、年金事務所 国保の減免・徴収猶予、国民年金の免除・納付猶予 市区町村・制度により異なる

延滞税・延滞金の割合は、国税庁「No.9205 延滞税について」、日本年金機構「延滞金について」、市区町村の案内による2026年の割合です。猶予期間中の年1.3%は、平均貸付割合(2026年は0.8%)に0.5%を加えた割合です。

払えないまま放置するとどうなるか — 督促から差押えまで

納期限を過ぎて何もしないと、督促状が届き、その後も納めなければ預金や売掛金などの財産が差し押さえられます。国税は原則として納期限から50日以内に督促状が出され(国税通則法第37条)、督促状を出した日から10日を過ぎても完納されなければ差押えができます(国税徴収法第47条)。その間に電話や文書での催告があり、取引先の金融機関の預金やキャッシュレス決済の入金予定などの売掛金が調べられます。預金や売掛金が差し押さえられると、給与・家賃・仕入れの支払いが止まり、営業を続けること自体が難しくなります。

税金と社会保険料は、自己破産をしても支払い義務がなくならない債権です(破産法第253条第1項第1号)。延滞税・延滞金も積み上がるため、ほかの支払いを優先して税・社会保険料を後回しにする判断はしないでください。

どの猶予を申請するか — 状況別の判断表

理由を問わず資金繰りが苦しいなら換価の猶予、災害・病気・休廃業・事業の著しい損失があるなら納税の猶予が基本です。自店の状況を次の表に当てはめてください。

状況 申請する制度・窓口 条件・数字
国税で、納期限から6か月以内、ほかに国税の滞納がない 換価の猶予(申請)/税務署 一度に納めると事業の継続や生活が難しくなるおそれがあり、納税の誠実な意思がある
直近1年の損益が赤字で、その赤字が前の1年の利益の2分の1を超える 納税の猶予(事業の著しい損失)/税務署 2つの期間の損益計算書(仮決算でよい)を出す。延滞税は免除・軽減
災害・盗難、本人や家族の病気・けが、事業の休廃業 納税の猶予/税務署 事実を示す書類(診断書など)を付ける
国税の納期限から6か月を過ぎた 職権による換価の猶予を税務署に相談 認められる場合がある(国税徴収法第151条)
猶予を受ける額が100万円以下、または期間が3か月以内 担保なしで申請できる 100万円を超えると担保と、財産目録・収支の明細書が要る
住民税・個人事業税・償却資産税 市区町村・都道府県税事務所に徴収猶予・換価の猶予 地方税法第15条・第15条の6。書類は自治体ごとの案内による
健康保険料・厚生年金保険料 年金事務所に換価の猶予・納付の猶予 換価の猶予は納期限から6か月以内に申請
項目 換価の猶予(申請) 納税の猶予
期間 1年以内(延長して最長2年) 1年以内(延長して最長2年)
延長の申請 当初の猶予期間が終わる前に申請 当初の猶予期間が終わる前に申請
担保 原則必要。猶予額100万円以下か期間3か月以内なら不要 原則必要。猶予額100万円以下か期間3か月以内なら不要
延滞税 猶予期間中は軽減(2026年は年1.3%) 理由により全額または一部が免除
根拠 国税徴収法第151条の2 国税通則法第46条

スタッフから天引きした源泉所得税・住民税の特別徴収分、スタッフ負担の社会保険料は、預かったお金です。猶予の相談をする場合も、預かり分を優先して納める姿勢が求められます。オーナー本人の国民健康保険料・国民年金保険料は、市区町村の減免・徴収猶予と国民年金の免除・納付猶予(所得などの要件あり)を確認します。社会保険の仕組みは美容室の社会保険の加入義務にあります。

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いくらずつ払えば足りるか — 消費税120万円を12回で納める店の試算

分割の金額は、毎月の入金から支出と生活費を引いて残る額で決めます。相談には次の形の月次の収支を持っていくと、猶予の判断と分割の金額が決まりやすくなります。

試算の前提(仮定):個人事業の美容室で、セット面4・スタイリスト3人+アシスタント1人、月商300万円。2027年3月31日が納期限の消費税120万円を一度に払えず、換価の猶予を申請して4月から12か月、毎月末に10万円ずつ納める。延滞税の割合は2026年の割合(猶予中1.3%、猶予なしは2か月以内2.8%・以後9.1%)が続くと仮定し、端数処理は省略。

月次の収支(記入例) 月額
売上の入金(現金・カード・決済サービス) 3,000,000円
人件費(給与・会社負担の社会保険料など) −1,350,000円
家賃 −250,000円
材料・店販の仕入 −300,000円
水道光熱・通信・広告・リースなど −500,000円
融資の返済(元金+利息) −300,000円
オーナーの生活費 −200,000円
納付に回せる額 100,000円

この計画で12回払うと、延滞税は猶予を受けた場合で約8,500円、猶予を受けずに同じ日に払った場合で約47,200円です。たとえば12回目の10万円は366日分で、猶予中なら10万円×1.3%×366÷365=約1,300円、猶予なしなら2か月分が2.8%・残りが9.1%で約8,100円になります。猶予があれば差押えもされません。融資の返済を元金据置にできれば、毎月の返済が利息だけになる分、分割の期間を短くできます。

相談の手順と準備する書類 — 「いつ・いくらなら払えるか」を示す

相談では、払えない理由と、いつ・いくらずつなら払えるかの計画を示します。

  1. 払えないものを一覧にする

    税・保険料の種類、金額、納期限、納付書の有無を並べ、どこに相談するかを分けます。

  2. 今後6〜12か月の資金繰り表を作る

    上の記入例の形で、月ごとの入金見込み、給与・家賃・仕入れ・返済、手元の預金残高を出し、毎月いくら納められるかを計算します。

  3. 納期限の前か直後に電話して相談日を決める

    税務署・市区町村・年金事務所のそれぞれに、払えない見込みであることと相談したい旨を伝えます。

  4. 申請書と添付書類を出す

    猶予の申請書に、財産と収支の状況を示す書類(国税では財産収支状況書。猶予額が100万円を超える場合は財産目録と収支の明細書)、分割の計画、担保が必要な場合はその書類を付けます。

  5. 認められた分割の計画どおりに納める

    計画どおりに納められなくなりそうなときは、納付日の前に再度相談します。

税務署の徴収担当に電話するときの文例

  • 個人で美容室を営んでいる〇〇(屋号〇〇)と申します。3月31日が納期限の消費税120万円について、分割での納付を相談したく電話しました。
  • 一度に納めると、4月の給与と家賃が払えなくなります。毎月の収支を出したところ、毎月10万円ずつ12か月で納める計画なら続けられます。
  • 換価の猶予の申請を考えています。相談の日時と、持っていく書類(収支の資料、通帳の写しなど)を教えてください。
  • スタッフの給与から預かっている源泉所得税は、期限どおりに納めています。

資金繰りの立て直しとの順番 — 税・保険料の相談と融資の返済条件の変更を並行する

税・社会保険料の猶予は、資金繰りを立て直す間の時間を作る手段です。猶予を受けている間に、融資の返済条件の変更や固定費の見直しを並行して進めます。

順番 やること 理由
1 スタッフから預かった源泉所得税・住民税・社会保険料を確保する 預かり分の未納は罰則の対象にもなり得る
2 税・社会保険料の猶予を各窓口に相談する 差押えを避け、延滞税・延滞金を軽くする
3 融資の返済条件の変更(元金の据置・返済期間の延長)を金融機関に相談する 毎月の返済額を減らして納付の原資を作る
4 家賃・リース・広告費などの固定費を見直す 毎月の支出の水準そのものを下げる
5 売上の立て直し(再来・単価・空き枠)に取り組む 猶予期間が終わった後も払える状態にする

金融機関への返済条件の変更の相談は美容室の融資返済が苦しいときの相談手順で確認できます。消費税が大きな負担になりやすい理由と、2割特例の終了後の納税額の見込みは美容室の2割特例終了後の消費税で解説しています。

猶予中につまずく5つの点 — 次の納期限・窓口・6か月の数え方

猶予が認められた後に多いのは、別の税の納期限を落として計画が崩れるケースです。

  1. 猶予中に次の税を滞納する:所得税の予定納税(7月・11月)、源泉所得税、住民税などを新たに滞納すると、猶予が取り消されることがあります。防ぎ方:猶予の分割と、猶予期間中に来るほかの納期限を同じ資金繰り表に並べます。
  2. 1つの窓口だけに相談して終わったと思う:国税・地方税・社会保険料は窓口も制度も別です。防ぎ方:払えないものの一覧に、相談先と相談日の列を作り、全部が埋まるまで続けます。
  3. 6か月の期限を数え違える:申請による換価の猶予は納期限から6か月以内です。個人の消費税(3月31日納期限)なら9月30日、所得税(3月15日)なら9月15日が目安です。防ぎ方:納期限の日付を一覧に書き、その6か月後の日を並べて書きます。
  4. 分割の納付日に払えず、連絡もしない:連絡なく遅れると、猶予の取消しや差押えに進むことがあります。防ぎ方:払えないと分かった時点で、納付日より前に担当者に電話します。
  5. 今年の予定納税や中間申告をそのまま払う:売上が前年より大きく落ちた年は、所得税の予定納税の減額申請(7月15日まで、第2期分のみなら11月15日まで)や、消費税の中間申告を仮決算で行うことで、納める額を実態に合わせられます。防ぎ方:6月と10月に今年の所得の見込みを出します。

税金・社会保険料が払えないと分かったら、次の7項目を確認してください。

  • 払えない税・保険料の種類、金額、納期限、相談先を一覧にした
  • スタッフから預かった源泉所得税・住民税・社会保険料を優先して確保した
  • 月次の収支を出し、毎月納められる額を決めた
  • 判断表で、換価の猶予か納税の猶予かを決めた
  • 申請の期限(納期限から6か月以内)の日付を確認した
  • 猶予期間中に来るほかの税の納期限を資金繰り表に入れた
  • 融資の返済条件の変更を金融機関に相談する準備をした

よくある質問

納期限を過ぎてしまいましたが、今からでも猶予を申請できますか?

国税の申請による換価の猶予は、納期限から6か月以内なら申請できます。6か月を過ぎていても、税務署長の職権による換価の猶予が認められる場合があるため、まず税務署に相談してください。

猶予を受けるには担保が必要ですか?

原則として必要ですが、猶予を受ける金額が100万円以下の場合や、猶予期間が3か月以内の場合などは不要です。担保として提供できる財産がない場合も、相談のうえで不要とされることがあります。

分割で納めている間も延滞税はかかりますか?

かかりますが、換価の猶予などの猶予期間中は軽減され、2026年は年1.3%です。猶予を受けずに遅れた場合は、2か月以内が年2.8%、その後は年9.1%になります。

社会保険料が払えないときも、税務署に相談すればよいですか?

社会保険料の窓口は年金事務所です。換価の猶予や納付の猶予の申請も年金事務所に出します。税金と社会保険料は窓口が別なので、それぞれに相談します。

融資の返済と税金の支払いは、どちらを先に相談すべきですか?

並行して進めます。税・社会保険料は自己破産でも免除されず、差押えが早いため、猶予の相談は納期限の前後すぐに行います。そのうえで金融機関に返済条件の変更を相談し、納付と返済の両方が続けられる計画を作ります。

出典:国税徴収法第47条・第151条・第151条の2(e-Gov法令検索「国税徴収法」)、国税通則法第37条・第46条(e-Gov法令検索「国税通則法」)、租税特別措置法第94条、地方税法第15条・第15条の6、破産法第253条、国税庁「No.9206 国税を期限内に納付できないとき」(国税庁)、国税庁「No.9205 延滞税について」(国税庁)、日本年金機構「厚生年金保険料等の猶予」(日本年金機構)・「延滞金について」(日本年金機構)、世田谷区「延滞金の割合」(世田谷区)。

払えない見込みが分かったら、今日のうちに払えない税・保険料を一覧にし、記入例の形で月次の収支を出してから各窓口へ電話することから始めてください。資金繰りの危険サインの見分け方は美容室が潰れる確率より先に見るもの、毎月の資金の出入りの把握は美容室の資金繰り表の作り方で確認できます。

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この記事を書いた人

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