美容室の2店舗目の資金調達|必要額の見積もり・融資の申込み方・1店舗目の決算で見られる点と返済比率の試算

美容室の2店舗目の資金は、出店費用に新店が黒字になるまでの赤字と採用・研修の人件費を加えて総額を出し、1店舗目の運転資金を残して自己資金と借入に分けます。融資では決算書2期分から、既存と新規の返済を利益と減価償却費で払えるかが見られます。

必要資金の内訳、自己資金と借入の分け方、公庫・制度融資・銀行の使い分け、決算書で見られる点、既存の借入を含めた返済比率の試算、出店前の資金繰りを順に整理します(2026年10月時点の情報です)。

目次

結論:2店舗目の資金調達で先に決める5つのこと

2店舗目の資金調達は、総額、自己資金と借入の分け方、借入先、返済比率、出店前後の資金繰りの5つを決めてから動くと失敗が減ります。物件を先に押さえてから資金を考える順番だと、条件の悪い借入や手元資金の使いすぎにつながります。

決めること 考え方 確認に使うもの
① 必要資金の総額 設備資金+新店の運転資金+1店舗目の売上減の備え 見積書、月別の資金繰り表
② 自己資金と借入の分け方 手元資金から1店舗目の運転資金の備えを除いた残りを出す 預金残高、納税の予定
③ 借入先 公庫(生活衛生貸付など)、制度融資、銀行・信用金庫 公庫の支店、自治体の窓口、取引銀行
④ 返済比率 既存と新規の年間返済額÷返済原資(利益+減価償却費) 決算書・確定申告書2期分
⑤ 出店前後の資金繰り 支払いの時期と融資実行の時期をそろえる 工事の支払い条件、融資のスケジュール

そもそも2店舗目を出してよい段階かは、資金より先に判断が要ります。売上・人材・オーナーの時間の条件は2店舗目を出す判断基準で確認してください。

2店舗目に必要な資金の内訳 — 設備資金と運転資金

2店舗目の資金は、物件・内装・機器などの設備資金と、開店後の赤字や人件費を支える運転資金に分けて見積もります。1店舗目の開業と違うのは、採用・研修の費用と、1店舗目の売上が一時的に落ちる分を見込む必要がある点です。

区分 主な項目 2店舗目で見落としやすい点
設備資金:物件取得 保証金、仲介手数料、前家賃 工事期間中の家賃。契約前に家賃の発生日を交渉する
設備資金:内装工事 設計、工事、看板、給排水・電気容量の工事 1店舗目と同じ仕様にこだわると割高になる
設備資金:機器・什器 シャンプー台、セット椅子、ミラー、促進機 リース・中古との組み合わせで借入額が変わる
運転資金:新店の赤字補てん 黒字になるまでの家賃・人件費・材料費 1店舗目の顧客がそのまま新店に来るわけではない
運転資金:採用・研修 求人広告、紹介手数料、開店前の研修期間の給与 開店前から給与と社会保険料が発生する
運転資金:1店舗目の売上減 オーナーやスタイリストが新店に移る分の売上 指名客の予約の受け皿を決めておく
運転資金:広告・販促 予約サイトの掲載、チラシ、オープン告知 開店前の告知は開店日より先に支払う

融資の申込みでは、設備資金と運転資金を分けて書きます。混ぜると使いみちの説明があいまいになり、審査で確認に時間がかかります。分け方は設備資金と運転資金の分け方を参考にしてください。

自己資金と借入の比率はどう考えるか — 1店舗目の運転資金を残した残りを出す

2店舗目では、手元資金をすべて自己資金に入れないことが大切です。1店舗目の固定費と返済の数か月分、近く払う税金を残し、それを超える分を自己資金に、足りない分を借入にします。

2店舗目で最も避けたいのは、新店の赤字で1店舗目の支払いまで詰まることです。自己資金を多く入れれば借入と返済は減りますが、手元資金が薄くなり、想定外の赤字に耐える力が落ちます。出せる自己資金は次の式で出します。

出せる自己資金の計算式

  • 出せる自己資金=現預金−(1店舗目の月の固定費+月の返済額)×残す月数−近く払う税金
  • 借入額=2店舗目の必要資金の総額−出せる自己資金

例えば(仮の設定)、現預金900万円、1店舗目の固定費と返済が月250万円、残す月数を2か月、近く払う税金を100万円とすると、出せる自己資金は900万円−500万円−100万円で300万円です。2店舗目の総額が1,800万円なら、借入は1,500万円になります。数字は自分で置いた仮定で、残す月数は店の売上の波に合わせて決めます。

個人事業の場合は、事業用と生活用の預金が混ざりやすいため、生活費の数か月分も別に残します。創業時の融資では自己資金の割合が注目されますが、2店舗目では1店舗目の実績があるため、割合よりも返済を続けられるかのほうが重く見られます。

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公庫・制度融資・銀行の使い分け

美容室の2店舗目の設備資金は、日本政策金融公庫の美容業向け「一般貸付(生活衛生貸付)」が基本の候補です。1店舗目の開業からおおむね7年以内なら「新規開業・スタートアップ支援資金」も対象になり得ます。自治体の制度融資や取引銀行は、公庫と組み合わせて使います。

借入先・制度 対象・条件 限度額・返済期間 2店舗目での使いどころ
公庫 一般貸付(生活衛生貸付) 美容業など生活衛生関係の事業を営む方。使いみちは設備資金 美容業7,200万円、13年以内(据置1年以内、返済期間7年超は2年以内) 内装・機器の中心。設備資金の申込みが500万円を超えると都道府県知事の推せん書が要る
公庫 振興事業貸付 振興計画の認定を受けた生活衛生同業組合の組合員 設備資金1億5,000万円(20年以内)、運転資金5,700万円(10年以内) 組合員なら設備と運転資金の両方
公庫 新規開業・スタートアップ支援資金 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方 7,200万円、設備資金20年以内・運転資金10年以内(うち据置5年以内) 1店舗目の開業から7年以内なら設備・運転資金の候補
制度融資(信用保証協会の保証付き) 自治体ごとに要件を定める 自治体・制度による 地元の金融機関との取引を始めるきっかけ
銀行・信用金庫の融資 金融機関が独自に審査 金融機関による 決算の実績と取引の積み上げが前提

表から読み取りたいのは、公庫の生活衛生貸付は設備資金が中心で、運転資金の借り方は別に考える必要がある点です。組合員でない店が新店の運転資金をどの制度で借りられるかは、公庫の支店で確認します。推せん書の発行は、多くの都道府県で生活衛生営業指導センターが窓口になっています。

制度融資の仕組みと申込みの流れは制度融資と信用保証協会にまとめています。公庫と民間を組み合わせると、次の出店や借り換えのときに相談できる先が増えます。

1店舗目の決算書で見られる点

2店舗目の融資では、1店舗目の決算書(個人事業なら確定申告書と青色申告決算書)2期分から、利益が出ているか、借入を予定どおり返しているか、資産より負債が多くないかが見られます。公庫は、事業を営む方の申込みに直近期と前期の確定申告書一式を求めています。

見られる点 決算書のどこを見るか 申込み前に整えること
売上の推移 2期の売上高の比較 落ちた期があれば理由を説明できるようにする
本業の利益 営業利益(個人事業は所得) 一時的な費用は内訳を示す
返済の元手 利益+減価償却費 次の章の返済比率で確かめる
借入の返済状況 借入金残高の減り方、遅れの有無 返済の遅れをなくしておく
財務の健全さ 純資産(債務超過でないか) 法人は代表者への貸付金や仮払金を整理する
税・社会保険料 未払いの税金・保険料 滞納があれば解消してから申し込む

法人で決算から6か月以上たっている場合は、公庫から試算表の提出も求められます。月次の数字を税理士と早めに締めておくと、申込みが止まりません。

数字以外で問われやすいのが、新店を任せる人です。美容師法第12条の3により、美容師が常時2人以上いる美容所には美容所ごとに管理美容師を置く必要があり、開設者自身が管理美容師になれるのは主として管理する1店舗だけです。新店の管理美容師の目途は事業計画の説得力に直結します。資格の取り方は開業に管理美容師は必要かを確認してください。

既存借入を含めた返済比率の試算

返済比率は「既存と新規の借入の年間返済額÷返済原資」で出します。返済原資は、法人なら税引後利益+減価償却費、個人事業なら所得から税金・社会保険料・生活費を引き、減価償却費を足した額です。

減価償却費を足すのは、帳簿上は費用でも実際にはお金が出ていかないためです。返済比率に公的な基準はありません。売上が少し落ちても返済が手元資金を削らない水準かで判断します。

試算 — 2店舗目で1,500万円を借りた場合の返済比率(仮の設定)

法人の美容室で、1店舗目の税引後利益を年360万円、減価償却費を年120万円(返済原資480万円)、既存の借入の年間返済を180万円と置きます。2店舗目のために1,500万円を期間10年・年2.0%・据置なしの元利均等で借りると、返済は月約13.8万円、年約166万円です。新店の返済原資は1年目−120万円(赤字)、2年目+120万円、3年目+240万円と置きます。

時期(仮の設定) 返済原資(1店舗目+新店) 年間返済額(既存+新規) 返済比率
出店前 480万円 180万円 38%
出店1年目 360万円 346万円 96%
出店2年目 600万円 346万円 58%
出店3年目 720万円 346万円 48%

出店1年目は返済原資のほぼ全部が返済に回り、1店舗目の売上が少し落ちただけで手元資金が減っていきます。この年をどう乗り切るかを、借り方で調整します。

  1. そのまま(10年・据置なし):新規分の1年目の返済は約166万円で、出店1年目の返済比率は96%です。
  2. 返済期間を13年に延ばす:新規分の返済は年約131万円になり、返済比率は86%に下がります。
  3. 据置1年(1年目は利息のみ):1年目の新規分は利息の約30万円だけになり、返済比率は58%です。

据置期間を使うと1年目は楽になりますが、据置が終わると元金の返済が始まり、毎月の返済額はそのぶん上がります。数字は自分で置いた前提による試算で、実際の金利と期間は審査で決まります。返済額の出し方と据置の使い分けは融資の返済計画の立て方で詳しく説明しています。

出店前の資金繰り — 支払いの時期と融資実行の時期をそろえる

出店前は、保証金、内装の着手金、機器代、採用費が融資の実行より先に出ていくことがあります。月別の資金繰り表で支払いと入金の時期を並べてから、物件を契約します。

  1. 物件の申込み前に資金繰り表をつくる

    1店舗目と新店を合わせた12か月分の資金繰り表をつくり、最も残高が減る月を確かめます。

  2. 物件の目途がついたら融資を相談する

    設備資金の申込みには見積書が要ります。内装・機器の見積もりがそろった段階で、公庫や金融機関に相談します。

  3. 内装の支払い条件を確認する

    着手金・中間金・残金の時期を確認し、融資の実行前に払う分は手元資金から出す前提で組みます。

  4. 開店前の人件費と広告費を入れる

    研修期間の給与、社会保険料、オープン告知の費用は、売上がない時期の支出です。

  5. 1店舗目の納税と重ならないか確かめる

    消費税や法人税・所得税の中間納付・予定納税の時期と、出店の支払いが重ならないようにします。

  6. 開店後3か月は毎月、計画と実績を比べる

    新店の売上が計画を下回ったら、広告や人員配置を早めに見直します。

資金繰り表のつくり方は資金繰り表の作り方にまとめています。

2店舗目の融資を申し込む前に、次の8項目を確認してください。

  • 必要資金を設備資金と運転資金に分け、採用・研修費と1店舗目の売上減を入れた
  • 手元に残す1店舗目の運転資金と納税額を決めてから自己資金の額を出した
  • 決算書・確定申告書2期分と、必要なら直近の試算表を用意した
  • 既存と新規の返済比率を、出店1年目が赤字の前提で試算した
  • 据置期間や返済期間の希望を、試算の結果から決めた
  • 設備資金が500万円を超える場合の推せん書の窓口を確認した
  • 新店の管理美容師(美容師が常時2人以上の場合)の目途がある
  • 内装の支払い条件と融資の実行時期を資金繰り表で並べた

よくある質問

2店舗目でも日本政策金融公庫の創業向けの融資は使えますか?

1店舗目の開業からおおむね7年以内なら対象になり得ます。新規開業・スタートアップ支援資金は事業開始後おおむね7年以内の方も対象としているためで、実際に使えるかは公庫の支店で確認します。

1店舗目の借入が残っていても2店舗目の融資は受けられますか?

受けられます。既存の借入を予定どおり返していること、既存と新規を合わせた返済を利益と減価償却費でまかなえることを、決算書と返済計画で示せるかが判断の分かれ目です。

2店舗目にも管理美容師は必要ですか?

美容師が常時2人以上いる店なら必要です。管理美容師は美容所ごとに置く必要があり、開設者自身がなれるのは主として管理する1店舗だけです(美容師法第12条の3)。

1店舗目の決算が赤字だと2店舗目の融資は受けられませんか?

受けられないとは限りませんが、厳しくなります。赤字が一時的な費用によるものか、直近の試算表で利益が戻っているかを説明できない場合は、1店舗目の立て直しを先にします。

個人事業のまま2店舗目を出してもよいですか?

出せます。個人事業でも複数の店を経営でき、融資も申し込めます。ただし利益が増えると所得税の負担が重くなるため、出店の前後で法人化を検討する店もあります。

出典:日本政策金融公庫「一般貸付(生活衛生貸付)」「振興事業貸付」「新規開業・スタートアップ支援資金」「融資制度一覧(国民生活事業)」「小規模事業者/個人事業主の方(必要書類)」「創業予定の方(推せん書)」、美容師法第11条・第12条の3(e-Gov法令検索「美容師法」)。個別の判断は日本政策金融公庫の窓口、取引金融機関、税理士に確認してください。

2店舗目の資金調達は、1店舗目の決算書から返済原資を出し、新店の1年目が赤字でも返済が続くかを試算するところから始めてください。そのうえで物件と借入先の相談に進むと、手元資金を残したまま出店できます。

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この記事を書いた人

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