美容室のスタイル写真を他店や個人が無断で使うことは、撮影した人(または店)の著作権のうち複製権と公衆送信権の侵害にあたり、削除や損害賠償を求められます(著作権法第21条・第23条・第112条)。見つけたら、相手に連絡する前に掲載ページの画面とURLを日時付きで保存し、相手への削除依頼(期限は7日が目安)、Instagramや予約サイトなど運営者への報告、それでも消えなければ弁護士への相談の順に進めます。
見つけた状況から対応を決める判定表、写真の権利が誰にあるか、発見から削除までの日程の例、そのまま使える依頼文、運営者への報告と発信者情報の開示、対応でつまずく点、再発を防ぐ予防策を、店側の立場で整理します(2026年10月時点の情報です)。
結論:見つけた状況で決める対応の判定表
どの対応から始めるかは、相手が誰か、どこに載っているか、写真の権利者が誰かで決まります。どの行でも、最初にやるのは証拠の保存です。
| 見つけた状況 | 最初の対応 | 応じないとき |
|---|---|---|
| 他店や個人が自店の写真を自分の作品として載せていて、相手が分かる | DMかメールで削除を依頼(期限7日) | 載っているSNSや予約サイトの運営者に報告 |
| 相手が匿名のアカウントで、連絡しても返事がない | 運営者の著作権侵害の報告窓口から申し立てる | 損害賠償を求めるなら弁護士に相談し、発信者情報の開示を検討 |
| 予約サイトの他店のページに使われている | 予約サイトの運営会社に、自店の公開ページのURLを添えて連絡 | 相手の店にも直接依頼 |
| 検索結果に出るまとめサイトやブログに載っている | サイトの運営者に連絡し、Googleの著作権侵害の削除申立ても行う | 弁護士に相談 |
| 写真を撮ったのが外部のカメラマン | 権利者のカメラマンに連絡し、本人か委任を受けた店が申し立てる | カメラマンと一緒に弁護士に相談 |
| 退職したスタッフが自分の作品集として使っている | 在職中の取り決めを確認し、話し合いで使える範囲を決める | 取り決めにより削除を依頼 |
| モデルの顔が写っている | 上の対応に加え、モデル本人に状況を伝えて意向を確かめる | モデル本人も肖像権にもとづいて削除を求められる |
写真を撮るときの掲載許可の取り方は美容室の写真撮影と掲載許可の取り方で解説しています。この記事は、すでに無断で使われてしまったあとの対応に絞ります。
スタイル写真の権利は誰にあるか — 著作権と肖像権を分けて考える
スタイル写真には、写真を撮った人の「著作権」と、写っているモデルの「肖像権」の2つの権利が重なっています。無断転載に対して店が削除を求められるのは主に著作権で、モデルの肖像権はモデル本人の権利です。
| 撮影した人 | 著作権を持つ人 | 注意すること |
|---|---|---|
| オーナー本人(個人事業主) | オーナー本人 | 元データと撮影日の記録を残す |
| スタッフが業務として撮影し、店の名義で公表 | 店(職務著作。著作権法第15条) | 業務で撮った写真の扱いを就業規則などで定めておくと争いを防げる |
| 外部のカメラマン | 原則としてカメラマン | 著作権の譲渡や利用の範囲を契約で決めていないと、店だけでは削除を求めにくい |
| スタッフ個人のアカウントで私的に発信 | スタッフ本人の場合がある | 業務か私的かの区別を決めていないと、権利者があいまいになる |
写真の著作物とは、構図や光の当て方、タイミングなどに撮影者の創作性が表れた写真のことで、スタイル写真も通常はこれにあたります(著作権法第10条第1項第8号)。トリミングや色の加工をして載せれば、撮影者の意に反する改変として同一性保持権(第20条)の問題にもなります。肖像権とは、自分の顔や姿を無断で撮影・公表されない権利のことで、条文ではなく裁判例で認められてきた権利です。モデルが店での掲載に同意していても、他店が使うことまでは同意していません。就業規則に入れておく条項は美容室に就業規則は必要かで確認できます。
発見から削除までの日程 — 期限の数え方の例
証拠の保存は見つけた当日、相手への依頼は翌日、期限は7日、期限を過ぎたら運営者へ、の順で日付を決めておくと、迷わずに進められます。11月10日(火)に見つけた場合の例です。
| 日付 | やること | 残すもの |
|---|---|---|
| 11月10日(火)当日 | 掲載ページを保存し、自店の元データと最初に投稿した日時の画面をそろえる | 画面(URLと時計が写る形)、URL、アカウント名、投稿日、確認日時 |
| 11月11日(水) | 権利者を確定し(撮影者・外部カメラマン)、モデルに連絡。相手に削除を依頼し、期限を11月18日(水)と書く | 送った文面と送信日時 |
| 11月18日(水) | 消えていれば削除を確認して記録。消えていなければ運営者の報告窓口に申し立てる | 削除の確認日時、または申立ての受付画面 |
| 運営者の対応を待つ間 | 同じ写真がほかのアカウントやまとめサイトに広がっていないかを画像で検索する | 見つけたページの一覧 |
| 消えない・繰り返す・損害賠償を求めたいとき | 弁護士に相談し、差止め・損害賠償・発信者情報開示命令の申立てを検討する | ここまでの記録一式 |
相手が匿名で、特定まで考える場合は早めに相談します。時間がたつと、相手を特定するための通信の記録が残っていないことがあるためです。相手に連絡する前に保存するのは、先に連絡すると相手が写真を消して、侵害があった事実を示せなくなることがあるからです。
そのまま使える依頼文 — 相手・運営者・モデルへの連絡
文面には「どの写真か」「どこに載っているか」「権利者であること」「許可していないこと」「いつまでに削除してほしいか」の5つを入れ、事実だけを書きます。【】の部分を自店の情報に置き換えてください。
相手と運営者への依頼文
- 相手へのDM・メール:突然のご連絡失礼いたします。【市名】で美容室【店名】を営んでおります【氏名】と申します。貴アカウント【アカウント名】の【投稿日】の投稿(URL:【URL】)に掲載されている写真は、当店が撮影し、【公開日】に当店のInstagram(URL:【URL】)で公開したスタイル写真です。当店はこの写真の使用を許可しておらず、写真のモデルの方も当店以外での掲載には同意しておりません。恐れ入りますが、【7日後の日付】までに該当の投稿を削除していただけますようお願いいたします。
- 予約サイト・ブログサービスの運営者へ:貴サービスに掲載されている【店名またはアカウント名】のページ(URL:【URL】)の写真【枚数】点は、当店が撮影・公開したスタイル写真で、当店は使用を許可しておりません。当店の公開ページ(URL:【URL】)と撮影時の元データを確認資料としてお送りできます。著作権侵害の申し立てとして、該当写真の削除をお願いいたします。連絡先:美容室【店名】【担当者名】電話【番号】メール【アドレス】
モデルと退職したスタッフへの連絡文
- モデルへ:以前当店でスタイル写真のモデルをしていただいた写真が、当店の知らないところで別のアカウントに使われているのを見つけました。当店から削除を依頼しています。【ご本人として削除を求めたいか、連絡の窓口を当店に任せていただけるか】をお聞かせください。
- 退職したスタッフへ:在職中に店で撮影した【写真の内容】が、【アカウント名】に店名入りで掲載されているのを確認しました。作品集として使う場合は、店名とロゴを消し、モデルの同意がある写真に限っていただくようお願いします。【期日】までに掲載の範囲を相談させてください。
相手が同業者の場合でも、最初から謝罪や賠償を求めるより、まず削除を求めるほうが早く解決しやすくなります。悪質な場合や繰り返される場合は、内容証明郵便での通知や弁護士名での通知を検討します。
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SNS・予約サイトへの報告と発信者情報の開示
相手が応じないときや相手が分からないときは、InstagramやGoogleなどの運営者の著作権侵害の報告窓口から削除を申し立てます。報告できるのは原則として権利者本人か、その代理人です。
- Instagram・Facebook:ヘルプセンターに著作権侵害の報告フォームがあります。自店の元の投稿のURLと、無断で使っている投稿のURLを入力します。
- Googleの検索結果やブログ:Googleには著作権侵害による削除を申し立てる窓口があり、無断転載されたページを検索結果から外すよう求められます。
- 予約サイト・口コミサイト:運営会社の問い合わせ窓口に、掲載店のページの写真が無断転載であることを、自店の公開ページのURLと一緒に連絡します。
- 大規模なSNSの対応体制:2025年4月1日に施行された情報流通プラットフォーム対処法で、総務大臣が指定した大規模なSNS事業者は、削除の申出への対応手続きを整え、運用の状況を公表することが求められています。
相手が匿名のアカウントで損害賠償を求めたい場合は、裁判所に発信者情報開示命令を申し立てて相手を特定する手続きがあります。費用と期間がかかるため、弁護士に見込みを確かめてから進めます。誹謗中傷の口コミで同じ手続きを使う場合の流れは美容室の悪い口コミは削除できるかで解説しています。著作権の侵害は、権利者が告訴すれば刑事罰(10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金。著作権法第119条)の対象にもなります。
退職したスタッフが店の写真を使っている場合 — 取り決めで扱いが決まる
業務として撮影し店の名義で公表した写真は、職務著作として店が権利を持つのが原則ですが、本人が施術した作品でもあるため、使ってよい範囲を在職中に決めておくことが争いを防ぐいちばんの方法です。
| 状況 | 考え方と店の対応 |
|---|---|
| 店のアカウントの投稿を、本人がそのまま転載している | 店の写真の複製・公衆送信にあたる。作品集としての使用を認めるなら条件を伝え、認めないなら削除を求める |
| 本人が私物のスマホで撮り、個人のアカウントで公開していた | 業務か私的かの区別で本人が権利者の場合がある。就業規則や取り決めの内容を確認する |
| 店名やロゴが写ったまま新しい店の宣伝に使っている | 見た人が店を誤認するおそれがある。店名やロゴの部分の削除を求める |
対応でつまずく6つの点 — 証拠・権利者・言い分への備え
削除が進まない原因の多くは、証拠の不足、権利者でない人の申立て、相手の言い分への準備不足です。
- 先に相手に連絡して写真を消される:消されると侵害の事実を示せず、繰り返されたときにも使えません。保存してから連絡します。
- スクリーンショットにURLと日時がない:アプリの画面だけでは、どのページかが分かりません。ブラウザでも開き、アドレスと時計が写る形で保存し、URLは文字でも控えます。
- 権利者でない人が報告する:外部のカメラマンが撮った写真は、店だけで申し立てても権利者として扱われないことがあります。カメラマンに協力を頼むか、委任を受けてから申し立てます。
- 「引用です」と言われて引き下がる:引用は、公正な慣行に合致し、報道・批評・研究などの目的上正当な範囲で行われ、出所を明示する必要があります(著作権法第32条・第48条)。他店が自店の宣伝として作品のように載せる使い方は、これに当たりにくいと伝えます。
- SNSで相手を名指しで非難する:事実でも、公に非難すると名誉の問題やトラブルの拡大につながります。やり取りは当事者と運営者に限ります。
- 反転や加工で別の写真だと言われる:元データと並べ、背景、毛流れ、アクセサリーなど同じ場面だと分かる箇所に印を付けた比較の画像を作っておきます。
無断転載を防ぐ予防策 — 撮影から公開までの記録
無断転載を完全に防ぐ方法はありませんが、権利者だと示せる記録を残すこと、写真にロゴを入れること、定期的に探すことで、見つけたときの対応が早くなります。
| 予防策 | やり方 |
|---|---|
| 元データの保存 | 撮影したままの高解像度のデータを、撮影日・モデル・撮影者ごとにフォルダで保存する |
| 透かし(ロゴ) | 店名やアカウント名を、切り取りにくい位置に薄く入れる |
| 定期的な画像検索 | 代表的なスタイル写真10枚を、画像で検索できる機能で月に1回探す(1枚3分で30分) |
| 撮影の取り決めと同意書 | 業務で撮った写真の帰属、外部カメラマンとの著作権、モデルの掲載先と期間を書面にする |
撮影時の同意書のひな型はカットモデルの募集方法と同意書に、写真掲載の同意の文面は美容室の個人情報の同意文例にあります。アカウントを乗っ取られて写真を悪用される被害を防ぐ設定は、美容室のInstagramが乗っ取られたらで確認してください。
無断転載に備えて、次の8項目を確認してください。
- スタイル写真の元データを、撮影日・モデル・撮影者が分かる形で保存している
- スタッフが業務で撮った写真の扱いを、就業規則や取り決めで定めている
- 外部カメラマンとの契約で、著作権と利用の範囲を決めている
- モデルの同意書に、掲載先と期間を書いている
- 代表的な写真に店名やアカウント名の透かしを入れている
- 月に1回、画像検索で自店の写真が使われていないかを確かめている
- 見つけたときに保存する項目(画面・URL・日時・アカウント名)をスタッフで共有している
- 依頼文と、相談できる弁護士の連絡先を用意している
よくある質問
他店がうちのスタイル写真を自分の店の作品として載せています。違法ですか?
許可なく他人が撮影した写真を自分のアカウントに載せることは、撮影者の複製権と公衆送信権の侵害にあたります。さらに自店の施術であるかのように見せている場合は、景品表示法の不当表示の問題になることもあります。まず証拠を保存して削除を依頼してください。
写真を撮ったスタッフが退職しています。店から削除を求められますか?
スタッフが業務として撮影し、店の名義で公表した写真は、職務著作として店が著作者になるのが原則です(著作権法第15条)。スタッフ個人のアカウントで私的に撮影・公表した写真は、スタッフ本人が権利者になる場合があるため、本人に協力を頼みます。
モデルの顔が写った写真が盗用されました。モデルにも伝えるべきですか?
伝えたほうがよいです。モデルは店での掲載に同意していても、他店での掲載には同意していないため、モデル本人も肖像権にもとづいて削除を求められます。本人の意向を確かめ、店と一緒に削除を依頼します。
削除依頼の期限は何日にすればよいですか?
法律で決まった日数はありませんが、相手が確認して対応するのに足りる7日程度を目安に、日付で書きます。期限を過ぎても削除されなければ、運営者の報告窓口に申し立て、依頼した日と相手の反応を記録しておきます。
透かしを入れておけば盗用は防げますか?
完全には防げません。透かしは切り取りや加工で消されることがありますが、無断使用をためらわせる効果と、転載元が分かる効果があります。元データの保存と定期的な確認と組み合わせて使います。
出典:著作権法第2条・第10条・第15条・第17条・第20条・第21条・第23条・第32条・第48条・第112条・第119条・第123条(e-Gov法令検索「著作権法」)、民法第709条、総務省「インターネット上の違法・有害情報に関する対策(情報流通プラットフォーム対処法)」、Instagramヘルプセンター。個別の判断は弁護士に相談してください。
まずは見つけたページを、URLと日時が分かる形で今日のうちに保存し、判定表で自店の状況の行を選んでから依頼文を送ることから始めてください。これから撮る写真は、撮影のコツと掲載許可の取り方を美容室のスタイル写真の撮り方で確認しておくと、権利の記録まで一度に整えられます。
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