美容室の算定基礎届と月額変更届|歩合率を変えたときの判断表、保険料がいつから変わるかの試算と判定シート

社会保険料のもとになる標準報酬月額は、入社時の見込み額で決まり、毎年4〜6月に支払った報酬の平均を7月1日〜10日に出す算定基礎届で見直し(定時決定)、固定的賃金が変わって3か月の平均が2等級以上変わったときは月額変更届で改定します(随時改定)。歩合給の美容室では、指名や売上で歩合の額が増減しただけでは月額変更届の対象にならず、歩合率や単価を変えたときに対象になる点がいちばんの注意点です。

給与が変わったときに月額変更届が要るかの判断表、歩合率を上げたスタイリストの保険料がいつから・いくら変わるかの試算、4人の店の算定基礎届の判定例、手続きでつまずく点、そのまま使える判定シートとスタッフへの通知文を、給与計算を担当するオーナーの立場で整理します(2026年10月時点の情報です)。社会保険に加入する義務があるかどうかの判断は扱いません。

目次

結論:標準報酬月額の決まり方と届出の早見表

標準報酬月額は「入社したとき」「毎年7月」「固定的賃金が変わったとき」の3つの場面で決まります。届出の名前と期限を先に一覧にします。

場面 届出・期限 根拠・ポイント
入社したとき(資格取得時決定) 被保険者資格取得届・入社から5日以内 月給に見込みの歩合・残業代・通勤手当を加えた見込み額で決める(健康保険法第42条、厚生年金保険法第22条)
毎年の見直し(定時決定) 算定基礎届・7月1日〜7月10日 4・5・6月に支払った報酬の平均。決まった額は9月から翌年8月まで使う(健康保険法第41条、厚生年金保険法第21条)
固定的賃金が変わったとき(随時改定) 月額変更届・条件に当てはまったら速やかに 変わった月から3か月の平均で2等級以上の差。4か月目から改定(健康保険法第43条、厚生年金保険法第23条)
賞与を払ったとき 賞与支払届・支給日から5日以内 1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に保険料率をかける
標準報酬月額の範囲 健康保険58,000円〜1,390,000円、厚生年金88,000円〜650,000円 厚生年金の上限は2027年9月から段階的に引き上げられる予定
報酬に含めるもの 基本給、歩合給、指名料、店販手当、各種手当、残業代、通勤手当 年3回以下の賞与は報酬に含めず、標準賞与額で扱う

そもそも個人経営の店が社会保険に入る必要があるか、法人と個人で何が違うかは美容室の社会保険の加入義務と手続きの流れで確認してください。この記事は、加入している店が毎年行う届出に絞って説明します。

標準報酬月額とは — 報酬を区切りのよい等級に当てはめた金額

標準報酬月額とは、毎月の報酬を一定の幅で区切った等級に当てはめた金額のことで、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料はこの金額に保険料率をかけて計算します。毎月の給与が数千円動くたびに保険料を変えないよう、決まった場面でだけ見直す仕組みです。美容室のスタイリストに多い価格帯は次のとおりです。

報酬月額 標準報酬月額
230,000円以上250,000円未満 240,000円
250,000円以上270,000円未満 260,000円
270,000円以上290,000円未満 280,000円
290,000円以上310,000円未満 300,000円
310,000円以上330,000円未満 320,000円
330,000円以上350,000円未満 340,000円

全体の表は、加入している協会けんぽ・健康保険組合の保険料額表で確認してください。報酬には通勤定期券のように現物で渡すものも含みます。2026年4月分からは健康保険料と一緒に子ども・子育て支援金も徴収されています(子ども・子育て支援金で給与計算はどう変わるか)。

給与が変わったら月額変更届は要るか — 変化の種類別の判断表

月額変更届(随時改定)は、①固定的賃金が変わった、②変わった月から3か月の報酬の平均で2等級以上変わった、③3か月とも支払基礎日数が17日以上ある、の3つをすべて満たしたときに出します。日本年金機構は固定的賃金の変動の例として「請負給、歩合給等の単価、歩合率の変更」を挙げており、歩合の「額」ではなく「決め方」が変わったかで判断します。

給与の変化 月額変更届の対象か どう扱うか
指名や売上が増えて歩合給の額が増えた(率は同じ) 対象外 4〜6月に支払った分が次の算定基礎届に反映される
歩合率、指名料1件の単価、店販手当の率を変えた 対象 変更後の給与を初めて払った月から3か月の平均で判定する
基本給の昇給・降給、技術手当・役職手当の新設や増減 対象 同上
アシスタントがデビューし、固定給のみから固定給+歩合に変わった 対象(給与体系の変更) デビュー後の給与を初めて払った月から判定する
転居で通勤手当の額が変わった 対象 同上。6か月定期は6で割った額で判定する
残業代だけが増えた・減った 対象外 次の算定基礎届に反映される
基本給は上がったが、残業代が大きく減って平均が2等級以上下がった 対象外 固定的賃金の変動の向きと平均の動きが逆のため
昇給の差額を後の月にまとめて払った 対象 差額を払った月を変動月とし、平均は差額を除いて計算する
3か月のうち支払基礎日数が17日未満の月がある 対象外 次の算定基礎届で反映される

指名料を「1件いくら」で払う店がその単価を変えた場合も、歩合給の単価の変更として扱うのが基本です。判断に迷う手当は、変更前に年金事務所へ確認しておくと届出のやり直しを防げます。歩合率や指名料の配分の決め方そのものは美容室の給与・歩合制度の作り方で扱っています。

試算:10月から歩合率を上げたスタイリスト — 1月分から改定、控除が変わるのは2月の給与

次の前提では、標準報酬月額が280,000円から340,000円に3等級上がり、2027年1月分から改定されます。保険料は前月分を給与から控除するため、本人の手取りが変わるのは2027年2月支給の給与からで、本人負担は月8,445円増えます。

試算の前提(仮定):現在の標準報酬月額280,000円(2026年9月分から)。2026年10月支給分から歩合率を10%から15%に変更。報酬は10月335,000円、11月342,000円、12月318,000円で、3か月とも支払基礎日数17日以上。協会けんぽ東京支部(健康保険料率9.85%)、厚生年金保険料率18.3%、40歳未満、子ども・子育て支援金は含めない。保険料は翌月の給与から控除する店とします。

手順 計算・判定
3か月の平均 (335,000+342,000+318,000)÷3=331,666円
新しい等級 330,000円以上350,000円未満のため340,000円。280,000円から3等級上がるので月額変更届を出す
改定月と届出 変更後の給与を初めて払った10月から数えて4か月目の2027年1月分から改定。12月の給与を払ったら速やかに届け出る
厚生年金の本人負担 (340,000−280,000)×9.15%=5,490円の増加
健康保険の本人負担 60,000円×4.925%=2,955円の増加
控除が変わる給与 1月分の保険料を控除する2027年2月支給の給与から。合計で月8,445円増え、店も同じ額を負担する
次の見直し 1月〜6月の改定はその年の8月まで使い、2027年7月の算定基礎届で9月分からの額が決まり直す

40歳以上65歳未満の人は介護保険料(2026年3月分からの協会けんぽの料率1.62%)が加わり、この例では本人負担がさらに60,000円×0.81%=486円増えます。標準報酬月額は傷病手当金や出産手当金、将来の厚生年金の額にも使われるため、本人への説明では負担だけでなく給付への影響も伝えます。

VAULTA|美容室専門のLINE公式サポート

美容室特化型のLINE公式、
無料でつくれます。

集客・リピート・求人のヒントをLINEで配信。美容室に特化した公式アカウントを無料で作成・運用サポートします。

無料でLINE公式を作成する↗

友だち追加だけ。相談・作成は無料です。

算定基礎届はいつ何を書くか — 4〜6月に支払った報酬で7月10日まで

算定基礎届は、7月1日時点の被保険者全員について、4月・5月・6月に支払った報酬と支払基礎日数を書き、7月1日〜10日に年金事務所(事務センター)か加入している健康保険組合へ出す届出です。期限の日が土日祝日にあたる年は翌開庁日になります。

  1. 対象者を確かめる

    7月1日時点の被保険者全員が対象です。6月1日以降に入社した人、6月30日以前に退職した人、7月から9月に月額変更届で改定する予定の人は除きます。

  2. 4〜6月に「支払った」報酬を集める

    3月21日〜4月20日分を4月25日に払う店なら、その給与が「4月の報酬」です。歩合給、指名料、店販手当、残業代、通勤手当も合計します。

  3. 支払基礎日数で平均に使う月を決める

    月給制は原則として暦日数、日給・時給制は出勤日数(有給休暇の日を含む)です。月給制で欠勤控除をした月は、就業規則などで定めた日数から欠勤日数を引いた日数になります。17日未満の月は平均から外します(特定適用事業所の短時間労働者は11日、それ以外でどの月も17日に届かないパートは15日以上の月で平均)。

  4. 平均して等級に当てはめ、期限までに出す

    電子申請、郵送(期限内必着)、窓口のいずれかで出します。決まった標準報酬月額は9月分の保険料から翌年8月分まで使います。

4人の店の判定例(仮定) 4〜6月の報酬と支払基礎日数 平均に使う月と結果
Sさん(月給制のスタイリスト) 4月318,000円、5月296,000円、6月305,000円(いずれも17日以上) 3か月の平均306,333円→300,000円
Tさん(時給制で社会保険に加入しているパート、特定適用事業所以外) 4月158,000円(18日)、5月132,000円(15日)、6月150,000円(17日) 4月と6月の平均154,000円→150,000円
Uさん(月給制、4月に欠勤5日) 4月220,000円(所定21日−欠勤5日=16日)、5月270,000円、6月270,000円 5月と6月の平均270,000円→280,000円
Vさん(4月支給分から歩合率を変更) 3か月の平均で2等級以上の差がある 算定基礎届では「月額変更予定」とし、7月に月額変更届を出す

4〜6月が例年の繁忙期で報酬が高くなる働き方なら、前年7月から当年6月までの年間平均で算定するよう申し立てる方法があります。2等級以上の差があり、業務の性質上例年起きることで、本人の同意があることが条件で、申立書と同意書を算定基礎届に添付します。

手続きでつまずく点 — 支払月の数え方・控除の月・差額の遡及

算定基礎届と月額変更届の誤りは、制度より月の数え方で起きます。次の6つは、給与計算の手順に組み込んで防ぎます。

  1. 働いた月で集計している:報酬は支払った月で数えます。防ぎ方:賃金台帳の「支給日」の列で4〜6月を抜き出します。
  2. 新しい保険料を控除する給与の月を間違える:給与から控除できるのは前月分の保険料です。9月分からの新しい額は、翌月控除の店なら10月支給の給与から変わります。防ぎ方:改定月の翌月の給与に印を付け、給与計算ソフトの等級の切り替え月を確かめます。
  3. 月額変更届を出し忘れる:気づいた時点で、改定すべきだった月にさかのぼって届け出て、本人と店の保険料の差額を精算することになります。防ぎ方:歩合率・手当・基本給を変えた月に一覧へ記入し、3か月後に必ず判定します。
  4. 昇給の差額を払った月の報酬をそのまま平均する:差額を払った月を変動月とし、平均は差額を除いて計算します。防ぎ方:差額は給与明細で別の項目にして、判定のときに外せるようにします。
  5. 欠勤控除をした月の日数を暦日数のまま書く:月給制でも欠勤控除をした月は、定めた日数から欠勤日数を引いた日数になり、17日を下回れば平均から外します。防ぎ方:欠勤控除の有無を賃金台帳の欄で分かるようにします。
  6. 年3回以下の賞与を報酬に入れる、または年4回以上を賞与で出す:防ぎ方:店販や指名の報奨金を毎月払うか、半年ごとに払うかを規程で決め、支給の回数で区分します。

そのまま使える判定シートと通知文 — 3か月後の判定とスタッフへの説明

固定的賃金を変えた人を1行ずつ記録し、3か月後に平均と等級を出せば、月額変更届の漏れはなくなります。改定が決まったら、控除が変わる給与より前に本人へ書面で伝えます。

月額変更の判定シートの列(1人1行)

  • 氏名/変動の内容(例:歩合率10%→15%)/変更後の給与を初めて払った月
  • 従前の標準報酬月額
  • 1か月目・2か月目・3か月目の報酬と支払基礎日数(昇給差額は別欄)
  • 3か月の平均/新しい標準報酬月額/等級の差
  • 判定(2等級以上かつ3か月とも17日以上かつ変動の向きと平均の動きが同じ→届出)
  • 改定月/届出日/控除を切り替える給与の支給月

スタッフへの通知文の例

  • 件名:標準報酬月額の改定のお知らせ
  • 本文:「2026年10月支給分からの歩合率の変更に伴い、〇〇さんの社会保険の標準報酬月額が、2027年1月分から280,000円から340,000円に変わります。給与から差し引く健康保険料と厚生年金保険料は、2027年2月支給の給与から合計で月8,445円増えます。」
  • 補足:「標準報酬月額は、将来の厚生年金の額や、病気・出産で休んだときの手当金の計算にも使われます。次は2027年7月の算定基礎届で、9月分からの額が決まり直します。不明な点は〇〇まで聞いてください。」

指名料の単価や配分を見直すときは、変更する月を決めた時点で判定シートに1行を足しておきます。指名料の決め方は美容室の指名料の設定で扱っています。

賞与支払届と寸志 — 支給日から5日以内、年4回以上なら報酬に含める

賞与・寸志・決算賞与を払ったら、支給日から5日以内に賞与支払届を出します。標準賞与額は支給額の1,000円未満を切り捨てた額で、健康保険は年度(4月〜翌年3月)の累計573万円、厚生年金は1か月150万円が上限です。名前に関係なく、働いたことへの対価として年3回以下で払うものは賞与で、同じ性質のものを年4回以上払う場合は標準報酬月額の報酬に含めます。日本年金機構に登録した賞与の支払予定月に支給しなかった場合は、賞与不支給報告書を出します。金額の決め方と源泉徴収の計算は美容室のボーナス・寸志の決め方で確認できます。

算定基礎届と月額変更届の前に、次の8項目を確認してください。

  • 4〜6月の報酬を、働いた月ではなく支払った月で集計している
  • 歩合給・指名料・店販手当・残業代・通勤手当を報酬に含めている
  • 支払基礎日数が17日未満の月を平均から外し、欠勤控除の月は日数を引いている
  • 6月1日以降の入社者と6月30日以前の退職者を対象から外している
  • 今年、歩合率・指名料の単価・手当・基本給を変えた人を判定シートに記入している
  • 変えた人について、3か月の平均で2等級以上の差がないか判定した
  • 改定月の翌月の給与から控除額を切り替える設定をした
  • 今年支払った賞与・寸志の賞与支払届を、支給日から5日以内に出している

よくある質問

パートのスタッフも算定基礎届の対象ですか?

社会保険の被保険者になっているパートは対象です。支払基礎日数は原則17日以上の月で平均しますが、17日以上の月がない場合は15日以上の月で平均します(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)。被保険者になっていないパートは対象外です。

指名が増えて歩合給が大きく増えました。月額変更届は必要ですか?

歩合率や単価を変えていなければ必要ありません。歩合給の額が増えただけでは固定的賃金の変動に当たらず、随時改定の条件を満たさないためです。4〜6月に支払った分は、次の算定基礎届に反映されます。

月額変更届を出し忘れていたことに気づいたらどうすればよいですか?

気づいた時点で、改定すべきだった月にさかのぼって月額変更届を出します。本人と店の保険料の差額を精算する必要があるため、本人に経緯を説明し、精算の方法を決めてから給与で調整します。

新しい標準報酬月額の保険料は、どの月の給与から控除しますか?

給与から控除できるのは前月分の保険料です。9月分から変わる定時決定なら、翌月控除の店では10月に支払う給与から新しい額になります。随時改定も同じで、改定月の翌月に支払う給与から切り替えます。

通勤手当も標準報酬月額に含めますか?

含めます。所得税では一定額まで非課税ですが、社会保険では通勤手当も報酬です。6か月定期券などをまとめて渡した場合は、月数で割った額を各月の報酬に加えます。

出典:日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」「随時改定(月額変更届)」「厚生年金保険料等の納付」「厚生年金保険の保険料」、令和8年度の算定基礎届の案内(特設ページ)、厚生労働省「厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて」、協会けんぽ東京支部「2026年度の健康保険料率等について」、健康保険法第41条〜第45条・第167条、厚生年金保険法第21条〜第24条の4・第84条。健康保険組合や美容国保に加入している場合は、加入先の案内を確認してください。

まずは2026年に歩合率・指名料の単価・手当・基本給を変えたスタッフを判定シートに書き出し、変えた月から3か月の平均を出すことから始めてください。2等級以上の差があれば、その時点で月額変更届を準備し、控除を切り替える給与の月を決めます。控除額の計算の手順は美容室の給与計算のやり方で確認できます。

VAULTA|美容室専門のLINE公式サポート

美容室に特化したLINE公式、
無料でおつくりします。

予約・再来店・求人・販促まで、LINEひとつで。美容室の集客と経営に効く公式アカウントを、無料で作成します。

無料でLINE公式を作成する↗

友だち追加だけ。相談・作成は無料です。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

VAULTA編集部は、美容室・美容師向けに集客、リピート率向上、LINE公式活用、MEO対策、独立・開業、資金調達に関する実践的な情報を発信しています。

美容室の集客・リピート導線を見直したい方へ

新規集客、LINE公式、MEO対策、リピート率改善、ホットペッパー依存の見直しまで、あなたのサロンに合わせて整理します。

「何から直せばいいかわからない」という段階でも大丈夫です。
まずは現在の集客導線を一緒に確認しましょう。

コメント

コメントする

目次