子ども・子育て支援金で美容室の給与計算はどう変わるか|徴収開始の時期・負担額の目安・保険別の違いとスタッフへの説明文例

子ども・子育て支援金は、2026年4月分の保険料から医療保険料に上乗せして徴収されています。協会けんぽに加入する美容室では標準報酬月額の0.23%を店とスタッフで半分ずつ負担し、給与からの天引きは原則5月支給分からです。

協会けんぽ・美容国保・市町村国保での違い、店とスタッフの負担額、給与明細の書き方、スタッフへの説明文例まで、給与計算の担当者が確認する順に整理します(2026年10月時点の情報です)。

目次

結論:子ども・子育て支援金で美容室が押さえる5つのポイント

美容室の給与計算で変わるのは、健康保険料と一緒に差し引く額が月数百円増えることです。ただし、スタッフが加入している医療保険によって、金額の決まり方と店の負担の有無が変わります。

論点 内容 根拠・出典
① 何のお金か 児童手当の拡充や妊婦のための支援給付などに充てる財源。医療保険料とあわせて徴収する 子ども・子育て支援法、こども家庭庁
② いつから 2026年(令和8年)4月分の保険料から。協会けんぽなどは5月の給与天引きから こども家庭庁、協会けんぽ
③ いくら 協会けんぽ・健康保険組合は標準報酬月額と標準賞与額の0.23%(令和8年度)。本人と店で半分ずつ こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」
④ 国保・美容国保 国保料(組合の保険料)の一部として本人・世帯が負担する。店の負担は法律上なく、額は市区町村・組合ごとに違う こども家庭庁、各保険者
⑤ 給与明細 内訳の表示は法令上の義務ではない。ただし国は明細に内訳を書く取り組みへの協力を求めている こども家庭庁「事業主の皆様へ」

金額は小さくても、毎月の控除が増えれば「手取りが減ったのはなぜか」と質問が来ます。料率の設定を直す前に、自店のスタッフがどの保険に入っているかを一覧にしておくと、計算と説明が一度で済みます。

子ども・子育て支援金とは — 医療保険料と一緒に集める子育て施策の財源

子ども・子育て支援金とは、児童手当の拡充など子育て世帯向けの給付に充てるため、医療保険の加入者と事業主から保険料とあわせて集めるお金です。2023年12月に策定された「こども未来戦略」加速化プランの財源の一部で、2026年度から拠出が始まりました。

こども家庭庁は、支援金を充てる給付として次の6つを挙げています。美容室のスタッフにも関係するのは、育休や時短勤務の給付です。

  1. 児童手当の拡充:所得制限の撤廃や支給期間の延長など、すでに始まっている拡充分
  2. 妊婦のための支援給付:妊娠・出産時の経済的な支援
  3. 出生後休業支援給付:子の出生直後に育休を取った雇用保険の被保険者への上乗せ給付
  4. 育児時短就業給付:小さな子を育てながら時短勤務をする人への給付
  5. こども誰でも通園制度:親の就労を問わず保育所などを利用できる仕組み
  6. 育児期間中の国民年金保険料免除:自営業・フリーランスの親が対象

名前の似た「子ども・子育て拠出金」は別の制度です。違いを表で確認します。

項目 子ども・子育て拠出金 子ども・子育て支援金
負担する人 事業主のみ 協会けんぽなどは本人と事業主で折半。国保・後期高齢者医療は加入者本人
計算の基準 厚生年金の標準報酬月額・標準賞与額×0.36% 健康保険の標準報酬月額・標準賞与額×0.23%(令和8年度)
対象になる人 厚生年金の被保険者を雇う事業主 公的医療保険に加入するすべての人
始まった時期 以前から(0.36%は2020年4月分から) 2026年4月分から
納め方 厚生年金保険料と一緒に 医療保険料と一緒に

拠出金は店だけが払うもの、支援金はスタッフも払うものです。国は、社会保障の歳出改革などで支援金の負担は相殺され「実質的な負担は生じない」と説明していますが、給与明細の控除額そのものは増えます。スタッフへの説明では、この2つを分けて伝えると混乱しません。

子ども・子育て支援金はいつから徴収されるか — 4月分から、天引きは5月支給分から

支援金は2026年4月分の保険料から徴収が始まっています。協会けんぽや健康保険組合では4月分の保険料を5月に納めるため、給与からの天引きは5月支給分からになります。

加入している保険 対象になる保険料 天引き・納付のタイミング
協会けんぽ・健康保険組合 令和8年4月分から 5月納付分から。前月分を当月の給与から控除する店は5月支給分から
美容国保(東京美容国民健康保険組合の例) 令和8年4月分(4月納付分)から 毎月の保険料と一緒に店がまとめて納付
市町村の国民健康保険 令和8年4月分から 納付書・口座振替の開始時期は市区町村ごと
後期高齢者医療制度(75歳以上) 令和8年4月分から 徴収の開始時期は都道府県の広域連合ごと

健康保険料は、前月分を当月の給与から控除するのが原則です(健康保険法第167条)。給与ソフトを「当月分を当月控除」で運用している店は、どの月から差し引いたかを確認してください。2026年10月時点でまだ控除していない場合、店がスタッフ負担分を立て替えている状態です。未控除分をどう精算するか、スタッフと話して決めます。

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加入している保険別の整理表 — 協会けんぽ・美容国保・市町村国保で何が違うか

支援金の決まり方は、そのスタッフがどの医療保険に入っているかで決まります。美容室は個人経営か法人か、美容国保に入っているかで保険がばらばらになりやすいため、まず次の表で振り分けます。

加入している保険 美容室でよくあるケース 支援金の決まり方(令和8年度) 店の負担
協会けんぽ・健康保険組合 法人の美容室の役員・スタッフ、任意適用を受けた個人の美容室のスタッフ 標準報酬月額・標準賞与額×0.23% 半分(0.115%)
美容国保(美容業の国民健康保険組合) 個人の美容室のオーナー・スタッフ、適用除外の承認を受けて法人化後も残るケース 組合が定める額。東京美容国民健康保険組合は18歳以上の被保険者1人につき月500円 法律上はなし(店が補助するかは任意)
市町村の国民健康保険 美容国保に入っていない個人店のオーナー・スタッフ、業務委託・面貸しの美容師 所得割+均等割(市区町村の条例)。例:大田区は所得割0.27%、均等割1,873円、上限年3万円 なし
後期高齢者医療制度 75歳以上のオーナー・スタッフ 広域連合の条例で所得に応じて決定 なし

個人経営の美容室は、スタッフが常時5人以上いても健康保険・厚生年金への加入は義務ではありません。理容・美容業が強制適用の業種に含まれていないためで、同じ店の中に協会けんぽのスタッフと国保のスタッフが混在することがあります。加入の義務と手続きは美容室の社会保険の加入義務、美容国保の仕組みは美容国保の加入条件と保険料で整理しています。

美容国保は組合ごとに保険料が決まっています。東京美容国民健康保険組合では、毎年4月1日時点で18歳以上の組合員と家族から月500円ずつ徴収し、子どもの有無は問いません。市町村国保は、18歳未満の子の均等割が全額軽減される仕組みです。他の地域の美容国保に加入している店は、組合の保険料表で確認してください。

店とスタッフの負担はいくらか — 標準報酬月額別の早見表

協会けんぽ加入のスタッフなら、本人負担は標準報酬月額×0.115%で、店も同じ額を負担します。月給25万円前後のスタイリストで、本人・店とも月300円弱です。

標準報酬月額 支援金(全額・月) 本人負担 店の負担
18万円 414円 207円 207円
22万円 506円 253円 253円
26万円 598円 299円 299円
30万円 690円 345円 345円
36万円 828円 414円 414円
賞与(標準賞与額30万円) 690円 345円 345円

令和8年度の支援金率0.23%で計算。協会けんぽ東京支部の令和8年度保険料額表の支援金欄と同じ額です。

支援金の額は年度ごとに見直されます。こども家庭庁の試算では、協会けんぽの被保険者1人当たりの本人負担(月額)は令和8年度450円、令和9年度550円、令和10年度700円の見込みです。2028年度にかけて段階的に増える前提で、毎年4月に料率を確認してください。

試算 — スタッフ4人の美容室で店の負担は年いくらか(仮の設定)

法人の美容室で、協会けんぽに加入するスタッフが4人(標準報酬月額22万円が2人、26万円と30万円が各1人)、賞与は年2回で1人10万円ずつと置きます。標準報酬月額の合計は100万円なので、店の負担は月1,150円、年13,800円です。賞与分(標準賞与額の合計80万円)の920円が加わり、店の年負担は合計14,720円になります。

国は令和10年度の参考計算として、被用者保険全体で総報酬の約0.4%(本人0.2%)という数字を示しています。同じ店にこの率を当てはめると、店の年負担は約2.6万円です。賃上げで総報酬が伸びれば率は下がるとされており、数字は自分で置いた前提による試算です。

給与計算で変わること — 料率の設定から年末調整までの手順

確認する場所は、料率、控除の開始月、賞与、明細、休業中の免除、年末調整の6か所です。給与ソフトの自動更新だけでは確認できない項目があるため、順に見ていきます。

  1. 給与ソフトの料率を更新する

    協会けんぽの令和8年度保険料額表には、健康保険料・介護保険料とは別に支援金の列があります。クラウド型の給与ソフトは自動で更新されることが多い一方、Excelや手計算の店は0.23%の項目を自分で追加します。

  2. 控除を始めた月を確かめる

    4月分を5月支給の給与から差し引いているかを、5月の給与明細で確認します。入社月・退職月の扱いは健康保険料と同じです。

  3. 賞与の計算に入れる

    賞与からも標準賞与額×0.23%を本人と店で半分ずつ負担します。冬の賞与の前に設定を確認してください。支給額の決め方は美容室のボーナス・寸志の決め方で整理しています。

  4. 給与明細の表示を決める

    内訳を分ける場合は「健康保険料 12,805円」「子ども・子育て支援金 299円」のように並べます(協会けんぽ東京支部、標準報酬月額26万円、40歳未満の本人負担の例)。

  5. 育休・産休中のスタッフを確認する

    健康保険料・厚生年金保険料が免除される期間は、支援金も免除されます。手続きの流れは美容室の産休・育休対応を参照してください。

  6. 年末調整で社会保険料控除に含める

    給与から差し引いた支援金は健康保険料の一部です。年末調整では、健康保険料と合わせて社会保険料控除の額に入れます。全体の段取りは美容室の年末調整の進め方にまとめています。

美容国保の保険料を給与から天引きしている店は、天引き額を月500円(18歳以上の家族の分も本人負担にしている場合はその人数分)増やします。国保組合の保険料は、健康保険料と違って法律で給与からの控除が認められている項目ではありません。賃金控除に関する労使協定(労働基準法第24条)の控除項目に入っているかも確認してください。

「スタッフの手取りを変えたくない」と、本人負担分の支援金を店が肩代わりする方法もあります。ただしその額はスタッフへの給与として扱われ、源泉徴収の対象になります。肩代わりする場合は手当として明細に載せ、課税の計算に含めてください。

スタッフへの説明文例 — LINE・明細への同封・朝礼で使える文面

説明は、何のお金か・いくらか・いつからかの3点に絞ります。将来の金額や「実質負担はない」といった評価は、店から断定しないほうが安全です。

説明文例1:協会けんぽに加入している店(LINE・明細同封用)

  • 2026年4月分から、国の制度で「子ども・子育て支援金」が健康保険料と一緒に集められています。児童手当の拡充などに使われるお金です。
  • 皆さんの負担は標準報酬月額の0.115%で、月給26万円前後なら月299円です。同じ額を店も負担しています。
  • 5月支給の給与から、明細の「子ども・子育て支援金」の欄で差し引いています。金額は毎年度見直されるため、変わるときはまたお知らせします。

説明文例2:美容国保に加入している店

  • 美容国保の保険料に、4月分から「子ども・子育て支援金」月500円が加わりました。
  • 18歳以上の加入者1人ごとにかかり、ご家族が加入している場合はその人数分です。
  • 毎月の保険料と一緒にお預かりします。金額が変わるときは組合の案内とあわせてお知らせします。

業務委託や面貸しの美容師から聞かれたときは、自分で加入している国民健康保険の保険料に含まれていることを伝えます。説明文はLINEで一斉に送り、明細にも同じ文面を入れておくと、個別の質問が減ります。

子ども・子育て支援金の対応を次の7項目で点検してください。

  • スタッフごとに加入している医療保険(協会けんぽ・美容国保・市町村国保)を一覧にした
  • 給与ソフトに支援金率0.23%が入っている
  • 4月分を5月支給の給与から控除している(控除漏れ・二重控除がない)
  • 賞与の計算にも支援金を入れている
  • 給与明細に支援金の欄を設けるか、内訳の書き方を決めた
  • 育休・産休中のスタッフの免除を確認した
  • 美容国保の店は、保険料表・天引き額・労使協定の控除項目を更新した

雇用保険料率も令和8年度は労働者負担が1,000分の5に下がっており、4月以降の給与計算では支援金と同時に確認が必要です。料率の仕組みは美容室の雇用保険で確認できます。

よくある質問

パートやアルバイトのスタッフにも支援金はかかりますか?

かかります。健康保険の被保険者であれば、パートでも標準報酬月額に0.23%を掛けた額を本人と店で半分ずつ負担します。社会保険に入っていないパートは、自分で加入する国民健康保険の保険料の中で負担します。

扶養に入っている家族の分も支援金を払いますか?

協会けんぽなどの被用者保険では、被扶養者の分を別に払う必要はありません。国民健康保険では18歳以上の加入者ごとに均等割がかかり、東京美容国民健康保険組合も18歳以上の家族1人ごとに月500円がかかります。

業務委託や面貸しの美容師の支援金を店が払う必要はありますか?

ありません。業務委託や面貸しで働く美容師は自分で国民健康保険などに加入し、その保険料の中で支援金を負担します。店が給与計算で扱うのは、雇用しているスタッフの分だけです。

給与明細に支援金を分けて書かないと違法ですか?

違法ではありません。保険料の内訳として支援金額を示すことは法令上の義務ではありませんが、こども家庭庁は給与明細に内訳を記載する取り組みへの協力を求めています。

年末調整では支援金も社会保険料控除に入れますか?

入れます。支援金は健康保険料の一部として徴収されるため、給与から差し引いた額は健康保険料と同じく社会保険料控除の対象になります。

育休中のスタッフからも支援金を徴収しますか?

徴収しません。育休・産休中で健康保険料と厚生年金保険料が免除されている期間は、支援金も免除されます。

出典:子ども・子育て支援法、健康保険法第167条、労働基準法第24条、所得税法第74条、こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」(こども家庭庁)・事業主向けリーフレット(令和8年4月1日更新)・「子ども・子育て支援金に関する試算(医療保険加入者一人当たり平均月額)」・「年収別の支援金額の試算(令和8年度)」、全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和8年3月分(4月納付分)からの保険料額表(東京支部)」、東京美容国民健康保険組合「保険料について(令和8年度)」、大田区「国民健康保険料の計算方法(令和8年度)」、日本年金機構「子ども・子育て拠出金率」、厚生労働省「令和8年度の雇用保険料率」。個別の判断は社会保険労務士か加入先の保険者に確認してください。

子ども・子育て支援金の対応は、スタッフごとの加入保険を一覧にすることから始まります。協会けんぽの店は給与ソフトの0.23%と5月支給分からの控除を確かめ、美容国保の店は保険料表の更新と説明文の配布を済ませてください。

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この記事を書いた人

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