妊娠中・授乳中のお客様のカラーとパーマ|美容室の判断表・聞き方の文例・施術時間の上限と確認書

妊娠中のカラーやパーマを禁じる法令はありませんが、ヘアカラー(酸化染毛剤)や脱色剤の使用上の注意には「頭皮あるいは皮膚が過敏な状態になっている方(病中、病後の回復期、生理時、妊娠中等)」は使用しないよう書かれているため、店は製品の注意書きに従い、当日の体調と頭皮の状態、主治医から言われていることを確かめてから施術の可否と方法を決めます。施術する場合も毎回のパッチテスト、においへの配慮、シャンプー台での姿勢と時間の短縮を組み合わせ、体への影響についての判断は店でせず、主治医への相談をすすめます。

施術する・条件付きで施術する・見送るの判断表、予約フォームと当日の聞き方の文例、1回の施術時間の上限の出し方とメニューの分け方の試算、印刷して使える確認書、見送るときと体調が変わったときの伝え方、現場でつまずく点を整理します。医学的な判断を示す記事ではありません(2026年10月時点の情報です)。

目次

結論:妊娠中・授乳中のお客様への対応早見表

店の判断の軸は、一律に断るのでも一律に受けるのでもなく、製品の注意書きと当日の状態で決め、体への影響は主治医に委ねることです。

項目 対応の目安 根拠・理由
施術の可否 製品の注意書きと当日の体調・頭皮の状態で決める 法令の禁止規定はないが、製品の使用上の注意に記載がある
カラー・ブリーチ 頭皮や皮膚が過敏な状態なら使わない 酸化染毛剤と脱色剤の使用上の注意
パーマ・縮毛矯正 使う製品の使用上の注意を個別に確かめる 製品ごとに注意書きが異なる
パッチテスト 妊娠前に問題がなかった方も、毎回48時間前に行う 使用上の注意で毎回の実施が求められている
1回の施術時間 本人が座っていられる時間と、授乳中なら次の授乳までの時間から上限を決め、超えるならメニューを分ける 長時間座り続ける負担を減らす
体への影響の質問 店では答えず、主治医への相談をすすめる 医学的な判断は医師が行う
記録 説明した内容と本人の判断を確認書かカルテに残す 後から説明の有無で行き違わない

妊娠中の施術は禁止されているか — 法令の禁止はなく、製品の注意書きに従う

美容師法などの法令に、妊娠中のお客様への施術を禁じる規定はありません。一方で、厚生労働省の通知と日本ヘアカラー工業会の自主基準に沿ったヘアカラーと脱色剤の使用上の注意には、使用しない方として「頭皮あるいは皮膚が過敏な状態になっている方(病中、病後の回復期、生理時、妊娠中等)」が挙げられています。

この注意書きは、妊娠中を頭皮や皮膚が過敏になりやすい時期の例として示したものです。店にできるのは、注意書きを守ること、当日の頭皮と体調を確かめること、本人に判断の材料を渡すことで、体への影響を判断することではありません。そのため「赤ちゃんに影響はありません」とも「妊娠中は絶対にだめです」とも言いません。前者は店が持っていない根拠を示すことになり、後者は施術を望むお客様に根拠のない不安を与えます。パーマ剤や縮毛矯正剤の注意書きは製品ごとに違うため、使う製品の使用説明書で確かめます。

施術するか・条件付きか・見送るか — 状況別の判断表

判断は「パッチテスト」「当日の頭皮」「体調と主治医の指示」「施術時間の上限」の4つで決めます。妊娠しているかどうかだけで決めず、表の条件に当てはめると担当者ごとの差が出ません。

お客様の状況 判断 店の対応
カットのみ希望、体調に問題がない 施術する 席・クッション・休憩の配慮をして通常どおり
カラー希望、48時間前のパッチテストで異常なし、当日の頭皮に赤み・かゆみ・湿疹がなく、本人も過敏さを感じていない 条件付きで施術する 確認書で説明し、施術時間の上限内に収まるメニューにする
カラー希望、今回のパッチテストをしていない 当日は薬剤を使わない カットなどに変更し、パッチテストをして別の日に予約する
当日、頭皮や生え際に赤み・かゆみ・湿疹がある、または本人が「肌が敏感になっている」と感じている 薬剤の施術は見送る 使用上の注意に沿って見送り、カットやブローに変える
メニューの合計時間が施術時間の上限を超える 条件付き:分けて施術する 根元だけのカラー、カットと別の日にするなどで上限内に収める
においで気分が悪くなりやすい 条件付き:薬剤は短いメニューか別の日 換気のよい席にし、薬剤を混ぜる場所を席から離す
主治医から外出や長く座ることを控えるよう言われている、体への影響が不安で決めかねている 見送る 主治医に相談してから予約し直してもらう
施術中に気分が悪い、おなかの張りや痛みなどを訴えた その場で中止する 休ませ、症状が強ければ119番。本人の同意を得て家族に連絡する

授乳中のお客様も同じ表で判断し、施術時間の上限には次の授乳までの時間を使います。体への影響が気になる場合は、主治医や助産師への相談をすすめます。

予約時と当日の確認 — フォームの欄と聞き方の文例

予約時と当日に、①体調(におい・座っていられる時間・あお向けの姿勢)、②頭皮と肌の状態、③主治医から言われていること、④過去のかぶれの経験を確かめます。厚生労働省の2015年の通知も、毛染めの前に施術当日の肌の状態などを確認するよう求めています。妊娠を伝えたくない方もいるため、予約フォームでは妊娠の有無を必須で聞かず、配慮の希望を選べる任意の欄にします。

予約フォームの欄と、当日の聞き方の文例

  • 【予約フォームの任意欄】体調などで配慮してほしいことがあればお選びください(任意)。□においが苦手 □長く座るのがつらい □あお向けの姿勢がつらい □途中で休憩したい □授乳などで時間に限りがある( 時 分までに終えたい) □その他(   )
  • 【予約の確認メッセージ】カラーをご希望の場合は、施術の48時間前にパッチテストのためのご来店をお願いしています。当日体調がすぐれないときは、キャンセル料はいただきませんので、遠慮なくご連絡ください。
  • 【当日・体調】今日の体調はいかがですか。においで気分が悪くなりやすい、長く座っているのがつらいなど、気になることがあれば教えてください。
  • 【当日・時間】何時ごろまでに終えられると楽ですか。途中で休憩をとることもできます。
  • 【当日・主治医】先生から、外出や長く座ることについて何か言われていることはありますか。
  • 【当日・頭皮】カラーの前に頭皮を見させてください。最近、かゆみや赤みが出やすくなったと感じることはありますか。

パッチテストの来店日は、健診などほかの外出の日に合わせると負担が減ります。手順と記録の様式はパッチテストのやり方と48時間ルールにまとめています。予約時に配慮の希望を選択肢で聞く仕組みは、「話しかけないで」を希望するお客様への対応と同じ作り方が使えます。

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試算:1回の施術時間を何分に収めるか — 上限の出し方とメニューの分け方

1回の施術時間の上限は、「本人が座っていられる時間」と「次の授乳など予定までの時間 − 移動 − 余裕」の短いほうで決めます。上限を超えるメニューは、上限に収まるように分けます。

試算の前提(仮定):授乳中のお客様で、本人から聞いた次の授乳までの時間は3時間、店までの移動は往復40分、途中の休憩と余裕に20分をとる。希望はカット+カラー(全体)+トリートメントで、通常は予約枠150分・シャンプー台3回。分けた場合は、1日目に根元カラー(75分・シャンプー台1回)、2日目にカット(45分・シャンプー台1回)。施術時間は自店の実測に置き換える。

項目 計算 結果
施術時間の上限 180分 − 移動40分 − 余裕20分 120分
希望どおり1回で行う 予約枠150分 > 上限120分 上限を30分超えるため、分ける
分けた場合の1日目 根元カラー75分 ≦ 120分 上限内。シャンプー台は3回から1回に減る
分けた場合の2日目 カット45分 ≦ 120分 上限内。薬剤を使わない日になる
店の予約枠 150分の枠1つ → 75分+45分=120分 使う枠は30分減り、その時間をほかの予約に回せる

料金は、分けたことでお客様の負担が増えないよう「1回で受けた場合と同じ合計額」にするか、メニューごとの通常料金にするかを、店のルールとして先に決めて伝えます。どちらにする場合も、分ける理由は「施術時間を上限内に収めるため」と説明し、「この方法なら安全」とは言いません。

施術中の配慮 — におい・姿勢・時間を減らすやり方

施術すると決めた場合は、においを抑え、シャンプー台であお向けになる時間を短くし、体調が変わったらすぐに止められる段取りにします。

配慮すること 具体的なやり方
におい 換気扇や窓に近い席にする。薬剤を混ぜる場所を席から離す。途中で外の空気を吸える時間をとる
シャンプー台の姿勢 ひざ下や腰にクッションを入れる。あお向けの時間を短くし、気分が悪いと言われたらすぐに体を起こせるようにする
座る時間 放置時間に立ち上がって歩けるようにする。トイレに近い席を選ぶ
予約枠 前後に余裕のある枠をとり、待ち時間と延長を減らす
スタッフ間の共有 席・休憩のタイミング・薬剤を使うか・中断の合図を、シャンプーやブローを担当するスタッフにも伝える

シャンプー台の種類によって姿勢の負担は変わります。フルフラットやサイドシャンプーの違いはシャンプー台の選び方を、前後に余裕を持たせた枠の組み方は予約枠の組み方を参考にしてください。

確認書と共有メモ — 説明したことと本人の判断を残す

薬剤を使う場合は、製品の注意書きの内容、店が体への影響を判断できないこと、体調が変わったら中断することを説明し、本人の判断を確認書に残します。確認書は説明の記録であり、店の責任を免れるための書面ではありません。

確認書(妊娠中・授乳中のお客様用)と、スタッフ共有メモの例

  • お名前:       ご来店日:  年  月  日  担当:
  • 1.本日の施術内容:□カット □根元のカラー □全体のカラー □パーマ □その他(   ) 予定時間:  分(  時  分までに終了)
  • 2.パッチテスト:実施日  月  日  時  分 結果 □異常なし
  • 3.本日の頭皮の状態:□赤み・かゆみ・湿疹なし(担当者が確認) □本人も過敏さを感じていない
  • 4.使用する薬剤の注意書きに、頭皮や皮膚が過敏な状態の方(妊娠中などを含む)は使用しないよう記載があることの説明を受けました。
  • 5.体への影響について、店は医学的な判断を行わないことを理解し、施術を受けることを自分で判断しました。
  • 6.施術中に気分が悪くなった場合はすぐに伝え、施術を中断することに同意します。
  • 7.安全に施術するため、上記の内容をカルテに記録し、担当するスタッフで共有することに同意します。 ご署名:
  • 【スタッフ共有メモ】席:窓側2番/休憩:塗布後に1回/シャンプー:クッション使用・短め/中断の合図:本人が手を挙げたらすぐ起こす/薬剤:根元のみ

妊娠や体調の情報は、安全に施術するために聞くものです。利用目的を伝え、カルテを見る必要のあるスタッフだけで共有し、出産予定日を過ぎた後の来店時に記録を更新します。同意の文面の作り方は個人情報の同意文例にあります。

見送るとき・体調が変わったときの伝え方 — 理由は注意書きと当日の状態に置く

見送るときは、「妊娠中だからできません」ではなく、理由を製品の注意書きと当日の状態に置き、代わりにできることと次の予約を提案します。施術中に体調が変わったときは、迷わず止めます。

見送るとき・中断するときの文例

  • 【頭皮に赤みがある】今日は生え際に少し赤みがあるので、カラー剤の注意書きに沿って、薬剤を使う施術は見送らせてください。カットとブローでしたら、このまま進められます。
  • 【体への影響を聞かれた】体への影響については、私たちからはお答えできないので、次の健診のときに主治医の先生に聞いていただけると安心です。そのうえで、ご都合のよい日に改めてご予約ください。
  • 【時間が上限を超える】今日のメニューだと、お聞きした12時半を過ぎてしまうので、カラーを今日、カットを別の日にしてはいかがでしょうか。1回の時間が短くなります。
  • 【施術中・声をかける】少しでも気分が悪くなったら、手を挙げて合図してください。すぐに中断して休んでいただけます。
  • 【施術中・中断する】一度ここで止めて、楽な姿勢で休みましょう。お水をお持ちします。ご家族やかかりつけの病院に連絡しましょうか。

見送った場合は、その日にできたことと、次に薬剤の施術を考えるときに確かめること(パッチテストの日程、主治医に聞いておくこと)をカルテに残します。体調不良による当日の予約変更は通常のキャンセルと分けて扱い、キャンセル料をかけないルールにしておくと、無理をして来店するお客様を減らせます。配慮の申し出にどこまで応じるかの考え方は合理的配慮の考え方と予約時の確認方法も参考になります。

現場でつまずく5つの点 — 防ぎ方まで決めておく

判断の基準があっても、予約の入り方と情報の受け渡しで抜けが出ます。

  1. 予約サイトで「カット+カラー」のまま入る:当日に薬剤を見送ると、メニューも料金も変わります。予約確認のメッセージでパッチテストの日程を先に決め、当日に変更しても料金差以外の負担がないことをルールに書きます。
  2. シャンプー担当に配慮が伝わっていない:担当スタイリストだけが知っていると、アシスタントがいつもの姿勢と時間でシャンプーします。共有メモを予約画面か施術カードに貼り、交代のときに読み上げます。
  3. 「体にやさしいカラーなら大丈夫」と言ってしまう:オーガニックや低刺激をうたう製品でも、店が安全を約束する根拠にはなりません。製品の注意書きを見せ、体への影響は主治医に聞いてもらいます。
  4. 薬剤を混ぜる場所が席の近くにある:根元だけのカラーでも、調合のにおいは席まで届きます。調合はバックルームか換気扇の下で行い、塗布の直前に持っていきます。
  5. 出産後もカルテに「妊娠中」の表示が残る:表示が古いままだと、必要のない確認を繰り返したり、授乳中の時間の配慮を見落としたりします。出産予定日をカルテに書き、その後の最初の来店で記録を更新します。

妊娠中・授乳中のお客様を受け入れる前に、次の8項目を確認してください。

  • 使う薬剤ごとに、使用上の注意の「使用しないでください」の項目を確かめている
  • 予約フォームに、配慮の希望を選べる任意の欄がある
  • カラーは妊娠前に問題がなかった方にも、毎回パッチテストを行っている
  • 判断表の「見送る」の条件を、スタッフ全員が同じように説明できる
  • 1回の施術時間の上限を聞き、超えるメニューを分ける段取りがある
  • 換気のよい席、トイレに近い席、シャンプー台のクッションを用意している
  • 施術中に体調が変わったときの中断の合図と、119番を呼ぶ判断を決めている
  • 確認書と共有メモを使い、出産後に記録を更新している

よくある質問

妊娠中のお客様にカラーを頼まれたら、断らなければいけませんか?

法令で禁止されてはいないため、一律に断る必要はありません。ただし、ヘアカラーの使用上の注意には頭皮や皮膚が過敏な状態の方は使用しないよう書かれているため、当日の頭皮と体調を確かめ、過敏な状態なら見送ります。迷う場合は主治医への相談をすすめます。

妊娠前に何度もカラーをしている方にも、パッチテストは必要ですか?

必要です。ヘアカラーの使用上の注意は、使用前に毎回パッチテストを行うよう求めており、過去に異常がなかった方でも体質の変化でかぶれるようになることがあるとされています。施術の48時間前に行います。

「赤ちゃんに影響はありますか」と聞かれたら、どう答えればよいですか?

店では医学的な判断ができないことを正直に伝え、主治医に相談するようすすめます。製品の使用上の注意をそのまま見せて、書かれている内容を一緒に確かめるのはかまいません。

授乳中のお客様の施術で気をつけることは何ですか?

判断の基準は妊娠中と同じで、当日の体調と頭皮の状態を確かめます。次の授乳までの時間から移動と余裕を引いて施術時間の上限を決め、超えるメニューは分けます。体への影響が気になる場合は、主治医や助産師への相談をすすめます。

パーマや縮毛矯正もカラーと同じように考えればよいですか?

使う製品の使用上の注意を個別に確かめます。縮毛矯正は施術時間が長く、アイロンの熱や薬剤のにおいもあるため、施術時間の上限に収まるかを特に確かめ、前髪や顔まわりだけにするなどの組み立てを提案します。

予約のときに、妊娠しているかどうかを聞いてもよいですか?

全員に必須で聞く必要はありません。予約フォームに配慮の希望を選べる任意の欄を設け、伝えたい方が伝えられるようにします。聞いた情報は施術のためだけに使い、共有はカルテを見るスタッフに限ります。

出典:厚生労働省「染毛剤、脱色剤及び脱染剤の使用上の注意について」(厚生労働省 法令等データベース)、日本ヘアカラー工業会「染毛剤等に添付する文書に記載する使用上の注意事項自主基準」(医薬品医療機器総合機構の掲載資料)、厚生労働省「毛染めによる皮膚障害の周知等について」(平成27年10月23日 生食衛発1023第1号、厚生労働省)、美容師法(e-Gov法令検索)。施術時間の上限は前提を置いた試算です。体への影響については主治医に相談してください。

まずは、店で使っているカラー剤とパーマ剤の使用説明書を出して「使用しないでください」の項目を読み合わせ、予約フォームに配慮の希望を選べる欄を追加するところから始めてください。出産後に赤ちゃん連れで来店されるときの受け入れ方は子連れ・キッズ対応の設計にまとめています。

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この記事を書いた人

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