美容師個人のSNSアカウントは誰のものか|状態別の判断表・投稿の賃金の試算・退職時の写真の扱いと合意書

美容師が自分で開設し、自分の名前で運用しているSNSアカウントは原則としてその美容師のもので、退職するときに店が削除させたり引き渡させたりすることはできません。店の集客に使ってもらうなら、業務として頼む範囲、投稿の時間と賃金、費用、写真の権利、退職時の扱いを、運用を始める前に書面で決めておくのがいちばん確実です。

アカウントと投稿の状態ごとの判断表、店の指示で投稿してもらう時間と賃金の試算、スタイル写真の著作権とモデルの同意、退職時に求められること、SNS運用規程と個別の合意書の文例、現場でつまずく点を整理します(2026年10月時点の情報です)。

目次

結論:美容師個人のSNSアカウントの扱いの早見表

出発点は、アカウントは開設して管理している人のもの、写真は撮った人か業務として撮らせた店のもの、写っている人の同意は別に必要の3つです。

項目 原則 決めておくこと
アカウントの持ち主 開設して運用している本人 店の業務用アカウントか、個人アカウントかを最初に分ける
フォロワー アカウントに付くもので、店に移せない Instagramの利用規約はユーザーネームを含むアカウントの売買・譲渡を禁じている
店の指示による投稿 業務になり、その時間は労働時間 投稿の時間・頻度・費用を決める
スタイル写真の著作権 原則は撮った人。店の業務として撮り、店の名義で公表するものは店 写真の権利と使える範囲を書面で決める(著作権法第15条)
モデル・お客様の掲載 写っている人の同意が必要 同意の範囲(どの媒体か、退職後の扱い)を決める
退職時 店に権利がある写真・店の名義で同意を得た写真・店名や予約リンクの削除までは求められる 削除するものを事前に決める

そのアカウントと投稿は誰のものか — 状態別の判断表

店のアカウントとは、店が開設し、店の名義で運用し、IDとパスワードを店が管理するアカウントのことです。「誰が開設し、誰がログイン情報を持ち、店が投稿を指示しているか」の3点で、持ち主と業務かどうかが決まります。

アカウント・投稿の状態 判断 店がやること
店が開設し、店のメールアドレスと店の端末で管理している 店のアカウント 退職時にログイン権限を外し、パスワードを変える
店が開設した「店名+スタッフ名」の業務用アカウント 作るときの取り決めによる。店が管理していれば店のもの 退職時に後任へ引き継ぐか閉じるかを、作るときに決める
本人が開設・管理し、店は投稿を指示していない 本人のもの。投稿は業務ではない 店名や予約リンクの扱いと、店の写真を使う場合の許可だけを取り決める
本人のアカウントに、店が件数や内容を指示している(例:週3投稿) アカウントは本人のもの、投稿は業務 撮影・編集・投稿の時間を労働時間として扱い、合意書を交わす
「任意」と言いながら、投稿数を評価や歩合に入れている 事実上の強制で、業務と判断されることがある 評価から外すか、業務として時間と賃金を扱う
店が広告費を出して集客に使いたい 広告で増えたフォロワーも本人のアカウントに残る 広告は店の公式か店が管理する業務用アカウントに出す
退職者が店の顧客名簿を使ってDMを送っている やめるよう求められる 書面で中止を求め、名簿の持ち出しの有無を確かめる
退職者が自分のフォロワーに新しい店の近況を投稿している 店の顧客情報を使っていなければ、止めることは難しい 店の写真と店名の削除だけを求め、店の公式アカウントの発信に力を入れる

店のアカウントに店の端末だけでログインする運用にすると、退職時の権限の整理が簡単になります。手順は顧客データを守る方法と退職時の権限整理で確認できます。

店の指示で投稿してもらうといくらかかるか — 時間と賃金の試算

次のモデルでは、週3投稿を店が指示すると1人月6.5時間・9,100円、営業後の時間外に行えば11,375円の賃金がかかります。3人なら月27,300〜34,125円で、投稿は「無料の集客」ではありません。

試算の前提(仮定):店がスタイリスト3人に、個人アカウントへ週3回のスタイル投稿を指示する。1回の作業は撮影10分・編集15分・投稿5分の計30分。1か月は52週÷12か月で計算。時給換算1,400円。営業後で1日8時間を超える時間に行う場合は割増率25%。

項目 計算 結果
1人の月の作業時間 30分×週3回×52週÷12か月 6.5時間
勤務時間内に行う場合の賃金 1,400円×6.5時間 9,100円
時間外に行う場合の賃金 1,400円×1.25×6.5時間 11,375円
3人分(勤務時間内) 9,100円×3人 27,300円
3人分(時間外) 11,375円×3人 34,125円

勤務時間内に「撮影・投稿の枠」を予約表に入れると、時間外の割増と記録の手間を減らせます。店の公式アカウントで予約につなげる運用は美容室のInstagram集客、個人アカウントでの企業案件や収入の扱いは美容師の副業ルールで整理しています。

VAULTA|美容室専門のLINE公式サポート

美容室特化型のLINE公式、
無料でつくれます。

集客・リピート・求人のヒントをLINEで配信。美容室に特化した公式アカウントを無料で作成・運用サポートします。

無料でLINE公式を作成する↗

友だち追加だけ。相談・作成は無料です。

スタイル写真の著作権とモデルの同意 — 誰がどこまで使えるか

スタイル写真の著作権は、原則として写真を撮った人にあります。ただし、店の発意で業務として撮影し、店の名義で公表する写真は、契約や就業規則に別の定めがなければ店が著作者になります(職務著作・著作権法第15条第1項)。

写真の例 著作権の考え方 使える範囲の目安
店の指示で撮影し、店の公式アカウントや予約サイトに店の名義で載せた写真 店(職務著作) 店が使える。美容師が個人アカウントで使うには店の許可
美容師が業務とは別に自分で撮り、個人アカウントに本人の名義で載せた写真 撮った美容師 美容師が使える。店が使うには本人の許可
営業時間内に店の機材で撮り、個人アカウントに本人の名義で載せた写真 判断が分かれやすい 撮る前に合意書で決めておく
カメラマンに頼んだ撮影の写真 原則としてカメラマン 契約で譲渡や使える範囲を決める

写真に写ったモデルやお客様には肖像権があり、掲載には写っている人の同意が必要です。同意は「店のSNSと予約サイトに載せる」のように範囲を決めて取るため、退職した美容師が新しい店の宣伝に同じ写真を使うと、同意の範囲を超えることがあります。お客様の写真は個人情報でもあります。同意書の作り方は写真撮影と掲載許可の取り方で確認できます。

退職時に求められること・求められないこと — 確認の5段階

退職時に店が求められるのは、店に権利がある写真や店の名義で同意を得た写真の削除、プロフィールの店名や予約リンクの削除、店の顧客情報を使わないことまでです。アカウントそのものの削除や、フォロワーの引き渡しは求められません。

店が求めること できるか 理由
個人アカウントを削除させる、店に渡させる できない アカウントは本人のもの。利用規約も譲渡を禁じている
店の公式・業務用アカウントの権限を外す できる 店が開設し管理するアカウント
店が著作者の写真を削除してもらう できる場合がある 職務著作の写真は店に権利がある
店の名義で同意を得たお客様の写真を削除してもらう 求めるのが望ましい 同意の範囲を超えた掲載になるおそれがある
プロフィールの店名・予約リンクを消してもらう 求められる 退職後も店で働いていると誤解される
  1. 退職日の2週間前:アカウントの一覧を確かめる

    店が管理するアカウントと本人の個人アカウントを一覧で確認し、店のアカウントの引き継ぎ先を決めます。

  2. 削除する写真を一緒に選ぶ

    個人アカウントの投稿から、店に権利がある写真と店の名義で同意を得た写真を選びます。

  3. 退職日までにプロフィールを直してもらう

    店名、店の予約リンク、店の住所、店のアカウントへのタグを消してもらいます。

  4. 退職日に店の権限を外す

    店のアカウントへのログイン権限を外し、共有していたパスワードを変えます。

  5. 確認書に残す

    削除した写真と直した内容を下の確認書に書き、本人と店の双方で署名します。

退職後に、店で知ったお客様へ新しい店を案内する行為の法的な論点は独立で法的なもめごとを避けるにはで詳しく扱っています。

そのまま使える書面 — SNS運用規程と個別の合意書・退職時の確認書

規程で店全体の原則を決め、個人アカウントを店の発信に使う人とは個別の合意書を交わします。個人アカウントの扱いは本人の協力が前提になるため、運用を始める前に説明して署名をもらいます。

例文 SNS運用規程

  • 第1条(区別)店の公式アカウント及び業務用アカウントは店が開設し、店のメールアドレスで登録し、ログイン情報を店が管理する。従業員の個人アカウントは従業員が開設し管理するもので、店はその削除や引き渡しを求めない。
  • 第2条(業務としての投稿)店が指示する撮影・編集・投稿は業務とし、その時間は労働時間として扱う。原則として勤務時間内に行う。
  • 第3条(費用)業務としての投稿に必要な機材、有料アプリ、広告の費用は店が負担する。広告は店の公式アカウント又は業務用アカウントで行う。
  • 第4条(写真の権利)店の指示により業務として撮影し、店の名義で公表する写真の著作権は店に帰属する。従業員が個人アカウントでこれを使うときは、店の許可を得る。
  • 第5条(掲載の同意)お客様・モデルの写真を掲載するときは、掲載する媒体を示して本人の同意を得る。
  • 第6条(禁止事項)お客様の個人情報、店の内部の情報、他人を中傷する内容を投稿しない。
  • 第7条(評価)個人アカウントへの任意の投稿の有無や件数を、評価や歩合の基準にしない。
  • 第8条(退職時)退職するときは、退職日までに、店が著作権を持つ写真と店の名義で同意を得た写真を個人アカウントから削除し、プロフィールの店名・予約リンク・店のアカウントへのタグを削除する。店の顧客情報を使って連絡しない。

例文 個人アカウントの業務利用に関する合意書と、退職時の確認書

  • 合意書:〇〇〇〇(以下「乙」)が運用する個人アカウント(@〇〇)について、ヘアサロン〇〇(以下「甲」)と乙は次のとおり合意する。(1)アカウントは乙のものであり、甲は削除や引き渡しを求めない。(2)甲は乙に、週3回までのスタイル投稿を業務として依頼し、その作業は勤務時間内の「撮影・投稿枠」で行う。(3)業務として撮影した写真のうち、甲の公式アカウントに甲の名義で載せたものの著作権は甲に帰属し、乙は個人アカウントでの掲載について許可を得たものとする。(4)退職時は、規程第8条に従って削除する。2026年〇月〇日 甲 代表 〇〇 乙 〇〇〇〇
  • 確認書:退職日 2026年〇月〇日。店の公式アカウントの権限の削除(済)、パスワードの変更(済)、個人アカウントから削除した写真〇枚(一覧は別紙)、プロフィールの店名・予約リンク・タグの削除(済)、店の顧客情報を個人の端末に保存していないことの確認(済)。上記を確認しました。店 〇〇 本人 〇〇〇〇

現場でつまずく点 — 5つの落とし穴と防ぎ方

もめるのは、開設のときと退職のときです。どちらも、始める前の取り決めで防げます。

  1. 店のアカウントをスタッフ個人のメールアドレスや電話番号で作る:退職後にログインも2段階認証もできなくなります。店のメールアドレスと店の端末で登録し直します。
  2. 個人アカウントに店が広告費を出す:広告で増えたフォロワーは本人のアカウントに残ります。広告は店の公式か業務用アカウントに出します。
  3. 「任意」と言いながら投稿数を評価に入れる:事実上の強制として業務と判断され、時間外の賃金の問題になります。評価から外すか、業務として時間を確保します。
  4. モデルの同意を店の名義で取り、退職者が新しい店で使う:同意の範囲を超えます。同意書に「掲載する媒体」と「担当者が退職した場合の扱い」を書いておきます。
  5. 退職後になってから削除を頼む:連絡がつきにくくなります。退職日の2週間前に一覧を確かめ、確認書に署名をもらうまでを退職の手続きに入れます。

個人アカウントのルールを決める前に、次の8項目を確認してください。

  • 店の公式アカウントとスタッフの個人アカウントを一覧にし、持ち主と管理者を確かめた
  • 店のアカウントは店のメールアドレスと店の端末で管理している
  • 店が指示する投稿を業務とし、勤務時間内に枠を取っている
  • 機材・アプリ・広告の費用の負担を決め、広告は店のアカウントに出している
  • 業務として撮る写真の著作権がどちらにあるかを書面にした
  • お客様・モデルの掲載の同意を、媒体と退職時の扱いを示して取っている
  • 個人アカウントを店の発信に使う人と、個別の合意書を交わした
  • 退職日の2週間前の確認と、確認書への署名を退職の手続きに入れた

よくある質問

退職した美容師に、個人アカウントを削除してもらうことはできますか?

本人が開設し本人が管理するアカウントは本人のものなので、削除を求めることはできません。求められるのは、店に権利がある写真や店の名義で同意を得た写真の削除、プロフィールの店名や予約リンクの削除などに限られます。

店の集客で増えたフォロワーは、店のものになりませんか?

なりません。フォロワーはアカウントに付くもので、Instagramの利用規約はユーザーネームを含むアカウントの売買や譲渡を禁じています。店に成果を残したいなら、広告や発信の力を店の公式アカウントに集めます。

勤務時間外に個人アカウントへ投稿してもらう場合、給与は必要ですか?

店が投稿を指示し、内容や件数を決めているなら業務なので、その時間は労働時間として賃金の支払いが必要です。本人が自由に投稿しているだけなら業務ではありませんが、ノルマや評価で事実上強制していれば業務と判断されることがあります。

美容師が撮ったスタイル写真を、店のホームページに載せてもよいですか?

美容師が業務とは別に自分で撮影した写真なら、著作権は撮った美容師にあるため、本人の許可を得て載せます。写っているお客様やモデルの同意も、店のホームページへの掲載を含む範囲で取ります。

退職した美容師が、店で撮った写真を新しい店の宣伝に使っています。やめてもらえますか?

店の業務として撮影し店の名義で公表した写真なら、著作権が店にあるため削除を求められます。お客様の写真は、店の掲載として得た同意の範囲を超えるため、お客様本人の意向も確かめたうえで削除を依頼します。

入社前から運用している個人アカウントで、店の写真を投稿してもらってもよいですか?

本人が了承すれば可能ですが、アカウントは本人のもののままです。店の業務として投稿してもらう範囲、店が著作権を持つ写真の扱い、退職時に削除する写真を、投稿を始める前に合意書で決めておきます。

出典:著作権法第15条(e-Gov法令検索「著作権法」)、個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索「個人情報保護法」)、Instagram「利用規約」。SNSの利用規約は変わることがあるため、各サービスの最新の規約で確認してください。個別の判断は弁護士に確認してください。

まず、店のアカウントとスタッフの個人アカウントを一覧にし、登録のメールアドレスと店の業務として使っているかに印を付けることから始めてください。スタイル写真を撮るときの手順はスタイル写真の撮り方にまとめています。

VAULTA|美容室専門のLINE公式サポート

美容室に特化したLINE公式、
無料でおつくりします。

予約・再来店・求人・販促まで、LINEひとつで。美容室の集客と経営に効く公式アカウントを、無料で作成します。

無料でLINE公式を作成する↗

友だち追加だけ。相談・作成は無料です。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

VAULTA編集部は、美容室・美容師向けに集客、リピート率向上、LINE公式活用、MEO対策、独立・開業、資金調達に関する実践的な情報を発信しています。

美容室の集客・リピート導線を見直したい方へ

新規集客、LINE公式、MEO対策、リピート率改善、ホットペッパー依存の見直しまで、あなたのサロンに合わせて整理します。

「何から直せばいいかわからない」という段階でも大丈夫です。
まずは現在の集客導線を一緒に確認しましょう。

コメント

コメントする

目次