契約社員やパートの美容師を期間を決めて雇っている場合、同じ店との契約が通算5年を超えると本人は期間の定めのない契約への転換を申し込め、店はこれを断れません(労働契約法第18条)。また、何度も更新して実質的に無期と変わらない場合や、本人が更新を期待するのが合理的な場合は、客観的に合理的な理由のない雇止めは認められず(同法第19条)、3回以上更新しているか1年を超えて働いている人には少なくとも30日前の予告が必要です。
スタッフの状況別に次の更新で何をするかの判断表、4人の契約一覧から無期転換の申込権と予告の期限を出す試算、2024年4月から契約書に書く事項の記載例、雇止めが認められない場合、予告書・理由証明書・申込書の文例、更新の実務でつまずく点を整理します(2026年10月時点の情報です)。試用期間と解雇の手続きそのものは扱いません。
結論:有期契約の更新と雇止めの早見表
有期契約で押さえることは、通算5年、更新への期待、30日前の予告の3つです。ルールを先に一覧にします。
| 項目 | 目安・ルール | 根拠・理由 |
|---|---|---|
| 1回の契約期間の上限 | 原則3年(高度な専門知識を持つ人などは5年) | 労働基準法第14条 |
| 契約期間の途中の解雇 | やむを得ない事由がなければできない | 労働契約法第17条 |
| 無期転換 | 通算5年を超えると本人が申し込め、店は承諾したものとみなされる | 労働契約法第18条第1項 |
| 通算期間のリセット(クーリング) | 契約のない期間が原則6か月以上あれば、それより前の期間は通算しない | 労働契約法第18条第2項 |
| 契約時に書くこと(2024年4月から) | 更新上限の有無と内容、無期転換を申し込めること、無期転換後の労働条件、就業場所・業務の変更の範囲 | 労働基準法施行規則第5条 |
| 更新上限を後から設ける・短くする | あらかじめ本人に理由を説明する | 有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準(雇止め告示) |
| 雇止めの予告 | 3回以上更新しているか、1年を超えて続けて働いている人には、期間満了の30日前までに予告する | 雇止め告示 |
| 雇止めが無効になる場合 | 実質的に無期と同じか、更新を期待するのが合理的で、雇止めに合理的な理由がない | 労働契約法第19条 |
| パート・有期の待遇 | 正社員と不合理な差をつけない。求められたら差の理由を説明する | パートタイム・有期雇用労働法第8条・第14条 |
雇用契約書に書く項目全体と記入例は美容室の雇用契約書と労働条件通知書の違いにまとめています。この記事は、期間を決めて雇う場合の更新と終了に絞ります。
有期契約と無期転換ルールとは — 通算5年を超えた契約の期間中に申し込める
有期契約とは、「2027年4月1日から2028年3月31日まで」のように働く期間を決めた労働契約のことで、無期転換ルールとは、同じ使用者との有期契約が更新されて通算5年を超えると、本人が契約期間中に期間の定めのない契約への転換を申し込むことができ、申し込まれた時点で店が承諾したものとみなされるルールです。無期になるのは、申し込んだときの契約期間が終わった翌日からです。
| 契約の形 | 申し込めるようになる時期 | 無期になる日の例 |
|---|---|---|
| 1年契約を2022年4月1日から毎年更新 | 通算5年を超える6回目の契約(2027年4月1日〜2028年3月31日)の期間中 | 2028年4月1日 |
| 3年契約を2024年4月1日から更新 | 2回目の契約(2027年4月1日〜2030年3月31日)の期間中 | 2030年4月1日 |
3年契約のように1回の期間が長いと、通算5年に届く前の4年目から申し込める点に注意します。契約と契約の間に契約のない期間が6か月以上(それまでの通算期間が1年未満なら、その半分以上)あれば、それより前の期間は通算されません。無期転換した後の労働条件は、就業規則などで別に定めていなければ契約期間以外は転換前と同じで、無期転換は正社員にすることとは違います。契約期間の途中の解雇は、やむを得ない事由がなければできず、能力や適性を見る目的で最初の契約だけ期間を区切ると、試用期間と同じように扱われることがあります(美容室の試用期間の決め方)。
次の更新で何をするか — スタッフの状況別の判断表
やることは、更新の回数・通算の期間・次の契約で通算5年を超えるかの3つで決まります。有期のスタッフ一人ひとりを次の表のどれかに当てはめてください。
| スタッフの状況 | 次の更新でやること | 期限・注意 |
|---|---|---|
| 更新2回以下で、続けて働いた期間が1年以内 | 更新するなら労働条件通知書を出し直す。しないなら早めに書面で伝える | 予告の義務はないが、満了の30日前を目安に伝える |
| 3回以上更新しているか、1年を超えて続けて働いている | 雇止めするなら理由を整理し、書面で予告する | 期間満了の30日前まで |
| 次の契約の期間中に通算5年を超える | 更新の通知書に、無期転換を申し込めることと転換後の労働条件を書く | 無期転換を避けるための直前の雇止めは無効と判断されるおそれがある |
| すでに申込権がある人から申込みを受けた | 受け付けたことを書面で返し、転換後の労働条件を確かめる | 店は拒めない。満了日の翌日から無期になる |
| 更新上限を新たに設ける・短くしたい | 変える前に本人に理由を説明し、書面に残す | 説明していても、更新への期待が合理的なら上限での雇止めが認められないことがある |
| 定年後に再雇用した美容師 | 都道府県労働局の認定を受けているかを確かめる | 認定があれば再雇用の期間中は申込権が発生しない |
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試算:4人の契約一覧 — 申込権が発生する契約と予告の期限
次の4人の店では、Aさんの2027年4月の更新とCさんの2027年4月の更新で申込権が発生し、2027年3月31日に満了する4人のだれかを雇止めするなら、全員が予告の対象で、期限は2027年3月1日です。2026年10月の今から、更新の面談と通知書の準備を始めるのが現実的です。
試算の前提(仮定):今日を2026年10月とし、いずれも契約の間に空白期間はない。Dさんは60歳で定年退職した後、2023年4月1日から1年契約で再雇用している。
| スタッフと契約の形 | 申込権が発生する契約 | 次の満了日と雇止めの予告期限 |
|---|---|---|
| A:契約社員のスタイリスト。1年契約を2022年4月1日から毎年更新(更新4回) | 2027年4月1日〜2028年3月31日の契約(通算6年)。この更新の通知書に無期転換の事項を書く | 2027年3月31日満了、予告は2027年3月1日まで |
| B:パートのアシスタント。6か月契約を2025年4月1日から更新(更新3回) | 2030年4月1日からの契約(通算5年6か月) | 2027年3月31日満了、更新3回のため予告は2027年3月1日まで |
| C:契約社員のスタイリスト。3年契約を2024年4月1日から | 2027年4月1日〜2030年3月31日の2回目の契約(通算6年) | 2027年3月31日満了、1年を超えて働いているため予告は2027年3月1日まで |
| D:定年後に再雇用した美容師。1年契約を2023年4月1日から更新 | 労働局の認定があれば発生しない。認定がなければ2028年4月1日からの契約 | 2027年3月31日満了、予告は2027年3月1日まで |
予告の「30日前まで」は、2027年3月31日満了なら3月1日が最終日です。面談で本人の意見を聞く時間を取るため、更新しない可能性がある人とは2月中旬までに面談を終え、書面の予告を出します。
2024年4月から契約書に書くこと — 更新上限と無期転換の明示
有期契約を結ぶとき・更新するときは、更新上限(通算期間や更新回数の上限)の有無と内容を書き、無期転換を申し込める契約のときは、申し込めることと無期転換後の労働条件も書きます。すべての契約で、就業場所と業務の「変更の範囲」も書きます。上の試算のAさんの2027年4月の更新なら、次のように書きます。
労働条件通知書の記載例(申込権が発生する更新のとき)
- 契約期間:2027年4月1日〜2028年3月31日
- 更新の有無:更新する場合がある。判断基準は、契約期間満了時の業務量、勤務成績・態度、能力、店の経営状況
- 更新上限:なし(設ける場合は「通算契約期間は〇年まで」「更新回数は〇回まで」と書き、設ける理由を事前に説明する)
- 無期転換申込機会:本契約期間中に無期労働契約の締結を申し込むことができ、申し込んだ場合は2028年4月1日から無期労働契約となる
- 無期転換後の労働条件:契約期間を除き本契約と同じ。定年は就業規則の定めによる
- 就業場所:雇入れ直後は本店、変更の範囲は店が指定する店舗
- 業務の内容:雇入れ直後は美容師の業務、変更の範囲は店が定める業務
更新上限を書いておいても、それまでの更新の経緯や店の言動から本人の更新への期待が合理的と判断されれば、上限での雇止めが認められないことがあります。
雇止めが認められない場合 — 労働契約法第19条の考え方
雇止めとは、有期契約の期間が終わるときに店が更新しないことです。何度も更新して実質的に無期と変わらない場合や、本人が更新を期待することに合理的な理由がある場合は、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性がなければ雇止めは認められず、それまでと同じ条件で更新したものとみなされます。
| 判断の要素 | 雇止めが認められにくい例 | 理由を説明しやすい例 |
|---|---|---|
| 更新の手続き | 契約書を作らずに更新している、期間が過ぎてから署名している | 毎回面談し、判断基準に沿って契約書を作り直している |
| 店の言動 | 「長く働いてほしい」「ずっと続けられる」と伝えている | 更新上限と判断基準を最初から書面で示している |
| 仕事の内容 | 正社員と同じ仕事と責任で、指名客を担当している | 繁忙期の補助など、期間を限った業務 |
| ほかのスタッフ | 同じ立場の人はほぼ全員更新されている | 判断基準によって更新しなかった例がある |
| 雇止めの理由 | 理由の説明がない、急に業績を理由にする | 勤務成績の指導の記録がある、店の縮小で業務がなくなった |
厚生労働省は、無期転換を避ける目的で、申込権が発生する前に雇止めをすることは望ましくないとしています。期間の定めのない契約の解雇や退職勧奨の進め方はスタッフに辞めてもらうときの手順で扱っています。
雇止めの手順と書面 — 30日前の予告と理由の説明
更新しないと決めたら、契約書と更新の経緯を確かめて理由を整理し、本人に面談で説明したうえで、期間満了の30日前までに書面で予告します。本人から求められたら、更新しない理由を書いた証明書を遅滞なく渡します。
-
契約書と更新の経緯を確かめ、理由を整理する
更新の回数、通算の期間、契約書の判断基準と更新上限を確認し、勤務成績の記録や業務量の変化を判断基準に当てはめて書面にまとめます。
-
本人と面談し、意見と更新の希望を記録する
更新しない理由を説明し、本人の意見と、更新を希望するかどうかを記録します。
-
予告書を渡し、求められたら理由の証明書を出す
下の文例を使い、日付の入った書面で渡します。
-
退職の手続きをする
離職票、社会保険の資格喪失、保健所への届出などを進めます(スタッフ退職時の手続き一覧)。
そのまま使える書面の文例
- 雇止めの予告書:「2027年2月15日 〇〇様 あなたとの有期労働契約(契約期間2026年4月1日〜2027年3月31日)は、契約書に定めた更新の判断基準のうち『業務量』『店の経営状況』により、期間満了の2027年3月31日をもって更新しないことをお知らせします。更新しない理由の証明書が必要な場合はお申し出ください。ヘアサロン〇〇 代表〇〇」
- 理由の証明書:「更新しない理由:2027年4月から営業時間を1日2時間短縮し、アシスタント業務の量が減るため(契約書の判断基準『業務量』『店の経営状況』による)」
- 無期転換の申込書(本人が出す書面の例):「私は、労働契約法第18条第1項に基づき、期間の定めのない労働契約の締結を申し込みます。現在の契約期間:2027年4月1日〜2028年3月31日。申込日・氏名」
- 申込みを受けたときの通知:「2027年6月1日にあなたの申込みを受け付けました。2028年4月1日から期間の定めのない労働契約となります。転換後の労働条件は別紙のとおりです。」
更新の実務でつまずく点 — 契約書の遅れ・申込権の時期・離職理由
雇止めや無期転換のトラブルは、契約の中身より、更新の手続きの遅れと書き漏れから起きます。次の5つは、更新の1か月前の面談で防ぎます。
- 更新の契約書を期間が始まってから作る:自動で更新しているのと同じに見え、更新への期待の根拠になります。防ぎ方:満了の1か月前に面談し、期間が始まる前に通知書を渡します。
- 申込権の時期を「5年たってから」と考える:3年契約なら4年目、1年契約なら6回目の契約の初日から申し込めます。防ぎ方:契約一覧に「通算5年を超える契約の開始日」の列を作ります。
- 申込権が発生する更新で、無期転換の事項を書き漏らす:防ぎ方:契約一覧で該当する人の通知書だけ、無期転換の申込機会と転換後の労働条件の欄があるひな形を使います。
- 無期転換した人の定年や労働条件を決めていない:就業規則に定めがないと、定年のない無期契約になることがあります。防ぎ方:無期転換した人に適用する定年と労働条件を就業規則に書いておきます。
- 離職票の離職理由を確かめずに書く:3年以上続けて雇われた人の雇止めは特定受給資格者、本人が更新を希望したのに合意に至らなかった場合は特定理由離職者として扱われることがあります。防ぎ方:面談で更新の希望の有無を記録し、離職票には事実のとおり書きます。
パート・有期で働く美容師の基本給、賞与、手当、福利厚生、教育訓練は、正社員との間で、仕事の内容と責任、配置の変更の範囲などに照らして不合理な差をつけてはいけません(パートタイム・有期雇用労働法第8条)。同一労働同一賃金ガイドラインは2026年10月1日から改正後の内容が適用されているため、通勤手当や技術講習なども更新のタイミングで点検します。短い時間で働く美容師の採用条件は美容室のパート・時短美容師の採用で、有期のスタッフを正社員に転換するときの助成金の考え方は美容室が使える雇用系の助成金で確認できます。
有期契約を更新する前に、次の8項目を確認してください。
- スタッフごとに、最初の契約日、更新の回数、通算の期間を一覧にした
- 通算5年を超える契約がいつ始まるかを一覧に書いた
- 契約書に更新の有無と判断基準、更新上限の有無を書いている
- 無期転換を申し込める契約では、申し込めることと転換後の条件を書いている
- 就業場所と業務の変更の範囲を書いている
- 無期転換した人に適用する定年や労働条件を就業規則に決めている
- 満了の1か月前までに面談し、更新の希望の有無を記録している
- 更新しない場合は、30日前までの予告と理由の証明書の準備をした
よくある質問
パートの美容師にも無期転換ルールは当てはまりますか?
当てはまります。働く時間の長さに関係なく、期間を決めて雇っている人が同じ店との契約を通算5年を超えて更新すれば、無期転換を申し込めます。
無期転換したら正社員にしなければいけませんか?
いいえ。無期転換後の労働条件は、就業規則などで別に定めていなければ、契約期間がなくなる以外は転換前と同じです。正社員の就業規則をそのまま当てはめるかどうかは、店が決めて規則に書いておきます。
契約書に「更新は通算5年まで」と書けば、5年で必ず終了できますか?
必ずとは限りません。最初の契約から上限を明示して説明していれば終了が認められやすくなりますが、更新の手続きが形だけだったり、長く働けると伝えていたりすると、更新への期待が合理的と判断され、雇止めが認められないことがあります。
雇止めの予告をしなかった場合、雇止めは無効になりますか?
予告がないことだけで直ちに無効になるわけではありませんが、労働基準監督署の助言や指導の対象になり、雇止めが相当かどうかを判断するときに店に不利に働きます。対象になる人には30日前までに書面で予告します。
定年後に再雇用した美容師も無期転換の対象になりますか?
原則として対象になりますが、定年後の継続雇用について都道府県労働局の認定を受けていれば、その店で再雇用している期間は無期転換を申し込める権利が発生しません。認定を受ける前に再雇用を始めている場合は、労働局に手続きを確認してください。
出典:労働契約法第17条〜第19条(e-Gov法令検索「労働契約法」)、労働基準法第14条、労働基準法施行規則第5条(e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」)、厚生労働省「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」「同一労働同一賃金特集ページ」、ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第8条・第14条。個別の判断は社会保険労務士や弁護士に確認してください。
まずは有期で雇っているスタッフ全員について、上の試算と同じ表で申込権が発生する契約と次の予告期限を書き出すことから始めてください。2027年3月31日に満了する人がいれば、2月中旬までに面談の日程を決めます。契約書の見直しは雇用契約書と労働条件通知書の記入例を使って進められます。
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