美容室が店販商品をネットで売るときは、まずメーカーやディーラーにネット販売と出品先が認められているかを書面で確認し、売るなら特定商取引法の表示(送料を含む価格、支払いと引渡しの時期、返品の条件、事業者の情報など)と注文の最終確認画面を整えます。続けるかどうかは送料・決済手数料・梱包を引いた1注文の残る額で判断し、月の注文が数件なら月額料金のかかるショップより、LINEでの注文受付から始めるほうが残ります。
メーカーへの確認の文例、月の注文数で売り方を決める判断表、特定商取引法に基づく表記の記入例、送料無料の条件による利益の試算、在庫と発送の手順、つまずきやすい点を整理します(2026年10月時点の情報です)。
結論:店販商品をネットで売るときの早見表
ネット販売は「売ってよいか」「表示は足りているか」「利益が残るか」の順に確認します。どれか1つでも欠けると、取引の停止、申込みの取消し、赤字のいずれかにつながります。
| 項目 | 目安・ルール | 根拠・理由 |
|---|---|---|
| メーカーの規約 | ネット販売の可否、出品できる場所、販売方法の条件を書面で確認する | 販売方法の条件は、合理的な理由があり他店と同じ条件なら認められうる |
| 販売の許可 | 完成品の化粧品・医薬部外品をそのまま売るのに許可は要らない | 小分けや詰め替えは製造にあたり、許可が必要 |
| 売り方 | 自社のネットショップ、モール、LINEでの注文受付 | いずれもネットで申込みを受ければ通信販売にあたる |
| 広告の表示 | 価格と送料、支払い、引渡時期、返品、事業者の氏名・住所・電話番号など | 特定商取引法第11条 |
| 最終確認画面 | 分量、価格と送料、支払い、引渡時期、返品の条件などを注文確定の直前に表示 | 特定商取引法第12条の6。表示の不備で誤認した申込みは取り消せる(第15条の4) |
| 返品 | 返品の可否と条件を必ず表示する | 表示がなければ、商品到着から8日以内の返品に応じる(第15条の3) |
| 利益 | 送料、決済手数料、梱包材、作業時間を引いて1注文ごとに計算する | 店頭販売より1個あたりの残る額が小さくなる |
| 表現 | 化粧品の効能の範囲を超えない。根拠のない比較や最上級の表現をしない | 医薬品医療機器等法、景品表示法 |
店頭での提案の仕方や、店販の売上全体の上げ方は店販売上を上げる方法で扱っています。この記事は、ネットで売る場合に必要な手続きと計算に絞ります。
まずメーカーの販売規約を確認する — 回答はメールで残す
サロン専売品の中には、美容師が髪の状態を見て説明しながら売ることを前提に、メーカーがネットでの販売に条件を付けている商品があります。取引の契約書を読み、書かれていなければディーラーを通じてメーカーの方針を確かめ、回答をメールで残します。
ディーラー担当者への確認メールの文例
- 件名:〇〇シリーズのネット販売の可否についてのご確認
- 本文1:いつもお世話になっております。(店名)の(氏名)です。お取引いただいている〇〇シリーズのシャンプーとトリートメントを、当店に来店歴のあるお客様向けに、自社のネットショップとLINEでの注文受付で販売することを検討しています。
- 本文2:メーカーのご方針として、①自社サイトでの販売の可否、②大手モールやフリマアプリへの出品の可否、③販売の条件(説明書きの同封、来店歴のある方に限るなど)、④商品画像と説明文の使用の可否、の4点をご教示いただけますでしょうか。
- 本文3:販売を始める前に社内で記録しておきたいため、お手数ですがメールでご回答をいただけますと幸いです。
公正取引委員会は、メーカーが販売方法を制限すること自体は、商品の品質の保持などの合理的な理由があり、ほかの販売店にも同じ条件を課していれば、それだけで独占禁止法上の問題にはならないと整理しています。一方、販売方法の制限を手段に販売価格を拘束するような場合は、違法と判断されることがあります。条件に反して売ると、取引の停止など契約上の問題になります。
売り方は月の注文見込みで決める — 判断表
既存のお客様の買い足しが目的なら、月の注文見込みが6件に届くまではLINEでの注文受付、6件以上なら自社のネットショップが目安です。分かれ目の6件は、後の試算で、送料を店が負担する1本の注文だけでも月額料金の元が取れる件数です。
| 店の状況(判断の条件) | 選ぶ売り方 | 理由 |
|---|---|---|
| メーカーがネット販売を認めていない、または回答が得られない | ネットでは売らない。LINEで取り置きを受け、来店時に渡す | 規約違反で取引停止のおそれがある |
| 既存のお客様の買い足しが中心で、月の注文見込みが6件未満 | LINEで注文を受け、オンライン決済のリンクか前払いの振込で受ける | 送料を店が負担する1本の注文では、5件までは月額料金の元が取れない |
| 月の注文見込みが6件以上、または定期便を始めたい | ネットショップ作成サービスで自社のショップを作る | 在庫数、決済、最終確認画面の機能がそろう |
| 店の外の新しいお客様にも売りたく、メーカーがモールでの販売を認めている | 自社のショップに加えてモールを検討する | 出店料と販売手数料を引いた残る額を、自社のショップと比べてから決める |
LINEで注文を受ける場合も通信販売にあたり、表示の義務は同じです。来店後のLINEでの案内文の作り方はLINEでの店販フォローの例文を参考にしてください。注文で受け取った住所や電話番号は、店のプライバシーポリシーに利用目的を書いたうえで扱います。
特定商取引法に基づく表記 — 美容室の記入例
ネットで商品を売る広告には、特定商取引法第11条で決められた事項を表示します。「特定商取引法に基づく表記」のページを作り、すべての商品ページと注文画面から見られるようにします。次の記入例を自店の条件に書き換えて使えます。
| 表示する事項 | 記入例(個人事業の美容室) |
|---|---|
| 販売業者・運営責任者 | (店名) 運営責任者:(事業主の氏名)※会社は会社名と、代表者または通信販売業務の責任者の氏名 |
| 所在地・電話番号 | (店舗の住所) (店の電話番号)受付時間10:00〜18:00(火曜定休) |
| 販売価格 | 各商品ページに税込価格で表示しています |
| 送料 | 全国一律550円(税込)。6,600円(税込)以上のご注文は送料無料 |
| 商品代金以外の必要料金 | 銀行振込の振込手数料はお客様のご負担となります |
| 支払方法・支払時期 | クレジットカード:ご注文時に決済。銀行振込:ご注文日から7日以内に前払い(期限までにご入金がない場合はキャンセル) |
| 引渡時期 | クレジットカードはご注文から3営業日以内、銀行振込はご入金の確認から3営業日以内に発送します |
| 返品・交換 | お客様のご都合による返品・交換はお受けしていません。不良品・誤配送の場合は、商品到着から7日以内にご連絡ください。当店の送料負担で交換または返金します |
| 定期便の条件(ある場合) | 2か月ごとのお届け。お届けの回数の定めはなく、1回あたりの価格は〇円(税込・送料込み)。次回発送日の7日前までにLINEまたはメールで解約できます |
請求があれば遅滞なく書面か電子メールで提供する旨を表示し、実際に提供できる体制があれば、事業者の氏名・住所・電話番号などの表示を省略できます。ただし、前払いの場合の支払時期、返品に関する事項、定期便の条件などは省略できません。自宅兼店舗の住所を載せたくない場合は、この扱いが使えるかを消費者庁の特定商取引法ガイドで確かめます。
注文を確定する直前の最終確認画面には、分量、送料を含む価格、支払いの時期と方法、引渡時期、申込期間の定め、返品などの条件を表示します(第12条の6)。表示がなかったり誤認させる表示があったりして、お客様が誤認して申し込んだ場合は、その申込みを取り消せます(第15条の4)。
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送料・手数料・梱包で利益はどれだけ減るか — 1注文と月の試算
ネット販売は店頭販売にはない送料、決済手数料、梱包材、発送作業の時間がかかります。まず1注文あたりの残る額を出し、次に送料無料の条件で月の残る額を比べます。
| 項目 | 店頭で1本 | ネットで1本 | ネットで2本 |
|---|---|---|---|
| 販売価格 | 3,300円 | 3,300円 | 6,600円 |
| 仕入れ値(掛け率55%) | 1,815円 | 1,815円 | 3,630円 |
| 決済手数料(3.6%) | 119円 | 119円 | 238円 |
| 送料(店が負担) | 0円 | 500円 | 500円 |
| 梱包材・発送作業 | 0円 | 280円 | 330円 |
| 残る額 | 1,366円 | 586円 | 1,902円 |
| 月20件の注文(1本14件・2本6件) | A:すべて送料無料 | B:2本以上で送料無料(1本は送料をお客様負担) |
|---|---|---|
| 1本の注文の残る額 | 586円×14件=8,204円 | 1,068円×14件=14,952円 |
| 2本の注文の残る額 | 1,902円×6件=11,412円 | 1,902円×6件=11,412円 |
| ネットショップの月額料金 | −3,000円 | −3,000円 |
| 月に残る額 | 16,616円 | 23,364円 |
| 月額料金の元が取れる件数 | 1本の注文で6件 | 1本の注文で3件 |
試算の前提(仮定):税込3,300円のシャンプー。掛け率55%、決済手数料3.6%、送料500円、梱包材80円、発送作業は1本10分・2本12.5分で時給1,200円、月額料金3,000円はすべて計算の仕方を示すための仮定で、特定のサービスの料金ではありません。Bの1本の注文は、お客様が払う送料500円を含めた3,800円に決済手数料をかけています。
この例では、送料無料の条件を「2本以上」にするだけで月の残る額が約4割増えます。ただし、これは注文がすべて新しい売上の場合です。いつも店頭で買っていたお客様がネットに移るだけなら、1本あたり1,366円−586円=780円減ります。ネットでの案内は、来店の間隔が空くお客様や遠方に引っ越したお客様に絞ります。
在庫と発送の手順 — 締めの時刻を決めて毎日回す
ネットで売る商品は、店頭の在庫と分けて数を管理し、注文の締めの時刻と発送の手順を決めておくと、売り切れの表示漏れや発送の遅れを防げます。
-
ネット用の在庫数を決める
店頭で売る分と分け、ショップの在庫数を実際の数に合わせます。店頭用が切れてもネット用から補充しないルールにすると、数がずれません。
-
使用期限と保管を確認する
期限が近い商品はネットに出しません。夏場は高温になるバックヤードの奥に置かないようにします。
-
注文と支払いを1日1回締める
締めの時刻(例:毎日12時)を決め、前払いの注文は入金を確かめてから発送の準備をします。LINEの注文は、商品名、数量、届け先を文字で残します。
-
液漏れと破損を防いで梱包する
ポンプ式の容器は口を固定し、袋に入れてから箱に詰めます。納品書を同封します。
-
発送を連絡し、返品の連絡を受ける
「本日発送しました。追跡番号は〇〇です。お届けまで1〜3日ほどかかります。商品に不具合があった場合は、到着から7日以内にこのLINEにご連絡ください」と送ります。
返品を受けた商品は、開封の有無と状態を確かめ、再び売れるものと売れないものを分けて記録します。ネット販売の売上は店販の売上として帳簿に記録し、ネット分を区別しておくと、送料や手数料を引いた利益を把握しやすくなります。
商品ページの表現 — 医薬品医療機器等法・景品表示法で外せない点
商品ページの説明は、店頭で口頭で話すときよりも記録に残り、広く見られます。化粧品として認められた効能の範囲を超える表現や、根拠のない「No.1」「最高」などの表現は使いません。
業務用の大容量のシャンプーやトリートメントを小さな容器に詰め替えて売ることは、化粧品の製造(包装・表示を含む)にあたり、化粧品製造業などの許可がなければできません。メーカーが出荷した製品を、そのままの容器と表示で売る形にします。
使える表現と言い換えの例は広告・SNSで使えない表現にまとめています。購入者に口コミの投稿を頼んで特典を付ける場合は、広告であることの表示が必要になる場面があり、ステマ規制への対応で確認できます。
ネット販売でつまずく6つの点と防ぎ方
始めてから困るのは、表示や画面の設定漏れと、店頭とネットの数字の混同です。
- 店頭の売上がネットに移るだけになる:1本あたり780円減ります。来店時に買えるお客様には店頭で渡し、ネットの案内は来店の間隔が空く人に絞ります。
- 最終確認画面に返品の条件が出ていない:表示の不備は申込みの取消しにつながります。公開前に自分でテスト注文をして、確定直前の画面に分量・送料込みの価格・支払い・引渡時期・返品の条件が出るかを確かめます。
- 店頭で売れた分をショップに反映し忘れる:売り切れの商品に注文が入ります。ネット用の在庫を分け、毎日の締めの時刻に数を合わせます。
- 定期便の解約の方法が分かりにくい:問い合わせと不信の原因になります。解約の方法と期限を表記のページと最終確認画面の両方に書きます。
- 店頭のPOPの文言をそのまま商品ページに載せる:口頭なら気づかない効能の言い過ぎが記録に残ります。メーカーの画像や説明文を使う場合は、使用の可否も確認の回答に含めておきます。
- 店販とネットの売上を施術と分けずに記録する:簡易課税では化粧品の販売は第2種事業(みなし仕入率80%)、施術は第5種事業(50%)で、分けて記録していないと低いほうの率が使われます。
ネットで店販商品を売り始める前に、次の8項目を確認してください。
- メーカー・ディーラーから、ネット販売と出品先の可否の回答をメールで受け取った
- 売る商品は、メーカーが出荷したままの容器と表示である
- 月の注文見込みから、LINEでの注文受付か自社のショップかを決めた
- 特定商取引法に基づく表記を記入例に沿って作り、すべての商品ページから見られる
- テスト注文で、最終確認画面に分量・送料込みの価格・支払い・引渡時期・返品の条件が出た
- 送料無料の条件を決め、1注文と月の残る額を計算した
- ネット用の在庫数と、毎日の締めの時刻を決めた
- 商品説明に、効能の範囲を超える表現や根拠のない比較がない
よくある質問
サロン専売品をネットで売るのは違法ですか?
法律で一律に禁止されているわけではありません。ただし、メーカーやディーラーとの取引条件でネット販売や出品先が制限されている場合は、それに反すると取引の停止などの問題になるため、事前に確認します。
化粧品をネットで売るのに許可は要りますか?
国内の製造販売業者が出荷した化粧品や医薬部外品を、そのままの容器と表示で売るだけなら、販売の許可は要りません。中身を小分けしたり、自分でラベルを貼り替えたりすると製造にあたり、許可が必要です。
個人事業主でも、特定商取引法の表示に自宅の住所を載せる必要がありますか?
原則として、事業者の氏名、住所、電話番号を表示します。請求があれば遅滞なく提供する旨を表示し、実際に提供できる体制があれば広告での表示を省略できる扱いがあるため、条件を消費者庁の特定商取引法ガイドで確認します。
LINEで注文を受けて発送する場合も、特定商取引法の表示は必要ですか?
必要です。LINEなどのネット上のやりとりで申込みを受けて商品を送る販売は通信販売にあたります。注文を受ける前に、価格と送料、支払い、引渡時期、返品の条件などを示せるよう、表記のページのリンクを案内文に入れておきます。
返品を受け付けない場合はどう書けばよいですか?
「お客様のご都合による返品・交換はお受けしていません」のように返品の可否をはっきり表示し、最終確認画面にも表示します。表示がないと、商品の到着から8日以内であれば、お客様の送料負担で返品に応じることになります。
出典:特定商取引に関する法律第11条・第12条の6・第15条の3・第15条の4(e-Gov法令検索「特定商取引法」)、消費者庁「特定商取引法ガイド 通信販売」、公正取引委員会「メーカーによる販売店の販売方法の制限」、三重県医療保健部薬務課「初めて化粧品を製造販売・製造・輸入される方へ」(令和7年12月版)、国税庁 No.6509 簡易課税制度の事業区分。
ネット販売を始めるなら、まず確認メールの文例を使って、ディーラーにネットで売ってよい商品と出品先を問い合わせることから始めてください。店頭とネットを合わせた店販全体の伸ばし方は店販売上を上げる方法で確認できます。
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